26から
のストーリー
第一話:動き出す日常
第三新東京市の空は白々しいほど晴れ渡り、屋根の上で雀達の世間話が絶え間無く聞こえる。
地上では時折通勤途中であろう人たちの駅に向かって小走りに去っていく姿があった。
2015年4月1日。
今日は平日であり、それぞれ新しい環境での生活を始める人々が大勢いるであろう。
今ベットの上でひたすら惰眠を貪っている少年も今日、“新学期”を迎えるはずであった。
が、未だ夢の中。既に目覚し時計は一度、御主人を起こしその役目を果たした。その後に再び眠ったのは時計の責任ではない。
「い・つ・ま・で・寝・て・る・の・か・な。この馬鹿シンジ!!!とっとと起きろおおおお」
少年の半分ほど開けたその目には、一人の少女が映し出された。はちきれんばかりの生命力に溢れ、その背中には純白の羽が生えていても何の違和感もない栗色の髪の可憐な少女。
その名をアスカと呼ばれている。しかし布団を剥ぎ取られ夢の国から追い出された少年には、まるで黒い羽が生え、ついでに黒い矢印型の尻尾が生えているように見えたかもしれない。
「いいかげんに起きなさいよ。何時だと思ってるの!!」
「あ...あと五分だけ...それじゃあ...お休み」
「今日から新学期でしょ!!全く何時までも同じ事を繰り返さないで!」
役に立たせてもらえない目覚し時計をかわいそうに思ったのか、幼なじみである彼女がシンジを起こし始めて既に七年目。よくよくあきもせず十年一日のような会話がその間にずっと繰り返されてきた。と言う訳で既にシンジの起こしかたは心得ている。
“強引にたたき起こす”
それゆえシンジの布団は既に完全に剥ぎ取られ、そして今ベットから蹴り出されたところである。
「なにするんだよう」
目をこすりながらグチるシンジの頭の上に制服と靴下が一そろい降ってきた。
「さっさと着替えて。あたし先に下りてるから」
アスカはそう言い残すと、重力とは無縁のように一階へと軽やかに降りていった。
...起こしてくれるのはいいけどもう少し起しかたってものが在るよなあ。蹴っ飛ばすかなあ、普通...もう少しやさしく起こしてくれても....
贅沢ここに極まり。
一階の食堂には既に彼の父親とアスカが席について紅茶を飲んでいる。彼の母親は台所から朝食を運び込むところであった。
シンジの父親である碇ゲンドウは寝ぼけ眼で入ってきた最愛のばか息子をひと睨みし、
「情けないやつだ。人に頼らねば起きれんとはな。」
と、新聞紙の向こう側から言い放った。アスカがうんうんと肯く。
顎鬚を生やし、色眼鏡ごしの鋭い眼光、はっきり言って堅気にはどうしても見えない。が、14年も親子をやっていればいい加減馴れてくる。
「何だよ。父さんだって起きれないくせに」
シンジは一応言い返してみるが、やはりすぐに反撃されてしまう。
「つくづく見下げたやつだ。そうやって他人を引き合いに出して逃げるとは。」
「はいはい。さっさと食べていかないと遅刻するわよ。貴方も今日は冬月先生が帰ってこられるんですからね。迎えに行くのに遅刻したらまた叱られますよ。」
新聞を取り上げながら代わりに夫であるゲンドウにこんがりと焼けたキツネ色のトーストを渡した。
「分ったよ。ユイ」
ショートカットの良く似合う優しげな表情を持つ女性に彼は返事を返した。
シンジは夫婦喧嘩というモノを見たことがない。彼の記憶の中には常に仲の良い夫婦の姿があった。いつもの光景。ほぼ変わりのない会話。
「冬月のおじさん帰ってきたんだ」
シンジが不意に口を開いた。
冬月コウゾウ。
碇ゲンドウの仕事の関係者らしいがシンジに詳しい事はよく分らない。だがお年玉とクリスマスプレゼントを毎年貰っているので覚えは良い。それに背が高くロマンスグレーの髪と隙のない着こなし、物腰の柔らかさ、上品な雰囲気、老紳士という表現がぴったりないずれも彼の父親には見当たらないものを兼ね備えていた。尊敬の念を持っている人物の帰国は彼にとっても大事な事であった。
「ふん、お前には土産などないな。出国前に断った。癖になるからとな。ああ、アスカ君の分はしっかり買ってくるように頼んでおいたぞ。ハンドバックか何かアクセサリーを買ってこいとファッション雑誌も一緒に渡しておいた。」
いけだかな態度、怪しげな雰囲気、ヤクザかマフィアという表現がぴったりな彼の父親は、口元にこれまた怪しげな笑みを浮かべていた。
*
「おじさま、おばさま、いってきます!!」
「...いってきます...」
アスカとシンジはそれぞれの挨拶を残すと玄関から学校へと消えていった。
「貴方ったらまたそんな事言って...本当にシンジをからかうのも程々にしてくださいね。さあ、私達もそろそろ支度しないと...」
「ふっ、問題はない。それより今日だったな、彼女が来るのは。」
先ほどまでの表情とは違う、少し真剣さが二人に表れている。
「ええ...上手くやって行けるのかしら?あの子達と...」
「そうだな...成るようにしかならん、これだけはな。」
「あの子達は二人ともいい子だから...大丈夫ですよ」
「ああ.....」
*
「そういえば今日転校生がくるんだよね」
シンジの学年に新しい生徒が転校してくる事を校内に幅広い情報網を持つ友人に聞いていた。
「女の子だって言ってたけど...どんな娘だろう」
シンジのさり気ない台詞はアスカの耳に届き、彼女の機嫌を大いに損ねる結果となった。
「興味あるのかなあ、シンジ君は。ふん!!鼻の下伸ばして見っとも無い!!」
「何だよ、別に興味なんてないよ」
「どうだか。興味津々て顔しちゃってさ。スケベ」
「そんな事ないっていってるだろ!!」
シンジを非難がましい目で見ているアスカとむきになって否定するシンジ、二人はギャアギャア言い合いながら学校まで30分ほどの道程を歩いていた。
やがて二人は交差点に差し掛かった。この交差点を抜ければ後10分ほどで学校である。
未だに言い合っていた二人だったがここでシンジは足を止めた。何かを見たような気がしたから。
「?」
シンジの右手側の道路の先に一人の少女が立っていた...ような気がした。
無論人の住んでる市街地である以上、同年代の少女を見掛けるのはごく当たり前だがなぜか気になった。
「何やってるのよ。早く来なさいよ」
アスカがせかす。再びシンジが其処を見ると誰も居ない。
...気のせいか...な...
シンジは慌ててアスカの元へ駆け寄った。
「何かあったの?」
「うん...気のせいだったと思う...何でもないよ」
「?」
いまいち要領を得ない会話をしているうちに、二人は学校の前へと到着した。
余裕の25分前であった。
*
「新学期から夫婦で登校かいな。かあっ!見せ付けるのう」
教室に入ってきた二人を悪意のない冗談と笑顔で迎えたのは、幼なじみの鈴原トウジだった。
アスカと同じように三人とも幼稚園の時からの付き合いで、それも小学校の6年間ずっと同じ教室、中学へ入学しても同じ教室、そして進級した今回も同じ教室だった。
「いやな予感してたのよねえ。ああ、やんなっちゃう。」
辟易とした表情でアスカは、それでも冗談のお礼に手に持っているバックで“バコン”とトウジの頭をたたいた。
「シンジ、転校生な、このクラスに来るぜ」
デジタルビデオを覗き込みながらいきなり話しかけてきたのは相田ケンスケと言う中学に入ってから知り合ったクラスメイトだ。
「あ...そうなんだ」
交差点で見かけた気がした少女の事が気になっているシンジは、興味無さそうに返事を返した。
「しかしな、只者じゃないぜ。何しろこのケンスケ様の情報網に、何一つ引っかからなかったんだからな。名前も、住所もな。」
確かにケンスケの校内における情報収集力はたいしたモノで、さまざまなネットワークで情報を仕入れてくる。今回も転校生が女子と分った時点ですぐに調査に動いたが何一つ得られなかった。
「お前が調べて分らんかったとはなあ。ほんまタダモンやないな。せやけど今日ここに来るんやろ、そしたらゆっくりお顔を拝ましてもらおうかの」
「誰よりも先に情報を仕入れる、それで価値が出るんだぜ。みんなと一緒じゃしょうがないよ」
父親が記者をやっている為かかなりケンスケはその影響を受けていた。もっとも彼の場合、他にも理由があるのだが...。
「何時まで馬鹿な話してんの!!鈴原あなた週番でしょ、日誌とって来なさい」
おさげの良く似合う少女がトウジの耳を引っ張りながら連れ去ろうとしていた
「あたたたたた、わ、わかっとるがな。いいんちょ、い、痛い、痛いでほんま」
いいんちょと呼ばれた少女は名を洞木ヒカリといい1年のとき同じクラスで学級委員長をしていた為、トウジにそのまま呼ばれている。
常にまじめな何かと口うるさい少女だが、多くの友人を持ち、クラスメイトから好かれているのはひとえに性格の良さによるものである。
ちなみにアスカとは親友の付き合いをしている。
真面目な少女が不真面目な少年に説教しているとき、
「来たぞ!!」
独特のダミーノイズを響かせサイドターンで愛車のルノー(EV改)を止め、颯爽としたいでたちで一人の女性が車を降りた。
ケンスケが愛用のを構え、窓から身を乗り出した。シンジも一緒だ。
「ほんまか!!」
すばやい身のこなしでヒカリの拘束から逃れるとやはり同じように身を乗り出した。
「ミ・サ・ト・先生!!!!」
思いっきり手を振りながら担任教師の名を呼んだ。
葛城ミサト。年齢29歳。独身。国語教師。2−A担任。この校内で男子生徒どもの人気を完全に攫っている。明るく、話が分り、いつも親身になってくれる姉御肌の女性教師、おまけ運動神経も良く、とどめに美人。
人気が出ない訳がないといったところか。
「やっほー」
電線に止まった雀の集団よろしく、窓際に一塊になった野郎どもにたいして、サービスのつもりかVサインを出した。
「ミサト先生!!やっほー!!」
反応の良さに気を良くしたのか今度は投げキッスを彼らに飛ばした。
「おおおおおおおお!!ミサトせんせーーーーこっちも!!」
あちこちから同様の叫び声が沸き上がる。
14歳といえば思春期のど真ん中。相手が年上の美人では無理もない。もっとも二人きりになると今度は縮こまってしまうのだが...。
リクエストに答えるべく、再び投げキッスをしようとしたとき後頭部に衝撃を感じた。
「何をやってるのよ。全く見っとも無い」
憮然とした表情を見せた女性が彼女の後ろにいた。
前の籠に、保温可能な無骨な形の弁当箱を積んだ婦人用自転車、いわゆる“ママチャリ”にまたがり、お調子者の同僚を注意したのは赤木リツコという理科の教師だった。
「あ、リツコおはよう。ちょっちサービスしすぎたかな。へへへ」
反省の色がかけらどころか微塵もない様子である。
「全く...いくわよ....」
リツコはこめかみを幾分ひくつかせ、ミサトは笑顔で手を振りながら職員室に向かった。
「...あんまり深入りしない方が良いわよ。後辛いから」
「そうね...」
ミサトの表情はうってかわって複雑だった。
*
「男子諸君!!おっ待ちかねの転校生だああ!!」
「おおおおおおおおおおおおお!!!!」
ミサトの派手な紹介で入ってきた少女を見るなり2−Aの男子生徒は、いっきに沸き上がる。
朝の光に静かに煌くプラチナブルーの髪、吸い込まれるような白く美しい肌、赤い瞳、そしてそれらをまとった、まるで幻想の世界から飛び出してきたような少女。
クラスの担任は彼女を綾波レイと紹介した。
「くそ!!」
ケンスケは今回情報を仕入れられなかった事を心の底から後悔している。
トウジは
「ほう」
と言っただけでさほど興味も無いようである。
シンジは彼女を我を忘れたように見つめていた。
「!!...彼女...さっき...」
アスカはそんなシンジを見て
「やっぱり鼻の下伸ばして...バカシンジ。後でめい一杯いびってやる!!」
「はいはい。彼女の質問は休み時間にでもして。とりあえず、シンジ君が真剣にあなたの事見つめてるから...シンジ君面倒見てね」
「...は、はい!!」
ぼうっとしていた為、ミサトが何をいっていたのか気がつかなかったが、反射的に返事をしてしまったシンジ。いっせいにクラス中から冷やかしの声が上がった。彼としては戸惑うしかない。
何処かで鉛筆の砕ける音がした。
ミサトは軽く笑いながら
「じゃ、綾波さん。シンジ君の隣に座ってね」
本当に都合よくたまたまシンジの隣が空いていたので彼女の席を其処にきめると、話の分るミサト先生は、さっさと教室から立ち去った。H・Rの凝り時間はご自由に、といったところのようだ。
そしてこの時点でシンジはクラスの大半の男子生徒と、一人の女子生徒の怒りを買う事になった。
*
春休みの宿題の提出、プリントの配布、各連絡を受けた後、大掃除を行い彼らは帰宅となった。転校生の綾波レイは既に用事があるという事で帰宅していた。
「でれでれしていて見っとも無いったら在りゃしない!。ほんっとにスケベなんだから。バッカシンジは。」
H・Rから何回同じ台詞を聞かされたろう。其のたびにぶたれるはいびられるはで散々な目にシンジは遇っていた。シンジにしてみれば何故ここまで迫害を受けなければならないのか良く分らない。第一、僕が何したんだ、という思いが14歳の彼にはある。
ただ...そう...ただ気になったんだ...どうしてかわからない...
ぼうーーーーーっと自分の心の中に沈み始めたシンジをアスカは力ずくで引き上げた。
「またぼうーっとして!!あの娘の事考えてたんじゃないの?いいかげんにしなさいよ!今日ずうっとあの“レイ”って娘の事見てたもんね。ふん!!」
「...そんな事...ないよ。ただ、一寸気になるんだ...なんていうか」
再び、沈み始めるシンジ。アスカの機嫌を一層悪化させた事に全く気づかない。
結局、答えは出なかった。
*
「ただいまー」
アスカとシンジは自宅に着くとそれぞれの部屋で着替えを始めた。
アスカと一緒に暮らしてどれくらいになるだろう。彼女の部屋の方を見ながらシンジはなんとなくそんな事を考えた。
彼女が一緒に暮らさねばならない理由は殆ど知らない。何しろ幼稚園になる前の話だ。込み入った事情がある事はなんとなく想像がつくが、それを追求したいとは思わない。
既に彼女の事を本当の家族として認識してしまっているので、今更細かい事はどうでもいいと思う。
と言う訳で思春期を迎え一緒に住む男の子に、それまでとは違った感情が芽生え始め戸惑っているアスカの気持ちに、ただでさえ鈍いシンジが気が付くはずなどない。
せいぜい“おこりっぽくなったなあ”などと考えている始末である。
それより彼女、綾波レイの事がやはり気になる。
プラチナブルーの髪、白い肌、赤い瞳、変わっている。それより何より彼女の持つ雰囲気、それはとても冷たく、無機質な感じで他を近づかせないものを持っていた。その為か、彼女に質問をしたものは誰も居なかったのだ。男子生徒など聞きたい事は山脈一つ分ほどあるのだが。
「シンジ、お昼食べるんでしょ。降りてきなさいよ。」
アスカに呼ばれ慌てて下に降りた。ぐずぐずしていたら何いわれるか...それより自分の分のお昼も食べられてしまうかもしれない。今日のアスカならやりかねない。
朝からずっと機嫌悪かったから....。
テーブルの上には、母親のユイが用意しておいたから揚げとサラダが並んで、シンジを待っていた。
「どういうこと、これ」
アスカの前に置かれたから揚げと、シンジの前に置かれたから揚げの数が一目見て分るほど違う。無論アスカの方が多い。
「あら、何の事?」
「僕のから揚げとったろう。返せよ」
「アーラ、最初っからこうだったのよ。何その顔、この私を疑う気?」
「うそつけ!!早くよこせよ」
「男がから揚げの一つや二つで喚かないでよ。ほんっとに細かい男ねー」
一つや二つないのなら騒がない。一つや二つしかないから騒ぐのだ。
「僕だってから揚げ好きなんだぞ!!そんなのないよ!!」
「シンジが来るのが遅いから悪いのよ!!悔しかったら取ってみな。へん!ほらほらほら」
挑発するような態度でシンジをからかうアスカ。しかし
「...分ったよ...いいよ」
あっさりと諦めシンジは食事を始めてしまった。アスカは一瞬と惑ったがすぐにある感情が沸き上がった。苛立ち。
あっさりと諦め、引っ込んでしまうシンジに無性に腹が立つ。
いつもすぐに諦め、深追いはしない。断られるとすぐ諦める。
そんな態度がアスカには、歯がゆくて仕方ない。誰に対しても、何に対してもそういった態度なのだ。このところそう言った事が多い感じがする。
...それにこのところ、シンジは何かに関心を持つということが、無いような気がする。レイって娘に興味を示してたけどそれくらいよね、あいつが興味示したのって...
何かと同居人の事が気になって仕方なかった。そして心配でもあった......。
*
「お久しぶりですわ、冬月先生」
「何ヶ月ぶりかな。どうかね調子は」
埼玉第二新国際空港で碇夫妻はドイツから帰国した冬月を迎えていた。
「とりあえず、車に戻りましょう。先生もお疲れでしょうし」
「ああ」
三人は空港の地下にある特別駐車場に向かった。其処には彼らの乗ってきた黒塗りの高級車と体格のいい運転手が待っていた。
「どうだった、向こうは?」
「大騒ぎだよ、開発もかなり遅れていたな。もっとも今更どうしよううもないが。それよりこっちの方はどうなのだ?彼女は何といっている?」
「問題はない。予定どうり進んでいる。ドイツの方の遅れもこちらが上手く行けば何とかなる」
ゲンドウは片手で眼鏡を押し上げると外の風景を眺めた。
平和な風景、平凡な日常。しかしこの場の三人にはとても貴重なものに映った。より多くの事を知っているからだろうか...。
「レイが来ました。家で預かるつもりです」
ユイの表情はうつむいている為、冬月にはいまいち読み取れなかった。
「君が責任を感じる事はないと思うが...」
ゲンドウの方に目をやるとレイを預かる事を納得しているようで、肯いていた。
「そうか...それでも構わんだろうな。ただ、あの事で責任を感じない方が誰の為にもいいことだと思うがね」
ユイはこくと肯くと笑顔を返事の代わりとした。だがそれは悲しげな笑顔だった。
彼は話を変えるかのようにゲンドウに話し掛けた。
「政府に話はつけてあるのか?またうるさいぞ国連辺りがいちゃもんを付けて来かねん。うちも色々あるからな。」
「問題はない。それに奴等では事態に対応できん。放っておいても向こうからすがりに来る」
「つまり...話してないって事か...」
「ああ...忘れていた...」
悪びれ模せずにゲンドウはそう言い放つと、冬月はこめかみの辺りを押さえながら気を取り直した。
「いよいよだな」
「ああ、仕方あるまい。どの道我々には選択肢など用意されていないのだからな。暫くは起きた事に対処するしかない」
再び外に目をやるゲンドウ。車は自宅へと向かっていた。車のトランクには冬月の荷物とアスカへのお土産が積まれている。
「しかしレイの事はあの二人に話してあるんだろうな。お前が預かる事を」
「...あなた言ってくださったんでしょう?...自分で言うからって...まさか...」
「ああ...忘れていた...」
「あなた!!」
窓の外に目を向けたままで、いや、既に振り替える事も出来なくなったゲンドウに二人の冷たい視線が注がれた。しかも一人の視線には殺気も込められているような気もする。
「も、問題は...無い...と...思う...がな」
彼の首筋に冷たい汗がツウっと下りていった。
窓の外には、これから驚かねばならないシンジとアスカの二人がすむ第三新東京市が、鮮やかな夕日の中に映し出され始めていた。
[学園EVA]ものかな? と読み始めましたが
いろいろ謎がありそうで続きが大変楽しみです。
オリジナル要素の 強いSFエヴァという「めぞんEVA」になかったジャンルの小説で更に当Pageを魅力あるのもにする作品です!
皆さんもディオネアさんに感想のメールを送って下さいね!!!