TOP 】 / 【 めぞん 】 / [Helo]の部屋に戻る

"MEZON EVA" No.07

for tomorrow
 from "HUMAN BEING"

Written by Helo


 「ねえ、何か言ってよ、アスカ・・・」

 シンジは、病室のベットの上に横たわるアスカの体を揺すった。

 「僕は・・・僕は、一生懸命に・・・みんなに言われたとおりエヴァに乗ったのに・・・
 どうして、僕のことを誰も、誰も褒めてくれないんだろう?」

 アスカの体を揺すりながら、シンジは話を続けた。


 「カヲル君を、僕は・・・僕は・・・この手で殺しちゃんだ。
 いい人だったのに・・・
 僕なんかよりずっと、ずっといい人だったのに・・・
 それなのに、僕は・・・」

 声にならない。


 突然、アスカの着ているものからアスカの体がはだけた。



 シンジの頭の中に少し落ち着きが出てくる。



 「・・・僕って、最低だ・・・」






 「何をしてる?シンジ、早くエヴァに乗れ。」

 ネルフ司令、碇ゲンドウは、自分の息子にいつもの通り命令する。

 
 「父さんは、僕にまたエヴァに乗って、人を殺せッテいうの?
 トウジの時だって・・・
 僕は、もう嫌なんだ。」

 いつものように少年は小さな抵抗をしてみる。




 が、30分後・・・

 少年はいつものように「これ」に乗っていた。


 「結局僕の事なんて・・・誰も必要としてくれないんだ・・・」

 エヴァ・・・

 人造人間、エヴァンゲリオン。

 僕にとって、これはいったい何なんだろう?


 血の匂い

 戦慄

 生命終わり

 人類の終わり


 記憶にはない母の面影

 安らぎ

 生命の始まり


 僕達の始まり


 エヴァは僕にとって、あらゆるものを与えてくれた。

 同時に、あらゆるものを消滅させた。


 悪いのは、誰?



 2日前の、父と子の会話。


 子:「みんなエヴァが悪いんだ。」

 父:「違う、悪いのは、シンジお前だ。お前の精神の弱さが全て悪い。」



 悪いのは、僕? 

 どうして?

 僕は一生懸命、やったのに・・・



 誰かに褒めてもらいたい・・・

 誰かに・・・



 助けて、母さん。

 ううん、誰でもいい、誰か僕を助けてよ。




 「シンジ君、出撃よ。」

 ミサトさんの声が、エントリープラグの中で聞こえた。


 「・・・・はい。」


 「3番ゲートからエヴァンゲリオン初号機、射出。」



 あの時から、僕が得たものは数知れない。

 出会いもあった。



 アスカ・・・

 綾波・・・

 ミサトさん・・・

 リツコさん・・・

 加持さん・・・


 ・・・・・・



 だけど、その多くは「別れ」という終末を生んだ「出会い」だ。


 何を、望みに生きていけば良いんだろう?

 僕は、何を信じて生きていけばいいんだろう?


 父さん・・・・?

 違う!!

 あんな人、父さんでも何でもない。

 あの人が欲しいのは、息子としての「碇シンジ」じゃなくて、エヴァンゲリオン初号機パイロットとしての「碇シンジ」なんだ。


 けど、僕は父さんに褒められたい。

 父さんに、抱いてもらいたい。

 父さんに、微笑んでもらいたい。



 全部、僕の思うとおりに世界が作れたらいいのに・・・

 僕の思うがままの世界が・・・・





 『君は、自分だけの世界に入りたいの?』

 「誰?」

 『僕は、君さ。さあ、答えてよ、自分だけの世界に入りたいの?』

 「僕は・・・僕は、もう嫌なんだ。今の生活が・・・」

 『そう・・・いいよ。君の思うとおりの世界を作ってあげる。こっちにおいでよ。』

 「・・・うん。」






 「シンジ君の精神汚染が進んでいます!!」

 マヤが叫んだ。


 「そんな馬鹿な!!
 まだ、敵との接触はしていないだろう。」

 冬月がいらだった声で言った。


 「碇、どうする?」

 冬月は、隣に座っているゲンドウに尋ねた。

 「・・・・冬月、後を頼む。赤木博士、君も来たまえ。」

 そう言って、ゲンドウは席を外した。



 「ん?これは・・・」

 マヤは別のモニターを見て驚いた。

 「アスカのシンクロ率が上昇です。
 エヴァ弐号機、起動します!」


 おぉ!!

 歓声がわく。



 「・・・今更弐号機では、戦自や普通の軍隊位はやれてもゼーレのあれが相手では、どうにもなるまい。」

 冬月は、その歓声の中で独り言のようにつぶやいた。



 15分後、戦略自衛隊・アメリカ・EU・ロシア・中国の軍隊がネルフ内に進入。

 攻撃。


 死者

 死者

 死者


 死者の山・・・



 この組織の人間の多くは、死亡した。



 その中には、ネルフ副司令「冬月コウゾウ」
 作戦部長「葛城ミサト」
 その他の要員の死体もあった。



 ネルフ崩壊の日。






 驚異的な活躍を見せる弐号機。

 が、既にアンビリカルケーブルは、切断されてしまった。

 もう動ける時間は少ない。



 そして、ゼーレの「EVA」が弐号機に襲いかかった。

 苦痛



 「もう終わりね・・・」

 アスカは、「死」を覚悟した。

 そう、もう終わりなんだ。

 意識がだんだん薄れていく。


 最後に一度だけシンジに会いたい。

 そう思って、回線を初号機と接続した。



 彼は、泣いていた。

 泣きながら戦っていた。


 さよなら・・・

 ・・・シンジ・・・



ドクン
ドクン
ドクン
 ・
 ・
 ・

 心臓の鼓動。



 その後で、目の前が真っ白になった。



 何?

 何なのよ!!



 アスカは、自分の前が突然白くなったのを見て驚いた。



 不思議な気分だ。

 自分が、上から自分のことを見ているんだ。


 そんな自分の抜け殻に、今戦っているはずの少年が裸のまま見ている。

 シンジが・・・?



 『アスカは、まだ死んじゃダメだよ。いなくなるなら僕だけで良いから・・・』

 頭に直接言葉が聞こえた。

 「あ、あんた何言ってんのよ!?」







 どれくらい時間がたったんだろう?

 私は、エヴァ弐号機中で発見、保護された。



 初号機の中は、誰も乗っていなかったらしい。

 後の調査でわかったことだが、シンジは初号機に取り込まれたそうだ。




 そして、私は今、日本政府の施設にいる。

 場所は、使徒との戦闘の最前線だったあの場所にある。





 あの時、私は確かに死んだはずなのに・・・

 今こうして生きている。







 これが”HUMAN BEING”へつながる道・・・ 

 全ての人間につながる道だったんだ。


 その事に気づいたのは、ずっとずっと後になってからだ。



 その時の私はまだその事に気づいていなかった。




 シンジとの再会を夢見て、私は今日も生きている。




ver.-1.00 1997-06/17

ご意見・感想・誤字情報などは kitahiro@mars.dtinet.or.jpまで。


■”あとがき”みたいなもの■

 どうも、久しぶりのHeloです。

 今回のタイトルは、blurの2ndアルバムの曲から来ています。
 なんだかワケわかんない内容ですみません(笑)。

 それにしてもホントに長々と家賃を未納にしていました。
 大家さん、ホントすみませんm(..)m

 色々忙しかったっていうのは、言い訳以外何ものでもありませんよね。
 あぁ、謝ってばかりのあとがきみたいなもので、すみません(笑)。

 近々「しんじととら」もアップしますので、こちらもよろしくお願いします。
 それでは。

Helo @ Helo's Note

 ひろさん3本目の短編『for tomorrow』、公開です!
 

 副題に[from "HUMAN BEING"]とある通り、
 この作品はHeloさん自身のHPで公開中の連載作のプロローグですね。

 HUMAN BEING ぜひ読んで下さい。
 6/17日現在・・・アスカ、貞操の危機です(^^;

 エーン・・・Heloさーん、アスカを不幸にしないでぇぇぇぇ (;;)
 

 HeloさんのめぞんEVA初シリアス作
 今までの不条理ギャグ、コミカルパロディに続いての新境地ですね。

 初号機に取り込まれて消えたシンジ。
 死んでいったネルフの面々。

 そして、

 残されたアスカ。

 待ち続けるかの序にこれから訪れる試練・・・・
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 Heloさんに感想を!
 まだメールを書いたことがない貴方もこの機会にいかがですか?


TOP 】 / 【 めぞん 】 / [Helo]の部屋