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「めぞんEVA」100,000ヒット記念

 

 −第二新東京市郊外・碇家屋敷内・碇シンジ・レイ夫妻の部屋

 

 僕が部屋に入ると、ちょうど綾波が着替えを終えたところだった。

 綾波が着ているのは、光沢のある紺色のドレスだ。白い両肩が見えている。

 シンイチロウを産んでから、彼女の身体は以前より丸みを増している。

 そのため、うなじから肩の辺りの線はますます美しく魅力的なものになっている。

 僕は思わず見とれてしまう。

 「・・きれいだよ・・綾波」

 綾波が振り向いた。

 『・・ありがとう・・あなたも早く着替えてね。服はベッドの上に出してあるから』

 「・・うん」

 僕はベッドの方を見た。そこに置いてあったのは僕が綾波との結婚式に着たタキシードだった。

 「えっ、これを着ろって言うの。ちょっと大げさじゃないの?」

 『ヨシエさんがそれを着るようにって言ったの』

 「ヨシエさんが?」

 『ええ、碇家の当主がお客様をお迎えしての夕食だから、ですって』

 「・・ヨシエさんがそう言うんじゃ、仕方ないね」

 そう言いながらも僕はなんだかとても”不公平な”気がしていた。

 (綾波はいかにも涼しそうなノースリーブのドレスを着ているのに、僕はこんな暑苦しいものを着なければならないなんて)

 しかしヨシエさんの意向に逆らうわけにはいかなかった。

 彼女はなんと言っても、この碇家の”ゴッドマザー”なのだから。

 僕は綾波に手伝ってもらい着替えを済ませると、共にダイニングルームへと向かった。


【RETURN】(後編)

作・H.AYANAMI


 −碇家ダイニングルーム

 

 入り口の扉の前で待っていると、ほどなくシンタロウさんにエスコートされたアスカがやって来た。

 アスカの格好を見て僕は圧倒されてしまった。淡いサーモンピンクのロングドレス。

 あたかも昔のヨーロッパの貴婦人を思わせる風情だった。目は自然に”強調された”胸元にいってしまう。

 「何いやらしい目で見てんのよ」 アスカが僕に向かって言う。

 「ご、ごめん・・僕は・・別に・・その」 

 「うふふ、別に良いわ。このアスカ様の美しい姿を見れば、男なら誰でもそうなるわ」

 「・・う、うん」

 僕はアスカの”自信”にほんの少しだけ呆れた。しかし彼女の言う通りだとも思った。その美しさを目の当たりにしたなら、僕でなくてもみな心を奪われてしまうことだろう。

 『さあ、どうぞ』 綾波がダイニングルームへの”入場”を促した。

 「ええ」 シンタロウさんに手を引かれアスカが室内に入った。僕達もそれに続く。

 

 ダイニングルームでは。ヨシエさんが待っていた。

 「急なことでたいしたものはございませんが・・・」

 テーブルに並べられたものを見て、僕は軽い驚きを覚えた。日頃は使われることのない銀製の食器が並べられ、中央には大量の白百合が生けられており、碇家の家宝とされている燭台までが出され蝋燭に火が点されている。

 「す、すごいわね」 アスカさえ驚きを隠せずに呆然としている。

 にこやかに、ヨシエさんが言った。

 「碇家にとって大切なお客様をお迎えしたのですから当然ですわ。さあどうぞお席にお付き下さい」

 僕は何も言わなかったけど、ヨシエさんは分かっていたらしい・・アスカが僕にとって特別の客であることが。

 「・・ヨシエさん・・ありがとう」

 そういう僕に、ヨシエさんはただ肯いただけだった。彼女が手を叩くと厨房から料理が運び込まれてきた。

 


 

 食事中の話題の中心は、アスカの着ているドレスの事だった。

 「・・驚いたよ。まるでお姫様か何かが家に来たのかと思った」

 アスカは素直にほめ言葉だと受け取ってくれたらしい。

 「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいわ。ある意味ではシンジの言うことは当たってるわ・・・」

 アスカは自分の着ているドレスの由来を語った。それはおおよそ次のような事だった。

 彼女の養母エリーナのご先祖はオーストリアの貴族だったそうで、ドレスは前世紀の初頭、実際に宮廷で着用されたものだという。言ってみればそれはアスカの家の家宝なんだそうだ。

 

 「ママがこれをくれた時にね・・・」 静かに、アスカはエリーナの言葉を語りだした。

 ”アスカ、貴方と私の間に血のつながりは無いわ。でも貴方は私にとっては娘以外の何者でもないの”

 ”だからアスカ、貴方には私のすべてを受け継いで欲しいの・・・”

 ”貴方には是非これを着て欲しいの。これは「物」でしか無いけど、でも私の貴方への「心」がこもっているのよ・・・”

 アスカは自分の”母”の言葉を一言一言噛みしめる様に話してくれた。

 

 アスカの口調が急に変わった。冗談めかしながらこう言ったのだ。

 「貴方が碇家の”跡取り”であるように、このわたしもフォン・グスタフ・ラングレー家を継ぐものなのよ」
 「世が世であれば、シンジのような”庶民”がわたしと一緒に食事なんかできないんだからね」
 「碇シンジ。頭か高いぞ!」

 「はっ、はあー」 僕はテーブルの上に両手をついて”平身低頭”してみせた。

 「よろしい」 アスカは両手を腰に当て胸を張ってみせる。

 彼女のそのいかにもといった”ポーズ”を見て、ごく自然に笑いがこみ上げてきた。

 「はははは・・・」

 アスカもつられて笑い出す。

 「ふふふふ・・・」

 シンタロウさんや普段は物静かな綾波までが笑い出した。食卓はひとしきり笑いに包まれた。

 その時だった、僕は僕の心が少しだけ軽くなるのを感じたのは。

 (アスカのこの明るさは”本物だ”)

 僕はアスカのこの6年間を知らない。でもいまのアスカを見る限り、僕が思ってたほど不幸な年月では無かったようだ。

 僕は改めてアスカと再会できたことを嬉しく感じていた・・・。

 


 

 食事の後、僕とアスカとシンタロウさんは応接間に移動して談笑を続けた。

 綾波はと言えば、ベビーシッターの人が帰ってしまったのでシンイチロウの面倒を見るために部屋へ戻っていた。

 僕達の前には、アスカのリクエストで”食後酒”のブランデーが置かれている。アスカのグラスはゆっくりと、しかし順調にその中身の量を減らしていた。

 朱に染まったアスカの顔を見て、

 (酔った顔も素敵だな。美人は何をしても絵になるからな)

 などと僕が考えていると、突然アスカが僕のタキシードを指さして言った。

 「シンジ、その服はファーストとの結婚式で着たやつでしょ?」

 「うん、そうだけど・・」

 食事の時のワインとアスカにつき合って飲んだブランデーとで既に酔っていたのだろう。僕は何も考えず素直に答えた。

 アスカの顔から微笑みが消えた。僕の顔を”キッと”睨むとこう言った。

 「バカシンジ!わたしは知ってるのよ・・」

 「知ってるって?一体なにを・・」

 「あんたがファーストとずっと一緒で・・幸福だったってことよ」
 「・・・その間このわたしは・・喪った自分を取り戻すのに必死だったのよ・・」
 「あんたはわたしのことなんか少しも顧みないで、自分たちだけ幸せになったのよ!・・u u u・・」

 アスカは顔を伏せてすすり泣き始めた。

 僕にはアスカにかけるべき言葉が無かった。呆然とアスカのことを見ていた。

 アスカの横に座っていたシンタロウさんが彼女の肩に手を回して、言った。

 「アスカには私がいるよ。だからもう泣かないで」

 その言葉を待っていたかのようにアスカがシンタロウさんの胸に顔を埋めた・・・。

 

 どれくらい経ったのだろうか、やがてアスカが顔を上げた。

 「ありがとう、ゲルハルト。もう大丈夫だから」

 その言葉を合図に二人は互いの身体から離れた。アスカは僕の方に向き直ると言った。

 「シンジ、ごめんなさいね。なんだかいろんなことがこみ上げてきて・・つい、あんなことを言ってしまったの」

 「う、うん。僕は何も、気にしてないから・・」

 「・・ありがとう・・わたしなんだか疲れたから、もう眠るわね」

 立ち上がり部屋を出て行こうとしたアスカの背中に、シンタロウさんが声をかけた。

 「大丈夫だね?アスカ」

 「・・ええ」

 背中越しにアスカは応えた。そして姿勢を正し行進するような足取りで部屋を出ていった。

 シンタロウさんはしばらくアスカの去った方を見送っていた。

 やがてこちらを振り向くと呟くようにこういった。

 「・・アスカの心は君に関してだけ6年前に留まっているようだね」

 「えっ!?」

 「・・いや、なんでもないよ・・私もこれで、休ませてもらいます」

 立とうとした彼に僕は言った。

 「あの・・シンタロウさん・・」

 「何でしょう?」 彼は浮かしかけた腰を元に戻した。

 「僕に何か・・アスカのために、何か出来ることはないんでしょうか?」

 僕の問いにシンタロウさんは真顔になり、そしてこう言った・・その口調は僕を責めているようだった。

 「シンジ君。愛する奥さんや子供を捨てて、アスカのためにだけ生きることが出来ますか?」

 「そ、そんなこと・・」

 「できないでしょう?」 

 僕は黙って肯いた。

 僕が肯いたのを見ると、シンタロウさんは元の穏やかな表情に戻って言った。

 「シンジ君、君は優しい人だと思う。でも中途半端な優しさは却ってアスカを苦しめることになります」

 「シンタロウさん・・」 僕はなんだか泣き出したいような気持ちになった。

 (6年前、僕はアスカに手を差し伸べることが出来なかった)

 (それからだってアスカのことを忘れた訳じゃないけど)

 (・・けれど結局何も出来なかった・・いや何もしなかった・・)

 僕の半泣きの顔を見て、シンタロウさんは優しく言ってくれた。

 「・・・大丈夫です。アスカは自分の力で立ち直った・・・周りの人間は少し手助けをしたに過ぎないんです」
 「・・・今すぐには無理かも知れませんが、シンジ君への気持ちもアスカが自分で整理を付けますよ」
 「・・・ですからシンジ君は何も気にする必要はありません」

 「・・でも・・はい」結局・・僕は肯いた。

 「・・・それでは、先に休ませてもらいますね。お休みなさい」

 「・・お休みなさい」

 シンタロウさんは応接間を出ていった。

 

 一人になった僕は、アスカやシンタロウさんの先ほどの言葉を思い返していた。


  ”あんたはわたしのことなんか少しも顧みないで、自分たちだけ幸せになったのよ!”


  ”愛する奥さんや子供を捨てて、アスカのためにだけ生きることが出来ますか?”


  ”中途半端な優しさは却ってアスカを苦しめることになります”

 

 

 『・・・あなた・・』

 いつの間にか、綾波が僕のすぐ近くに来ていた。

 「ああ、綾波。・・・シンイチロウは?」

 『さっき、やっと眠ったわ・・お客様が来たので興奮していたみたいね』

 「そう・・」

 綾波が僕の傍らに寄り添って座った。

 ごく自然に、なかば無意識に僕の手は綾波の肩に伸ばされた。

 綾波は言った。

 『・・惣流さん、いえあなたにとっては”アスカ”ね・・アスカ、さんのことをどう思ってるの?』

 僕は、綾波のこの唐突な質問に困惑した。

 「ど、どうって?・・僕にとって大切な友人の、一人だよ・・」

 『それだけ?あの頃あなたは、人形みたいだった私のことよりあの人の方が好きだったんじゃないの?』

 「そ、そんなことはないよ!僕はずっと、君ひとすじだよ」

 (僕は僕のその言葉の中に”ほんの少しの嘘”が含まれていると感じた)

 綾波が僕の顔をじっと見つめた。それに耐えきれなくなり僕が目を逸らそうとした時、綾波が言った。

 『私、お願いがあるんだけど・・』

 「な、なんだい、急に改まって」

 『私たちが結婚してからもう1年以上経つのに、あなたは未だに私のことを”綾波”って呼ぶわ・・』

 「・・うん」

 『私は、もう”碇レイ”なのよ。だから私のことは”レイ”って呼んで欲しいの』

 綾波の言うことはまったく正しいことだと僕は思った。妻のことを旧姓で呼んでいる夫と言うのは、考えてみればずいぶんとおかしなものだった。

 「分かったよ。あや、いやレイ。なんだか恥ずかしいけど、これからは君の言うとおりにするよ」

 『・・ありがとう・・』

 綾波が僕に身体を預けてきた。僕はバランスを崩してソファの上に倒れそうになる。

 『あ・な・た(ハアト)』 綾波はとろけそうな目で僕を見る。綾波の”想い”はすぐに理解できた。

 あわてて、僕は言った。

 「ちょっ、ちょっと待って。ここじゃあ何だから・・し、寝室へ行こう」

 『・・・そうね(ウフ)』

 

 僕達は寄り添って自分たちの部屋に向かった・・・。

 


 

 −翌朝

 僕達4人は庭に面したバルコニーで朝食のテーブルを囲んでいた。

 

 「えー、今日ドイツへ帰るって!」

 驚く僕に、アスカはこともなげに言った。

 「そうよ。これでもいろいろ忙しいのよ。それでね、シンジに連れていって欲しい場所があるんだけど・・・」

 アスカが行きたいと望んだ場所。それは”旧”第三新東京市だった。

 僕は言った。

 「アスカ、あそこにはもう何も残っていないんだよ。僕達の知っている第三新東京市はもう無いんだ」

 「・・わかってるわ。でももう一度見てみたいの。わたしたちの、思い出の場所を・・」

 アスカは真剣だった。僕は彼女の望みを叶えようと思った。ふと気になって綾波いやレイの方を見た。

 レイはそっと肯いてくれた。僕は決心する。

 「・・それで何時の便で還るの?」

 「17時よ」

 今はまだ9時前だ。すぐに出発すれば、飛行機の出発時間までに戻ってこれる。

 「それじゃあすぐに行こう。・・レイはどうする?」

 『・・行きたいけど、シンイチロウや家のこともあるし、やめておくわ』

 レイの答えは少し意外だった。だが無理に誘うべきことでもないと思ったので何も言わないでおいた。

 次に僕はシンタロウさんに訊いてみる。

 「私はどうしようかな・・」シンタロウさんはアスカの方を見た。

 「ゲルハルト、ぜひ一緒に来て。貴方にも見て欲しいの」

 「・・わかったよ、アスカ。お供しよう」

 

 

 

 2時間あまり後、僕達は”旧”第三新東京市を見下ろすことのできる小山の上にいた。

 巨大なクレーターには”雨季”ということもあり、かなりの水がたまっている。

 その水は赤く濁っている。多分、水底に残された鉄の構造物から生じる錆のせいだろう。

 空はどんよりとして何時雨粒が落ちてきても不思議ではない感じだった。

 

 アスカは一言も発せず、その”湖面”を見つめていた。隣に立った僕はアスカの横顔を見つめていた。

 「!」 僕はアスカの目から一筋の涙がこぼれ落ちるのを見た。

 (ここへ連れてきたのは間違っていたのか)

 アスカを見ているのが辛くなり顔をそむけようとした瞬間、アスカが僕の方を見た。

 「シンジ、ありがとう」

 「えっ!?」

 「・・おかげで、ここでのことは、すっかり整理が付いたわ・・シンジの事も含めてね」

 「・・アスカ・・」

 僕は何か言いたかった。でも何も言葉にすることが出来なかった。

 ぽつ、ぽつ・・・

 遂に雨が降り出した。雨滴の勢いは急速に増してゆく。

 僕達はあわてて車へと走った。車に乗り込むとき、助手席側に乗り込もうとしたシンタロウさんにアスカが声をかけた。

 「ゲルハルト、わたしと一緒に後ろに乗って」

 シンタロウさんはアスカに言われたとおり後部席に乗り込んだ。

 運転席に乗り込んでから、後ろを振り返り僕は言った。

 「もし良ければ、すぐに下へ降りた方が良いと思う。万が一土砂崩れがあったりしたら飛行機に間に合わなくなるかもしれないから」

 「わかったわ・・運転手君、やってちょうだい」 笑いながらアスカが言った。

 「かしこまりました」 僕も笑ってそれに応じた。

 僕は空港へ向け車を出発させた。

 


 

 僕の心配は結局杞憂に終わった。空港へはアスカ達が乗る飛行機の出発時間の2時間ほど前に着いてしまった。

 空港ビルのショッピング街でのアスカのおみやげ選びにつき合った後で、僕達は昨日と同じ展望ラウンジに入った。

 

 ラウンジで、僕はアスカの”告白”を聞かされた。

 「シンジ、あなたはわたしが何故日本に来たのか、本当の理由が分かる?」

 「・・うん、いや・・よくは分からないよ」

 「相変わらず、ハッキリしないわね。いいわ、教えて上げる・・」
 「わたしはね、シンジとファーストとの幸福な関係を壊すつもりだったのよ」

 「ア、アスカ・・」

 「でもね、あなた達を見たら、それが無理なことはすぐに分かったわ。二人の間にはあんな可愛い”絆”があるんですもの。今更、わたしがどうこう出来るものでは無いもの、あの子の存在は」

 「・・うん」

 「だからね、シンジ達への”復讐”は別の方法を採ることにしたわ」

 「別の方法?」

 (アスカは一体何をするつもりだろう)

 「ええ、それはねシンジなんかよりずっと素敵な男性と結婚して、シンイチロウ君なんかよりずっと可愛い赤ちゃんを産む事よ」

 アスカが笑った。僕もつられて笑った。僕は冗談めかして言った。

 「そうだね。早くそうなれば良いね

 「なにが”そうなれば”よ!わたしは自分が望んだことは必ず実現させるわ。それにもう”候補”も居るし・・」

 アスカはそう言いながら、隣に座るシンタロウさんの横顔を見つめた。

 見つめられたシンタロウさんは何故だか”真っ赤に”なっていた。腕時計を見て彼は言った。

 「ああ・・そ、そろそろ搭乗受付が始まるね」

 僕にはシンタロウさんがこの場に”いたたまれない”ような思いでいるように感じられた。

 「そうね、そろそろ行きましょうか」 アスカが応じた。

 僕達は搭乗ロビーへと向かった。

 

 

 

 搭乗ロビーでの別れ際、アスカは言った。

 「シンジ、今度日本に来るときは、きっとわたしの”家族”と一緒に来るわ」

 「うん、その日を楽しみに、待っているよ」
 「・・シンタロウさん、いろいろありがとうございました」

 「・・御礼を言うのは私の方だよ。すっかりお世話になってしまって、奥さんやヨシエさんによろしく」

 「ええ、伝えます」「それじゃあ、アスカ、シンタロウさん、ごきげんよう」

 「それじゃあねシンジ」

 「うん」

 「アウフ・ヴィターゼェン」

 「アウフ・ヴィターゼェン」

 


 

 ・・・それから半年ほど経ってから、アスカからまたメールが届いた。

 

 ”久しぶりねシンジ。報告が遅れましたけど、わたし3ヶ月前に結婚しました”

 ”もちろん相手は、シンジなんかより数倍素敵な人よ”

 ”比べるのは、そう「提灯に懐中電灯」ね”


 (それを言うなら「提灯に釣り鐘」だろう)

 メールに”つっこみ”ながら僕は先を読み進んだ。

 

 ”それからね、これは未だ未確認なんだけど、どうやら出来ちゃったみたいです”

 ”いわゆる「ハネムーンベイビー」っていうのかな、こういうのは”

 ”赤ちゃんが産まれたら、約束通りきっとまた日本に行きます。楽しみに待っててね”

 

 それにしても、と僕は思った。結婚式のビデオぐらい”同封”してくれてもいいじゃないかと。

 (これでは相手のことがまったく分からないよ)

 アスカがどんな人を選んだのかとても気になった。けれど、メールの最後の”署名”を見て僕は納得した。

 そこにはこう書かれていた。

 ”惣流・アスカ・フォン・グスタフ・ラングレー=ヴァイセンベルグ”と・・・

 

【RETURN・了】


ver.-1.10 1997-6/24

ご意見・感想・誤字情報などは iihito@gol.com まで。


【作者後書き】

 最後までお読みいただきありがとうございます。なんとか完結(?)しました。・・・アスカとシンタロウさんの「これから」はどなたかにお任せします(笑)

 本作はアスカちゃんの「補完」を目指して書き始めたのですが、正直申しまして目的は達成されていないと思います・・・特に全国参千五百万人のアスカファンのみなさんには「不満足」なお話だったと思います。誠に申し訳ありませんでした。

 本来「レイ派」である作者にはやはりアスカちゃんへの愛が足りなかったようです(^^;。

 ここだけの話ですが(笑)構想段階では”夜一人でいるシンジ君を酔ったアスカちゃんが訪れて、シンジ君を誘惑・・・”と言うようなお話を書こうかと思っていたのです。しかし結局このような健全(?)な物語になってしまいました。もしシンジ君がアスカちゃんと”不倫”すれば、レイちゃんが傷ついてしまいます・・作者にはそんなことは耐えられませんでした(爆)。

 

 現在、作者は「新規読者」を募集中です。この作品に対する感想・批判・罵倒(お手柔らかに(^^;)・・

・・その他なんでも結構です。ぜひメールを下さるようお願いします。(ヘ゜コリ)


 綾波さんの100kHIT『RETURN』後編、公開です。
 

 【また会う日まで】で一言もないまま退場したアスカの”復讐劇”でした(^^;

 シンジ君を誘惑するアスカ・・・・見てみたかった様な気も(笑)
 ここで踏みとどまった所に作者さんのレイへの愛が見えますね。

 あっ、それと綾波さんの短編小説に付き物の背景GIFが
 アスカ主役のこの作品になかった辺りにもアヤナミストのこだわりが(爆)
 

 一言やちょっとした仕草にまで気の行き届いた素敵なストーリーでした。  

 さあ、訪問者の皆さん。
 記念すべき100000HIT小説でアスカまで補完してくれた綾波さんにメールを!


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