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新説エヴァンゲリオン
眠れない日に見る時計




ふいに彼女は目をさました。

時計を見ると午後11時半。

彼女はベッドから身を起こして窓の外を見上げた。
空に掛かる青白い月と窓に映る髪がクロスフェードする。
彼女は目をそらすようにベッドから降りると水を飲むために流しへ歩いていった。
コップに水を注ぐとそれを一息に飲み干した。そしてまたベッドに戻ってよこになる

目を閉じるとまた彼の顔が浮かんできた。
頭がもやもやして、胸がどきどきする。
これはナニ。この感覚は。今までは感じたことの無い感じ。私は誰?私は綾波レイ。
それ以外には、何もない。私には何も無い。そう思っていた。
彼は、そんな事言うな、って言った。泣きながら、悲しいって言った。
それ以来この感覚が続いている。

時計を見ると11時50分。

今ごろ彼は何をしているのだろう。もう寝てしまったろうか。それともまた弐号機
パイロットにからかわれてでもいるのだろうか。きっと今は私のことなど、忘れて
しまっているに違いない。
更に胸がつまってどきどきする。痛いくらいに・・・
無性に彼に会いたくなってくる。
私はどうしてしまったんだろう?どうなってしまうんだろう?

時計を見ると真夜中になろうとしていた。

次に彼に会えるまで、あと9時間もある。
彼女は、時の経つスピードの遅さに怒りと、せつなさと、悲しさを感じた。
いや、知ったと言うべきかもしれない。
もう寝てしまおう。眠ればそれだけ時が早く経つ。それだけ早く彼に会える。
そしてまた、彼女は眠りにつく・・・


ふいに彼女は目をさました。
時計を見ると午前5時ジャスト。

カーテンを少しめくってみると窓の外はまだ暗い。 窓に映った自分の顔に涙の跡がついている。
彼女は反射的にベッドに視線を走らす。自分の隣には最愛の人の安ら
寝顔がある。それは世界中で唯1人妻である自分にしか見ることのできないものだ。自分をとても安心させてくれる寝顔。

夢を見たらしい。
内容はもう忘れてしまったがきっとそれは、自分がまだ自分の
気持ちや想いにとまどっていたころの夢・・・
胸の片隅にほんの少しのせつなさが残っていた。

時計を見ると午前5時15分。

彼女は枕に肘をついて夫の髪をやさしくなでた。
繰り返し、何度も何度も。
「う・・ん?」
「あなた?」
「あ・・レイ、おはよう・・」
彼はまだ半分以上夢の世界にいるようだ。
「ごめんなさい、起こしちゃった?」
「ううん、かまわないよ、今何時かな」
「まだ起きるまでは時間があるわ。もう少し寝ていて」
「うん、ごめん、そうさせてもらうよ」
そう言うと彼はレイの方に身を寄せて寝息をたてはじめた。
時計を見ると5時25分。あと2時間ほどで夫は仕事に出かけて行ってしまう。
レイは時の経つその速さが少しだけ恨めしかった。だが、今は最愛の人 はまた自分のもとへと帰って来てくれる。
だから彼女はさみしくも悲しくもなかった。
彼が眠りに落ちるその刹那、
「レイ・・」
「なに?シンジさん」
「時間が経つのが、もっとゆっくりだったらいいのにね」
レイは、少しだけ驚いた顔をする。そしてやさしく微笑んで
「そうね・・」
シンジはレイの胸に抱かれて再び眠りの世界に落ちていった。

まもなく、メガロポリス第三新東京市が目を覚ます。
レイは、明るくなり始めた窓の外を見ながら思う。
どんなに愛しても、どんなに切望しても自分以外の人は所詮は他人。
ならば、どれだけその人と同じ想いや同じ時を共有できるかが
幸せの量になるのではないだろうか。


レイはシンジの寝顔に軽くキスをした。
自分も寝てしまおうかとも思ったが夫を見ているうちに
とっくに眠気はなくなっていたので
夫が目覚めるまで寝顔を見ていることにした。

時計は5時30分になろうとしているところだった。


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ver-1.00 1997-12/20公開
ご意見、感想などは こちらまで!

ども。鈴木です。
無性に綾波な話が書きたくなったので書いてみました。 いかがですか?
私は綾波に、シンジのことをなんて呼ばせるかでめちゃくちゃ悩んでしまいました。
で、悩んだ末 ”シンジさん”
そのまんまですね。ごめんなさい。
という訳で今回はこの辺で。
それでは。

「黒夢」のナンバーから「眠れない日に見る時計」を聞きながら

 鈴木さんの『眠れない日に見る時計』公開です。
 

 昔は
 離ればなれで、
 辛かったけど・・

 今は
 そばにいてくれる・・
 

 いいですよね、こういうの(^^)
 

 シンジの寝顔を見るレイ、
 時間の流れを感じる、

 雰囲気です(^^)
 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 いつの間にかアヤナミストになった(?)鈴木さんに感想メールを送りましょう!


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