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UN HOMME ET UNE FEMME
外伝第3話 花火
ひょんなことから花火大会に見に行くことになった。
そんなことを言い出したのはアスカとレイしかいない。
シンジは結局巻き込まれ、振り回されることになったしまう。
アスカとレイは仲がいいのか悪いのかよく分かっていない。
何かというとレイはアスカをからかっていて、アスカは反論するけど、
これといった打開策を練れないので、結局負けている。
しかし、何か2人の中で妥協点というのか共通項が見つかると、
妙な結束力を感じる。そんな風にシンジは見ていた。
「ねぇシンジ、今度の花火大会なんだけどさぁ浴衣買ってくれない?」
「花火大会?浴衣?」
「碇君聞いていなかったの?
さっきアスカと話していて花火大会に行くことになったのよ。
で、浴衣を新調したいということになったのよ」
シンジ、アスカ、レイの3人でDJコンテストに出るために
構成の打ち合わせをしていたときの出来事だった。
アスカが買ってきた雑誌に花火大会の特集が組んであって、
それを見て「見に行こう!当然浴衣で!」という話になっていた。
シンジは浴衣で見に行くのはいいけど、どうして買わなくてはいけないのか?
という素朴な疑問と格闘していた。
アスカとレイの言葉を借りれば
「やっぱそういうのは男の人に買ってもらいたい」ということらしい。
どうしてだよぉと反論したところでアスカにも勝てないシンジが
レイも一緒のアスカに勝てるわけがない。
『善は急げ』とばかりに翌日シンジは2人に振り回されていた。
「ねぇどこまでいくんだよおぉ」
「この先に浴衣コーナーがあるらしいのよ。そこまで行けばきっと見つかるわ」
「碇君、今日は碇君のセンスにかかっているわ。
ワタシやアスカに1番似合う浴衣を選んでね」
「はぁ...」
朝1番にリニアに乗って、連れてこられるようなシンジを後目に
両脇をアスカとレイに固められていた。
端から見ていると美女2人に腕を組まれ、
通り過ぎる人たちが嫉妬と羨ましさの目線を送るような状態だった。
(はぁ、どうして女の子の買い物って長いんだろう?
洞木さんもトウジと一緒だと長いのかなぁ?
こういう状況をケンスケなら『喜ぶべき状況だね』っていうだろうけど
当事者としてはそんなに嬉しくないんだよなぁ。
でもアスカと一緒にいられるし、綾波だってこう間近で見ると美人だし。
喜ぶべき状況なんだろうなぁ。
今日は苦痛苦痛と思わないで楽しんでみようなかなぁ)
しかし、シンジにしてみればアスカの買い物は長いことを知っていたので、
振り返る人たちが思うほどいい状態ではなかったのだ。
いわば連行されているような表現の方が正しいかも知れない。
逆にアスカはシンジと一緒とお買いものということで浮かれていた。
レイの事も気になっていた。アスカの反対側の腕を組んでいたからだ。
でもレイはわたしたちの事を応援してくれているということを信じて
何も言わなかった。言わなくてもいいやと思っていた。
(今日はシンジがワタシの浴衣を選んでくれる日。
高校時代に選んでくれた浴衣と同様に大事にしなくてはねぇ。
それにしてもレイまで腕組むことないじゃない!
シンジもレイのこと気にしちゃっているし...。ワタシも見てくれないのかな?
レイもシンジのことをスキだっていうの知っているし。
でも、もしシンジがワタシじゃなくてレイだったら許せるかもしれないなぁ)
レイもアスカの視線は気になっていたが、
レイはアスカから碇君を奪い取るようなことをしようとも思っていなかった。
ただ3人で一緒にいられたらいいなぁという程度しか思っていない。
女2男1ならアスカの反対側の腕を組んでもいいかな?という気持ちで
腕を組んでいるだけだった。
(アスカったら気にしているのバレバレね。
やっぱ無理もないか。愛しの碇君と腕を組んでいれば。
ワタシも碇君の事スキだし、2人でデートしたりしたいなぁって
思うこともあるけど、アスカが相手じゃ何されるかねぇ。
でもアスカと碇君なら一見仲悪そうに見えるけど上手くいくかな。
じゃないとワタシが許さないからね。
ワタシはアスカの事を応援しているんだから)
3者3様の思いが交錯したまま、浴衣コーナーを目指していた。
しばらく歩いてると、様々な色や柄の浴衣がマネキンで着飾れていた。
日本で1番の数を誇ると言われるキャッチコピーがついていたぐらい、
アスカとレイは完全に目移りしていた。
「ねぇアスカ、これなんかよくない?」
「そうだねぇ。レイって肌が白いから何色でも似合うよね」
「アスカだって白いじゃない」
「ワタシは暖色系がスキだから」
相変わらず両腕は2人のものなのだが、話は蚊帳の外のシンジだった。
しばらく浴衣を見ていると、シンジが呆れたような顔をしながらついてきていた。
2人は当初の目的を思い出すと、シンジに似合う男性ものの浴衣を探し始めた。
さっきまで自分たちのものしか探してなかったアスカとレイが
いきなり自分の為の浴衣を探すという事が突然の事で飲み込み出来ないでいた。
「何ぼけぼけっとしているのよ、アンタの浴衣を選んでいるんでしょ。
ちゃんと感謝しないさいよ」
「だってさっきまで綾波と一緒に自分たちの浴衣を探していたじゃなか。
突然そんなこと言われても...」
「このミス第三新東京市以上の美貌を誇るとウワサされるワタシとアスカが
碇君のための浴衣を探しているのよ。これはすごいことなのよ」
「レイの言うとおりよ。この状況を泣いて喜ぶヤツもいるんだから」
「....はぁ」
「何ため息なんかついているのよ。
第三新東京市で一番カッコいいのを選んであげるわ」
アスカはそういうとレイと一緒に色々な柄を見ていた。
女性物の柄と比較すると、男性物の柄というのはそうあるものではない。
割とオーソドックスな柄しかないので、アスカとレイは選びやすかった。
シンジに似合う色から寒色系の浴衣を選んでいた。
「シンジ、これなんかどう?」
「いいんじゃないかなぁ」
「何か投げ遣りになってない?シンジ?」
「そんなことないよ。だってアスカと綾波が選んでくれた浴衣だろ。
ボクが選ぶのよりセンスあると思うんだけどさっ」
2人が選んだのは三つ巴の柄が細かく入った紺の浴衣と若草色の帯だった。
ゲタは普通のゲタだったので、選ぶことはなかった。
女性陣は自分たちの1つの目標が達成されると、
あとは自分たちの浴衣を選んでもらうだけとなった。
「じゃぁワタシたちの浴衣を選んでもらおうかな?」
「期待しているわよ、碇君」
「そんなこといったってぇぇ」
「アンタの浴衣をこうして上から下まで選んであげたでしょ。
そのお礼をして欲しいだけじゃない」
「アスカはこう言っているけど、本当は碇君に選んでもらった浴衣を着たいのよ。
ワタシも碇君に選んでくれた浴衣なら一生大事にするかもしれないなぁ」
「レイもこういっているんだから、
ワタシたちのイメージにピッタリなのを選ぶのよ」
「..はい」
シンジが反論することは初めから分かり切っていた事ではあったが、
それは無駄な努力という代物だった。
何を言っても無駄なことが分かっていたシンジは
自分がイメージするそれぞれえのカラーを考えてみた。
綾波は白のイメージ、アスカは赤のイメージだと決めて選ぶことにした。
アスカとレイはシンジがすべてを選ぶことにして我侭は1言も言わなかった。
シンジに任せているという時点で我侭なのだが。
シンジが真剣に自分たちの浴衣を選んでくれることが嬉しかった。
だから一緒に歩いているけど「これがいい!」なんて絶対に言わないし、
アドバイスもしないでいた。シンジも求めることもしなかった。
白の生地に藍色のトンボが飛び交う柄と赤と黒のリバーシブルの帯、
麻素材のメッシュのバッグ、白木に赤の鼻緒のゲタ、
日本画の瓢箪が描かれた扇子、べっこう調の1本ざしをレイに、
朱色の生地に源氏香の柄と黄色と赤のリバーシブルの帯、
縮緬地の赤の巾着、黒に赤の鼻緒のゲタ、ウサギが描かれているピンクの扇子、
ウサギのコームをアスカに選んで見せた。
「...一応選んでみたんだけど、どうかな?」
「シンジにしては上出来かな?」
「あらアスカ、本当は嬉しいんじゃないの?」
「な、なに言っているのよ」
「まったく素直じゃないんだから。ワタシは嬉しいわよ。
だってワタシの為に選んでくれたんだもの。『ワタシ』っていうイメージだし。
アスカだって『アスカ』ってイメージじゃない」
「ワタシだって嬉しいのよ!シンジが選んでくれたんだから!」
図星をつかれたアスカは顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
レイは「大変ね、こんな我侭な彼女を持つと」とシンジに言った。
「いっそうのことワタシに乗り換えない?」と冗談で言ってみたレイだった。
その言葉を聞いたアスカは向き直ると「何を言っているのよ!」と
烈火のごとくレイに怒っていた。レイはその行動を知っていたかのように
「素直にならないと本当にそうするわよ」とからかってみせた。
アスカはレイには勝てないのは分かっているのだが、レイの術中にはまってしまう。
またそのことでイライラするアスカのはけ口はシンジなのだが...。
3人とも各々が選んだ生地で採寸を済ませて仕上がりを待つだけとなった。
この時期は時間がかかるのだが、早く着たいという人のために
その日に出来上がるシステムになっていた。
引換券を受け取った3人は昼食を取って時間を潰すために
ウインドショッピングをすることになった。
といっても、シンジはアスカとレイに連れ回されるという事でもあったが。
シンジは「どうしてこんなところに連れてくるんだよぉ」と嘆いてみたが
2人の耳に入ることはなかった。2人が見ていた場所は洋服売場だった。
シンジにしていれば自分の物を選んでいる訳ではないのでつまらないのだ。
そんなシンジを後目に2人は「これいいよねぇ」と歓声をあげていた。
そうこうしているうちに時間も潰れて、浴衣を受け取りそれぞれの家に帰った。
浴衣を新調した3日後が新東京港花火大会だった。
この花火大会に浴衣を新調する人が多かったらしい。これに3人も含まれるのだが。
浴衣なんて滅多に着ない3人だったので着ることが大変な苦労をともなっていた。
シンジもアスカもレイも浴衣の着付けのガイドを読みながら格闘していた。
レイはさっさと着替えると、シンジの家に来ていて2人が着替えるのを待っていた。
「アスカ、もう着替えた?」
「あと帯を締めるだけかな、よっと。出来たわよ」
そう言うと、アスカは自分の部屋から出てきた。
2人はどうにかさまになっている様子で、
見慣れないお互いの姿を見て吹き出してしまった。
「どうして笑うのよ!レイ」
「そういうアスカだって笑っているじゃないぃ」
「レイが笑ったからでしょぉ。でもなんか変よね?」
「何かね。見慣れてないからだと思うけど」
「シンジもこんな美女2人を1人占め出来るんだから幸せよね」
「本当は1人占めしたかったのはアスカだけじゃないぃ?」
そうやってレイがアスカをからかっていることをしている頃、
シンジがどうにか着付けを終えて自分の部屋から出てきた。
「おまたせ、アスカ、綾波」
「「ぷっ」」
「なんだよ、2人とも笑うことないじゃないか!」
「だってねぇアスカ」
「何か変なんだもん」
「どこがだよぅ」
ちょっと不満そうな顔をするシンジだったが、アスカもレイも見慣れていないから
変なんだということでシンジを納得させていた。
このあとシンジは「わたしたちを見て何か言うことがないの?」と詰問され、
素直に「綺麗だ」と答えたが為にアスカはいつものように顔を赤らめ、
レイも珍しく顔を赤らめてしまっていた。
こうして花火が開かれる会場の近くの公園を目指して向かった。
下手からアスカ、シンジ、レイの順番で腕を組みながらが向かっていた。
リニアを乗り継いで目指す公園はカップルでいっぱいだった。
そこにこの3人は異様な光景となっていたが、
自分たちのことしか見えていないために気にするカップルはいなかった。
公園の中でも見やすいポイントは既に人の山になっていた。
暗闇も何を目的としているのか分からないが何故か人でいっぱいだった。
シンジ達はそんな状況の中でもとりあえず見やすいポイントを確保すると
途中で買ってきたジュースを飲みながら始まるのを待っていた。
「まさかこうして一緒に花火大会に来るとは思わなかったよ」
「碇君もアスカだけと来たかったんじゃない?」
「そ、そんなことないよ」
「ゴメンね、ワタシがオジャマでね、アスカ」
シンジはちょっとだけ動揺していたが、3人で来ることには抵抗はなかった。
アスカもレイとならという感じでそんなに抵抗は感じていない様子だった。
花火大会を見に行くという事が話の成り行き上、
3人になってしまうことはしょうがないことだったし、
これもDJをするためのネタの1つだったのだ。使う使わないは別にして。
しばらくすると満月しか出ていない空に、
赤、黄、青、緑といったカラフルな花火が鮮やかに打ち上げられていった。
打ち上げられるたびに見に来ている人から歓声が上がり、
上空に描かれる様々な模様を見て楽しんでいた。
3人はこれといって話すわけでもなく、夜空に描かれる花火を鑑賞していた。
花火大会が終わると、リニアの駅に向かったが、人混みでごった返していたので、
3人は近くのファーストフードで時間を潰すことにした。
「なんかさぁこのまんま帰るのは寂しいよねぇ」
「この浴衣も今夜だけしか着ないのかと思うとね」
「来年も着ればいいじゃないか」
「来年はまたシンジに選んでもらうわよ」
「それじゃぁもったいないじゃないか!」
「だってねぇアスカ、碇君に選んでもらうって事が重要なんだものね」
シンジが素朴な疑問を素直に言っただけなのに、
結局はアスカとレイに言いくるめられるのだった。
3人はこの姿を納めておきたいねと言って、
帰る人混みの中からカップルを狙って写真を撮ってくれるように頼んだ。
カップルなのかは向こうも同じ様な事を考えている体という理由だった。
このときほど3人は『相田』を連れてくるべきだったと思ったらしい。
しかしこのチャンスを逃すことのないケンスケは密かに撮っていたという話だった。
その後、3人はそれぞれの家に帰っていった。
シンジとアスカは浴衣を脱ぐのちょっとだけためらっていた。
やっぱり2人きりの写真が欲しいというアスカの我侭で、
家のカメラでセルフタイマーを利用して、2ショットの写真を納めることにした。
その写真には、はにかんだシンジと頬をちょっとだけ赤らめているアスカが
恥ずかしそうに腕を組んでいる写真となって、フォトスタンドに飾られていた。
LAGERですぅ。
何とか夏に夏の話が書けた(笑)。
間に合わないかと思いながら、
電車の中で人の目を気にしながら書いた苦労が...。
基本的には外伝はすき間産業的な話を
まとめていこうとちょっと計画中です。
来月には4号機が私を呼んでいる...
(4号機っていうより、チビアスカが欲しかったりするが(^^;;))
LAGERさんの『UN HOMME ET UNE FEMME』外伝第3話、公開です。
右手にアスカ、左手にレイ。
↑・逆?
右手に真っ赤な薔薇、左手に白百合。
↑・臭い? 変? イメージおかしい?(^^;
もうこの3ショットは定着してしまいましたね(^^)
「羨ましいぞ」ってなんか言ったか忘れたぞ!
レイもアスカも、相手を受け入れているし・・・
も、もしかして・・・3人Hなんて事に・・・すみません下品で(爆)
さあ、訪問者の皆さん。
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