26からのストーリー
第三話:未来の作り方
春の朝日が優しく差し込む部屋でシンジは夢の国から帰宅した。床の上で。
「さっさと起きないと遅刻するわよ!!」
シンジをベットから蹴り落とし、放っておけば遅刻しかねない事態から救ったのは、同居人であり幼馴染でありシンジの飼育係り(自称)であるアスカだった。
「あ....おふあようう、相変わらず元気だね、煩いくらいだよ...じゃあ....お休み...」
朝の天使の形のいい眉毛がピクッと動く。それは数秒後にシンジの確実な目覚めを約束していた。
「起きたようね...」
ドタバタと二階から響いてくる音で、彼女の一人息子に遅刻の心配が無くなったのを確認すると朝食をテーブルにならべ始めた。
一週間前から食事の支度が一人分増えている。その食事を食べるべき人物は既に席に付いていた。
朝日に透け美しく輝いている髪を持つ少女は、天井を赤い瞳で見つめていた。
別に天井に興味がある訳ではなく、その上の時折聞こえる、派手な罵声とドスンという物音が気になったのだ。
「あ、気にしなくていいのよ、レイちゃん。毎朝の事だから。本当に寝起き悪いのよ、あの子」
「ああ、そうだ。あんな奴の事は気にしなくていい。一人で起きられん情けなく、見苦しい奴だからな。おまけに頭は悪いし、言うことは聞かないし・・・」
「.....」
まだまだ、馬鹿息子に対して言いたい事があるのか指を折って数え始めたゲンドウをレイは、不思議な物を見るような目で見詰めた。
やがて騒ぎの元凶の二人は二階から降りてきた。
「おはようございまーす!!おっじさま、おっばさまー」
「おはよう...あ、綾波、おはよう」
シンジが照れくさそうにレイに挨拶をする。アスカもレイのとなりに座り挨拶を交わした。
「早いわねー、あんた。あたしもこのバカシンジがもう少し早く起きれば楽なんだけどなー」
既にレイと同居を始めて七日が過ぎアスカはすっかり馴れたようで、気軽にレイに話し掛けていた。異常に少ない言葉数も“この娘の個性”と言う事で納得している。
ただ彼女の会話はいつも手短であった。そのなかに感情らしい物は込められていない。言葉だけでなく表情にもそれはあまり感じられない。
一方シンジは未だに馴れなかった。
何しろ思春期真っ最中の少年と、同じ年の少女が一つ屋根の下で同居を始めたのだ。幾らシンジでも意識してしまう。ついぎこちなくなってしまうのも仕方が無い。もっとも意識してしまうのはその事だけが理由の全てでは無いのだが...。
一週間。
それはレイが同居人になってから過ぎた日数だが、同時に使徒と呼ばれる巨大な化け物に第三新東京市が襲われてから過ぎた日数でもあり、そしてシンジが初めて“人型決戦兵器・エヴァンゲリオン”などという代物に乗りその使徒を殲滅、初陣を飾ったのも一週間前の出来事だった。
もっとも彼にしてみれば実感が無い。
TVゲームか映画でも見ていたような感じしかしなかった。あれは夢だったのではという気もする。はっきり言って現実感が無さ過ぎた。
「さっさと食べちゃいなさいよ!遅刻するわよバーカ」
アスカの一声でシンジは我に帰り箸を取り始めた。
目の前にならべられたアジの開きと里芋の煮っ転がし、なめこの味噌汁、漬物各種が食欲を刺激する香りでシンジを誘惑していた。
その脇でレイは里芋との戦いに熱中している。彼女の箸裁きでは里芋をなかなか拘束できない。
里芋は幾度となく素早い身のこなしでレイの箸から逃げ回っている。
「...........この.....」
そんな様子にアスカは溜め息を吐いた。
...シンジもトロイけどこの娘も負けずにトロイみたいねー....
それにしても彼女は箸を使ったことがないのか持ち方がかなりいい加減である。アスカは一応ドイツ出身らしいが、小さい時から日本に住んでいたので箸の使い方は上手である。もっとも教えたのは彼女の両親ではなく碇ユイという女性だったが...。
「アンタ箸使った事無いの?全く不器用なんだから。こうやって持つの、ほら」
レイに箸の持ち方を見せる。
...それにしても今までどんな食べ方してたのかしら、まさかスプーンとホークだけしか使わなかったって訳でもないと思うけど...
レイはアスカを真似て持ってみるがやはり上手く行かない。やがて彼女は里芋めがけて箸を垂直に振り下ろす。
「....おいしい....」
はあ...アスカから溜め息が漏れた。
お茶を啜りながらユイとゲンドウは三人のようすを眺めていた。
二人にとってもこの一週間というものは決して短くなかった。恐らくすべての事情を知っているが故に余計そうだったのかもしれない。だがレイはゆっくりと馴染んでいくように思えたし、アスカやシンジも彼女を受け入れる事が出来そうである。取りあえずは一息つく事が出来そうであった。
「ユイ、今日は遅くなる。先に休んでいてくれ」
その言葉に反応したのはユイではなく彼の一人息子だった。
今まで関係のなかった父の仕事が、今ではシンジにも関わってくる。幾度も母に注意されているのにも関わらず、新聞を読みながら朝の食事をしている父は、“特務機関NERV”の司令で有り、言ってみればエヴァのパイロットになったシンジやレイの上司でもあるのだ。
シンジがその事に気が付いた時、随分と憂鬱になったものだ。
「あら、夕食はいらないのね。じゃあ....」
レイとシンジに目を向けるユイ。
「いや、私だけだ」
その一言でユイは納得した。
...そうシンジ達は早く上がれるのね...
*
「シンジ!!今日の新聞見たか!!この間の奴詳しく載ってるぜ。」
教室に入るなりクラスメートのケンスケがバサッと新聞紙をシンジの前に突き出した。
正体不明の怪物、今後も上陸の恐れ有り!!
この一週間というもの各メディアはこの話題で持ち切りだった。
なぞの巨大生物出現!!、
亡国の生物兵器か!?、
宇宙人の侵略か!?、
問われる都市の安全対策!!、
等々その見出しは様々だが内容といえばどれも似たり寄ったりであった。
いずれも真実の遥か彼方である。シンジは興味無さげに新聞をケンスケに返した。
何しろシンジはTVに画質の悪い映像で連日映し出されている使徒と直に戦っているのだ。
言ってみれば当事者である。そしてシンジの知っている情報は、マスコミのそれよりはるかに詳しかったので今更新聞の記事に興味はなかった。
「かあ、又来るんかいな。街ん中来たら大変やな」
トウジの感想はごく常識的なものだ。
「親父に聞いたんだけどさ、なんか巨大生物に対抗するための特別組織が在るんだってな」
「そ、そうなんだ。知らなかったな、ははは」
些かわざとらしい笑い方で応じたシンジ。この話題にはあまり関わりたくない。
「バカシンジは、まーた外でウロウロしちゃうかもねー。ほーんとアンタは普段からボケボケッとしてるから」
「そしたらまた惣流が、避難所でオロオロするんやろ、シンジの心配でな。しっしし」
トウジのからかう様な笑い方にアスカは顔を赤くした。
「何であたしが心配しなくっちゃいけないの!!!!」
「いいや、心配しとった。あたしのシンジ様どうなさったのかしら」
「そうそう、シンジ様、貴方が居なければ私寂しい!」
ケンスケとトウジはそれぞれ胸の前で手を合わせ、天を仰ぎ見ながらアスカの真似をした。その様子にいよいよアスカの顔が赤くなっていく。シンジは既に真赤だった。
「そんなんじゃないよ!!」
「そんなんじゃないわよ!!」
2人仲良く同時に否定をした。もっともシンジは話が逸れていった事を密かに喜んでいる。
そんな中、レイはシンジの隣の席で外を眺めている。誰かと話をした事はなかった。アスカやシンジ以外に話し掛けた事も無い。常に無関心な様子である。そんなレイをシンジは時折つい見つめてしまう。
確かに最初にあった時から気になってはいたのだ。
「せんせ、綾波が気になるんか」
トウジはシンジにそう囁きかける。いつの間にかレイを見ていたらしい。シンジは慌てて振り返り辺りを見回す。アスカは既にヒカリの元でお喋りに花を咲かせていた。
どういう訳かレイを見ているとアスカがひとしきり嫌味をシンジに言うのだ。
理不尽だ、とシンジは思う。
「安心せい、惣流は向こうや。せやけどそない気になるんか」
「そ、そんなんじゃないよ。ただいつも一人だから...」
「そうだな、彼女少し変わってるとこ有るな。誰に対しても関心が無いって言うか」
ケンスケの感想はシンジのそれとほぼ同じだった。シンジの場合もう少し関わっている部分があるのでレイに対して気になる事が在った。
...エヴァに乗る時綾波はどんな事考えていたんだろ。やっぱり嫌がったんだろうか。...
それに気になるといえば普段冷たい感じさえするレイであったが、使徒との戦闘が終わり、病室での彼女は、今思えば普段から想像できないほど優しさを感じる事が出来た。
シンジが彼女を助けたとから、といえなくも無いのだが。
「ほーらそこの3人!席に付きなさいね。H・R始めるわよ!」
葛城ミサト先生が彼らを睨んでいた。慌ててそれぞれの席につく。アスカは隣の席に駆け込んできたシンジに
「バーカ」
とペロッと舌を出した。
目の前のミサト先生はH・Rを進めている。シンジはそんな様子に奇妙な感じがする。
彼女は三佐と言う別の名を持っている。そして使徒がくれば先頭に立ちNERVの面々を指揮し、この街を守るのだ。シンジやレイと共に。そしてその事はこの教室に居る誰も知らない。
もう一つの顔。
...いつかアスカにその事いうのかな。きっと...怒るだろうな...
バコッ!
「何ボウッとしてるのかな?シンジ君、後でちょっち指導室来なさいねー」
「は、はい」
アスカはバーカと声には出さず唇の動きだけでそう告げた。後ろの方の席でトウジとケンスケはそれぞれ同じ感想を持った。
「相変わらず、とろくさい奴」
*
生徒進路指導室。
そう書かれたプレートの付いている部屋にシンジはいた。この部屋は大体において悪さをした生徒達に説教する為のものであった。が、今回は別の目的で使用されてる。
「シンジ君、悪いんだけど今日、本部に来てくれる。ちょっちやってもらいたい事あるのよ」
「はあ、エヴァがらみですよね。どうせ」
シンジは既に諦めているようであった。朝に父ゲンドウの帰りが遅くなると聞いた時点で、自分も何かやらされる事くらい想像が付いた。
「そうなのよ。リツコがシンクロテストしたいって急に言い出してねー。悪いけど」
「急じゃないわよ。前もって言っておいたはずよ。人が突然言い出したみたいに、全く」
ドアのところで抗議したのはこの学校の理科担当教師、赤木リツコ先生だった。
白衣を着ている為か凛々しく見えるが、片手にぶら下げている保温式の黒い弁当箱とお茶の入った水筒がいかにも不釣り合いである。
「ごめんなさいねシンジ君。ミサトには話して在ったんだけど伝わってないみたいね。とにかく今日またエヴァに乗って欲しいの。データ取りだけだからすぐ済むわ」
「いいです別に。...綾波はいいんですか?」
「悪いけど誘っといてね。彼女にも未だ言ってないのよ」
リツコはあきれたようにミサトを見やった。そこには些か罰の悪そうな顔がある。
「そんなに怒んないでよう。それはそうとついでだからっと、これから訓練とか色々用事もあると思うから携帯渡しておくね。大丈夫、電話代ネルフ持ちだから」
ミサトが手渡したのは普通の携帯電話だった。以前綾波が同じ物を持っていたのを見た事があった。
「そういう事だからよろしくね。シンジ君」
「..はい。でも...訓練があるって...また使徒が来るかもって事ですか?」
「そう取って貰って構わないわ。詳しい話は本部でしましょ。こんな所でする話じゃないわよ」
シンジが部屋を後にするとミサトの表情は暗くなった。一週間前にも同じ顔をした事が有る。
「言い出せなかったのは分るけど、あなたの仕事よ」
「分ってるわよ!でもねー、やっぱ辛いわ。任務じゃなきゃこんな事したくないわね」
リツコは自分達の任務、ミサトに託された任務を思い返した。
サードチルドレン碇シンジの監視及び護衛。
そして
...サードチルドレンに速やかに協力させるための信頼関係の構築.....
「分ってるわよ....仕事だから....」
「そう、ならいいけど」
ミサトは思う。こんな形であの子を騙してエヴァに乗せるのと、脅して力ずくでエヴァにのせるのと一体どっちがマシなのか....と。
...騙した以上最後まで騙し続けなきゃいけない...か....
*
「バカシンジはどこ行ったの」
五時間めの授業が終わり、ふと気が付くとアスカの視界にはシンジは居なかった。
そのため三バカトリオの内の二バカに行方を尋ねたのだ。
「知らんわ。大方惣流があんまり怒るんで逃げたんちゃうか」
そういった大変無礼な返答を彼女は許さず、丸めたノートで正義の鉄拳を振り下ろした。
「まあまあ、多分新作ゲームの発売日だからショップにでも行ったんだろ」
ごく納得しやすいケンスケの回答にアスカは意見を同じくした。
「そうね、この間の騒ぎで発売日伸びたって言ってたわね」
肯きながら呟く。
趣味と言う訳ではないみたいだがシンジは時折、ゲームを購入してくる。それゆえいつも小遣いが足りなくなり、アスカに泣き付いてくるのだ。泣き付かれるのが嫌だというのではないところが、彼女の複雑な思いというものだろう。
「アスカ、一緒に帰ろ」
ヒカリは既に下校の支度を済ませアスカを待っていた。
「ごめん、すぐ行くわ」
慌てて鞄を掴み、ヒカリの元へ駆け寄ってくる。別にシンジに用があった訳ではないらしく
“じゃーねー”と挨拶すると二人は教室を出て行った。
「さ、俺らも帰ろうぜ。今日何のゲームの発売日だったかなー」
「さあ、わからへん。それより綾波は惣流達と一緒に帰らんのか?彼女もさっきからおらへんで」
ケンスケが見渡すと教室には、既に数人しか残っていなかった。
*
「ごめん、まだ本部の行き方分らないんだ」
シンジは申し分けなさそうにレイに話し掛けた。ネルフ本部へはミサトに連れられて以来だった。
「そう、すぐ着くわ」
相変わらず無表情に答えるレイ。シンジは比較的口下手で無口な方だったが、レイは無口というレベルではないので、二人の時話し掛けるのは常にシンジだった。
「大体ミサト先生もいい加減だよな。今日突然テストだっていうんだもん」
「そうね。いい加減かもしれない」
彼らの脇を仕事途中の人々や同じ下校途中の生徒達とすれ違う。
マスコミで騒ぐわりに第三新東京市の人々は平常な日々を過ごしている。ショウウィンドウのTVは相変わらず巨大生命体の話題だったが。
レイはバス停の前で止まった。バス停の液晶掲示板には“ジオフロント前”の項目が載っている。
「あ、バスで行くんだ。専用列車があるのかと思った」
シンジは些か残念そうに呟く。
「駅に行くよりここの方が近いわ」
「詳しいんだね。まだ引っ越したばっかりなのに」
「...そんな事無いわ」
妙な事にシンジは気が付いた。学校に居る時レイは誰かに話し掛けられても殆ど答えない。たまに“そう”と答えるのが精々である。
アスカが話し掛けても似たり寄ったりであった。だが相手がシンジの場合、言葉数が少し多いような気がするのだ。微妙な違いではあったが、シンジは少し気になる。
もしかしたら思春期独特の先走りかもしれないが。
やがて定刻どうりに着いたバスは、二人を乗せ走り去って行った。
*
「碇、今日テストだったな。準備は出来ているのか」
「ああ、赤木博士から連絡は来ている」
NERV本部発令所のひときわ高い場所に二人は居た。
「しかし良く納得したな。もう乗らないと言い出すかと思ったがな」
「そう言った所でどうにもならんさ。いずれ乗らねばならんからな」
NERV副司令である冬月は、ゲンドウの言葉が司令としての言葉か、父親としての言葉か計り兼ねた。
「ゲートより連絡。二人が来たようです。今葛城三佐が迎えに行きました」
「綾波、前に父さんと会った事あるの?それにここの事も詳しそうだし」
レイに案内され、地下に向かうエスカレーターに乗り込んだ時シンジは尋ねた。
ジオフロントゲートから本部入り口、さらに発令所に向かうエスカレーターに着くまで彼女は迷う事無く進んできたのだ。
「ええ、ここでエヴァの訓練受けたから...」
なるほど、シンジは納得したように肯くと再び話し掛けた。
「そうなんだ。じゃあ父さんにも会った事あるんだ。ちょっと変でしょ、父さんて」
ええ、と答える訳にもいかず無言のレイ。馬鹿な事聞いたかなと少し後悔するシンジ。
そんな二人の沈黙を破るかのように聞き覚えのある声が耳に届いた。
「早かったじゃない。迷わずに来れた?」
「はい。綾波が道知ってましたから」
「そうね、ここ長いもんねレイは。さってリツコがお待ちかね。いきましょ」
*
そこには無数のメーター類が並び、モニターには様々な文字が浮かんでは消えていく。それらをE計画責任者・赤木リツコ博士は、まるで魔法使いの様に魔法の杖の代わりにキーボードを操りながら仕事をしていた。
「ようこそNERVへ」
学校同様に白衣を着込んでいる彼女はシンジにそう挨拶をする。
彼女の周りには数人のスタッフが忙しそうにコントロールパネルを操作していた。
「マヤ、彼に準備してあげて。こっちはいいから。レイはすぐ支度して」
「はい、じゃあシンジ君一緒にきて」
マヤと呼ばれた女性は、ショートカットのよく似合う些か幼い感じが残る女性だ。明らかにミサト達より年下に見える。
シンジは少し戸惑いながらも彼女の後に付いていった。
全く飾り気のない廊下が延々と続く。誰にも擦れ違わないのはそれぞれが持ち場で忙しい為か。
「この間はご苦労様。格好良かったわよ」
人に誉め慣れていないシンジは、マヤの唐突な誉め言葉に戸惑った。ましてあの時の事は無我夢中だったし、何より途中から記憶がない。
「そんな、別に・・・そんなこと・・・よく覚えてないし」
NERVの制服が余計に彼女の幼さを引き立たせているがシンジにしてみれば
”美人の年上のオネイサン”
であって、多くの少年がそうであるように、彼もまたそういった存在の前でついモジモジしてしまう。
そんな様子にマヤは軽く微笑むとシンジに再び話しかける。
「別に緊張しなくても大丈夫よ。今日はただのテストだから。あ、この更衣室で着替えて」
そこにはプレートに『男子更衣室』と書かれてある。
「ロッカーは沢山有るけど、ここ使うのはシンジ君だけだから好きに使って」
「エヴァに乗るのって僕と綾波だけなんですか。他には・・・」
「他にはいないのよ。今探してるんだけどね。それくらいあれに乗れるって難しいことなの」
マヤは少し申し訳なさそうにそう告げた。つまり今後使徒が襲ってきた場合、この二人だけで戦わなければならない。その負担たるや・・・。
「それじゃあこれ着てみて。プラグスーツっていうの。エヴァに乗るのに着てください。詳しい説明は先輩、っと赤木博士に聞いてね」
マヤが差し出したそれは青を基調としたダイバースーツを思わせた。もっともかなり凹凸がありダイバースーツというには些かごつすぎる。
「それじゃあ、着替えが終わったら呼んでね」
「はい・・・」
・・・何で僕じゃなきゃいけないんだろ 僕じゃなくてもいいじゃないか またあれと戦うのか。でなきゃテストなんてしないよな・・・
シンジはプラグスーツに腕を通しながらこれからどうなるのか不安を感じていた。
シンジの性格はおよそ”戦い”というものには向いていない、と自分では考えている。
・・・でも綾波一人に任せてと言うわけにはいかないし・・・誰かがやらなきゃ・・・できる人が・・・
「シンジ君支度できた?」
「は、はい。今いきます」
堂々巡りになりそうな思考を断ち切ると更衣室の外にでていった。
*
「アスカ、これかわいいんじゃない」
「どれ・・・結構いいかもね」
ヒカリとアスカは近くのアクセサリーショップにあった髪飾りを物色していた。彼女の手にしているのは淡い青色の花を模したものだ。
「どう、似合うかな」
「うん、でもこっちもいいかも」
アスカは桃色の貝殻の形をした髪飾りを彼女に手渡す。アスカの見立てどうりそれは似合った。
「やっぱりこっちの方がいいわ。似合ってるもん」
値段も手頃で特に負担になる金額ではない。ヒカリの心は決まったようでアスカの選んだ髪飾りをレジに持っていった。
「ごめんね、つき合わせちゃって」
「いいわよ、どうせ暇だったし」
二人は公園のベンチで缶ジュースを飲んでいる。
「でもさ、あの熱血馬鹿にでも買わせりゃいいのよ。いつもお世話してるんだからさ、ヒカリは」
アスカの言葉にヒカリは顔を真っ赤にし、俯いてしまった。
「そんな、言わないでよ。だって、あいつ、関係、ないし、それに、誕生日、じゃ、ないし」
「まあね、あの馬鹿にそんなデリカシーなんか絞ったって無さそうだし、恐竜より鈍そうだし」
ヒカリの予想以上の反応に少し驚きながら、デリカシーの皆無なクラスメートに文句を付けた。
「大体ああいう鈍いのは、面と向かって言わなきゃ分からないのよ。食欲しか頭にないんだから。ああ鈍いと腹立つわね」
アスカにしてみれば親友のヒカリが恋心を抱いているにも関わらず、のほほんとそれに気づきもせずのんきに学食のパンなどに幸せを感じているトウジに『デリカシーがない』と悪態の一つもつきたくなる。
「そんなことないわよ・・・それに・・・・・・・・・・・・・・優しいし・・・・・」
控えめに、本当に控えめにトウジの弁護をヒカリはした。最後の方は消えるような小さな声であった。
「あ・・・・・・そう・・・」
「それより碇君とはどうなの。今度綾波さんも一緒に暮らすんでしょ」
ヒカリは控えめながら効果的な反撃を行った。アスカにシンジの話をすると良くも悪くも感情的な答えが返ってくる。
「な、何よ。別にバカシンジなんかとは何の関係もないんだから。大体昔から一緒に住んでるだけなの。レイが一緒に暮らしたって別に何にも変わらないわよ」
ヒカリはおもしろいと思う。アスカは名前の前にバカをつけて呼ぶのはシンジだけである。
そして『バカシンジ』なる呼び方は他人には絶対にさせない、とトウジに聞いたことがある。
アスカの幼なじみである彼の話では小学校の時に誰かがシンジの悪口を言うとアスカが飛んできて痛い目に遭わせた、らしい。
そんな彼女がシンジに対して『関係ない』などというのは見え透いている。
「何よ、本当だからね。あのバカはいつもボケボケっとしてるから仕方なく面倒見てるの。全く
ホント疲れちゃうんだからね」
再び言い訳する赤い顔のアスカ。しかしヒカリの次の言葉につい黙り込んでしまった。
「じゃあ、綾波さんともうまくやってるんだ。碇君も仲良くしてるんでしょ、彼女と」
全く予想しない反応に彼女は戸惑った。
この場合どちらかだ。
アスカがレイと仲が悪いのか、シンジがレイと仲が良すぎるのか・・・・。
ヒカリはそれ以上何も聞かなかった。これ以上は碇家の問題なのだ。部外者の彼女は口を挟んではいけない。
彼女のそんな様子にそう思った。
赤く染まり始めた空の色がアスカの悲しげな顔に切なさの色を加えた。
「あたしって、やな感じだわ。自分が嫌になっちゃう」
アスカの自笑気味な言葉にヒカリは悟った。
「でもあたしは好きよ。アスカのこと」
*
「神経接続完了。パルス正常」
マヤの事務的な声が響く。
「まぐれじゃなくてよかったわ。これでいつ使徒が来ても大丈夫ね・・・」
ミサトの自虐的な喋り方はリツコの耳に障った。
「そうね。シンクロ率もいい数値出してるし・・・使えるわね、彼」
ミサトが何を言いたいのか分かっている。しかしそれにつき合う気は、今の彼女にはなかった。
一緒になってぼやいても仕方ない。
「またシンジ君に押しつけなきゃ。人類の存亡ってやつ」
「・・・ストレスレベル・3にアップさせて」
リツコは何も答えない。彼女は目の前に打ち出されたデータを頷きながら眺め、さらに幾つかの指示を出した。マヤの指が素早くキーボードを打ち始める。
「今夜、飲みに行く?久しぶりに」
リツコはミサトにそう誘いをかけた。どうせ愚痴を聞くならその方が話が早い。大学時代からの友人であるリツコには、ミサトが精神的に参っているのに気がついていた。
「悪いわね、リツコのおごりでしょ?」
リツコの視線に鋭さと北極の氷のような冷たさが宿り、ミサトを射抜く。紅蓮の炎をも凍らせるような視線だ。
「じょ、冗談よ・・・まったく・・・」
苦笑しながら、しかしリツコの誘いをありがたく思う。昔っから落ち込むとつき合ってくれる。
「悪いわね・・・・・」
「シンジ君、終わりよ。ご苦労様。あがってちょうだい」
第二試験場、制御室。
シンジがその部屋にはいるとすでにテストを終えているレイがいた。シンジと同じ様な白のプラグスーツを着ている。
女性のラインを強調するようなそれはシンジをドキッとさせた。
「あ、綾波も終わったんだ」
「私は定時試験だから・・」
白い顔に白のプラグスーツ、まるで最高級の陶磁器で作り上げたような姿だ。
「シンジ君、ご苦労様、はい、ジュース」
シンジは手渡された缶コーヒーを飲みながらミサトに尋ねた。
「ミサト先生、僕も定時試験ってやつやるんですか?」
「その前にシンジ君、ミサト先生っての止めてくんない?ここじゃ葛城三佐なんだからさ」
「じゃあ、・・・葛城三佐・・・」
「堅いわねーその呼び方・・・うーん・・・」
実のところ、先生と呼ばれるのはつらかった。特にここNERVでは。呼ばれる度に罪悪感に捕らわれるのだ。
「ミサトさんで良いんじゃないんですか?私たちも滅多に『葛城三佐』なんて呼びませんしね」
マヤの提案は誰をも納得させ、シンジもそうやって呼ぶことにした。
クラスでシンジだけが呼べる呼び方。その事は何となく、優越感にも似た得意な気分にさせる。
「えっと、定時試験ね。うん。やることになるけど毎日じゃないわ、月一日、大体最初の週の水曜日ね。ただ訓練は不定期。その日はちょっち遅くなることもあるわよ」
毎日じゃないのにはほっとした。アスカへの言い訳が大変になるところだ。
「訓練てやっぱりエヴァの・・・」
「ふふーん、それだけじゃないわよー。まあお楽しみってとこね」
まあ、いいや。シンジはそれ以上の質問は諦めた。
「それじゃ、遅くなるから二人とも上がって良いわよ。ご苦労様」
シンクロテストの終了を告げ、二人を更衣室へと送り出した。そして
「シンジ君、辛いかもしれないけど一緒にがんばろ」
何も一人でがんばることはない、一人で苦しむことはない。
もしかしたら何もしてあげられないかもしれない。だが一緒に悩むことくらい、一緒に悲しむことくらい出来る。
それは一人きりよりはまし。
ミサトは思う。それが嘘つきな大人のほんの少しの罪滅ぼし・・・
*
「たっだいまー・・・・ってシンジのやつ、未だ帰ってないの・・・」
自宅の玄関にシンジのくたびれたスニーカーが脱ぎ散らかしてないのを見て取ると、些か寂しそうにアスカは玄関にあがった。
「あら、お帰りなさい。シンジもそろそろ帰って来るんじゃないかしら」
時計は夕方の五時半を指している。いつもならシンジと一緒に帰宅するので、あまりこの時間に一人で居るということは無い。
アスカは二階の自分部屋にあがると制服を着替え始めた。細身のジーンズに長袖のTシャツ。ラフなスタイルだが些かも彼女の魅力を損なってはいない。
クローゼットに制服をしまいながらふとレイもまだ帰宅していないことに気がついた。
玄関に彼女の靴は無かったし、隣の部屋にもいる気配はなかった。
・・・まさかシンジと一緒に・・・・
アスカは頭を振った。そんなことを考えるのがイヤだったし、レイを疑うのもイヤだった。
・・・何でこのあたしがそんなこと気にしなきゃいけないのよ、馬鹿馬鹿しい・・・
ごろんと寝転がり手近にあったファッション雑誌のページをめくる。しかし内容はほとんど見ていない。
・・・あの二人一体どこ行ってるのかしら・・・
再び他の雑誌を手にし、ページをめくるがやはり中身など見ていない。
・・・そんなに仲良かった?あの二人・・・
ポーンと雑誌を放り出し天井を見つめた。
・・・シンジのやつ、レイのこと気になるって・・・・・
気にしたくない、そう思っていたはずが既に充分気にしている。
レイが来るまではそんな事は無かった。いつもシンジは側にいた。
学校が終わればいつも一緒に帰っていたのだ。そもそもシンジがアスカ以外の女の子と一緒にいることなど、今まで無かったはずである。
やきもち・・・そう思えるほどアスカは素直ではない。あるいは大人ではない。
頭にいろいろ浮かぶ不安、気にしたくないのに気になる事への苛立ち、二人を勘ぐる事への自己嫌悪、ただただ落ち込む一方である。
「ただいま」
「・・・ただいま・・・」
「あ、お帰りなさい。二人とも疲れたでしょ、お疲れさま」
シンジとレイはユイの出迎えを受けた。夕飯の支度をしているのでエプロン姿だ。
「アスカはもう帰ってるんだ」
「ずいぶん遅かったじゃない」
腕を組み、仁王立ちのアスカがシンジを睨んでいた。落ち着いた表情をしているがドアの音がした途端に二階から駆け下りてきたのだ。呼吸の乱れは根性で我慢している。
「あ、ただいま。もう帰ってたんだ」
「何よ、帰ってちゃ悪いって訳?あんたこそ何してたのよ、こんな時間まで」
「べ、別に悪いって訳じゃ、何怒ってるんだよ」
シンジの疑問も尤もである。こんな時間というがまだ六時半だ。文句を言われるほど遅い時間ではない。
「怒ってなんか無いわよ!!何してたのって聞いただけでしょ」
エヴァのシンクロテストだったのだが、正直に言うわけにもいかない。だからといってとぼけて済ませられるような剣幕ではない。
「別に・・・ただブラブラしてただけだよ・・・」
シンジの考えつく言い訳は所詮この程度だ。
さほど遅くならなかったのでアスカに詰問されるとは思っていなかった。それ故言い訳など考えてはいなかったのだ。
「ふーん、レイと一緒に?」
アスカは自分の顔がこわばるのを感じた。シンジの答えが怖い。
「ち、違うよ、さっきそこで一緒になったから・・・」
アスカはふっと肩の力が抜けるのを感じている。
「全く、早く帰ってくればいいのに」
それだけ呟くと”お腹が空いたなー”などと言いながら食堂に行ってしまった。
「何なんだよ・・・・」
シンジとしては納得がいかなかった。何だってアスカがあんなに怒ってるのか分からなかったからだ。
考えてみればバカらしい話だとシンジは思う。
アスカを巻き込みたくないからわざわざ気を使ってるのに、そのアスカに文句を言われたのではシンジも立つ瀬がない。もっとも
・・・嘘ついて・・・ごめん・・・
と心の中で謝る自分も確かに居た。
そんな様子を眺めていたレイは、さっきまでとはうって変わってかなり機嫌が悪そうに見えた。
「?・・・どうかしたの?」
そう訪ねたがシンジを一睨みすると無言のまま階段を上がっていってしまった。
「・・・何なんだよ・・・・・」
ベットと小さなタンス。それがレイの部屋のすべてだった。他に荷物らしい荷物はない。
制服のままベットにごろっと横になりシンジの部屋側の壁を見つめた。
・・・どうしたんだろ・・・今までこんな感じなかったのに・・・どうして・・・
何か落ち着かない感じ、胸の奥で様々な思いが渦を巻いている。今までそんなことはなかった。
どんなことに対しても冷静でいられた。しかし・・・
・・・これが司令の言っていた『感情』なの・・・
『さっきそこで一緒になったんだ』
・・・違う、ずっと一緒だった・・・碇君とずっと一緒だった・・・
シンジがそう言わなければならない理由は分かる。ミサトにもそう命令されている。
分からないのはなぜ自分がこんな事を考えたのか、だった・・・・。
*
シンジはアスカとレイの緊張した雰囲気に包まれ、味の分からない食事を済ませた頃、一件の居酒屋に二人の女性はいた。
彼女たちの手元には、焼き鳥、ソーセージ、そして大ジョッキのビールとお銚子が置かれている。
「シンクロテスト成功、オメデトー」
カチャ、とジョッキを合わせ一気に飲み干すミサト。
「・・・・」
そんな彼女を呆れた目で眺めながら、お猪口を口にするリツコ。
「プッハアーーーーーーーーーーーーーーー」
居酒屋独特の騒がしさの中、リツコが口を開いた。
「少しは気が晴れた?ミサト先生」
ミサトの表情が幾分沈んだものになった。そして何かを思い出すように語り始める。
「シンジ君さ、あたしのこと信頼してくれてるのよね。この間の戦闘の時にもあたしの名前呼んだし、ミサト先生って」
「それで」
「でもあたしは彼のこと騙してるの。良い先生に見えるように、これからも戦わせるために」
「仕方ないわ、生き残るためだもの。みんながね」
再びお猪口を口にしながらリツコは大義名分を口にした。ミサトの言うことも分かる。確かにシンジを騙している。
しかし初号機に乗れるのが彼しか居ない以上、使徒との戦いに初号機が必要な以上、他に方法がなかったのも事実だ。
「そんなこと分かってるわよ・・・でも、彼の気持ちを裏切ってるのも事実なのよ」
ミサトの懺悔に対してリツコの答えは冷たかった。
「勘違いしない事ね、あたし達は教師じゃないのよ。あなたはNERVの作戦部長なのよ。たとえ騙しても脅しても彼を初号機に乗せるのが仕事よ。あなたとあたしのね」
「でも彼にとっては教師よ!!信じてくれるあの子を踏みにじって生きてるのよ、あたし達!」
「じゃあ、みんなで一緒に死ぬつもり!?あの子一人守って他の人はみんな見殺しにするの!?あたしは嫌よ、一人でも生き残るわよ」
珍しくリツコが声を荒げた。普段激高する事のない彼女だがミサトの言葉はリツコの心に突き刺さったのだ。
「勘違いしてるわよミサト。あたし達そんなに善人じゃないでしょ、人を騙して悩むほど」
落ち着きを取り戻したリツコが静かに語りかけた。
「・・・・」
「あなただけじゃないわ、善人なんて居ないのよ。みんな生きるのに必死だから、誰かを騙すのもしょうがないのよ、きっと」
ミサトはどう言って良いか分からなかった。リツコの言葉はミサトに、と言うより彼女自身に告げられているように聞こえたのだ。
「でも・・・」
「そう考えなきゃ辛いわよ。大体あなたはお調子者で、思いこみが激しくて、自分を善人だと思いすぎる。だから辛いの」
お猪口を口にしながらリツコは呟く。お銚子は既に三本目だ。彼女自身も心の中に蟠りはあった。
「あんたはどうなの、リツコ」
「あたしは悪人よ。冷酷なマッドサイエンティスト」
ミサトはつい呆気に捕らわれながらも笑ってしまった。彼女にしてみれば幼稚な言い方だ。
四杯目の大ジョッキビールを親父に頼みながらリツコに言い返す。
「じゃあ、あたしは世界征服をもくろむ悪の指揮官!そしてシンジ君とレイはあたしの手下ね」
「ついでに碇司令が本当の極悪人!!最後に正義の使者に倒されちゃうの」
「そうそう、グアアア、再び蘇るぞう・・・とか言ってね」
二人は思わず吹き出してしまった。
「本当に悔やむのはすべて終わってからよ。とりあえず今は作って行かなきゃ、どんな方法でも。出来上がってみてから悔やめばいいのよ」
「何を作るのよ」
「未来よ、あたし達のね」
*
・・・碇、使徒の侵攻が始まったが既に準備はすんでいるな・・・
薄暗い部屋の一角、浮かび上がるホログラムは五体。
・・・息子にあれを与えたそうだな・・・
・・・初号機の初の戦闘、些か危なかったと聞くが・・・
・・・左様、作りはしたが使い物にならないのでは話にならんぞ・・・
ご心配なく。初号機は正常に作動、使徒を殲滅しました。何の問題も見られません。
・・・今後のことだよ碇・・・
問題有りません、赤木博士の報告ではシンクロテストも成功、今後もパイロットとして使えます。
・・・使徒の殲滅、それだけではないぞ。重要なのは・・・
・・・人類補完計画・・・
・・・そうだ、我々の急務だ、碇、忘れているわけではあるまい・・・
分かっております・・・いずれも問題有りません。
・・・では、日本政府は我々に任してもらおう。ご苦労・・・
五体のホログラムは音もなく消えていった。その部屋にはゲンドウと冬月だけが残された。
「補完委員会の連中、使徒が攻めてきたので些か怖じ気ついたのだろうな。小心なことだな」
「ああ、彼らには文句を言うことしか出来んよ」
「碇、かまわんのだな、パイロットの件は・・・」
「・・・ああ、問題ない・・・他に選択肢はないからな・・・」
両手を顔の前でくみ、その表情を隠す。
「いずれ選択できるようになる。使徒を殲滅し続けらればな」
冬月の不安を表すような言葉にゲンドウは答えた。
「そうやって作っていくさ、我々の未来をな」
未だ懲りてないんかい!!(出演者一同)
さて「26からのストーリー第三話」いかがでしょうか。委員会の方々も顔を出してきました。
と言ってもさしたる事はやっていませんけど(笑)。言ってる事はTVとほぼ一緒ですし。
そのうち変わってくるでしょう。
多々ある反省点の内の一つにミサトとリツコの会話が二話後編と中身が同じって事ですかね。
私の思惑としてはリツコの心の拘りみたいなモノを出したかったんですが果たして・・・
手探りで書いてますので是非皆様のアドバイスを。感想でも何でもあんたバカアでも結構ですので是非聞かせて下さい。ちゃんと最終話まで書きますので・・・・。
メール返信率100%!!(マヤ)
では次回第四話『不安の歌を!(仮題)』で逢いましょう。
今回もお読みいただきありがとうございました。
ディオネアm(__)m
ディオネアさんの「26からのストーリー」第三話、公開です!
全開の激しい戦闘から、今回はそこに生きる人々の心を描いていますね。
ミサトさん、そしてリツコさんも、苦しんでいますね。
「生き残るために」・・・・辛い言い訳です。
アスカはレイの登場で今まで当たり前だった「シンジが側にいる」を考えはじめて、
レイはアスカのためにうそを付くシンジに不満を持ったりして、
ラブコメ−と言うよりも一寸シリアスラブですね−爆発! となるのでしょうか?
私が気に入ってしまったのは、ゲンドウやリツコさんの妙なとぼけた所なんですよ。
指を折りながらシンジの悪口を並べるゲンドウや、「おごりでしょ」という
言葉に凍り付く視線で答えるリツコさんなんていい雰囲気ですよね。
読者の皆さん、ディオネアさんはとても丁寧なメールで答えてくれますよ。
ぜひ、感想メールを出してあげてくださいね!!