長野県、第2新東京市(旧松本市)。
第三中学校講堂内。
弦楽四重奏、練習開始22分前。
誰もいない講堂に現われた、チェロのケースを抱える一人の少年。
「・・・まだ、誰も来てないや。」
少年は手入れの行き届いたチェロをケースから取り出し、それを待ち望んでいた4つのパイプ椅子の一つに腰を降ろした。
目を閉じて軽く息をつき、弓を構える。
第四弦、調弦。
そして、バッハ無伴奏チェロ組曲、第一番、ト長調、作品1007より前奏曲。
覚えている未来。
時々とても優しい目をする、お酒の好きな女の人。
一度だけ微笑んだ紅い瞳の少女。
いつもケンカをする蒼い瞳の少女。
好きと言ってくれる銀の髪の少年。
知らないけど、覚えている。
みんな、少年に取ってかけがえのない人になるはずだから。
「おはよう、碇君。」
「あ、おはよう。」
同、第三中学校講堂内。
練習開始10分30秒前。
先客のいる講堂に現われた、ヴァイオリンケースを担ぐ少女。
きっと瞳が蒼い少女。
「今日、何やるんだっけ?」
「パッヘルベルのカノン。」
「いいわね〜、チェロは。和音のアルペジオだけなんだもの。」
少女は真新しいヴァイオリンをケースから取り出し、少年の隣に腰を降ろした。
優雅にうなじへと寄せ、弓を構える。
第二弦、調弦。
そして、バッハ無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ、第三番、ホ長調、作品1006よりガヴォット。
少女も夢を見た。
忘れたい未来。
時々とても優しい目をする、あまり髭を剃らない男の人。
いつも何かにおびえている少年。
開くべき心を持たない少女。
生き方がわざとらしい女。
知らないけど、忘れられない。
みんな、嫌いなのに。
「おはよ。」
返事を望まないところから、くぐもった笑い声が響いた。
同じく、第三中学校講堂内。
ヴィオラのケースを手に提げた少女。
きっと瞳が紅い少女。
少女は古ぼけたヴィオラをケースから取り出し、空いている椅子へ腰を降ろした。
ヴィオラ、第三弦。
演奏練習開始、5分43秒前。
無造作に肩に乗せ、弓を構える。
調弦。
少女は夢を見ない。
将来植え付けられるはずの記録。
時々とても優しい目をする、眼鏡をかけた男の人
泣きながら微笑む少年。
壊れやすい心を持った少女。
三つに分かれた女とその娘。
みんな、いつかは消える。
「お、そ、い〜!」
「ははっ、ごめん、ごめん。」
演奏練習時間。
定刻。
最後の席に、微笑みを絶やさない、銀色の髪の少年。
ヴァイオリン、第一弦。
―調弦―。
「行こうか?」
「うん。」
誰もいない玄関。
誰もいない廊下。
誰もいない教室。
そして、椅子を与えられなかった、4番目の少年。
みんな、まだ見ぬ夢の跡。
演奏を終えた銀の髪の少年が立ち上がる。
「君に会えて、嬉しかったよ、シンジ君。」
「うん、僕も、君に会えてよかった。」
「別れの言葉は、言わないよ。きっと、また会えるから。」
そして、銀の髪の少年は、いつものように微笑んで、朝日の向こうに消えた。
演奏を終えた蒼い瞳の少女が立ち上がる。
「じゃあ、碇君。元気で。」
「君も、元気で。」
「多分、次に会うときは、もっとあなたのこと嫌いになってると思うけどね。」
そして、青い瞳の少女は、嬉しそうに微笑んで、朝日の向こうに消えた。
演奏を終えた赤い瞳の少女が立ち上がる。
彼女は何も言わない。
「君も、行っちゃうの?」
「さよなら。」
そして、赤い瞳の少女は、ぎこちなく微笑んで、朝日の向こうに消えた。
「僕も、そろそろ行かなきゃ・・・。」
少年はゆっくりとチェロをしまい始めた。
今日、発たねばならない。
少年が第3新東京市の自分宛てに送った荷物の中に、大きなチェロのケースがあった。
それには、今でも涙の染みが残っている。
DEATH(TRUE)&REBIRTHを見た。
WOWOWを受信できない僕にビデオを送って下さった上原さん、ありがとうございます(^^)
エヴァンゲリオン交響楽のCDを聞いた。
生で聞きたかったな〜(;;)
てなわけで、これ。
創作部分がほとんどない・・・(^^;;;
HIDEさんの『カノン』、公開です。
おお、映画ですね〜
TVでやったんですね。
私、WOWOW入っていないので、見てないです(^^;
入っていても、見ていなかっただろうけど(^^;;;;
チルドレン達の合奏シーン、
こうゆう風に料理されますか(^^)
セリフの間とか、
その台詞自体とか、
出来ていますよね、
あの時の感覚がさらに来るような・・・
さあ、訪問者の皆さん。
タイトル最長記録を狙った(笑)HIDEさんに感想メールを送りましょう!