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Graduation

 季節は巡る。  気が付いたら、そこにあるような、そんな感じで巡っていく。 「もうすぐ春か・・」  少し溶けだした雪山を見て、シンジは呟いた。  今年で卒業。  高校生活も、後わずかで終わるのだ。  大学も自己採点では合格していると思う。  もう、勉強をしようと言う気もおきてこない。  後は、卒業式を待つだけとなって、僕はある一人の女性に恋をした。  その女性は、喫茶店でアルバイトをしている。  学校は、卒業式まで休みのようなものであったためか、僕はその喫茶店に行 くことが多くなった。  ただ座って、コーヒーを注文して飲んで、少しくつろいでから帰る。  それを繰り返すだけなのだが、僕は彼女の側にいれることが嬉しかった。  今まで、こんなに女性を好きになった事があったであろうか。  僕は、自分の高校生活を振り返ってみることにした。  一年生の最初の頃は、義務教育から開放されて、少しオープンになった学校 のシステムに戸惑いを感じていた。  あの頃は、それだけだった。  それから、友達もできて夏休みなんかキャンプに行ったり、海に泳ぎに行っ たり、もちろん、夏だけでなく冬休みになると、スキーに行ったりもした。  一年の頃は、ほとんど気の合う仲間で構成されたグループで遊んでいたため に、その中に女の子がいても、なにも思わなかったし、その方が楽しかったの かも知れない。  そして、二年生。  クラス替えもあったせいか、気の合う仲間がバラバラになってしまった。  ただ、彼女は一緒のクラスだった。  ひょっとしたら、僕はこの時から彼女に恋をしていたのかもしれない。  そして、三年生。  この高校は進学率が高かったせいか、気が付いたら、受験戦争という波がお しよせて、僕はそれにもまれるように勉強に打ち込んだ。  彼女は、クラスでも、学年でも、トップをあらそう成績で、その負けん気の 強さから、先生達からも信頼され、生徒会長もやっていた。  その彼女が、副会長に僕を指名したときはビックリした。 「頼みやすかったのよ」  その一言であった。  しかし、僕は嬉しかった。  そして、僕は成績も何とか彼女に追いつき、同じ大学を受けることになった。  結果は前に話したとおり、ほぼ確実に合格だ。  そして、卒業を待つだけになった僕は、何となく外をぶらぶら歩いてみたく なった。  その時、彼女を見つけたのだ。  喫茶店の窓越しに見えたその姿はいつもの彼女とは比べ物にならないほど輝 いて見えた。  その長い髪も、すらりとのびた脚も。  その時ほど彼女を異性として見たときは無かった。  そして、今。  ステンレスのトレーを巧みに操って水や注文されたものを運んでいる彼女を 見て、僕は決心した。 「すいません」  横を通る瞬間、少し遠慮目に話しかけてみた。 「はい、なに?シンジ」 「今日は、何時までなの?」 「そうね、5時には終わると思うけど・・・」 「じゃ、その後でいいんだけど、丘の上公園に来てくれないか?」 「いいわよ」 「それじゃ・・・」  そう言って、僕は注文票を持って立ち上がった。  カランカランとドアを鳴らして去っていく僕。  外から彼女を見ると、こっちを見て微笑んでいた。  夕方、僕は少しはやめに丘の上公園に行った。  高台にあるその公園は、街を一望できる展望所もあり、そこからの風景や、 夜景は絶品でデートスポットにもよく使われる。  今日は平日のためか、人っ子一人、野良猫の一匹もいない。  もうすぐ沈もうとしている太陽を眩しがることなく僕は見つめていた。 「待った?」  程なく、彼女は現れた。 「いや、全然。僕もさっき来たところだから」  太陽がようやく沈みはじめ、真っ赤になって僕達を照らしている。  彼女もわかっているのか、僕達はただ黙って街の風景を眺めていた。  ゆっくりとした空気が二人の間を通り過ぎていった。 「好きだ・・・」  ついに、僕は告白した。  彼女は、少し僕に体重を預けると、 「私もよ・・・」  と、答えてくれた。  飛び上がるほど嬉しかった。  そして、長く延びる僕達の影が次第に密着する。  フワッと風が吹いた。彼女の髪の毛が僕の顔を遊ぶようになでた。  そして・・・太陽が沈んだ後、僕達はお互いを求めあった。  丘の上公園は、街灯もなくこんな事をするには最適の場所かもしれない。  日によってはこんな事を公園のあちらこちらで見かけることもある。  さいわい今日は、僕達だけのようだ。 「はずかしい・・・」 「辺りは真っ暗だよ?」 「でも・・・月の明かりが」  確かに月が満月で、最高の光量を放っている。 「何も見えないと出来ないよ」  そう言って、僕は彼女の上着に手をかける。  彼女は少し抵抗する。僕はいやいやするように僕の手をどけようとする彼女 の手をやさしく握り、キスをする。  そのままの格好で、彼女の腕を頭の上の方でクロスさせる。 「全てが見たいんだ・・・」  甘えたような声で彼女に聞く。  彼女は無言で頷いてくれた。  愛し合った二人の間を風が吹き抜けた。  火照った身体を癒やすように二人はベンチに座って見つめ合っていた。  どちらからともなく、目をつぶり、唇を重ねる。  離れ際に唾液の橋が出来上がる。 「こんな僕でいいの?」 「何言ってるのよ、ここまでしておいて、弱気になったの?」 「いや・・・」 「いいに決まってるじゃない・・・」  彼女が僕に体重を預けてくる。  僕の肩の所に彼女の頭がある格好になる。 「愛してるよ、アスカ・・・」  僕は今日、何度目かのキスを彼女に贈った。
糸冬 1997-07/ 公開 不明な点、苦情などのお問い合わせはこちらまで!


作者による後書き  どうも!OHCHANです。  今回は、なんか夏休みの旅行とかでチルドレンの3人はお休みなんですが、 いやはや、駄文もいいところですね・・・でも、これ以上直しようがないとい うか、直せない(映画を見てしまったので)・・・言い訳かな?  そう言うわけで、訳の分からないラブラブな小説をお送りします。  でわ!
 OHCHANさんの『Graduation』、公開です。    高校3年、卒業間近の二人の物語ですね。  新しい季節、春迎えるにあたっての決意。  新しい生活を始める為のけじめ。    必死の思いでぶつかった結果は・・・・  う、羨ましすぎ(^^;  さあ、訪問者の皆さん。  めぞんでの初短編を発表したOHCHANさんに感想のメールを!


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