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婚前旅行みたいな感じになってしまった温泉旅行だった。
アスカは「これは2人のヒ・ミ・ツだからね」とシンジに釘は差した。

シンジはこの言いつけを守って誰にも言わなかった。
言えなかったが意味あい的に正しいかもしれない。
もし「この間アスカと温泉に行って...」なんて言ったら
アスカに殺されることは間違いないからだ。



今日は新しいゲームが入るということで、
ケンスケとトウジの3人で買いに来ていた。

「そや、せんせ。惣流と温泉行ったんだって?」
「シンジもついに男になったってことかぁ」
「ど、どうしてそれを知っているの?」
「だっていいんちょが惣流から
 『この間、シンジに温泉連れていってもらって..』
 と、嬉しそうに話していたのを聞いただけや」
「で、どうだったんだよぉ。シンジ」
「何がさぁ」
「もういくとこまでいったんか?」
「そりゃぁ2人きりでいかないほうが男じゃないさっ。
 な、シンジ」
「何かさぁ、好き勝手に言ってない?」

トウジの話によれば、アスカが楽しいそうにヒカリにその様子を伝えていたらしい。
シンジはどこまで話していたのかが気になったがトウジは
「詳しくは聞いてないから、大丈夫や」とはぐらかされていた。

どうもこの事を自分の口からヒカリやレイに話をしているらしい。

『ったく、人には釘差して置いて、まったく』

これがシンジの今の心の叫びだった。
結局シンジはゲームを買うまでの間、トウジとケンスケにからかわれていた。



「アスカ、アスカ」
「何?」
「『温泉行った』って言いふらしてないぃ?」
「そんなことないわよ、アンタこそ言ってないでしょうね?」
「何言っているんだよ。今日トウジとケンスケからからかわれたんだぞ!
 洞木さんから聞いたって」
「うっ...」
「自分から『これは2人のヒ・ミ・ツだからね』って言ったのは
 どこのどなたでしたっけぇぇ」

シンジはいつもいつも劣勢に立たされているのを挽回するかのように
アスカに対して優位に立ち攻撃をしていた。

「...だっていいじゃない。
 嬉しかったから、ヒカリに自慢したかっただけなんだしぃ...」

アスカは顔を赤くしながら声を小さくして反論をしていた。
いつものアスカなら「私の勝手でしょ!」と反撃に合うのだが、
今日だけは違っていた。

「ちょっとだけ自慢したかったのよ。ヒカリのところもなかなか進展ないみたいだし
 いつもちょっかい出してくるレイにだって...」

あぁーという顔をしながら顔を赤くして話すアスカの話をシンジは聞いていた。

結局アスカは話したくてしょうがなかったらしく、
しかも自分の口で言いたかったらしい。
それを聞いたシンジは何も言う言葉すら持たなかった。

アスカもからかわれることが判っているだけに
のろけ話なんか話さないと思っていたのに、
そうじゃなくて普通の女の子らしく彼氏の話をしたかったらしい。
レイやヒカリにからかわれるのが判っていても、自慢したかったらしい。

いつもとは違うアスカを見ていたシンジは妙に可愛いと思ってしまった。
(こんな顔をすることもあるんだぁ。こういうシーンって残しておきたいよなぁ)
そんな風に考えるシンジだった。



翌日、シンジは何かを思い立ったかのように自分の部屋に閉じこもっていた。
アスカと顔を合わせるのは食事の時ぐらいだった。
しかも部屋のドアには「KEEP OUT」とかかれた紙が画鋲で止まっているだけ。

アスカはいつもとは違うシンジの行動に戸惑いを感じていた。
部屋に入ろうとすると「今忙しいから後にして。ちょっと部屋には入ってこないで」と
言われる始末。「何よ、ちょっとぐらいかまってくれたっていいじゃない!」と
激昂するアスカだったが、自分がどれだけ我侭を言ってきたかを考えると
シンジの行動も許してあげなくてはいけないのかと考えてしまう。

しかも昨日、自分が『言わないでね』と釘を射したにも関わらず、
自分の口からレイやヒカリに言ってしまったという後ろめたさもあっただけに、
どういう態度をとっていいのか判らない。

アスカは暇を持て余すのも何か癪に障るので
『久々にクッキーでも作ってみようかな?』と思い、
しばらくつけていなかったエプロンをして、材料をテーブルに並べていた。

アスカは3時にでもなったらシンジの部屋に手作りクッキーと紅茶でも持っていって
『シンジ、クッキーでも作ったんだけど。お茶でもしない?』
『アスカ、ありがとう』
『シンジのためだったら、何でも言って』
『じゃぁ一緒に食べようか』
などと、妄想に浸りながら、どんなクッキーを作ろうか考えていた。



一方アスカを追い出してまで部屋に閉じこもっていたシンジは
自分の机のパソコンのモニターをにらめっこをしていた。
昨日言い訳をするアスカの顔を見ていて思いついた行動だった。

ときどき見せる可愛いアスカをどうにか生かした番組はできないかと
アイデアを練りだしているシンジだった。

アスカだけということになると、レイが黙っている訳はないので、
レイも一緒になった番組で、かつ“絵”として残るものとなっていくと
映像に納めるということになるのだが、どういう絵を納めるかが
今のシンジの頭の中をぐるぐる駆けめぐっていた。

レイをいれないと、他のサークル員が黙っているわけはなく、
ただでさえ妙な人気があるシンジが作る番組ってことで他大の人も
密かに「碇君がプロデュースするんでしょ、私も出たい」と言う風になる。

レイもアスカも自分のサークル員だけでなく、他大の学生も
「僕が作る番組に出演してくれませんか?」という要望は多い。
しかし2人は「碇君が作る番組以外、出る気はないですから」断っているのだ。

そのことはシンジも知っているだけに
2人を念頭にいれた番組構成が必要となってくるのだった。

3者3様に「私も交流を個人的に持ちたい」という輩は多いのだ。
それであわよくば、つき合えるとことができるならば....と考えているらしい。



「2人の個性を生かした番組って実際に考えてみると難しいなぁ」
そうぼやいているシンジだった。

実際な問題、2人はDJするための練習をしている。
前回のコンテストのネタでアミューズメントパークの特集をしてしまったために
同じネタを使い回すのは、シンジのプライドが許さない。
だからといって手頃なネタはそうそう転がってはいない。

シンジの頭の中では、2人がそれぞれ違った対象を取材してきて
それを比較する番組というアウトラインを考えていた。
そういう2人らしさを出すためにも双璧な対象が欲しいのだ。

取材するといっても実際にカメラを回すのはシンジだし、
それを編集するのもシンジの役目になってくるだろう。
レイが受け持つ担当の時にはアスカもついてくることは容易に予想できる。
また逆もしかりだ。考えられることをすべて画面に書き出しながら思考していた。

「そういえば、つい最近湖尻と箱根のあたりに
 ショッピングセンターが出来たんだっけ?
 新名所の比較っていうのは面白いかもなぁ。」

シンジはそうつぶやくと、最近買った雑誌を漁っていた。



第三新東京市は芦ノ湖の上の方に建設された都市である。
周辺の街並みもそれに併せるかのようにベットタウン化していった。

当然大企業も本社を第三新東京市に移転させるなど、
郊外はその社員住宅や新しく住居を求める人の新築の家などが建ち並び、
芦ノ湖をぐるりと廻る環状線が自動車・リニア鉄道ともに整備されていった。

遷都されてまだ年しかたっていないにも関わらず、
湖尻と箱根はそれぞれの文化を築き、情報の発生源となっている。

そのショッピングセンターは旧東京でいうところの新宿、渋谷といったところだ。



これで1つのテーマが決まったところで、どういう比較をするかの
番組の骨組みを考えていくことにした。
この2つの街には、前回取り上げたアミューズメントパークがある。
なるべくならそれを避けた構成にして、歴史を生かした公園や、
自然との調和、それは無機質な都心と相反する取り上げ方も出来る。

湖尻には第三新東京市に近いために、デパートが立ち並び、
ここを基準として交通の要となっている。
鉄道もここから放射線状に御殿場や新横須賀、箱根いくことができる。
道路もそれと平行するかのように、拡張され高速道路がある。

ここで買えないものはないというくらい、ものは揃っている。
実際にシンジたちが買ったスーツはこの街で買ったものだ。


それに対して箱根はセカンドインパクト以前は観光地としてなりたってきた。
旧東京方面から芦ノ湖をいうと、箱根を経由することだった。
ここは歴史的な建物が多く、江戸時代の関所や、杉並木などといった
自然との共存共栄をしている街並みである。

セカンドインパクト以前は箱根駅伝のスタート・ゴールとしても有名な場所である。
今はそのコースを変え、箱根から横浜を経由し大宮まで、
246号線、16号線を利用したをスタート・ゴールとする過酷なレースとして
今も大学陸上の長距離選手の憧れのレースとなっている。


シンジは2つの街のそれぞれが文化としての発生源であることをテーマにした。
片方は遷都されるのと同時に出来た文化、
もう片方は長い歴史の中で培われてきた中での共存をしている文化を
映像というものを使い、比較してみようというのが
シンジが作る番組のコンセプトとなった。



シンジはアウトラインが出来たところで、仰け反ってため息をついた。
これでDJに映像を組み合わせた番組が出来ることが見えてきたからだ。

「ねぇ入ってもいい?」

アスカが恐る恐るシンジに聞いた。
シンジは些細なことでは怒らないことは幼なじみなアスカは見抜いているが
普段優しいだけに、怒ったときが恐いと常々思っていた。

「どうしたの?」
「いや、ちょっとクッキーでも作ったからシンジと食べようかなって思って...」

アスカはシンジの機嫌を伺うかのように部屋に入っていた。
アスカが焼いたクッキーと2人分の紅茶を乗せたお盆を机の上に置く。
そして指定席となった自分の椅子に腰掛けると、シンジの端末をのぞき込んだ。
シンジは慌ててその端末の電源を切ろうとする。

「アスカ!見ちゃだめだって!」
「どうして見ちゃいけないのよ!」
「いろいろあって、見て欲しくないんだ。だから。」
「はーん、シンジ、何かやましいこと考えているんでしょぉ」
「そんなことないよ!」
「だったらいいじゃないの。
 KEEP OUTって書いておきながら何を書いていたのか教えてくれたって」

アスカもシンジが何をやっていたのか聞き出そうと必死だ。
何せ昨日の今日である。嫌われてしまったか不安でしょうがないのだ。

シンジも今、アスカにばれるのだけは阻止したいと考えていた。
ちゃんと企画書が書き上がり、絵コンテが出来た時点で言いたいのだ。
中途半端な状態でアスカに言うとひっかき回されるはで大変なことを知っている。

シンジが頑なに見せないようにするので、アスカも応戦するが
最後にシンジが「今は見せられないけど、アスカのためのものだから」と言って
シンジが最後まで自分の信念を貫き通す。
それを聞いたアスカも渋々だが折れることになった。

アスカもシンジもそのことに触れることなく、クッキーを食べていた。

それでもアスカは気にしていたが、珍しくシンジが頑なに言わないので
結局あきらめて「私が作ったクッキーはどう?」と感想を求めていた。

さすがに2人で暮らすようになって、家事も2人で交代でやっている。
『料理だけじゃなくて、お菓子とかも作れないとね』とヒカリに言われてから
トウジの家でヒカリと一緒に練習をしていたらしい。

それをトウジから聞いていたシンジは、アスカらしいと思っていた。
決してシンジの前では「練習した」なんていう素振りは見せないからだ。
アスカが作ったクッキーを食べようとしたらヒカリに怒られて結局食えなかったらしい。
試食したのはヒカリとトウジの妹の2人だけだった。

シンジは「美味しいよ、アスカが作っただから」とアスカを誉めると
何か思い立ったかのように「ちょっと出かけてくるから」と
ジャケットを羽織って、車のキーを持って出かけていった。

その行動の早さに呆気にとられていたアスカは何も言えなかった。
その前のシンジが誉めてくれた言葉を反芻していたからだ。



シンジはアスカ置いていくような感じで家を出てきた。
ガレージのまでくると、携帯からこういうことのスペシャリストに電話をかけた。

ルルルルルルル.....

「もしもし、相田ですけど」
「ケンスケ?シンジだけど、今って空いている?」
「あぁ大丈夫だよ、何か用か?」
「ちょっと相談があってさぁ。ケンスケじゃないと相談できないからさぁ」
「俺でよければ何でも相談に乗るぜ」
「じゃぁ今から行くから」

そう言って携帯の通話をオフにして、車のエンジンをかけた。



シンジの家からケンスケの家まではそんなに離れていない。
歩いていける距離だけど、1度車に慣れると歩くのがめんどくさくなる。
歩いていくのは大学ぐらいでいいという感じになるので、
ちょっと買い物に行くのでも車になってしまう。
まぁ助手席に座って我侭を言う人がいるからという話もあるが。

5分ほどでケンスケの家に着いた。
中学・高校時代はゲームをやるといってはケンスケの家に行っていた。
受験を控えるようになってからは、行く機会も減った。

行くたびに、アスカやレイの写真を見せられていた。
“よくこんなの撮ったなぁ”と関心するぐらい枚数はあった。
ケンスケらしく、撮った日時、アスカ、レイと分けて保存されていた。

ケンスケ曰く
「俺は売れるものも撮るけど、綺麗なものを記録として残しておきたいだけだ。
 惣流や綾波の写真は売れるけど、綺麗だから撮るだけだ」
ということらしい。

ある時、シンジにケンスケが
「これ今までのベストショットだよ」といって1枚の写真をプレゼントした。

中学の修学旅行でアスカがシンジと腕を組んだ写真。
アスカがしてやったりという顔をして、シンジはえっと驚いている写真。
「惣流とシンジの関係を1番判りやすくしている写真だよ」といって
フォトスタンドにいれて、2人分もらった。
「まぁこんなの見せつけられたら、カメラマン魂として最高だよ」と言いながら。


「珍しいじゃないか、シンジが相談だなんて」
「いやさぁ今度映像にチャレンジしようかと思ってさっ。
 こういうのはケンスケが詳しいから、どういうカメラを使えばいいのかと思って」
「まぁここじゃなんだから、入れよ」

ケンスケはそういうと自分の部屋にシンジを迎え入れた。
入った瞬間にシンジの目に飛び込んできたものは理解しがたいものだった。

以前ケンスケの部屋に来たときにはミニタリー関係の書籍、
プラモデル、モデルガンなどといったものが整然と並べられていたのだ。
それがミニタリー関係ではあるが、悲惨な写真といったものに変わっていた。

「ケンスケ、この写真は?」

シンジは今まで思っていたことを口にして聞いてみた。
ケンスケは躊躇することなく、シンジに説明を始めた。

「これか。今まではミニタリー関係の写真とかコレクションしていただろう。
 プラモデルとかモデルガンとかそういうのをコレクションしている時に
 この本と出会ったんだ。

 この本はセカンドインパクトの前に起きていた戦争の写真集なんだ。
 これを撮影していたカメラマンの自伝をたまたま見つけて読んだんだ。
 したら、今まで自分がしてきたことって一体なんだったんだろう?
 と考えさせられちゃってさぁ。

 ミニタリーなんてないほうがいい。でも世の中には存在している。
 否定はしないけど、そういうギャップを考えた時、これを飾って置こうってね」

ケンスケはそう言いながらきっかけになった本をシンジに渡した。
シンジはその本をペラペラとめくりながら、その写真を見ていた。

決して綺麗なものとは言えない。
腕が吹き飛んだ写真、死体を片づける写真。そういう写真はほとんどだった。
ケンスケが好きな戦闘機とかといった写真は1枚もなかった。

「どうしてこれを買ったの?」
「なんて言うのかなぁ、写真を撮ってるうちに
 『一体何のために写真を撮るのか?』っていう疑問が沸いてきて
 悩んでいるときにその写真集に出会ったってわけ。
 したら、そういう“好きなもの”というより“記録”として
 ファインダーに今の情景を納めていきたいなって思ってさぁ」
「.......」
「そういえば、シンジ。さっき言っていたけど、カメラ回すのか?」
「今度の学園祭で番組作ろうって思ってさ。
 それに映像を使ったら面白い構成になるからって思って」
「で、俺のところに来たってことか。シンジらしいや」

ケンスケはシンジに具体的にこういう構成なのかを聞いていた。
実際に使うカメラとして適当なのはどれかを見定めるからだ。

動画が静止画、デジカメかフィルムか、それぞれの効果を説明していた。
そしてその機材はケンスケの家にすべて揃っていた。

「でも時間がないから、1番簡単に撮影出来て、編集も簡単なのがいいな。
 機材も揃えなくてはいけないし」
「じゃぁDVDカメラが1番かもな。これだったら簡単に編集も出来るし。
 それにこれだったら機材は貸してもいいぞ」
「いいのか、ケンスケ?」
「シンジだったら安心出来るさっ。
 それに自分の夢に賭けるんだったら応援してやらないとな」
「助かるよ、そうしてくれると。持つべきものは友達だなぁ」
「俺もこれから、自分の夢に賭けてみようかなって思っていたらから」
「さっき言っていた写真?」
「そう、自分で撮った写真が、人の心を動かせるものだった気がついたから。
 そういう写真を一生のうちに1枚でも撮れれば最高かもしれないしな。
 編集とか手伝ってもいいぞ。惣流と綾波と撮るんだろうしな」
「その時になったらまた頼みにくるよ」
「じゃぁ今からカメラ貸すから、ちょっと待っていてな」

ケンスケはそういうと、別の部屋に消えていった。

シンジはケンスケがそんなことを考えているとか全く思っていなかった。
自分は一体何をやっていきたいのか?ってことを考えていた。
今は番組を作りたいとは思っているけども、
それを仕事としてその道に進むかは考えてもいなかったのだ。

その点、ケンスケは将来の仕事としてカメラマンという道を考えている。
まだ大学に入ったばかりだというのに、将来を考える時期にきているのかもしれない。
そうシンジは感じていた。

ただ今は自分がやりたいことをやるだけ、その中できっと見つかるかもしれない。
今のシンジにはそれが精一杯だった。
ケンスケのように自分の将来を考える余裕は持ち合わせていなかった。
そういう意味ではケンスケの方が数段大人なのかもしれない。

1人になってそんな考えを止めたのはカメラを持ってきたケンスケだった。

「シンジ、これが最新鋭のDVDカメラ」
「いいの?最新鋭のカメラなんか貸しちゃって?」
「いいの、いいの。明日これよりも最新機種が手に入る予定だから。
 それと、DVDデッキが3台、編集機もワンセットにしておくから」
「そんなにいいのか?」
「まぁ昔は撮った作品を編集とかしていたから必要だったけど、
 最近は編集することもなくなったからなぁ。
 それにただ撮ってきたやつを繋ぐだけじゃ面白くないだろ。
 ワイプとかそういう機能も使わないとな。一応スーパーもいれること出来るから」

ケンスケはシンジが車まで編集セットを運んでトランクにいれた。

「もしそれが使いやすくて気に入ってくれたら買い取ってくれてもいいから」
「へっ?」
「最新機種が出るといつもリサイクルセンターに出していたんだけど
 それよりもシンジが本気で映像マスターとしてやっていくなら
 そのぐらいの機種は必要になってくるし、今の所俺は必要ないから。
 それよりもシンジの愛情の入った惣流と綾波の映像も見てみたいしな」

そういうと、シンジを追い出すかのように笑顔で見送った。


一方気がつかない置いてかれたアスカは、
『美味しいよ、アスカが作っただから』といった言葉の呪縛から解かれて
「シンジ、さっき言ったこともう1回言って!」と
叫んだところで、シンジがいなくなったことに気がついた。

「どこいったのよぉ。人を誉めておいて、消えるだなんて。許せないっ!」

1人で怒っているのだが、その怒りをどこに向けていいのか判らないでいた。
アスカ的にはタイミングよく、シンジ的にはあちゃーという感じで
シンジが借りたカメラを片手にして帰ってきた。

「ただいまぁ」
「シンジ、一体どこにいっていたのよぉ!」
「ちょっとケンスケの家にカメラを借りに言っていただけだよ」
「どうして『出かけてくる』って言っていかなかったのぉ!」
「ちゃんと言ったよ。アスカが聞いていなかっただけじゃないの?」
「そんなことないわよぉ!」
「だって『どこに行くの?』って聞かなかったよ?」
「うっ...。今度から1人で出かけるときはメモ残していきなさい!」
「ったくかーさんみたいなこというなよなぁ...」
「シンジィ、何か今言ったかしらぁぁ」
「いえ、何も言っていません」

アスカは自分が聞いていなかったのは事実なだけに、それを隠そうとして必死だった。
隠すためにはどうしてもシンジに強く当たってしまういけない性格が出てしまう。
ヒカリからも“直したほうがいいわよ。碇君に嫌われちゃうから”と言われて
自分でも判っているつもりなのだが、つい出てしまう。

この後、どうしてケンスケの家に行ってのかを詰問されたため、
借りてきた編集セットは1日車のトランクの中に放置された。

NEXT
ver.-1.00 1997-10/26公開
ご意見・感想・誤字情報などは lager@melody.netまで。

LAGERですぅ。(ちょっと現実逃避モードから復活しつつあるらしい)

みなさん、お元気でしたでしょうか?
どうにか続きが書ける時間が確保できました。

ワンダーフェンスティバルでガレージキットを買って
喜んでいたまではよかったのですが、
(もちろん、アスカのガレキです(^^;))
その後、会社の先輩は辞める影響をモロに受けて
『仕事がぁぁぁぁぁ......』という始末。
(すべては30何億も補強した球団が弱いのがいけない)

おかげで代休は約2ヶ月分貯まりました(笑)

2ヶ月あるんだから、10話ぐらい書けるって?
そんなことできるわけないじゃないですかぁ。
もしも2ヶ月も休んだら、机なくなっているかもしれないですからねぇ。

でも、代休は消化しないとねっ。
女性みたいに
『私、明日、有休です』と言ってみたいものだ......

はぁ.......

追伸:大家さんの小説の続きっていつ読めるんでしょう?
   結構楽しみにしていたりするんですがぁ?
   みんなのコメント書くので手一杯なんでしょうか?



 LAGERさんの『UN HOMME ET UNE FEMME』第13話、公開です。
 

 アスカの表情、
 アスカの画を残したい意志から動き出した企画・・
 

 ケンスケの友情にも支えられて、
 シンジの歩みは着実ですね(^^)
 

 あたたかい環境の中で、
 新企画はかなりいけそうです。
 

 もちろんシンジ自身の力も(^^)

 アスカの本当の魅力を
 素晴らしい画にして欲しいですね。

 

 
 さあ、訪問者の皆さん。
 代休長者LAGERさんに感想メールを送りましょう!

 

 

 

 『めぞんEVA』
 書く気は失せてないんです。
 でもでもちっとも進まない (;;)


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