「気持ち悪い・・・・。」
アスカはそう言って、自分にまたがり涙を流すシンジを払いのける。それでも、シンジは地面にへたりこんだまま、嗚咽を漏らしている。
「気持ち悪いのよ、あんた。あんたみたいな人間はいらないのよ。生まれてこなければ良かったのよ!!」
アスカはさらにシンジを侮辱する。それでもシンジはただ言われるままになっている。これが自分の選んだ道だと思ってのことか、アスカに対する贖罪のつもりなのか、ただ反抗する気力も無いのか・・・。
「あんたみたいな下衆は、一生ママのおっぱいでもすすってなさいよ!」
そう言って、アスカはシンジの襟首を掴んでLCLの海へたたき込む。しばらくすればあがってくると考えていたアスカは、なかなか浮かんで来ないシンジに気づき急に不安になる。
「シンジ・・・。なによ、ほんとにママの中に帰っちゃったわけ?」
アスカの声にも、LCLの湖面はただ風に揺れているだけだった。
「ちょっと・・シンジ。何よ、あたしがちょっと何か言ったぐらいで・・・・。帰ってきなさいよ・・・。帰ってきて・・・。シンジ・・・・。私を一人にしないで・・・・。」
アスカの目から涙が一筋こぼれたとき、LCLの水面が少し膨れる。
「シンジ?!」
アスカが見つめた一点で、爆発的な勢いで水が跳ね上がり中から出てきたのは・・。
「ファースト!?」
出てきたのは綾波レイその人だった。だが何故か衣装は白い衣を羽織っており、目線がどこにいってるかわからない。
「ファースト?なんであんたが出てくるのよ。」
「ファースト?知らないわ。私はLCLの精霊。」
「何言ってるのよ、あんたファーストじゃない。」
青い髪、真っ赤な目、どこから見ても綾波レイな精霊?は、お約束なセリフを吐く。
「知らないわ。多分、私は四人目だと思うから・・・。それより、今からあなたに質問するわ。」
そう言ってLCLの精霊?が手を挙げるとLCLの中から3人の人間が出てきたが・・・。
「シンジが・・三人?」
でてきた人間の容姿はみんなシンジそっくりだった。
「あなたがLCLに落としたのは、どのシンジ君かしら?」
呆然としているアスカにかまわず、精霊が話を続ける。
「一話から十九話の素直で繊細なシンジ君かしら?」
そう言って、精霊が左端のちょっと照れた風なシンジを指す。
「それとも、二十話から二十四話のアスカやレイも助けない、カヲルくーんなシンジ君かしら?」
精霊が真ん中のシンジを指す。
「それとも、劇場版、リビドー全開、大量殺人魔。監督が自分自身を投射したシンジに補完世界(=オタクの世界)を否定させる事で、自分がオタクから卒業したということを主張してんじゃねえの・・・・もとい、シンジ君かしら。」
なにやら怪しい事をのたまいながら、右端の髭と眼鏡をつけたシンジ?を指す。
「どれを落としたの?」
アスカはしばし呆然としていたが、やがて、事態を整理して頭を巡らす。
(最初のシンジがほしいんだけど・・・・・。えーと、これと似たような話を聞いた事があるわね。たしか正直に答えれば全部もらえたのよね。ということは、とりあえず全部もらっといていらないのはLCLにポイしちゃうのが得策ね。)
「右端の劇場版シンジよ。」
「そう・・・。じゃ、これ返すわ・・・。さよなら。」
そう言って、いつの間にか髭と眼鏡が取れた劇場版シンジを突っ返すと、精霊は残ったシンジ達を引き連れ再びLCLに潜っていった。
「ちょっと、話が違う・・・・。」
アスカの言葉がむなしく響きわたる。しかし、失望の海に沈むアスカに名案が浮かぶ。
「そうだわ、もう一度、劇場版シンジをLCLに沈めて、精霊を呼び出して選択し直せばいいんだわ。」
「それ、いい考えだね。」
へっ、と振り向いたアスカをシンジがドンとLCLに突き落とす。
ドッボーーーーン
派手な音を立てて、アスカが沈む。そして、波紋が消えた頃、シンジの前に例の如く、精霊が出てきて今度は四人のアスカを引き連れる。
「あなたが落としたアスカは、登場したときのちょっと生意気でプライドの高いけど、かわいところもあるノーマルアスカかしら?」
そう言って一番左の、風にスカートをたなびかせているアスカを指す。
「それとも、エヴァに乗れなくなってシンクロ率0のぶっ壊れアスカかしら?」
精霊はその隣の激やせしてぶつぶつ言ってるアスカを指す。
「はたまた、劇場版、大量殺人も平気でやる、なんであんなイタイ女になっちゃったの、な劇場版アスカがいい?」
隣のかわいげのかけらもない狂気の表情のアスカを指す。
「最後に、26話から出てきた、幼なじみだと思ってたシンジが最近レイって転校生の出現で気になりだしたの、な様々なエヴァ小説で活躍中、LAS御用達アスカかしら。」
そう言って、右端の真っ赤な顔してもじもじしているアスカを指す。
「さあ、どれを落としたの。」
精霊の言葉に悩むシンジ。
「うーーん、最初のアスカもいいなあ。はたまたぶっこわれアスカを看病して僕の物にするのも・・・・。劇場版は問題外だなぁ・・。しかし、幼なじみって燃える設定も捨てがたい・・。」
悩むシンジを見て、精霊が背中を押す一言。
「今なら、右端のアスカを選べばサービスで、26話のちょーやばいってかんじだよねーなレイや、異常に若い母親ユイなど、「第壱中学校と愉快な仲間達」セットがついてくるわよ。」
「うーーん、そうだね。僕を取り合って争う、アスカとレイ・・・。それに美人の母さんも魅力的だ。父さんはいらないけど。よし、それに決めたよ。」
「それじゃ、LCLを材料につくってあげるわ。さあ、明日からめくるめく世界が待ってるわ。」
LCLからまばゆい光が放たれる。それはシンジの視界を覆い、第三新東京市を覆い、世界を覆う。
全てが光に包まれる。やがて、生命が降る。世界が新生していく。
そして、全ての事象の後、シンジが目を覚ますとそこには・・。
「バカシンジ!!」
そこには、見慣れた幼なじみの顔があった。
こうして、シンジは学園エヴァの世界で末永く平和に暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
一方、LCL内・・・・・・
「めでたいわけないでしょうが!だれかここからだしてぇー。」
「ダメ、碇君が呼んでないもの。」
教訓・・・・・真実なんて数ある事実の中から、自分に都合のいいものを選べばそれでいいんじゃない?(本当に?)
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あとがき、いいわけ、開き直り
この作品中をお読みになって、気分を害す、怒りを催す、作者にカミソリメールを送りたくなる、などの症状をおこされても当方一切の責任を負いかねますのでご了承ください。<こういうことは普通、本文の前に書くことだが・・・。
200000万ヒット記念のはずが、また遅れに遅れて、この通り。
(知る人ぞ知る、作者は100000ヒット時にも記念物を書こうとして失敗してます。)
しかも当初、真面目な物を書くつもりが、いったいどこをどう間違えたのか・・。あ、別にこの作品、皮肉のつもりじゃないはずですが、自分、小説書くときは常に本能に従ってますから・・・。
元ネタは有名な童話、そして多分どらえもん。こんな話があったような気がします。考えて見れば、どらえもんって結構、ブラックジョークでしたよね。
YOUさんの『学園エヴァの作り方』、公開です。
ヤバイやばい(^^;
YOUさんにその気はないようですが、
かなりある方向の人たちを小馬鹿にしている風な表現がある・・・(^^;;;
気になった人も寛容・鷹揚に・・m(__)m
「金の斧・銀の斧」を元ネタとしたSS、
私もやっぱりLASアスカを選んじゃうだろうなぁ(爆)
映画アスカは絶対いらん。
あれはアスカじゃないよ (;;)
・・・本物のアスカ人なら”アレ”も受け入れないといけないのかな?
さあ、訪問者の皆さん。
20万記念SSを書いてくれたYOUさんに感想メールを!