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Time Sinner

第四話 追跡Aパート

 朝、全てが目覚め始める時。
 アスカは、シンジより先に目を覚ました。
 隣で寝ているシンジの寝顔を見て、安心したのか、アスカはもう一度眠ろう
と思った。しかし、シンジが目を覚ましそうだったので、もう一度寝ることを
諦める。

 寝ぼけたままのシンジの目。
 寝癖がついているシンジの髪の毛。
 今にも涎が垂れそうなシンジの口。

 アスカは、シンジの顔をゆっくりと観察した。
 突然、電子音が鳴り響き、シンジが眠りの世界からよみがえる。

「おはようシンジ」

 アスカはやさしくそう言うと、シンジのおでこにキスをした。
 その日の二人の朝はこうやって始まった。

 いつもはドタバタと始まる朝なのだが、珍しくゆっくりとした時間が流れて
いる。アスカは、起きあがると自分の部屋に戻って着替え始める。シンジは、
キッチンに行って朝御飯を作り始めた。
 全てがゆっくりと流れていた。

「おっはよう!シンちゃん」

 ミサトが珍しく朝からハイテンションで起きてきた。
 アスカがここに来てから初めての出来事であった。
 シンジもびっくりしている。

「なに?シンちゃん。私の顔に何かついてる?」
「いいえ、何も」
「おはようミサト。なんかあったの?」
「んふふ…イイモノ見ちゃったから元気なのよん」
「イイモノって?」

 妙にハモルアスカとシンジ。

「もちろん!二人が一緒の布団で寝ているところ!!」

 辺りに、ズギャーンだのガビーンだのと言った音が響きわたる。

「な、何もしてないわよ」
「そうですよ。あの、ミサトさんが期待しているようなことは絶対していませ
んから」

 一瞬にして赤くなって弁解する二人。
 ミサトはそんな二人を見て笑みをこぼすと、

「あら、私が何を期待しているって言うの?」

 と、とぼけてみせる。
 赤い顔を更に赤くさせて慌てて言い訳をしている。
 どうやら、いつもの朝の風景に戻ったようだ。
 そんな平和な空気の中、アスカはあることをひらめいた。

 ミサトの仕事場に行ってみよう。そうすれば何かがわかるかもしれない。

 クククっと笑うとアスカはシンジと朝食の準備に取りかかった。
 朝食は、目玉焼きとパンとサラダという一般的なメニューであった。
 それを、何分かで食べ終わった3人は、シンジとアスカは学校へ、ミサトは
仕事場へと足を運ぶのだった。
 しかし…

「ちょっと、シンジ!」
「なに?アスカ」
「あんた、ミサトの仕事場って見たことある?」
「無いけど」
「気にならない?」
「気にならなくは無いけど…」

 アスカは微かに笑みを浮かべた。
 チャンスだ。

「じゃ、今日は学校さぼってミサトを尾行しましょ?」
「え!?尾行?まずいよ、アスカそれに学校休むなんて」
「大丈夫よ、これ見て」
「なんだよこれ、アスカがいつも着けてる髪留めじゃないか」
「これはね、こうやって使うのよ!」

 そう言ってアスカはシンジに無理矢理その髪留めを装着させる。
 シンジは少し抵抗したが、結局装着してしまう。
 次の瞬間、シンジの視線は上へ上へとのびていく。どんどん目線が高くなっ
てアスカは小さくなっていく。
 そして、止まった。

「へぇ、シンジって大人になったら格好良くなるんだ」

 アスカは感嘆の声を上げた。
 そこには、中学生のシンジではなく、大人のシンジが立っていた。
 信じられない顔をして自分の体を見ているシンジ。

「ほら、ボケッとしてないで髪留めのボタンを押して、このままじゃ服が破れ
ちゃうでしょ?」
「うん…」
「ちゃんと男用なんだから」

 そう言うと、アスカは髪留めのボタンを押した。すると今度は、見る見るア
スカが大きくなっていった。
 そして素早く洋服を着替える。
 その様子を見て、シンジも着替えた。

「さぁ!行くわよ」

 大人になった二人は、学校に休学の電話をすると、ミサトの後を追った。
 難なくミサトは見つかった。ガレージで車に乗り込もうとしている。
 アスカは、素早く発信器をミサトの車に飛ばすと、満足げに立ち上がった。
 ミサトの車はその二人に気付くことなく通り過ぎていく。

「さぁ、取り敢えずはこれでよしっと」
「何を飛ばしたの?」
「発信器よ、これでミサトがどこへ行くかがわかるわ」

 アスカは、ポケーッと突っ立っているシンジに向かってそう言うと、ミサト
の車が消えた方向に歩き始めた。
 その姿を見て、シンジはほっとした。

 元気になったんだ。

 そして、笑みをこぼす。
 昨日のアスカを見ていたら、こっちが参ってしまうぐらいブルーになってい
たのに、朝になって元気になったアスカを見ていると、シンジも元気になった
ような気がしてくる。
 シンジはアスカの後を少し嬉しそうに走った。
 アスカはスコープを取り出すと、ミサトの車の行方を追った。
 ミサトの車は、42号線を西に向かっていた。
 アスカは近くにあったバイクにまたがると、エンジンをかけた。

「アスカ、そのバイクは?」
「さぁ、知らないけど鍵がついたまま置いてあるから、借りていきましょ?」
「そんな…悪いよ」
「いいのよ、ほらシンジ早く乗って!」
「わかったよ、もう」

 ヒラリとバイクにまたがるシンジ。
 自分が身軽になったことに気がついてビックリする。しかし、そんな暇もな
く、アスカはスロットルを回した。
 勢いよくバイクは発進する。坂道を半ば飛ぶように降りていく二人。
 カーブを地面すれすれで曲がって42号線に出る。そして西へ西へと進路を
とっていく、熟練した手つきでバイクを操るアスカを見てシンジはかっこいい
なと思った。しかし、運転は荒い。

「ちょっと、アスカ。スピード出しすぎじゃないの?」
「だって、ミサトに追いつけないでしょ?危ないからしっかりつかまってなさ
いよ!」
「わかったよ…」

 そう言ってシンジはアスカの体に自分の体を密着させる。

「キャァ!ちょっとシンジ。どこつかんでるのよ!?」
「え?どこって?」

 確かにしっかりとではあった。
 腕をクロスさせて、アスカのそのふくよかな胸を握っているのだ。

「もっと下の方をつかみなさいよね?」
「じゃ、この辺を…」

 シンジはそうやってアスカとじゃれあうのが少し楽しかった。
 ちょっと調子に乗ってみようと思ったのだ。
 そう、シンジの手が、下腹部に伸びていく。

「ああ!今度は下過ぎ!!もっと上よ」
「じゃぁ…」
「ちょっとシンジ、アンタわざとやってない?」

 図星であったが、シンジは一生懸命平静を装った。

「そんなことあるわけないだろ?この辺でいい?」

 なるべくドモらないように気をつけて頭の中で考えに考えた台詞を言う。
 お腹のあたりに腕を回すシンジ。

「いいわよ、もう。しっかりつかまってなさいよ」
「ハイ…」

 そうやって端から見ると砂をはきたくなるような雰囲気の中、バイクは芦ノ
湖を横目に西へとのびる道路を今にも飛ばんばかりのスピードで走っている。
一つ間違えば大事故につながりかねない。
 シンジはアスカにしがみついた。目もつぶっている。

「見えた!」

 ようやくミサトの車が見えた。青色の車。そして発信器も確認できる。
 ミサトの車は、そのままのスピードで壁に向かっていく。
 危うくぶつかる瞬間。一瞬だけ壁が開いてミサトの車はその中に姿を消して
しまった。

「しまった!?」

 そう思ったときはもう遅かった。
 アスカは急制動をかけて壁のところで停車させようとする。
 しかし、あえなく横滑りをしてしまい、壁に激突しそうになる。

「アスカァ!」

 その瞬間、シンジはアスカを抱いて後ろに飛んだ。
 しかし、慣性の法則は無視できない。着地はしたが、そのままの格好で壁の
方にバイクと一緒に滑っていく。
 とにかくシンジはアスカを守ることが精一杯であった。
 壁に背を向けるような格好になると、シンジは壁に激突した。
 背中に激痛が走る。息ができない。頭にも痛みを感じる。
 そして、シンジに暗闇が訪れる。


つづく 1997-09/16 公開 不明な点、苦情などのお問い合わせはこちらまで!


作者によるあとがき  えー、毎度おなじみOHCHANでございます。  第四話をお送りいたします。  ちょっと長くなりそうだったので、切りました。  設定的には終わらないといけない長さなんですけどね。ちょっと色んな事を 入れたら長くなっちゃって…いやはや…また続きが気になる終わり方ですいま せん。なんか読んでいて腹が立ってきたらメールでもください。  返事は必ずお書きしますので…それでは…
 OHCHANさんの『Time Sinner』第四話、Aパート、公開です。  バイクを盗んじゃいかーん!  盗まれた方はな、盗まれた方はな・・・ (;;)  一生懸命バイトして、  昼飯代も切りつめて、  放課後の買い食いも控えて・・・  やっと貯めたお金で買った愛車。  盗まれたときの悔しさ・・・・    ・    ・    ・    ・    ・    作り話です(爆)(^^;  イチャイチャしたタンデム。  こいつら〜〜。事故れ!   なんて考えていたら・・・  本当に事故っちゃった(^^;  ごめんね・・  さあ、訪問者の皆さん。  貴方の感想を文章にして見ませんか!


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