Bパート
The day before of final mission.
○4月24日午前6時20分碇家シンジの部屋
……ジ
…ンジ
シンジ!
「もう少し、寝かせてよ母さん」
「母さんじゃないわよ!」
「あ、アスカ」
「起きなさいよ、シンジ」
「なんで、アスカが起こしに?」
「昔みたいに、あたしが起こせば思い出すかなって思って」
「ふーん」
「思い出した?」
「急には無理だよ」
「そーよね。ま、いいわ。早く起きなさい」
「ちょっと待ってよ」
「いいからいいから早く起きなさいってば」
そういって、布団をめくるアスカ。
目の前には・・・
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーエッチチカン、ヘンタイ」
べちっタタタッガチャッバンッ
アスカにぶたれた頬をさすりながら、
「だって、しょうがないだろ。朝なんだから」
つぶやく、ぼく。
○同日同時刻アスカの視点
「まったく、あたしらしくもない、うかつだったわ。シンジもあの頃と同じ子供じゃないのに気が付かなかった」
○同日同時刻碇家ダイニングキッチン
「まったくシンジもしょうがないわねえぇ。せっかく幼なじみのアスカちゃんが起こしてくれてるのに」
と、ぼやくユイ。
「ふむ」
新聞を読みながらうなずくゲンドウ。
「あなた、新聞読みながら食事するのは、止めて下さい」
「んんっああ」
そう、言いながらも新聞から目を離さないゲンドウ。
○同日午前6時32分碇家ダイニングキッチン
「「いただきます」」
きれいに、シンクロする二人。
「あら、あの頃に戻ったみたい」
「おお、本当だな」
「あの頃って?」
「あなた達の小さい頃よ」
「あの頃は、よくアスカちゃんがシンジを起こしに家に来て、そのまま一緒に朝食を食べて、一緒に保育園に行くのが日課だったな」
「そうでしたね、おじさま」
「で、食事をしながら新聞を読んでユイに怒られるか」
「ほんとに、昔にもどったみたい」
しみじみつぶやく父さん母さん。
「これで、シンジの記憶も戻るだろ」
「そうですわね」
明るい声でしゃべる父さんと母さん。
ぼくは、そんな言葉を聞きながら少し暗い気持ちになっていった。
「・・・シンジ」
アスカは、そんなぼくの様子に気付いたのか声をかけてきた。
「アスカ、ごめんね」
「ううん、シンジは悪くない」
父さんと母さんは、ぼくたちの様子に声を掛けられずにいた。
「シンジはゆっくり思い出せばいいのよ、これからずっと一緒に暮らすんだから」
「そうだね、アスカ」
ぼくは、アスカの優しさに、何か心が動くのを感じた。
○同日午前7時30分綾波家玄関
「おはよう、シンちゃん」
「やあ、おはようシンジ君、こちらは?」
「あの、昨日家に越してきたアスカです」
「越してきたって一緒に住んでるのシンちゃん?」
アスカはその言葉にこめかみがピクリ。
「あ、うん・・・」
「はじめまして。シンジの家に同居することになりました、惣流アスカです」
ぼくの言葉に割り込むように言うアスカ。
「あ、あの、母さんとアスカのママが親友でそれで」
しどろもどろになってしまうぼく。
「ああ、そうなのかい?シンジ君」
「は、はい」
「じゃあ、改めて自己紹介と行こうか」
カヲルさんはレイに目をやる。うなずくレイ。
「はじめまして、綾波レイです。シンちゃんの幼なじみしてます。どうぞよろしく」
幼なじみするってのも変な日本語だなぁ。
「そして、ぼくがレイの兄のカヲルです。どうぞよろしくアスカさん」
と言ってにっこり微笑むカヲルさん。
アスカは、少し顔を赤くしながら
「あ、はいよろしくおねがいします。カヲルさん、レイさん」
と、あいさつをした。
「じゃ、自己紹介も終わったし、がっこにいこっシンちゃん」
「うん、レイ。じゃ、アスカ行こうか」
「うん、シンジ!」
ぼくはなんだか違和感を感じていたんだ。
○同日午前7時40分コンビニ「ソンソン」前
「「おはよう」」
ぼくたちはトウジたちにそう挨拶をした。
「おお、おはようさん、シンジ。・・・うん?」
「おはようございます」
「ああっ、て、転校生?」
「ちょっと、鈴原、そう言う言い方ってアスカに失礼よ」
「そうね、ちょっと失礼よね」
ちょっと、ムッとしたようなアスカ。
「ああっ、わるい、わるい」
「ま、いいわ。改めて自己紹介するわよ。ドイツから来ました、惣流アスカです。今は、シンジの家に同居しています」
「ど、同居やてぇ?」
「ど、同居ぉぉぉ?」
「ど、同居ですってぇ?」
「ど、同居ですか?」
4者4様の反応を示すみんな。
「うん、そうなんだ。アスカは、今、事情があって独りで日本に来てるんだ。で、アスカのママとぼくの母さんが親友なんで僕んちに住む事になったんだ」
「ま、そういうことなのよ」
「ふーん、そういうことだったの。あたしはてっきり・・・」
「てっきりってなによ?」
怪訝そうなアスカ。
「いいんちょは、こう思ったのさ。二人は同棲してるって」
ケンスケが答える。
「ど、同棲ぃ?」
アスカがびっくりした様に言う。
「そ、そんなこと・・・」
「ちがうのかい?」
ケンスケはメガネを光らせそう言う。
「まあ、ケンスケ、そう、いいんちょをいじめるな。わいもそう思ったんや」
間に入り言うトウジ。
「鈴原・・・」
「ははは、実は、おれもそうさ」
「実は、わたしも・・・」
みんな、そんな事考えていたのか・・・。
「そんなわけないじゃないの、まったく」
あきれたようなアスカ。
「そうだよ、みんな」
「シンちゃんがそんな甲斐性あるわけないじゃん」
「レイ・・・」
「綾波さん、厳しい」
「ふふふっ」
「まあ、あたしの事思い出せないようなシンジがそんなことできるわけないでしょ」
「あ、そう、そういえば、アスカと碇君って知り合いなの?」
洞木さんが思い出した様に言う。
「知り合いも知り合い、幼なじみよ!」
「幼なじみ?」
「そ、あんたと同じね」
「ふーん」
「でも、シンジが覚えてないって言うのよねぇ」
「そうなの?シンちゃん」
「うん、どうしても思い出せないんだよね・・・ただ、他人って気はしないんだ、アスカの事」
「ま、あたしの事はゆっくり思い出してくれればいいわよ、なんてったってあたしたちずっと一緒なんだから」
最後の方だけ赤くなりながら言うアスカ。
「アスカ・・・」
ぼくも赤くなりながらつぶやく。
「ちょっと、いい?」
洞木さんが赤くなりながらぼくたちに言う。
「仲がいい所悪いんだけど・・・早くしないと遅刻しちゃうわよ」
「・・・遅刻、が、学校!」
「そや、遅刻はしゃれにならん」
「みんな、学校へ急ぐぞ」
「みんな、学校へ急ぎましょう!」
ケンスケと山岸さんがほぼ同時に言った。
ぼくらは、その声に走り出し学校を目指した。
○同日午前8時13分2年A組
「レイ、マユミ、ちょっと」
「なに、ヒカリ?」
「ヒカリさん、なんですか?」
「ね、アスカの事なんだけど・・・」
「なぁに?」
「なんでしょう?」
「歓迎会、した方がいいと思うんだけど」
「そうね、いいんじゃない」
「そうですね」
「で、歓迎会、どんな風にしようかと思ってるんだけど」
「マユミちゃんと同じように遊園地ってどう?」
「そうですね、あの時は楽しかったし、いいと思いますよ」
「うん、レイの言う通りね。じゃ、遊園地って事でいいわね」
「アスカさんに聞いた方がいいんじゃありません?」
「そうね・・・、アスカ!ちょっと」
シンジの所にいたアスカを呼ぶヒカリ。
「なぁに、ヒカリ」
「あのね、アスカの歓迎会をしようって話になったんだけど」
「え、歓迎会してくれんの?」
「もちろんよ、で、遊園地がいいかなって話になったの」
「遊園地?」
「だめ?」
「ううん、いいわよ、遊園地好きだし」
「じゃ、OKね」
「うん」
「じゃ、あとは、3バカトリオね」
「3バカトリオって?」
「ああ、鈴原と相田君と碇君の3人まとめてそういうのよ」
「シンジも?」
「・・・うん、だって、あの3人いつも一緒にいるし、成績も下から数えた方が早いし・・・」
そう言うのはレイ。
「なっさけないわねぇ、シンジのやつ」
「まあ、そういう事だから、3人を呼びましょ」
○同日ほぼ同時刻2年A組
「明日、アスカの歓迎も兼ねて、みんなで遊園地行かない?」
「遊園地ってNervランド?」
「そうよ」
「なら、チケットは任せてよ」
あそこは父さんの会社の子会社にあたるのでチケットはいくらでも手に入る。
「最初っからあてにしてるわよ。碇君」
さすが、洞木さんはしっかりしてる。
「なんや、遊園地なんて女子供の行く所やないか」
こうやって文句を行ってるトウジも、
「あら、明日はお弁当作ってこようと思ったのに」
洞木さんの「お弁当」の一言に
「ああっ、行きます行きますよって、いいんちょの弁当たべられるのなら、行かせて頂きますよって」
あっさり、従ってしまう。
「アスカの歓迎なら同居してるぼくは当然だね、レイは?」
「もちろん!」
「シンジ、トウジが行くんじゃおれもだな。マユミちゃんもだろ?」
「わたしも、行かせて頂きますわ」
「みんな、あたしの歓迎じゃ当然よね」
ちょっと、威張ってるみたいに手を腰に。
「まぁ、アスカったら」
「ははは」
アスカの行動は、華があると言うかみんなのムードメーカーになりつつあるようだ。
「明日の弁当楽しみやな」
「まったくトウジは、食い気ばっかりだな」
「なんや、ええやないか」
「ま、洞木さんのお弁当は美味しいからね」
「そうだな、いいんちょだけにお弁当作ってもらうのも悪いから、みんなで持ち寄るってどうだい?」
ケンスケもたまには、いいこというなあ
「いいね、みんなそれでいいかい?」
ぼくもそれには賛成する。
「あたし、いいよ」
「わたしも、いいですわ」
「わい、弁当、つくれへんで」
「鈴原には期待してないわよ」
「あたしは?」
アスカが聞いてくる。
「ぼくが作るから、安心していいよ」
「シンジが?」
「ぼく、料理作るの得意なんだ」
「シンちゃん、料理上手なんだよ」
「こりゃ、明日は本当に楽しみや」
もう、口からよだれが出ているトウジ。
「この前買った、軍隊食が役に立つ」
「ケンスケ、レーションそのまま持ってきちゃう気かい?」
むかし、3人でキャンプした時には役に立ったけど。
「そ、そんな、わけないだろ」
図星だったようだ。
「わたしも、この前通販で買った・・・」
マユミちゃんの趣味は通販。
「マユミちゃん、あれはヤバイって」
「そうかしら・・・」
ケンスケとマユミちゃんは意味深な会話をしてる。
「あたし、なにつくろかな?」
レイは、すぐ隣のぼくにつぶやく。
「ぼくも、どうしようかな?そうだ、アスカの好きなものってなに?」
まずは、主賓の意見を聞くのが基本だろう。
「えっとハンバーグ」
「ああ、お弁当の定番だね」
「シンちゃん、ハンバーグつくるの?」
「主賓のアスカが好きだって言うしね」
「じゃあ、あたしは・・・、から揚げかな?」
たぶん、レイはぼくの好きなものを作る気だね。
「いいね、から揚げ」
ぼくは、そんなレイに微笑みを返し言う。
そんなことを、言いながら明日が楽しみになっていくぼくたちだった。
○同日生徒会室
PPPPPPPPPPP
連続的な電子音。
分厚い、暗幕と言えるほどのカーテンを閉じた部屋。
真っ暗な中、蛍光表示の液晶が光る。
闇の中に動く影、その姿は明らかに女性のものだ。
「こちらコードネームエリー、K様、目標R、S、A、他3人。明日(みょうにち)丘の上でパーティです」
「わかった、そのまま間諜を続けよ」
某所、やはり暗闇の中で通信を切る一人の男がいた。
「ふふふ、ぼくが何も知らないと思ったら大間違いだよ」
Bパート了
第参話了
次回予告
どうも、シンジです。
明日は、アスカの歓迎会を遊園地でする事になりました。 次回「煩悩の世界エヴァンゲリオン」
第四話「決戦は、土曜日」
シンジ、お弁当には、ハンバーグね。
わかってるよ、アスカ。
ぼくも、料理の腕の見せ所なので張り切ってます。
ねえ、シンジ。
何、アスカ?
遊園地に観覧車ってある?ジェットコースターは?ヒーローショーは?
観覧車もジェットコースターもあるけど、ヒーローショー?
いいのよ!好きなんだから
た、たしか、ヒーローショーもやってるけど・・・
シンジ、ヒーローショー行こうね
はいはい
[峯マサヤ]さんの連載「煩悩の世界エヴァンゲリオン」第参話Bパート、公開です!
もうすっかりアスカは馴染んでいますね(^^)
彼女の明るさ、屈託のなさがそうさせるのでしょうね。
朝起こしに行ったときのやり取りや、
クラスメートに冷やかされ気味の時の二人には
既に、時間を超えた近しい雰囲気が溢れていました(^^)
次回は遊園地ですか・・・いいですね・・・
私の近所には「生駒山上遊園地」というのが有るんですよ。
文字通り山の上にあって、全長2000mのケーブルカーで上がって行くんですよ。
直線で上がるものだから、下を見ると怖い怖い(^^;
これが一番のライドではないか? とさえ思えるほどです。(笑)
山の上のあるものですから、
ごく普通の「飛行機塔」でも素晴らしい展望が望めてとても楽しいところですよ。
ループコースターも山の高さがプラスされて大迫力!
特に夜景が素晴らしい!! のデートに最適なところです。
皆さんも一度遊びにいって下さいね!
・・・・・私は遊園地の回し者か・・・・(^^;
脱線してしまいました・・・(^^;;;;;
さあ、訪問者の皆さん!
トリプルデート&シンジとアスカ・レイの三角関係で
波乱のデートを書く峯さんに応援のメールを!!