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月の明かりに魅せられて

 夜・・・空には、一面に星が瞬いている。  そして、ポッカリと浮かんだ月が最高の光量を放っている。  その割に、見える星の数が多いのは、ようやく空気が浄化されているからで あろうか。  世紀末から20年の月日が流れようとしていた。  そう、あの大災害からもう20年も経つのだ。  1999年、地球に大質量の隕石が落ちてきたのだ。  国連軍が隕石をなんとか小さくはしたものの、その代償はただならないもの であった。  ミサトは、コンフォートマンションの最上階のベランダから、その大災害の 傷跡を見ながら、ぼんやりと遠くの街を見ていた。 「このマンションに来てからもう20年も経つのね・・・」  ミサトは、ここに来た当時を思い出していた。  その頃、遠くに見えるネオンの灯り以外何もない空間に彼女は孤独感を抱い ていた。  もともと、こういう環境に慣れていないせいもあったのか、彼女はある少年 を引き取ることにした。  ”シンジ”これが彼の名前である。  大災害の中、孤児になってしまったのだ。  彼には名字はなかった。と言っても、名前すらわからない状態だった。  ”シンジ”はミサトが彼につけた名前であった。  戸籍上、ミサトの養子となっている。  結婚歴もないミサトにとって、子育ては大変な苦労を伴った。  一度は倒れたこともあったほどだ。  シンジが小学校に入学したときのことである。  当時、幼稚園まで復旧されていなかった日本は、小学校からのスタートであ ったために、小学校まではミサトの家で面倒を見なくてはならなかった。  丁度、仕事もなく災害保険金がおりたのでお金には不自由しなかったが、子 供の面倒を見ることは本人もこんなに大変だとは思わなかった。 「シンちゃーん!ご飯ですよ」 「ハーイ、今日は何?」 「シンちゃんの好きな、卵焼きと、納豆ご飯です!」 「わーい!!」  喜んでご飯を食べてくれるシンジを微笑みながら見ているミサトは一瞬立ち くらみを覚えた。  それをシンジに気付かれまいと、グッとこらえ、椅子に座ると、静かに朝食 を食べはじめた。 「いってきまーっす!」  元気よく家を飛び出していくシンジを笑顔で見送ると、ミサトは、玄関前で そのままスローモーションになったかのように崩れ落ちた。  その後、シンジがミサトに会うことが出来たのは、それから3日が過ぎてい た。真っ白い整備されたばっかりの新しい病院に収容されたミサトは、21歳 の”お姉さん”には見えなかった。  何かを経験するというのは、こう言うことなんだろうとシンジはその時、子 供ながらに思った。  そして、シンジの一人暮らしがはじまった。  まずは、料理である。  卵焼きは無理としても、目玉焼きぐらいは作れるようになりたかった。  しかし、最初の頃は、一番簡単そうに見えるご飯さえもうまく行かずに、時 にはぼや騒ぎも起こしてしまうことがあるくらい下手だった。  次に、掃除、洗濯と家事全般にわたって順序よく覚えていくことにした。  元々ミサトの手伝いをしていたせいか、1週間もしないうちにほとんどの事 を一人で出来るようになったのだ。  ミサトが倒れてから2週間が過ぎた頃、シンジはミサトの病室に看病しに行 った。 「シンちゃん、ごめんなさい・・・・」  それが、ミサトの第一声であった。 「ミサトさん、体の具合は大丈夫?」  その言葉を聞いて、ミサトは涙を流した。  シンジは、泣くミサトをジッと見つめて、 「好きです。ミサトさん」  と呟いた。  そこには、小学生ではない、大人の顔があった。  ミサトは、流していた涙を何とか拭うと、 「私もよ・・・」  と答えて、笑顔をシンジに向けた。  この子をあずかってよかった。  ミサトは、心の底からそう思った。  シンジが居なかったら、人を好きになるなんて無かったであろう。  大災害がおきて、心がすさんでいき、自殺する人が多いと聞いた事があるが、 ミサトはシンジと一緒にいて本当によかったと思った。  その日も、こんな満月だったなぁとミサトは思いだし笑みをこぼした。  そして、街も復旧され中学生になりたくましくなったシンジを見て、ミサト はさらに輪をかけて好きになっていった。そしてその思いは愛へと変わってい ったのだ。  シンジが中学校2年の夏。  ミサトはシンジを海に連れて行った。 「うわぁ!!ミサトさん。これが海なんですね?広いなぁ・・・」  はじめて海を見たシンジは素直に感動と喜びを体で表現した。  ミサトは、シンジが喜ぶ姿が愛しくなり、つい抱きついてしまった。  シンジは一瞬何が起こったのかわからずに、素っ頓狂な顔をすると、ミサト を放した。 「なんですか・・・ミサトさん、急に抱きついたりして」  頬を朱色に染めて、うつむくシンジ。 「ごめんなさい・・でも、愛しているのよ。シンジ君」  シンジは、ミサトからシンジ君と言われるのは何年ぶりだろうと思った。  こう言うときのミサトは冗談でものを言っている状態でないことは一目瞭然 わかっている。 「実は、僕も愛しています・・ミサトさん」  シンジも好きという感情から愛しているという感情へその気持ちをうつして いたのだ。  我慢しきれずに、ミサトを夜のオカズにしたこともあった。  ミサトはその事をしってかしらいでか、ほとんど裸の状態で家の中をうろう ろ歩き回ることが多いのだ。  ミサトのその豊満な胸、程良くくびれた腰、そして、少し大きめのお尻、ど れをとっても中学生のシンジにとってはたまらないものがあった。  そして、セキは外された。  シンジは、ミサトの胸に飛び込んで行った。  ミサトは、シンジをやさしく受けとめると、そのままキスをした。  ”大人のキス”まさにその名にふさわしいキスであった。  その夜、シンジとミサトは旅館で静かに抱き合った。 「ミサトさん。ここにいたんですか?」  後ろから急に呼ばれて、現実に戻ったミサトは振り返った。  そこには、大人の顔になったシンジが立っていた。  時は夜中。  ネオンの灯りを見ていたミサトは、時間も忘れて昔のことを思い出していた のだ。  眠らない街。まさにその名にふさわしく同じ風景をミサトに見せ続けている。 「景色を見ていたのかい?」  シンジはそう言うと、ベランダから身を乗り出して、遠くを見た。  チカチカとネオンが光り輝いている。 「えぇ・・・昔のことを思い出していたの」 「そうか・・・」  一瞬の沈黙。 「ミサトさん、僕と結婚してくれませんか?」  そして、告白。  シンジはそう言うと、ポケットからあるものを取り出した。  それは月の光でキラリと光った。 「これ・・指輪?」 「受け取ってもらえますか?」  ミサトは無言で頷くと、見つめ合った。  ミサトは目をつむり、シンジにキスをする。 「ありがとう・・・」  離れぎわにミサトは呟いた。  二人は、月の明かりの下、絆を深めたのだった。
糸冬 1997-08/01 公開 不明な点、苦情などのお問い合わせはこちらまで!


作者による後書き  どうも、OHCHANです。  いかがだったでしょうか?私もミサトとシンジがハッピーエンドというのは 久しぶりでした。考えてみれば、エヴァロボの第1話以来ですかね?  大人の女性と少しはやく大人になったシンジ、この二人のバージンロードは どういう道なのでしょうか。  続きを書くつもりはありませんが、ご想像にお任せします。  読みたいなと思う人はメールでも下さい。  評判があれば書きたいと思います。  それでは今回はこの辺で・・・
 OHCHANさんの『月の明かりに魅せられて』、公開です。  めぞん初のシンジxミサト物ですね。  孤独感を紛らわせる意で引き取った孤児シンジ。  その存在に家族以上の意味を感じるミサト。  互いを思いやる気持ちが次第に。  優しい愛ですね(^^)  さあ、訪問者の皆さん。  また一つの形の話を描いたOHCHANさんに感想メールを送りましょう。


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