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 シンジは微睡みの中、目を覚ました。
 隣で寝ているアスカに目をやると、のびを一回した。
 瞬間、アスカが目を覚ます。シンジは、やさしく髪の毛をなでると、おでこ
にキスをする。

「おはよう、アスカ」
「ん・・・おはよう、シンジ」

 そして、二人は自然にキスを交わした。


私の中の碇シンジ

最終話

 その日の朝。  レイが居なくなっていた。  ミサトは、飲み過ぎて床に伏している。  食台には、 「碇君へ 私は、あなたが好きです。あなたは、私が好きですか? 綾波レイ」  とだけ書かれた手紙が置いてあった。  シンジはそれを持ったまま、魂が抜けたように固まった。  やはり、見られていた。  素早く記憶をたどっていく。アスカと愛し合っているその刹那、白い光を放 ている女の人が扉の向こうに見えたことを思い出し、愕然と膝を床につけた。 「どうしたの?」  アスカが背後から話しかけてきた。 「アスカ、昨日の事、綾波に見られていた」 「ファーストに?」 「この手紙・・・」  シンジは、アスカにその手紙を渡すと、 「綾波は・・・」  と、呟いてやめた。アスカの顔が一瞬にして曇ったからだ。  シンジは、アスカからミサトへ目線を落とすと、起こすためにゆさぶった。 「うん・・・シンちゃん?なに?」  情けない声とともに目を覚ますミサト。 「綾波が居ないんです。ミサトさん、知りませんか?」 「レイ?知らないわ・・・私、飲み過ぎてそのまま寝ちゃったから・・・」 「そうですか・・・」  シンジはアスカとミサトを見回すと、 「僕、探してきます」  そう言って、玄関の方に走り出した。  シンジを行かせたらダメ。  今行かせたらもう帰ってこないかも知れない。  アスカは、 「待ちなさいよ!シンジ」  そう叫ぶと、シンジを追いおかけて玄関へ走っていった。 「待ちなさいっていってんの!」  行っちゃダメ。 「シンジ!足も悪いんだから・・・」  だから、行かないで・・・ 「もう、待ちなさいって!」  行かないで!  アスカは、シンジの腕をつかんで引き寄せた。  そのまま、倒れ込んでしまう。  見つめ合う二人、シンジが目をそらす。 「どうして?シンジはどうしてそんなにファーストのことが気になるの?」  目をそらしたシンジを無理矢理むき直させると、アスカは涙目になりながら シンジに聞いた。 「綾波は・・・綾波は・・・」 「なによ?」 「なんか、ほおっておけないんだ・・・なんて言うか、アスカとは違う何かを 感じるんだ・・・兄妹みたいな、そんな、何かを感じるんだ」  シンジの顔は本気だった。  その顔を見て諦めたのか、アスカは、 「わかったわ。でも、私も一緒に付いていくからね?」  と言ってしまった。 「うん・・・お願い、アスカも一緒に探してくれると助かるよ・・」  何を言っているんだろう。  アタシは冷静に自分の言った言葉を理解していた。  ファーストなんてどうでもいい。シンジさえ居てくれればそれでいい。  でも、シンジはファーストが居ないと駄目なんだ。  シンジにとって、ファーストってなんなのかしら・・・  兄妹って言ってた。妹みたいなものなのかな?  妹なら、気になってもしょうがないかもしれない。  でも、なんだか・・・そんなのって・・・イヤ。  やきもち?  そうじゃない。  うらやましい?  そうかもしれない。  シンジとは、いくら愛し合っても、躯を重ねても身内の関係ではない。  所詮は他人。でも・・・  シンジに手をかしながら山を下りていくアスカは、頭の中でそんな葛藤を繰 り広げていた。  そんなアスカの顔を珍妙奇天烈な物を見るような目でシンジは見つめた。  アスカは何を考えているんだろう。  僕にとって、アスカってどういう存在なんだろうか。  あれだけ愛し合っておいて、いまさら他人というのはおかしい気がする。  恋人?  そんな気取ったものなのだろうか?  わからない・・・しかし、僕にとって一番大事な存在だと思う。  ずっと側にいたい。一緒に生きていきたい。  結婚する人?許嫁?人生のパートナー?赤い糸でつながった男と女?  それが、僕にとってのアスカのカタチ。  それじゃ、綾波は?  兄妹?  そんな簡単な言葉ですませたら綾波に悪い気がする。  でも、アスカとは違って、結婚するとか、一緒に生きていくとか、そんな大 事な人ではなく、親近感みたいなものを感じる。  身内にいる同い年の妹、やはり兄妹と言ったほうが自然なのかも知れない。  僕は、綾波を探してどうするのだろう?  アスカと綾波とミサトさんと4人で一緒に暮らす?  しかし、それは長続きしないだろう。  どこかで歪みが生まれて崩れていってしまうだろう。  そんな生活は、送りたくない・・・  はたして、僕は生き返るべきであったのだろうか・・・  わからない・・・わからない・・・  生き返ってしまった以上。課せられる罰はあえて受けることにしよう。  もしもそれが、間違っていたとしても・・・・  二人の後ろから、重い頭を抱えてミサトがゆっくりと付いてきている。  よかった、アスカもこれで元気になれるわね・・・  シンちゃんもちゃんと生きていけそうだわ。  さてと・・・私もハッキリさせないと、駄目ね・・・  ミサトは、目の前の二人を羨ましく思った。  愛し合っている二人は、こんなに輝いて見えるのだ。  この年になって、こんな気持ちになったことはなかった。  大学の頃は、生きるのに精一杯でちゃんと愛し合っていなかったんだと思う。  息抜きだったのかもしれない。  生きるのに精一杯で、疲れたときの息抜き。  そこには、愛はなかったのね・・・偽りだったのね。  そう思うと、今まで生きてきたことが馬鹿らしくなってくる。  ミサトは、目の前の二人にはそんな人生を送らせたくはないと心に誓うのだ った。  レイは、程なく見つかった。  あっけないほど簡単に見つかってしまったのだ。 「あ・・・碇君・・・・」  レイ本人、諦めたのかもしれない。  私は、碇君の・・・  それ以上の言葉は、レイの頭の中に浮かんでこなかった。  いや、考えれば簡単に浮かぶ言葉であった。  しかし、考えたくなかった。  碇君の・・・  レイは、ぐっと下唇をかんで目をつぶった。  そして・・・  自然とシンジに身体を寄せていた。  アスカが何を言おうが、レイはシンジが離すまでそうしていた。  それから、何年かが過ぎた・・・  ある場所、ある教会。  その日、アスカとシンジは、結婚式を挙げた。  参列者は、ミサトを筆頭に、ネルフの職員。  トウジや、ケンスケ。ヒカリも来ている。  しかし、シンジ達にとって一番嬉しかったのは、一番奥の目立たないところ に、ゲンドウがいつものポーズで座っている事であった。  来てくれるとは思わなかったのだ。  隣には、コウゾウも来てくれていた。  そして・・・  シンジは、一番前に陣取っているレイに目をうつした。  ハンカチを顔に当て、肩を震わせている。  泣いているのか?  ズキンと心が痛む思いがした。  しかし、次の瞬間ハンカチをどけて、ペロッと舌を出すレイ。  嘘泣きだったのだ。  半ば呆れながら、シンジは隣にいるアスカに目線を向けた。  一瞬、目と目があって赤くなる。 「なに緊張してんのよ?」  アスカが小声で言う。 「アスカが、綺麗だから・・・」 「なにいってんのよ、バカ・・・」  神父はそんな二人の会話を気にもせずに黙々と聖書を読んでいる。 「はぁ・・・なんか疲れてきちゃった・・・」  アスカはそう呟くと、つつつっと神父に寄っていくと、何かを耳打ちした。 「わかりました、誓いのキスを・・・」  いきなりの進展に教会がワッと湧く。  アスカがシンジにキスをした。  とても、とても、長いキス。  そして、みんなに祝福されて、二人はバージンロードを歩みはじめるのだっ た。
糸冬 1997-07/16 公開 不明な点、苦情などのお問い合わせはこちらまで!


作者とチルドレン達による後書き OHCHAN:ようやく、終わりました。 シンジ:あれ?いつの間にか終わってる・・・ アスカ:なんか、無理矢理って感じ・・・ OHCHAN:ギクギク!!それを言わないで・・・でも、これ以上書けないんです。 シンジ:設定が無いんですね? OHCHAN:一応、設定はこのとおりなんだけど、短くなったので、見た目は尻切     れトンボかも知れません。 アスカ:見た目もなにも尻切れじゃないの? OHCHAN:ううう・・・次の作品とか、自分のHPの小説とか書きたいからこの     辺で勘弁してくれない? アスカ:ま、苦情のメールが来ても文句言えないわね・・・ シンジ:そうだね・・・ レ イ:結局どうなったのかがよくわからないわ・・・ OHCHAN:まぁ、そこはご想像にお任せしますって感じですか? シンジ:一番卑怯な終わり方ですよね・・・ アスカ:だから駄目なのよ・・・ OHCHAN:うううう・・・ごめんなさい・・・ レ イ:でもこれで、私と碇君の物語が気兼ねなく書けますね・・・(ニコ) OHCHAN:はい、書きますよ。レイちゃん・・・(ニコ) アスカ:はぁ・・・なにやっているんだか・・・まったく。 シンジ:帰ろっか?アスカ。 アスカ:そうね・・・影男さんお願いします。  素早く影男が現れると、亜空間を作りだした。 シンジ:影男さんも大変ですね? 影 男:もう慣れましたから・・・  亜空間に消えていく二人。  OHCHANとレイはニコニコと見つめ合ったまま微笑み続けていた。
 OHCHANさんの『私の中の碇シンジ』最終話、公開です。    急転直下のエンディング(^^;  アスカとシンジの”再会”がテーマのこの作品。  それが過ぎれば「全てはエピローグ」と言うことでしょうね。    アスカがいるにも係わらずにシンジに抱きつき続けたレイ。  不思議な絆を感じていたシンジ。  躰の繋がりを得たアスカ。  波乱の展開はあえて削って、  一気にラストシーン・・・  嘘泣きをしていたレイにホッとした思いです。    さあ、訪問者の皆さん。  1つの世界を書き上げたOHCHANさんに貴方の感想を送って下さい!


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