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Fairy Tale -Never Ending Story-







「ねぇお母さん、お話して」

わたしが娘を寝かしつけようとすると、娘はそういいました。

わたしは娘がもっと小さかったころから寝る前にいつもお話をしてあげてました。

といっても、わたしもそんなにたくさんのお話をしってるわけではありません。

教えてくれる人もいませんでしたし。

だから最近は、こっそり図書館で絵本を読んだりして、勉強してるんですけど。

今回はちょうど、新しいお話もなかったので、わたしは娘に訊ねました。

「お話かぁ……どのお話がいいの?」

「えっとね……ようせいのお話!」

「また?」

わたしは思わず訊ねてしまいました。

まず、妖精のお話というのは、わたしのオリジナルなんです。

それだから、わたしはよりあれに愛着があって、何度も何度も話してきかせました。

次第に、わたしもあのお話に飽きたのですが、今度は娘が愛着を持ってしまったようで、わたしが「ど

のお話がいいの?」ときくと、決まって妖精の話というようになりました。

「うん!わたしあのお話好きなの」

ほら、ね。

「はいはい、わかったわ。お話してあげるから、お目目をつむって……」

娘は素直に目を閉じます。わたしはゆっくりとはなしはじめました。

「むかし、ある所に女の子がいたの。

その子は、お母さんと二人で暮らしていたの。小さい頃から女の子はとても元気で、賢かったわ。

そしうしたある日、女の子がまだ小さい頃に、お母さんが死んじゃったの。そして、一人ぼっちになっ

ちゃったのね。

それからは、一人で暮らしてたわ。お友達と呼べるような人一人もいなくてね。もちろん、近所に同じ

くらいの年の子供もいたけれど、女の子とはあまり仲良くなれなかったの。女の子はとても賢かったん

だけど、その分意地っ張りで、近寄り難かったのかもね。

そしてある日、女の子は妖精に会ったの。

その妖精は、真っ赤な姿をしていて、女の子に近づいてきたわ。

女の子も、その妖精がとても好きになって、すぐに仲良しになったわ。

その赤い妖精は、女の子の行く所、どこへでも付いてきてくれたのよ。

けどね、近所の子に紹介しようと思って、見せようとしたんだけど、他の子にはその妖精は見えなかっ

たの。

女の子はそれがとても嬉しかったわ。だって、女の子だけしかその妖精を見れないのだもの。

女の子はその妖精とだけ一緒に遊んでたわ。近所の子は気味悪がってか、あまり近づかなくなったけど、

女の子は別に気にならなかったわ。だって、妖精がいつも一緒にいてくれたから。

だからその妖精には嫌われたくなくて、女の子はいつも良い子で居よう、賢い子で居よう、元気で居よ

うとしたの。 妖精はそういう子とだけしか友達にならないって本に書いてあったから。

そしてある日、女の子の隣の家に、同い年の男の子が引っ越してきたの。

しばらくして、その男の子のお父さんが女の子を引き取る事になったの。いくらなんでも女の子の一人

暮らしは大変すぎるって。女の子と男の子は一緒の家に暮らす事になったのよ。

その男の子のは女の子からみると、冴えなくて、頼りなくて、最初、女の子はその男の子のことあまり

好きになれなかったわ。

けど、他の子とは決定的に違うとこがあったの。その男の子にも妖精が見えたのよ。そして、その男の

子も妖精が一緒だったの――もっとも、その男の子の妖精は紫色だったんだけど。

だんだん、女の子は男の子とも遊ぶようになったわ。もっとも、妖精がいつも一緒に居たのだけど。

けど、その男の子はね、ちっとも賢くはなかったし、元気でもなかったし、良い子でもなかったの。

そしてある日、公園の池のそばで、女の子は久しぶりに妖精とだけで遊んでたの、そしたら女の子は池

に落ちちゃったの。

女の子は元気だったけど、泳げなくて、おぼれそうになったわ。そしたらね、男の子と男の子の妖精が

助けてくれたの。

後で聞いたら、男の子も泳げなかったんだって。けど、男の子は妖精と一緒に頑張って、女の子を助け

出したの。

女の子はお母さんが死んでからはじめて、妖精以外の人のことを少し好きになったわ。

そして、女の子は少しずつ、男の子に色々なことを教えてあげたの。賢くなる事や、元気になる事、良

い子でいる事をね。

そしたらね、今度は女の子の妖精がだんだんと、男の子と仲良くなっていったの。女の子は訳がわから

なかったわ。だって、たとえ女の子がおぼれかけたとした って、まだ女の子の方が男の子よりも賢くて、

元気で、良い子だったのだもの。

女の子はそれが悔しくて、あまり男の子と遊ばなくなったの。

そして、ある日、女の子は妖精と遊んでたの。そしたらね、急にお母さんの子守り歌が耳に聞こえてき

たの。そして、妖精がだんだんと離れていくのを感じたわ。

女の子は行かないで、と何度も何度もお願いしたわ。けど、妖精は行っちゃったの。

泣きながら家に帰ると、男の子がそこに居て、あの赤い妖精も男の子の側にいたの。

男の子が泣いてる女の子を心配して、どうしたの、と声を掛けたのだけど、女の子は答える事ができな

かったわ。

あまりに悔しくて、悲しくて、女の子は男の子のことをひっぱたいたの、そして自分の寝室へと駆け込

んで、ベッドに入り込んだの。その時は男の子の顔も、妖精も、何も見たくなかったの。

次に女の子が気がついたとき、あたりは真っ暗だったわ。女の子は、まるでそれが自分の気持ちのよう

に見えて、もっと悲しくなっちゃったの。

その時ね、とつぜんドアが開いて、男の子が入ってきたの。そして、こう言ったの、ついさっき、妖精

達を追っ払ったって。

女の子は驚いて、どうしてそんな事をしたのか聞いたの、そしたら、男の子はこうこたえたわ

「あいつら、もう君は僕よりかしこくも、元気でも、良い子でもないから、友達でいるのをやめろって

言うんだ。僕がいやだって答えたら、じゃぁあいつらと友達をやめるか、って言ったんだ。僕はいいよ

って答えたよ。そしてあいつらのこと追っ払ったんだ」

女の子はそこまで聞いて、ベッドから起き上がったわ。

男の子は続けたの、

「妖精と友達で居るのやめたから、僕はもう賢くないかもしれない、げんきでないかもしれない、良い

子じゃないかもしれない。けど、君と友達で居るのやめるくらいなら、賢くなくても、元気でなくても

、良い子でなくても構わない。だって……僕、僕……」

『君の事、大好きなんだ』

『……わたしも……』



あら?」

気がついたら、娘は可愛らしい寝息をたてていました。

「もう……いっつも終わりまで言わせてくれないんだから」

わたしは娘にしっかりと布団を掛けてあげました。

「アスカ」

わたしの大好きな優しい夫がドアの側で呼んでいます。

「シンジ……大きい声ださないで……。マナが起きちゃうでしょう」

わたしは夫にそう言った後に、娘に向かって

「お休み……明日こそはママのお話、終わらせてね」

そう言うと、わたしはそっと、娘の寝室を出ていきました。


ご意見・感想・誤字情報などは mayuki@mail2.dddd.ne.jp まで。

<後書き>

先日、Fairy Tale〜True Story〜とゆー映画を見てきて、感動したあまりにこのネタを思い付きました。

あんな予告と本編の違う映画は生まれて初めて見たような気がします。

もっとも、あの映画と、この話は妖精が出てくるという点を除けば全く関係ないのであしからず。

コメント、指摘、感想、提案など大歓迎です


 yukiさんの『Fairy Tale』、公開です。
 

 アスカが語る、
 娘に語るお話。
 

 辛かったあの時の事を、
 こうして話す彼女・・・。
 

 受け止めて、
 乗り越えることが出来たんですね(^^)

 側にいるシンジと共に・・。

 

 
 さあ、訪問者の皆さん。
 浮かぶ言葉をyukiさんに届けましょう!


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