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04/20/97

めぞんEVAへの投稿作品1

涙III   Shinji Ikari

Written by Helo


 「シンちゃん、パパが今から言うことをよく聞いてぴょん。」

 父さんは、高いところから僕を見下ろして言い放った。

 その顔は、おだやかな笑みがこぼれしている。

 父さんはピンク色のふりふりドレスを着ていた。

 そして、ピンク色の眼鏡。

 縁から、レンズまで全部ピンクだ。

 でも、カツラだけは空色だった。

 父さんの趣味らしい。


 「シンちゃんはこれを着てぴょん。」

 ミサトさんと一緒に、僕は父さんを見上げていた。

 「そして、パパと一緒に”大会”に出ようぴょん。」


 「な・・・」

 僕は父さんにいた。


 「ま、待ってください司令!」

 ミサトさんが抗議してくれた。

 「レイでさえ、エヴァを着るのに7ヶ月もかかったんですよ。今日来たばかりのこの子にはとても無理です!」

 「立っていればいいぴょん。それ以上は望まないぴょん。」

 父さんはそう答えた。

 「でもっ


 「葛城一尉!今は大会に出席ことが最優先事項よ。」

 リツコさんがミサトさんにそう言う。

 さらに

 「そのためには誰であれエヴァを着ることの可能な人間に着せるしかない方法はないのよ!」

 そう続けた。


 「それとも、貴方が着るって言うの?」

 「・・・・・・・・」

 ミサトさんは、リツコさんの方を見た。

 が、何も言わなかった。


 「さ、シンジ君こっちへ来て。」

 リツコさんは僕にそう言った。

 「・・・・・・・」

 僕は何も答えなかった。

 リツコさんが僕を連れていこうと手を取ろうとする。


 「ぼ、僕が・・・ これを着て父さんと大会に出る・・・だって・・・・・?

 ジョーダンだろ?そんなことできるワケないじゃないか!」

 

 父さんは僕の方をにっこり微笑んで言った。

 「説明を受けてぴょん。シンちゃんが一番適任だぴょん。いや、他の人間には無理なのだぴょん。」


 僕はうつむいて言った。

 「・・・・なぜ、僕なの?」

 僕は父さんを見上げて言った。

 「ぜんぜんわからないよ!」


 「今はわからなくてもいいッス、さっさと着替えてほしいッス!」

 父さんは少し困った表情でそう言い放った。

 あっ、父さんの語尾が変わった。

 でも、まだ僕の知っている父さんじゃない。

 知らない父さん。

 「いやだ!できるワケないよっこんなのを着れるワケないだろ!!」

 「こんな事のために僕を呼んだのか?僕に恥をかけってゆーのかよ。」

 「今までほったらかしにしてたくせに虫が良すぎるじゃないか!!」



 父さんは片手でドレスのふりふりをさわりらながら言った。

 ちなみにもう一方の手は父さんのカツラ・・・女の子用の空色の、ややシャギーのかかったロングのカツラ・・・を髪を指でくるくる巻いていた。

 「おまえがやらなければ、人類すべてが恥をかくことになる。人類の尊厳がお前の肩に掛かっているのだ!」

 父さんは行動とはかけ離れた強い口調で言った。

 僕への呼び方が「シンちゃん」から「おまえ」に変わった。

 父さんの語尾が僕の知っているものに変わった。

 知っている父さん。

 「いやだっ、なんて言われたっていやだよ!!

 はぁ・・はぁ・・はぁ・・

 僕は肩で息をしている。


 「そうか---わかった・・・・・」

 「おまえなど必要ない、帰れ・・・」

 そしてすぐに言葉を続ける。

 「人類の存亡をかけた戦いに臆病者は無用だ。」

 父さんは、そう言った。

 僕は悔しかった。


 父さんが隣にあったモニターに何か話しかける。

 「冬月っレイちゃんを起こせ!」

 モニターの声

 「使えるのかね?」

 「死んでいるわけではない。こっちによこせ。たまには生で着替えを見るのも良かろう。」


 「もう一度、初号着の寸法をレイに合わせなおして。再試着よ!」

 リツコさんがそう言った。


 僕はがくっと床に膝をついた。

 「シンジ君」

 ミサトさんが僕の肩に手をのせた。


 その時、ゲートが開く。

 何かが運ばれてくる。

 ガラガラガラガラ


 女の子だった。

 ベットと縄でくくりつけられていた。

 苦しそうだ。


 父さんは、嫌らしい笑いを浮かべていった。

 「レイちゃん・・・予備が使えなくなったんだ。もう一度だぴょん。ここですぐ着替えるぴょん。」


 レイちゃんといわれた女の子はいやそうな表情で言った。

 「・・はい。」



 「くっ・・・」

 縄をほどかれた女の子は悔しそうに言った。


 「うう・・・」

 泣いているようだ。


 「大会に出席の方は直ちに着替えてください。」

 スピーカーからアナウンスが聞こえた。

 されに怪しげな音楽も流れている。


 「この音楽は・・・」

 ミサトさんはそう言った。


 僕はスピーカーの方を見上げた。


 「主催者め、テーマ音楽を変えたか」

 父さんがそう言った。



 「テーマ音楽がさびの部分に入った」

 ミサトさんが言った。


 僕は着替えようとしていた女の子の方を見た。

 

 (こんな・・・こんなかわいい子があの服を着ているだなんて、それもこんな所で着替えさせられようとしている)


 「シンジ君・・・私達はあなたを必要としているわ、でもエヴァを着なければあなたはここでは用のない人間なのよ。」

 ミサトさんは言った。

 「わかる?」


 「あなただってお父さんとの再会を喜び合うために着たんじゃないって事はわかってたんでしょう?」


 「なんのためにここまで来たの?お父さんにあそこまで言われて黙って帰るつもり?」


 「あなたが着なければ、その心の傷ついたその子がまた着ることになるのよ。」

 「自分がなさけないとは思わないの!?」


 「もういい・・・放っておきたまえ葛城一尉。」


 「シンジ、帰るのならぐずぐずしないでさっさと帰れ!」

 父さんはそう続けた。


 「あっ。」

 レイちゃんが声を上げた。

 僕は、レイちゃんの方を見た。

 彼女は僕に期待をしてますって顔で僕方を見ていた。



 「わかったよ。父さん。着ればいいんだろう?僕が着るよ。」


 チャンタラタッタンタッタ・・

 さっきから怪しい音楽がずっと流れている。

 その音はだんだん大きくなっているようだ。


 「よく言ったわ、シンジ君・・・」

 「さ・・・こっちよ。簡単に着替え方を説明するわネ。」


 僕は父さんの方を振り返った。

 父さんはスキップをしながら音楽に合わせて踊っていた。


 僕はその時泣いてたんだ。

 今まで生きてきて1回しか流したことの無かった涙を流していた。

 1回目は母さんが死んだとき。

 これが僕の2回目の涙。


 そして、すぐその後で3回目の涙を流すことになったんだ。”大会”で。



 涙III Shinji Ikari END


ver.-1.00 1997-04/20

ご意見・感想・誤字情報などは kitahiro@mars.dtinet.or.jpまで。


Helo's Report◆

 ああ、なんて悪質な物を書いてしまったんだろう。それも、記念すべき投稿第一作目に!!

 でもこの話一度書いてみたかったんです。今度はまじめなのを書きますから今日の所はこれで許してください。それでは。


 Heloさんから投稿が来ました、第1作目のタイトルは「涙V」です!!
 「めぞんEVA」12人目の住人を歓迎します!!
 残る部屋は2つ、
 そろそろ「めぞんEVA」の増築を考えないといけませんね。

 閉話休題。

 HeloさんのホームページにあるEVA小説から一転した雰囲気にクラクラ です。

 更に、遠くに行ってしまったゲンドウにクラクラクラクラです・・・・

 ゲンドウに呼び出されたシンジの不幸度はTVEVAを上回る物ですね(笑)
 いかれたゲンドウに乾杯、振り回されるシンジに合掌(^^)

 さあ、シンジ! コスパにLet’sGO(^^!

 読者の皆さんもHeloさんに歓迎のメールを送って下さいね!!

 Heloさんはご自身のページでレポート(自作小説、CG、感想、外伝、 その他何でも)を作ってくれる人を募集しています。一緒に【Helo's Reports】を作り 上げてくれるという方は彼にメールを送って下さいね。


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