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「見て見て、シンジ!!

 夕焼けに燃えるモノレールの中にアスカの声が響きわたる、

「う・・ん・・」

 その声に暖かな日差しと、この2日間の疲れに、うとうととまどろんでいた シンジが生返事を返す。

「ほらシンジ、起きなさいよ!」

 アスカはロマンスシートから立ち上がり、向かい側に座っている男の子の肩を 激しく揺さぶる。

「うわっ、や、やめてよアスカ。起きたから」
「わたしが声をかけたのよ、間をおかずに返事なさい」

 腰に手をやり、不機嫌な命令口調でシンジを見る。

「ごめん、ごめん。で、なにを『見て見て』なの?」

 シンジは、長い付き合いで、アスカのその態度が本当に怒っているものではないと 判断し、軽く受け流し、話を進める。

「そうそう、あれよ、あれ」

 シンジはアスカの指さす方向に目を凝らす。

「あれって、あのマンション?」

 そこには山の斜面に沿って階段状に建てられた3階建のマンションがあった。

「そう、あそこでしょ?『めぞんEVA』って。」



『めぞんEVA』第2話-「第三新東京市とゆかいすぎる仲間」前編



「えーと、ここかな?『BIGーMAN』って」

 シンジが手の中のメモを見ながら、駅前にある大型モニタを見上げる。

「そうみたいね、ほらあそこに『BIGーMAN』って書いてるわ。それに・・」

 アスカが辺りを見回しながら自信たっぷりに言う。

「こんなに人待ち顔の人がいるのよ、待ち合わせのメッカといったらここしか ないじゃない」

 確かに辺りには、時計を気にしている幸せそうな人が沢山いて、時々そんな人の 所に手を振りながら駆けていく姿も見られる。

「うん、間違いないようだね。エーと、『無精ひげを生やした、男臭いロンゲ・・』 っと」

 朝、父に教えられた待ち合わせ相手の特徴をつぶやきながら辺りを見回すシンジ。
 シンジとアスカの両親は結局仕事に一区切りが付かず、2,3日遅れて来ることに なっていた。

「シンジ、あの人じゃない?」
「え、っと。違うんじゃない? 確かにロンゲだけどこざっぱりしてるし、髭も ないし・・」
「じゃあ、シンジは見つけたの?! その加持って人」

 むっとして、シンジを見るアスカの迫力に、シンジはあわてて回りを見る。

「あ、あの人は・・・?」
「バカ、あれは女よ!!」
「そ、そう?」
「あんたは、男と女の見分けも付かないの?」
「ごめん」
「もう。最初の人が当たりよ。ちょっと声かけてくるわ」
「ア、アスカ。待ってよ」

 アスカはシンジの返事も聞かずに駆け出した。

「おまたせ、早速案内してくれない?」
「は? キミ誰?」

 男はいきなり声をかけて来たアスカに目を白黒させながら答える。

「? アンタ加持ってんじゃないの?」
「人違いだよ、お嬢さん。俺は青葉ってんだ」

 突然目の前にあらわれた超の付く美少女に、男は気取って答える。

「あっそう」

 背を向け去って行くアスカに向かって、男は

「お嬢さん、お困りならこの不祥青葉シゲル、あなたの力にーーーー」

必死にポーズを決めながら呼び掛けるが、

「いらない。紛らわしい格好しないでよね!」

アスカは取り付くシマもないほど素っ気ない返事でさっさと去っていった。


「もう待てない! 行くわよ、シンジ。荷物持って」

 さらに40分後。しびれを切らしたアスカが立ち上がる。
 アスカが人をこんなに待ったのは生まれて初めてだった。さすがに限界だ。
 午後6時。すっかり日も暮れた。

「行くってどこに?」
「アンタバカァ? 決まってるじゃない、『めぞんエヴァ』よ」
「でもここで待ち合わせって・・・」
「約束の時間を30分も過ぎてんのよ。悪いのはあっちよ」
「そうかもしれないけど、加持さんて人が来たときに僕等がいなかったら・・・」
「だーかーらー悪いのは遅れたあっち。アンダスタン? 大体ここからバスで 5分もかからないんでしょ? これ以上は時間の無駄。いくわよ」
「じゃ、じゃあさ、何か食べよう。ネ」

  そこに!


  グオオオオオー

 腹に響くエンジン音の接近。

 続いて。

  キキキキー

 強力なブレーキの音。

 こげたゴムの匂いとともに青いスポーツカーが駅前のロータリーに飛び込んで来た。

 その車のドアが開くと、一人の女性が颯爽と下りて来る。
 おぉぉー。その姿に駅前にいた男達がどよめきを発てる。

「かっこいい・・・」

 シンジ迄もが思わずつぶやく。
 ギロッ---アスカの嫉妬の視線も気がつかない。

「あれ?」

 その女性がシンジの姿を見とめると、真直に歩いて来る。
 困惑しているシンジの前でサングラスをはずしながら、

「ハァイ! あなたが碇シンジ君ね?」

シンジに声をかける。予想外の軽い物言いでの予想外の展開。

「え?」

 突然名を出されてシンジは戸惑う。

「ちょっとアンタ。だれよ、馴れ馴れしいわね!!」

 アスカが、気安くシンジに話しかけたその女性に食って掛かる。

「はじめまして。ミサト、葛城ミサトよ。惣流アスカさん。あなたたちを迎えに 来たのよ」

「ええと、じゃあ、加持さんて人の・・・」

 ようやく事態を飲み込めたシンジが応じる。

「代理よ。あのバァカ、急用が入って来れなくなったのよ」

 派手に表情を崩しながら、ミサトがはき捨てるように続ける。

「あいつアタシが暇してるって決めつけてんのよ」
「ええと、葛城さん・・・」
「『ミサト』、でいいわよ。碇シンジ君」

 ミサトは崩れていた表情を一瞬で笑顔に戻しシンジに答える。

「あっ、僕もシンジでいいです。ミサトさん」

 それにつられて、シンジも笑顔になる。
 それまでシンジとミサトのやり取りを不機嫌な顔でみていたアスカが、シンジが 警戒を解いた笑顔でミサトに答えるのを見て、堪忍袋の尾が切れた。

「ミサト!! あんな車に3人で乗れるの!? ちょっと考えて車選びなさいよね!!」

「ア、アスカ」

 シンジはいきなり爆発したアスカを止めようとする。
 いくらなんでも初対面の人に失礼な態度だ。

「あら、惣流さん。あなたには『ミサト』と呼んでいいとは言ってないわよ」

 ミサトは涼しい顔で切り返す。

「な・・な・・・」

 アスカの顔が赤く染まってくる。

「ちょ、ちょっと二人とも・・・・」

 いきなりの険悪な雰囲気にシンジは止めに入ろうとするが、二人はまったくお構い なしに言い合う。

「なに?、シンジ君が私に笑顔向けたのがそんなに気に入らないの? 可愛いわねぇ。 でもそんなにやきもち焼いてると嫌がられるわよぉ」
「くっ・・・・」

 アスカが言葉に詰まる。

 あごを突き出し、見下ろしながらミサトは続ける。

「独占欲の強い女は、男から見て、重荷になるのよぉ」

 ・・アスカはその言葉にしばらくうつむいていたが、顔をあげると反撃を開始した。

「ふん、なによ。シンジがちょっとかわいいからって愛想振りまいちゃって」

 一息ついて、

「この、ショタコン!!」

 アスカの言葉のボディーブローに、今度はミサトが言葉に詰まった。

「うっ・・・・」


 バチバチという音が聞こえてきそうなにらみ合いが続く。

「二人とも!!」

 エスカレートしそうな雰囲気に、意を決してシンジが割って入る。

「とにかく、マンションに行こうよ。僕、ちょっと眠いんだ。 アスカも疲れてんだろ? ね?」

 暫くの間。

「しょうがないわね、ま、そんなに疲れてんなら、行きましょ」

 アスカはそんなシンジの意を汲み取り、取り合えずここは矛を納めた。
 取り合えずアスカはOKと、シンジはミサトにも声をかける。

「ミサトさん、お願いします。一休みしたいんです」
「シンジ君がそう言うんなら。喜んで運転しちゃう」

 ミサトはにこにこと笑顔を浮かべながら応じる。
 しかしそのやり取りを見たアスカの

「ふん、年増のショタコン女」

つぶやく声に、

「なにぃぃ」

ミサトが鋭く反応。

「アスカ!!」

 シンジの叫びもむなしく、振り出しに戻ってしまった・・・


「着いたわよ、ここが『めぞんエヴァ』。あなたたちの家」

「ここが・・」

 ふらふらになりながら、助手席から這いだすシンジ。
 駅前からここまで道中ずっと見えていたはずの建物を、ミサトのすさまじい運転で 車の中からは見ている余裕がなかったシンジが、感慨深げに見上げる。

 ・・・生きてたどり着けてよかった・・・・。

 たったの3分ほどの行程で、命の危険を思わせるミサトの運転・・・


「死ぬかと思った・・・」

 シンジに続いて、助手席の後ろの座席とは言えないようなスペースからアスカも 這いだしてくる。

「へえ、立派な建物なんだ・・・・」

 一人ごちたシンジの言葉に、ミサトが応じる。

「でしょ。アタシもこんなとこに住みたいわー。ま、アタシのサラリーじゃ宝くじに でも当たらない限り無理でしょうけどね」
「そ、そうなんですか」

 自分に向けられた大人の女の笑顔にシンジはドギマギと答える。
 そのシンジの態度がまた、アスカの癇にさわる。

「シンジ!!」

 シンジに微笑みかけるミサトを押しのけて、アスカがシンジに呼び掛ける。

「なに? アスカ」
「ほんとに素敵なマンションね、シンジ。これからここが『私達』の家になるのね」

 アスカはミサトを横目で牽制しながら、『私達』を強調して言う。
 ミサトも負けじとシンジにすり寄る。

「シンちゃん、ほら、この壁の色。薄いながらも深みのある緑。回りの木々に溶け こみながらもしっかりと自己主張してて、とっても素敵」
「シンジ、ほら見て。階段状になってるから、二階三階は下の階の屋根の上を広い テラスとして使えるようになっているみたい」
「見て、シンジ君。1階の真ん中2戸分は奥に引っ込んで、その前が広場になってる わよ」
「その前は広場よ、芝生がきれい!」

 アスカとミサトが「シンジ」を連発しながら、その関心を引き付けようと 見たまんまのことを並び立てる。


「おやおや、騒がしいと思ったら葛城じゃないか」

 いきなり後ろから声をかけられて、3人が一斉に振り返る。

「かぁじぃ。あんた、急用が入ったんじゃなかったの?」

 ミサトがそこにいた男臭いロンゲを睨み付けながら詰め寄る。

「急用が急に中止になったのさ。葛城もその急用のおかげで可愛い男の子と知り合え たんだから貸しは無しだぜ」

「なっ・・・あんたねぇ−−半日ぐらいで恩に着せる気?」
「ところで、そちらが碇シンジ君に惣流アスカちゃんだね」

 食ってかかろうとしたミサトを軽くかわして男がシンジたちに向き直る。

「はい。加持さんですね?」
「ああ。『めぞんEVA』管理人の加持リョウジだ。はじめまして、よろしくな」


「ちょっとミサト。いつまで付いてくるつもりなのよ」

 中央広場から階段を上る4人。アスカは後ろを歩くミサトに向かって、毒ずく。

「そう言わないでよ、アスカちゃん。もう7時よ、ごちそうしてくれても罰は当たら ないんじゃない?」
「ズウズウしいわねぇ」

 手を振りふり、愛想笑いを浮かべるミサトにアスカは毒気を抜かれてしまう。

「でも、アスカどうしよう。なにも買ってこなかったよ」
「あ! どうするの?」

 途方に暮れるシンジたちに加持が笑いかける。

「明日の分ぐらいは冷蔵庫につっこんで置いたよ」
「さぁすが、加持ぃ。もちろんビールも−−」
「俺の部屋からとってきな」

 加持がカードキーをミサトに投げよこす。

「OっKぇぇ」

 本当に嬉しそうに階段を下りていく。

「葛城は外見はいい女だけど、中身は親父なのさ」

 シンジとアスカに笑いながら話しかけ、

「ほら、ここが惣流家、こっちが碇さん家」

 階段を上り廊下を左に曲がったところで、手前から指さしながら加持が言う。

階段を上った所で廊下が左右にのび、そのすぐ左に行ったところがアスカの 更に廊下を突き当たったところがシンジの、それぞれが今日から住む家なのだ。

「へぇ、通路から入った所は庭になってるんですね」
「ああ、それも土が入っている、それもかなりいい土だ」

 加持がしゃがんで地面をそっとなでる。

「広い庭だなぁ・・・」

 間口は10m近くある上、庭だけで奥行きは7,8mはある。
 その庭に入って半分程から、右にあるアスカの家では左に、左にあるシンジの 家では右にガラス張りのサンルームがある。

「ステキ・・・・」

 アスカがウットリとこぼすのにシンジも

「ホントだ・・・・・」

同じように答える。


「さあ、」

 加持が中にはいるようにうながす。

 シンジはすぐに歩を進めようとしたがアスカは立ち止まったままだ。

 アスカはミサトがまだ来そうにないのを確認すると、

「いたーーい」

わざとらしい声を出してしゃがみ込む。

「どうしたんだ、アスカ!」

 シンジがダッシュで近づいてアスカの傍らにかがみ込んで声をかけた。

「足が痛いの」
「どこかでぶつけたの? 取りあえず中に入ろう。立てる?」
「だっこ」
「・・・え・・・?」
「だっこして」
「な、なにを・・・・」

 シンジはアスカの突然の甘えた言葉にうろたえる。

「足が痛いの・・・・」

 アスカのうるうる攻撃にシンジが逆らえるわけはなかった。

「うん・・・でも、おんぶの方がよくない?」
「いや、だっこ」

 アスカは言いながら、シンジに両手を伸ばす。

「・・うん・・・」

 シンジはおずおずと右手をアスカの背中に、左手を両膝の後ろに回し、持ち上げる。
 細身のアスカの体だが、非力なシンジには辛い、おまけに・・・

「シンジ・・・ありがと・・」

アスカの潤んだ瞳、甘い香り、そして胸板に感じる柔らかな膨らみ・・・

(おちつけ・・・おちつけよ・・・・)

 シンジは自分の歩みをじゃまするモノに、必死で念じ続けた。

(きつそうな子だと思ったけど、可愛いんだな・・・。 ・・・・新居に抱かれて入る・・・新婚ゴッコか)

 すっかり存在を忘れられた男、加持リョウジが呟いていた。


 シンジとアスカの家のサンルームは中で繋がっていた。
 両家からのリクエストがあったそうだ。

 アスカと加持が作り、シンジとミサトが食べる。

 ミサトは加持の家から待ってきたビール3ダースを空けてしまう。

 歓迎会が始まり1時間ほどたって、ミサトがすっかりと寝入ってしまった。

「じゃあ、俺はこれで失礼するよ」 加持が立ち上がりながら言う。
「じゃまして済まなかったな、俺は帰るからゆっくり二人の時間を楽しんでくれ」
「加持さん!!」

 二人が顔を真っ赤にして、声を揃える。

「はは、」

 背を向けもうドアを開けている。その背にシンジが質問する。

「ミサトさんはどうするんです?」
「葛城は一度寝ると雷が落ちても起きないから、ほっといていいぜ」


 ミサトを客間に運び、布団に押し込んでから二人はサンルームに出た。

「シンジ」
「ん?」
「二人きりね・・・・」
「・・ああ」
「月がきれいね・・・」

 アスカがシンジの横に座ったまま夜空を見上げる。

「うん・・・」

 返事をしながらも、しかしシンジはアスカの方を向いている。

 二人の回りの時間がゆっくりと流れていく・・・

 シンジは月明かりに照らされたアスカを、ぼんやりと眺める。

「ね・・・・シンジ・・・」

 ゆっくりと瞳を閉じながら、シンジの名を呼ぶ。

「あ、アスカ・・・・」

 目の前のバラ色の唇に、頭の中が真っ白になる。

(なんでだ・・・あの時は、冷静にキスできたのに・・・)

 アスカは我慢強く、シンジを待っている。

「・・・シンジ・・・」

 柔らかそうな唇がゆっくりと自分の名を呼ぶ・・・・。

 シンジも同じように瞳を閉じ、ゆっくりとアスカの唇に引き寄せられていく。 が・・・

 ズズズズズ・・・地響きが聞こえてきたと思ったら。

   グラグラグラグラ・・・大きな揺れがおこる。

「もう! いいとこだ・・・・・。じ、地震?」

 ラブシーンを中断され激高しかけたアスカが、いっぺんに真っ青になる。

「いや! いや! 揺れてる!崩れちゃう! 燃えちゃう! みんな死んじゃう!」

 アスカの記憶にある、幼い自分の体験。それがアスカの正気を失わせる。

「大丈夫、大丈夫だよ、アスカ。ね、もう揺れてないよ」

 パニックになって泣き叫ぶアスカをシンジが優しく抱きしめる。

「ホントぉ」

 アスカはまだ涙声だが、かなり落ち着いてきたようだ。

「ああ。それに今のはアスカの嫌いな地震じゃないみたいだよ」
「・・・そお?」
「ああなんだか爆発音がしたじゃないか。アスカも聞いたろ?」

 シンジは優しくアスカに微笑みかける。
 そのシンジの笑顔にアスカはさっきまでのとは別の理由で鼓動が高まる。

 その時。

 ピーン・ポーン・パーン・ポーン。なんとも力のぬけるチャイムの音がどこからか 聞こえる。

(((( ブチッ・・・。えー、108の赤木です。アタシじゃないわよ。・・・・ ・ブチッ ))))ポーン・パーン・ポーン・ピーン

「なんだろ? わざわざアタシじゃないって」

 ちょっと空いて。

 ピンポーン

((((( ブチッ・・ごめんなさい。伊吹です。今のは私です・・ブチッ))))

「やっぱりここが原因みたいだね」
「でも、それだけ? あんなに揺れて、何の説明もなし?」
「・・・・慌てた様子もなかったし、慣れてるのかも・・・・」
「何なのよ、ここ」

 アスカは立ち上がろうとするが、足が笑ってうまくいかず、シンジに抱き留められる。

「あ・・・・、シンジ・・ありがと」
「大丈夫?アスカ」
「・・・ううん。大丈夫じゃない・・・」

 アスカが再び潤んだ瞳でシンジを見つめる。

「・・・アスカ・・・・」

 二人の鼓動が再び高鳴り、シンジはアスカに吸い寄せられるように・・・・

「シンジ・・・」
「アスカ・・・・」
 ゆっくりと二人の影が重な・・・・

「アンタ達!」

・・・・らなかった。

「ミサトさん・・・」
「ミサト、眠ってたんじゃなかったの!?」

 シンジは戸惑いの、アスカは怒りのこもった目で、いつの間にかサンルームにいた ミサトを見上げる。

「寝るわけないじゃないの。年頃の男の子と女の子二人きりにして」

 いけしゃあしゃあ。ミサトの為にある言葉。

「なによ、自分がデートする相手もいないからって、人の恋路を邪魔しないでよ!!

 人の恋路を邪魔するものは、『馬に蹴られて、新宿前!!』ってね」

「アスカ・・・ちょっと違う・・・」

 シンジの指摘に、

「シンジ、アンタどっちの味方なの?」

 アスカの鋭い視線が飛ぶ。

「ごめん」
「だいたいあんたは・・・・」

「ちょっと、アタシを忘れてない?」

 蚊帳の外になりそうなミサトがあわてて二人に声をかける。

「と、とにかく。ミサト、帰んなさいよ」

 その声にアスカは更に強い調子で答える。

「だめ、不純異性交遊は見逃せないのよ」

 『不純』という言葉にカチンときたアスカは、声を荒げる。

「私達は不純じゃないわよ!!」

 ミサトは火を吹きそうなアスカの視線を軽く受け流す。

「不純か純粋かは関係ないの、行為が問題なのよ、立場上ね」
「立場?」

 その言葉に、クエスチョンマークを頭に乗せて、二人の声がハモる。

「言い忘れてたわね、アタシ、あなたの担任なのよ」

 ミサトがシンジの顔を見ながら、思いっきり軽く言う。

「へ・・・・?」
「第一中学1年A組担任。葛城ミサトでーす。よろしくね、お二人サン」

  ミサトが更に缶ビール3本を開けるまで、二人は固まっていた。ーーー


後編に続く

ver.-1.02 1997-03/08

ご意見・感想・誤字情報などは shintaro@big.or.jpまで。
「貴方のメールが私を奮わす」。お待ちしています!!


あとがき

 『めぞんEVA』第2話前編、いかがでしたか?

 今回はマンションの概要を伝えたいと思ったので、
 どうも説明くさい文章になってしまいました。
 そう、まるで「不動産屋の広告」・・・・

 ストーリーの方もどうもだらだらと長い、メリハリのない物になってしまいました。

 『メリハリ』、どうすれば付くのかよく分からないのです。
 アドバイスお願いします。 感想メール待ってます。
 簡単な物、「読みました」の一言でも、大きな励みになります。

 では、後書きまでお付き合いありがとうございました。


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