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ねがい 第3話 決戦前夜 B-part  




「やれやれ、この調子やとまた徹夜やなあ」
「しょうがないよ。このままじゃあ、大道具、小道具ナシの演劇になっちゃうんだから」
 
 ジャージを着た少年、鈴原トウジが青空が描かれた大道具のパネルに釘を打ちながら、ぼやいた。それに答えて、メガネをかけた少年、相田ケンスケが口を開く。この動作をここ数日で何度繰り返しただろう。

「そこ!無駄口たたいでないで、作業作業!このままじゃ、間に合わないんだからね!」

 腰に手を当ててメガホンを握った洞木ヒカリが叫ぶ。これまた、何度目だろう。とにかく皆、疲れていた。明日が本番、その事実だけが彼らを支えていたといっても過言ではなかろう。

「だいたい、なんで中学の学園祭の演劇にこんな手の込んだセットを作るんや。いまどき、背景なんかコンピューターで合成して映し出すんもんとちゃうんかいな・・・」
「す〜ず〜は〜ら〜〜!」
「い、いいんちょ、あんまり怒ったら小皺がふえまっせ」
「バカなこといってるんじゃないの!」
「すんません・・・」

トウジはすっかりうなだれてしまった。

「もとはといえば、碇が悪い!」

 ケンスケがメガネをきらめかせながら、シンジを振り返った。

「なんでだよ〜」
「おまえが父さんに演劇をやるとかいったから!」
「そやそや、そしたらセンセのおやじが、どうせやるなら本格的に、とかゆうて手伝いに来るからこんなことに・・・」
「そんなの、ぼくのせいじゃないよ」
「い〜〜や、おまえが悪い!」

 2人の声がみごとにユニゾンした。

「あら〜〜、あのとき率先して賛成したのは誰だったかしら〜〜?」
「ミ、ミサトせんせ!」
「確か、鈴原とかいったかしらね〜〜、あのときの生徒は」
「い、いつのまに教室に」
「あら。さっきからずっといたわよ」
「ぜんぜん、私に気づかなかったみたいだけどね。で?文句があるのはこの口かな〜〜?」

 そういうと、トウジの両頬を引っ張った。

「ふぁいふぁふぁふうふぉふぁいふぁふぃふぁ(わいがわるうございました)」
「うむ、わかればよろしい」

 にっこり微笑んでミサトはその手を離した。

「この形式でやろうって決めたのはみんななんだから、最後までがんばりましょ!明日が本番なんだからね!」

「は〜〜い」
「じゃ、キャストの人は30分後から通し稽古やりましょ」

 ヒカリもメガホン片手に号令をかける。

「それまではキャストは自由!くつろいどいてね」

 その声を聞くなり、多くの生徒が教室をでていった。

「え〜〜、委員長、大道具は〜?」
「もう少しがんばって、遅れてるんだから」
「そんなせっしょな」
「そういわないでよ。稽古が終わったらみんなで手伝うからさ」
「私にまっかせなさ〜〜い」

 声の方向にはミサトが金槌片手に仁王立ちしている。

「ミサトせんせ、できんのかいな?」
「こう見えても、私にだって高校時代はあったんだから。同じようなことこなしてきたわよ」

「そうでっか?気つけてくださいよ」
「だいじょ〜〜ぶだって」

 そういうがはやいか、ミサトは景気よく自分の指を叩いていた。

「う゛」
「ミ、ミサトせんせい?」
「いった〜〜〜〜〜!」

 その叫び声とともに彼女の手から金槌がなくなっていることに誰も気づきはしなかった。当のミサトも悶絶している。

「大丈夫ですか?」
「碇君、リツコ先生に!」
「うん」
「だ、大丈夫よ。そんなことしなくても・・・うっ痛〜〜」
「どんくさいな〜〜ミサトせんせは」
「うるさ・・・」


 そこまで言ったとき、窓の方から声が。

「誰だ〜、今、金槌投げたのは〜〜」
「え゛?」
「ミサトせんせ、金槌どこにやりました?」
「もしかして」

 窓から下を覗くと下校する生徒の中で1人、こっちを睨む冬月校長の姿が。その数分後、校長室で小さくなっているミサトの姿があった・・・合掌。



「あ〜〜あ、今日も徹夜になりそうね〜」
「まったく、お肌が荒れちゃうわ」
「あら、珍しく意見があうわね」
「そう?シンちゃんを好きってことならずっと意見が一致してると思うけど〜」
「な、なに、バカなこと言ってるのよ!誰がシンジの奴なんか」

 話し声が近づいてくる、リツコはすばやくキーボードを叩いた。画面が暗転し、かわいい子猫が3匹あらわれて走り回る。
 すぐに保健室のドアが開いて生徒が2人入ってきた。1人は栗色のロングヘアーに青い目。もう1人は水色のショートに赤い目をしていた。2人とも同年代ならずとも思わず振り返るような整った容姿をしている。

「こんばんわ、リツコ先生」
「あら、あなた達、今夜も泊まりなの?」
「リツコ先生もですか?」
「金槌で自分の指を叩く人や、自分の体を釘づけする人が多くてね」
「悪かったわね」
「あら、ミサト」
「わるかったわね、私のようなバカのせいで徹夜になって」
「気を悪くしたのなら謝るわ。あんたまで怪我するとはね。どうせ、昔思い出して無茶したんでしょう?」
「う、うっさいわね。余計なお世話よ」

 新たな客人とリツコが話している間に2人の生徒は忙しく動きまわっている。

「リツコ先生、お湯わかしますね」
「ああ、もうそんな時間なの?勝手にやってくれいいわよ」
「私も手伝うわ」
「けっこうよ(です)」

 ミサトの申し出にユニゾンで返す2人

「そ、そう」

 泊まりの日は夕食を学校で食べなければいけない。そのためにこの時間になると、男子は買い出し。そして、女子の何人かはお茶を準備するのだ。これももはや日課となっていた。

「なんで演技は完璧なのにキャストまで泊まりなのお?年頃の娘が毎日、毎日、学校にとまりこみなんて・・・。ママが怒ってたわよ!」
「じゃあ、アスカは帰ればいいじゃない。私はキャンプしてるみたいで楽しいわよ」
「そ、そうはいかないわよ。みんな泊まって練習するんだし」
「あれ?キャストは明日に備えて、今日は泊まりなしってことになってたのに、他のスタッフを手伝いがてら練習しよう、とか提案したのアスカじゃなかったっけ?」
「う゛」
「あれ〜〜、何かとまらなきゃいけない理由でもあるのかな〜〜」

 レイがアスカをのぞき込む。

「そんなもんないわよ!さっさとお茶作って教室戻るわよ!」

(う゛〜〜、シンジが心配だからとかいえるわけないじゃない。みんながいるといえ、レイと一晩すごさせるわけにはいかないわ)
 一方、レイは
(これだからからかいがいあるのよね〜〜、アスカは。けど、惜しかったわね。シンちゃんと距離をつめるチャンスだったのに)
 心の中で小悪魔を通り越して悪魔のように微笑むのだった。


次回に続く

ver.-1.00 1997-4/03

ご意見・感想・誤字情報などは ps017969@kic.ritsumei.ac.jpまでお送り下さい!




 どうも、更新遅れました。
 それにしてもトウジの関西弁、難しいです。ぼくは、ずっと関西在住なのでトウジのあやしい関西弁を考えるのはかなりつらいです。みなさんどうしておられるのだろう?
 このパート書いててとんでもないことに気づいたのですが、「ねがい」はぼくの考えていた小説の番外編だったのです。番外編から書き始めてしまったぼくっていったい・・・。
 げしっ(アスカの蹴り)
 アスカにも怒られたところで、今回はさようなら・・・(T-T)シクシク
 意見、感想メール待っておりやす。
 

 [たつ]さんの「ねがい」第3話Aパート公開です!

 学園祭の準備をするシンジ達に、私も中学・高校時代のあの雰囲気を思い出して、ワクワクしてきましたよ!
 泊まり込みまではしませんでしたが、下校時間が大幅に緩和された学校で夕食を食べたり・・・・楽しかったなぁ。

 それにしてもアスカちゃんが可愛いですね。
 「面倒を見るため」なんて言いながら、シンジ君から離れようとしない・・・

 あああ、かっわいいい!

 次回は[学園祭]の本番かな?
 アスカちゃんは何を演じるんだろう?
 シンジ君は何をするのかな?

 次の戦いまでの平和な時を、精一杯楽しんで欲しいですね。


 読者の皆さんも[たつ]さんに感想を送って下さいね!!


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