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西村晃氏追悼企画

感動巨編 ああ人生あり(中編2)
 
 
Writing by HIDE


 

「そこのカップル!ちょっと待ちなさい!」

背後からの声に振り返る一組の男女。

”カップル”と言われて振り返ると言うことはその二人の方にも自覚があるのだろう

振り向いた二人の目に入ったのは、自己嫌悪に苛まれ、頭を抱える赤毛の少女だった

「ど、どないしたんや?!姉御!」

「どうしたんですか?!姉御!」

少女の後ろに付き従う二人の少年が驚いて声を出す。

その二人の目には痛々しい涙の痕が・・・。

ちなみにそれらの3人はなにやら怪しげなマスクをつけていた

目の周辺だけを覆うような、よく仮装パーティーとかで見かける、バレバレのあれだ

わかりやすく言うと、”仮面の忍者 赤影”が着けているやつ。

少女は狂ったように大声を張り上げる。
 
 

「あああああっ!カップルじゃないわよ!カップルじゃ!」
 
 

どうやら自分の口から発せられた言葉で多大なダメージを受けているようだ。

その原因であるところのカップル −シンジとレイ− はその少女の様子を不思議そうに眺めている。

おそるおそるシンジが問いかける

「あ、あのぉ、何かご用でしょうか?」

彼らは少女の正体には気付いてないようだ。

その声で我に返る少女。

「そ、そうだった。くぉらバカシンジ!その女から離れなさい!その女はあんたを誘惑して骨抜きにしようって魂胆なのよ!」

「えっ?ええっと・・・、僕は別にそれでも構わないけど・・・・。」

そう言ってレイの方を見る。

それに応えてレイもシンジを見つめ返す。

「碇君・・・。」

見つめ合う二人・・・。

えもいわれぬ雰囲気だ。

そう、例えて言うなら、『キックオフ』。(一体何人の読者がこのネタを知っているんだろう・・・)

『由美ちゃん・・・』『太陽くん・・・』の世界である。

当然嫉妬の鬼と化した少女は黙っていない。

「むっきー!あんたには一生仕えなければならないご主人様がいるはずよ!そんな女にうつつをぬかしてる場合じゃないのよ!」
 
「そっ、そんなこと言われても・・・。だいたいあなたは誰なんですか?僕たちに何の用があるんですか?!

おい、まだわからないのか?こいつは・・・。

それはいいとして、シンジはちょっとだけ強がって見せた

レイにいいところを見せるためだ。

レイは無言だったが、その瞳は『碇君、かっこいい!』と語っていた。

「バカシンジのくせに生意気ねっ!まあいいわ、教えてあげる。私は・・・」

そこで少女は特撮戦隊物を彷彿とさせる決めのポーズを入れた!

華麗かつ力強く、優雅に、美しく。

そして振り返ると、手下1号2号に向かって怒声を張り上げる。
 
 
 

「ちょっと後ろ!合わせなさいよ!格好つかないじゃない!」
 
 
 

事態を飲み込めずに呆然と立ちつくす二人の手下。

やがて彼らの瞳に涙が浮かぶ

「そ、そないなことまでせなあかんのですかぁ?姉御ぉ。」

「トウジぃ、なんかほんとにボヤッキー口調になってるよぉ。」

「あったりまえよ!あんたたちは私の言うとおりにしてればいいのよ!」

二人は、今にも抱き合って泣き出しそうだ。

「・・・あのぉ、それで、お名前は?」

シンジが絶妙なつっこみを入れる。

そ、そうね。聞いて驚きなさい!私は・・・

そこで再び決めのポーズ。

今度は後ろの二人も泣きながら合わせている。
 
 

「正義のマスクマン!ラングレーマスクよ!」

 

凄まじいネーミングセンス

思わず作者の感性を疑ってしまいそうだ・・・。

シンジはあきれてしまい、思わず禁句を口にしてしまった。

「あのぉ、某所の綾○仮面さんのご親戚か何かですか?包帯シュルシュルってやる・・・」
 
 
 
 
 
 
 

そして、沈黙・・・。
 
 
 
 
 
 
 

「だああっ!あんた何てこと言ってんのよ!そう言うのは思ってても口に出しちゃ駄目なのよ!」
 
ご、ごめんなさい。
 
ごめんなさい。

「まったくもう救いようのないぶわかね!お仕置きよ!」

そう言って少女は手下の方に振り返る。

「あんたたちっ!」

「はいぃっ!」
 
直立不動で応える二人。

それを見て少女はニヤリと笑うと、再びシンジたちの方に向き直る。

つま先はきっかり45度に開き、両足の間隔は25度。

左手はキオスクで牛乳を飲むサラリーマンのごとくしっかりと腰に当てられ、右手は笑うせぇるすまんのごとくシンジたちに突きつけられていた。

そして、言ってしまった。
 
 

 

「やぁっておしまい!」
 
 

 

「アイアイサー・・・。」

手下1号2号は泣きながらシンジとレイに向かって走り出した。

哀れ。

レイがシンジを押しのけて一歩前に出る

シンジを護るときだけに見ることが出来る、敵対心むき出しの険しい表情。

アヤナミストにとっては愛らしいことこの上ない。

そして、凍てつくような冷たい視線で迫る二人を睨み付け、呟いた。

 

 

あがたは死なないわ私が森魚だもの。
 
 

 
 
 

そのころ・・・
 
 

冬月様御一行はNERV本部へと帰還の途中だった。

アスカのことは気にかかるが、いつまでも副司令が留守にしているわけにはいかない。

司令はと言えば、どこをふらふらしているのかわかったものではない。

冬月は歩きながら腕を組み、なにやら考え事をしていた。

よほど没頭していたのだろう、知らず内容が口に出てしまっている。

「ふむ、もう少し改良の余地があるな・・・。今度赤木君に頼んで置こう。」

それを耳に挟んだマコトが不思議そうに問いかける。

何を改良するんですか?
 
「あ、ああ、口に出てしまっていたかね?た、大したことではない、零号機のことだ・・・。」

顔がちょっとひきつっている。

そう、嘘だ。

先の戦いではマコトとシゲルの大活躍によって、悪党どもを追い払ったのはご存じの通りである。

それについては、実は裏がある。

冬月は二人を忠実な僕にしようとしてある計画を実行していた。

仕事中の二人は常にパソコンのディスプレイとにらめっこしている。

そこに目を付けた冬月は、赤木博士にあるプログラムの開発を依頼した。
 
 

* 
 
 

赤木研究室。

猫グッズと怪しげな機械と異臭を放つ薬品の中に二つの人影があった。

そのひとつが口を開いた。

「例えばだよ、常にパソコンの前に座って仕事をしている人間がいるとする。」

男の声である。

その少しばかりしわがれた声と痩身のシルエットから勘案するに相当の年齢のようだ。

まあ、本人に言わせれば『私はまだ50代だ!』とでも言われそうだが、この際それは置いておこう。

それに応えてもう一方の影も口を開く。

「ええ。私たちのことですね。」

こちらの方は妙齢の女性のようだ。

冷静な声のトーンからして、有能な美人秘書と言った表現が一番しっくりとくるだろう。

なぜ美人なのか?と疑問を持つ方もいらっしゃるかと思われるが、気にしないでほしい。

作者の趣味だ。

「それでだ、そのパソコンにサブリミナルプログラムを走らせてその人間を洗脳することは可能だろうか?」

男の人影はそう言って不気味に唇を歪めた。

「理論的には、可能です。」
 
女の方もそう答えて同じように唇を歪める。

その日、NERV職員の過半数は怪しく不気味な笑い声を聞いた。

それらの職員は口を揃えてこう言った。

「お、おらぁ、聞いてしまっただよ!赤木博士の研究室から響いてくる、じいさまのような、若い娘っ子のような、おっとろしい笑い声を・・・。」

同時通訳。

この出来事は後にNERV七不思議として語り伝えられることになる。
 
 

* 

 

「しかし、結果的には、青葉君は熱気○サラになっただけで、日向君に至っては高橋○樹と里見○太郎の区別がつかなくなっただけだしな・・・。」

冬月はまだぶつぶつ言っている。

大家さんを始めとする熱○バサラを知らない人たちのため、あとがきに説明の場を設けた。

それ以外にも専門用語には注をつけてある。

前述の方々はそちらを参照してほしい。
 
 

シゲルとマコトはその冬月の様子に首を傾げながらも、その後に黙って付いていく

その時だ!

青葉シゲルの額にまるでそこから生え出たかのように、真っ赤な風車が突き立ったのは!

「お、おいっ!シゲルっ!大丈夫か?!」

シゲルは額から真っ赤な液体を吹き出しながら、阿波踊りを踊っている。

「えらやっちゃ、えらやっちゃ、よいよいよいよい・・・」

冬月はその風車の角度から飛んできた方向を割り出し、そちらに目を向ける。

身長2メートルはあろうかという2頭身の忍者がそこにいた。

巨大で無感情な瞳。

ほっぺにぐるぐる。

青装束にほっかむり。

要するに、くーさりかたびら、わらじばきー。

である。

それは冬月に向かって軽く頷いてみせると、消えた。

「むっ、これは・・・。」

冬月がシゲルの額から風車を引き抜く。
 
シゲルの額からは、いっそう激しく鮮血が吹き出した。

「阿波の殿様蜂須賀公が、今に残せし盆踊り。踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ、損、損・・・」

えらやっちゃ、えらやっちゃ、よいよいよいよい。

シゲルはそのまま踊りながら地平線の向こうに消えていった。 
 
 

冬月が引き抜いた風車には手紙が付いていた。

当然、奴からのメッセージである。

冬月がおもむろに開く。

それにはこう書かれていた。
 
 


   ごろおこうえ
 

にごいきのぱいろっとがわるいことおしよおとしてます
シソジくんがあぶないです
 
やしち    


 
 

「むっ、動き出したか!思ったより早かったな。」

冬月はその手紙を握りしめた。

「青葉君!日向君!戻るぞ!」

そう言って走り出す。

「どうしたんですか?!」

「待って下さいよ!副司令!」

頭の上にたくさんの?マークをきらめかせながらも、シゲルとマコトがそれに続く。

・・・あれ?

ああそうか

シゲルの額には漫画絆創膏が付いている

もう大丈夫だろう
 
 

 
 

「あ、綾波・・・。それちょっと変だよ・・・。あがたって何?それに森魚って・・・?」

レイがシンジの方を振り返り、応える。

表情は変わらないが、その瞳には暖かさが宿り、その声には常人には聞き分けられないほど僅かではあるが、優しさがこもる。

大丈夫碇君は心配しないで。

いや、そうじゃなくて・・・。

なおも言い募ろうとするシンジ。

だが、ラングレーマスクの怒声がそれに被さる。

「こんのぉー!いつまでもいちゃいちゃしてんじゃないわよ!トンズラ!ボヤッキー!早くその二人を引き離すのよ!」

ボヤッキーと呼ばれた関西弁の手下1号が吐き捨てるように呟いた。

わかってまんがな、まったく女のヒステリーには手ぇつけられへん・・・。

「なんか言った?!皮かむりっ!」
 
 

・・・泣くな、泣くんじゃない、ボヤッキー。

「お、お前かぶってるのか?」

・・・それを言っちゃいかんだろう、トンズラ。
 
 

「うおおおおおぉ!」

切れた手下1号が泣きながらレイに掴みかかる。

手下2号は必然的にシンジに向かう。

だが、その時・・・。
 
 

「ちょおっと待ったぁ!」
 
 

ちょっと待ったコールだ。

今時珍しい。

作者に芸のないのは置いといて、全員が一斉に声のした方を見る。

お察しの通り、シゲルとマコトを従えた冬月がそこにいた。
 
 

「ちっ!」

ラングレーマスクが舌打ちする。

彼女は冬月たちが駆けつける前に事を済ませたかった。

内心、しくじった!と思いながらも、それを表情には出さず、強がって見せた。

不敵に笑みを漏らす。

「来たわね。じじい。」

冬月の眉がぴくりと動く。

続いて手下1号。

「でよったな、じじい。」

冬月のこめかみに青筋が浮かぶ。

さらに手下2号。

「あ、あのときの、じじい。」

じじいは切れた。
 
 

「俺はじじいじゃないっ!外見で人を判断するなぁ!」
 
 

「だって、どこ行ったってじじい扱いじゃない。悔しかったらその白髪頭を何とかしなさいよ!」

「うるさい!これはロマンスグレーだ!」

「あと、江○2:50みたいな体型も何とかしなさい。栄養失調で今にも死にそうじゃない。」

「そんな伏せ字が出来ない人間を引き合いに出すな!」

しかし、そんな冬月の怒りも虚しく、悪党どもはじじい談義に花を咲かせている。

「でも、どう見てもじじいよねぇ。」

「せやな、じじいや。」

「うん、じじいだ。」

「サバ読んでんじゃない?」

「80言うても通用するで。」

「これで碇のお袋さんに横恋慕するなんて、身の程知らずもいいとこだよ。」

「いえてるー!鏡見たことあるのかしら?」
 
 

冬月の背後に燃え上がる炎。

彼は、燃えていた。

星飛○馬もかくや、と言うほどに。

「き・さ・ま・らー!生きて帰れると思うなよ。」

そして、振り返るとお付きの二人に向かって封印を解くキーワードを発した。
 
 

「助さん!かぁくさん!こぉらしめてやりなさいっ!」
 
 
 

その声に撃たれて力が抜ける二人。

やがて、ゆっくりと顔を上げる。

その瞳に宿る狂気の光。

シゲルは緩慢とした動作で背中のギターを取り出す。

マコトは懐から般若の面を・・・。

二人とも唇の両端は不気味に吊り上がっていた。
 
 

「な、何よ、こいつら!」

恐怖におののくラングレーマスク。

手下1号もそれに同じ。

だが、手下2号だけは不敵に口元を歪めると、マスクの上からかけた眼鏡を光らせた。

「ふん。そう何度も同じ手は食わないよ・・・。先生っ!先生っ!」

その声と同時に彼の足下にあったマンホールの蓋が動き始める。

「呼んだか?」

そう言って顔を出した人物は冬月の背後に極太ゴシック体で「ががーん!」と言う文字を浮かび上がらせた。

ついでに稲妻も落ちた。

「き、貴様は・・・!」
 
 

 
 

「綾波、あんまり楽しくなさそうだけど・・・」

「そんなことはないわ。私は碇君と一緒にいられるだけで嬉しいの・・・。」

頬を染めて俯く二人。

「そ、そう?よかった・・・。でも、それならもう少し嬉しそうにして欲しいな、なんて・・・。」

シンジは真っ赤に染まった頬を指先で掻きながら、消え入りそうな声を出す。

「ごめんなさい。こういうときどんな顔したらいいのかわからないの。」

「笑えば、いいと思うよ。」

シンジはちょっとはにかんだ微笑みでそう言った。

「碇君・・・。」

「綾波・・・。」

手を取り合って見つめ合う二人。

遊園地のコーヒーカップ。

二人は書いてる方が恥ずかしくなるほどの空気を創り出していた。

彼らは、幸せだった・・・。
 


物語は佳境へ・・・
Ver-1.00
ご意見・ご感想・あがた森魚&江○2:50に関する情報等 hide@hakodate.club.ne.jpまで!

<あとがき>
 

・熱気バ○ラ
 

某マ○ロス7の主人公

自家用のヴァルキリーを持っていて、その銃弾にはスピーカーが仕込んである

それを敵の機体に撃ち込み、「俺の歌を聴けぇ!」と叫びつつ、あまり上手くないロックを歌う

それで敵方の洗脳が解けてしまう。

マク○スはあまり見ていないが、おそらくシリーズ全体に言えることだろう。

バカである。

・キックオフ
 

某大手漫画雑誌で10数年前に連載されていた青春ラブコメ漫画。

当時は一部で流行語にもなった。

主に仲の良い男女を冷やかすときに使われる。

例 「何だよ、お前ら『キックオフ』してんじゃねぇよ!」

・星○雄馬
 

カキーン!

ザッザッザッザッザ!

ザザー!

ちゃーん ちゃらららっららー ちゃーんちゃーんちゃんちゃんちゃちゃーん

ちゃーらーらーらー らーらーら ちゃんちゃちゃーんちゃん

ちゃららららららららららら

 

江頭○:50
 

伏せ字が無意味。

数ヶ月前まではいたる所で見ることができたが、現在では大変まれである。

父は2:45。

 

・あがた森魚
 

わかりません。

 
 

・仮面の忍者 赤影
 

私はそんなに年寄りではない。

・綾波○面
 

ごめんなさい。

・トンズラ
 

全国の女子高生のみなさーん
 

・ボヤッキー
 

共通点=怪しげな関西弁。
 

 


 HIDEさんの『ああ人生に涙あり』(中編2)、公開です。
 

 なるほど、【マ○ロス7】とは電波物だったんですね。

 菊地さんの小説で出てきたときも、
 なんかキてる登場していたし・・・・・

 勉強になるなぁ(^^)
 ・・・・・あまりしたくない勉強だけど(爆)
 

 解説にあった他の用語は1つを除いて知っていました・・・

 【仮面の忍者 赤影】を知っていたのは、深夜の再放送で、ですよ(^^;
 私は・・・・オヤジギリギリです・・・(^^;;;;

 

 さあ、訪問者の皆さん。

 3ヶ月ぶりに続きを書いたHIDEさんに感想メールを送りましょう!!

 私も『ひなまつり』をどうにかしなくちゃ・・・


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