TOP 】 / 【 めぞん 】 / [P−31]の部屋 / NEXT


そしてミサトが叫ぶ。

「発進!」

「その声と共に初号機がリニアレールで打ち出される。

そして瞬く間に地上に紫の鬼が姿を現す。

眼前には『使徒』・・・・・・・・・・・・・・・・・











『シンジ君・・・死なないでよ』

















It’s a Beautiful World



World:2「コミニュケーション」
(A−part)














「いいわね、シンジ君」

「いつでもどうぞ」モニターの中のシンジは慌てた様子などカケラもなく、落ち着いて答える。

ミサトはそれを見て一つうなずくと、命令を下す。

「最終安全装置解除!エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!!」

すると、初号機がリニアレールの輸送台からはずれ、命の息吹が与えられる。

「えーっと・・・・・こうやれば動くんだっけ?・・・・・・・・・・あ、動いた」

シンジはいとも簡単に初号機を操って見せた。

リツコはその様子に驚きながら、

「シンジ君、どう?いけそう?」

エントリープラグの片隅にリツコの顔が写る。

「ええ、リツコさん。なんとかいけそうです」

「シンジ君気を付けて!来るわ!!」

シンジが視線を戻すと、使徒が腕を振り上げながら飛びかかってくるところだった。

うわぁっ!・・・・・・・・・危ないなあ・・・・・」

シンジは冷静に使徒の攻撃を避け、体勢を整える。

それを見たミサトとリツコはシンジに聞こえないように小声で、

「ちょっと、ホントにあの子初めてなの?」

「そのはずよ」

「それにしては、慣れてない?戦う事に」

リツコはちょっと考える仕草をすると、

「そうね・・・・・調べてみるわ」

「ま、とにかくコレを乗り切ってからの話ね」

「そうね・・・どのみち私達は彼に頼るしかないんですものね」

リツコが自嘲気味に呟く。







「よし、じゃあ今度はこっちの番だ!」シンジはそう言うとともに後ろ回し蹴りを放とうとする。

「あ!・・・・シンジ君!ダメ!!」ミサトが制止するが間に合わない。

「へ!?・・・・・・・・うわぁ!!」

蹴りが使徒に当たる前に初号機は足をなにかに絡め取られ、倒れてしまう。

「・・・・・・・・・リツコ・・・・・・・説明しなかったの?・・・・・・・・アンビリカル・ケーブルの事・・・・」ミサトがジト目でリツコを睨む。

「・・・・・・・・・・忘れてたわ・・・・・・・・・・」冷汗をたらしながらリツコが白状する。

かなりお間抜けな人達である。

そして、二人がそんな事をやっている間も使徒は攻撃する。

使徒は倒れた初号機目がけて腕から光のパイルのようなモノを繰り出す。

「いてててて・・・・・・・・・え!?・・・うわっ!!!」

倒れた体を横に回転させて避ける初号機。

倒れた衝撃から立ち直ったらコレである。

逆から言えば、それを避けたシンジは大したものである。

しかし・・・・・・・・・・・・




《アンビリカル・ケーブル断線!内部電源に切り替わりました!活動停止まで300秒!!》

使徒のパイルは、初号機の体ははずしたが、それに巻き付いていたケーブルを切断したのだ。

「シンジ君!初号機はあと5分弱しか動けないわ!なんとかそれまでにケリをつけて!!」ミサトは悲痛な声で叫ぶ。

「わかりました」シンジはいたって冷静な返事を返すと、使徒に向かい突進する・・・・・・・・・・・が・・・・・・・・・・・

その目の前にオレンジ色に光る”壁”があらわれる。

「A・T・フィールド!?」リツコが驚きの声を上げる。

初号機はその”壁”に遮られ、それ以上使徒に近づく事ができないでいる。

「ダメだわ、A・T・フィールドがある限り・・・・・・・」ミサトも、驚きと苦渋を滲ませる。

「使徒には接触できない・・・・・」リツコの顔にも驚きが現れている。

「ミサトさん、何なんですかコレ!?」

シンジはなんとかA・T・フィールドの向こう側へ行こうとするが、オレンジ色のそれはビクともしない。

「シンジ君・・・それは・・・」

ミサトの声は、シンジの叫びにかき消される。

「うわあああああ!!!!」

初号機が立ち往生している間に、使徒のパイルが初号機の胸部にヒットしたのだ。

「う・・・・・・・・・・・うぅ・・・・・・・・・」シンジは衝撃で意識を失った。












その時。











『ダメよ、こんな時に寝ちゃあ』

と、シンジの”頭の中”に声が響いた。

「!?・・・・・なんだ!!??」シンジにしては珍しく、狼狽している。

『そんなに驚かないで。私はあなたと心で会話してるの』

「心!?」

『そう、心。だからあなたは喋らずに考えるだけでいいの』

その声(?)は限りなく優しく聞こえる。

「・・・・・・・・・・・・・ひとつ、聞いていいかい?」さすがシンジ、もう混乱から回復している。

『答えられればね』声はどこかとぼけたように言う。

「・・・・・・・・・あなた、何者です?」

『ふふふ、今はナイショ』

シンジはちょっとだけずっこけた。

この謎の声と話していると、自分が子供だということを痛感させられる。

まるで(シンジは経験した事はないが)親に駄々をこねる子供、そんな気がしてくるのだ。

「で、僕に何の用です?」シンジはちょっとだけ不機嫌そうに尋ねる。

こういう所に若さが出てしまうのがまだまだ子供   確かに14歳は世間一般では子供だろうが   というところだろうか?

すると、ぐずる子供をあやすように、

『ほら、ふてくされないで。カワイイ顔がだいなしよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・そうね、用ってほどじゃないんだけど、戦い方をレクチャーしようと思ったんだけど?』

「戦い方?」

『そ、戦い方。”アレ”にただ殴りかかっても駄目って事は解ったでしょ?』

「まあ、それは・・・あんなヘンな壁があるんじゃ、確かに無理だよね」シンジは溜息とともに呟く。

『だ・か・ら、それを何とかする方法をレクチャーしてあげるっていってるの』

「・・・・・・・・・・・・・・なぜ?なぜそんな事をしてくれるの?」

『・・・・・・・・さあ?』

またもやずっこけるシンジ、そして

「もういいです・・・・・・・・とりあえず何も聞きませんから、その方法ってのを教えて下さい」

『聞き分けのいい子は好きよ』

あきらかにからかって楽しんでいる。

シンジはもはや文句を言う気力も失せていた。

『んーとね、教えるっていっても別にどうこうする訳じゃないの、意識間の伝達だから。・・・じゃあ、目をつむって心を真っ白にして』

『心を白く?・・・・・何も考えるなって事かな?』

『そうよ』

「・・・・・考えてる事が解るって不便だ・・・・・」

『ごちゃごちゃ言わないの、いくわよ!』

すると、シンジの頭の中”なにか”が流れ込んできた。

「!?・・・むぅ!・・・・・・・ぐっ!!・・・・・・」シンジは少し苦しそうだ。

『・・・はい、終わり。よくがんばったわね』声はシンジを優しく労う。

「・・・・・・・・・・・こんなの聞いてないよ・・・・・・・・・・」少しぐったりしているシンジ。

『泣き言いわない!ここからはあなた一人でなんとかするのよ!』

シンジはちょっと肩を竦め、

「はいはい・・・・・・・・・わかりました」

『解ればよろしい・・・・・・・・・・・・・・じゃあ、ひとまずお別れね』

「そうだね、いつまでもこうしてる訳にもいかないだろうし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、そうだ」

『ん?なあに?』

シンジは恥ずかしそうに、おずおずと

「・・・・・・・・また、話せるかな?」

『時が来ればまた話す事ができるわ・・・・・・・・・それに、私は常にあなたと共にあるから』

「そっか・・・・それじゃ、また話そうね」

『ええ、それじゃ』

その一言を聞くと同時にシンジの意識はブラックアウトした。




















遠くからシンジを呼ぶ声がする・・・・

「シンジ君!起きて!シンジ君!!」

必死の形相のミサトの顔がエントリープラグのモニターに大写しになっている。

そして、シンジの意識がはっきりしてくる。

「ん・・・・ミサトさん・・・・僕、どのくらい気を失ってましたか?」

「3〜4秒くらいよ」

『あれは夢?・・・それとも・・・幻?』

シンジは考えた。夢かと思った。

しかし、自分の脳髄の一部がA・T・フィールドの使い方を ”知っている” 事に気づいた。

「そっか、夢じゃないんだ」シンジは少し安堵したように呟く。

シンジがぼんやり考えているところに、ミサトの叫びが被さる。

「シンジ君!気を付けて!来るわ!!」

モニターには、今まさにパイルを打ち出そうとしている使徒の姿が映っていた。

「えっと・・・たしか・・・こうやって」シンジは腕を僅かに動かす。

そして、パイルが初号機目がけて打ち出される・・・・が・・・・

「A・T・フィールド!?」ミサトは、なにか信じられないモノを見たように驚く。

使徒のパイルは、初号機の前に現れた   先程と同じような   オレンジ色の壁に、がっちりガードされていた。

「なぜ!なぜ、あの子がA・T・フィールドを使えるの!?」リツコは自分自身に問い掛けるように呟いた。

二人の疑問に答えられる者はここにはいなかった。

だが今は、そんなことを言っている場合ではない。

シンジの立場で言えば、”驚いてないで仕事してくれ”といったところだろう。

だが、当のシンジはそんなことは気にも止めず、

「さて、残り時間も少ないし、ケリをつけるよ!」

そう言ってシンジは自分自身に気合いを入れると、自らのA・T・フィールドを解き、使徒の顔らしきところに右パンチを入れる。

「!!!!」

素早い初号機の動きに声も出ないミサト達。

初号機はパンチを入れ、そのまま使徒の体を掴むと、膝蹴りを1発、2発、3発と入れる。

だが、使徒はあまり攻撃が効いた様には見えない。

「ミサトさん!コイツ、弱点みたいなのは無いんですか?」

ミサトは、シンジの戦いぶりに呆然としていたが、我に返ると

「使徒の弱点は”コア”よ!腹部の紅い球状のモノを狙って!!」

「お願いしますから、そういう事は先に言って下さい・・・・」

シンジはそう言いながらも、攻撃を”コア”に集中させる。

使徒もパイルを繰り出したり、妙な光線を出したりするが、シンジは巧みにその攻撃をかわし、徐々に間合いを詰める。

そして・・・・・

「はあぁ!!!」

渾身の掌底を”コア”に叩き込む!

そして”コア”にヒビが入ったかと思うと、使徒は初号機に飛びつき、その形を丸くする。

「自爆する気!?」

そのミサトの一言を聞いたのかは解らないが、使徒は初号機を巻き込んで大爆発し、消滅した。








「シンジ君!シンジ君!!応答して!!」

ミサトが必死に砂嵐のモニターに呼びかける。

「大声で叫ばなくても聞こえてますよ、ミサトさん」

シンジの姿がモニターに映る。

それと共に外部の映像も回復する。

最初は爆煙で何も見えなかったが、それが少しずつ引いていくと、両腕を顔の前でクロスさせ防御を固めた初号機の姿が見えた。

「シンジ君、大丈夫?」

「ええ・・・まだ生きてるみたいですね」

「ふう・・・よかった・・・シンジ君、初号機まだ動く?」

ミサトは安堵の溜息を漏らしながら尋ねる。

「いえ、もうピクリともしません」

「わかったわ、しばらくそこで待っていて。回収班を向かわせるわ」

「わかりました」

「シンジ君・・・?」

「なんです?ミサトさん」

「お疲れさま・・・」

その一言にはミサトの心からの感謝が籠もっていた。

それはシンジにも感じられた。

「ミサトさんも、お疲れさまでした」

シンジはモニターの向こうのミサトに、とびっきりの笑みを浮かべて答えた。



『くぅー・・・シンジ君、カワイイ!!』と、ミサトは頬を僅かに紅く染めて思い、

『・・・・・・あの父親から、どうやったらあんな子が生まれるのかしら。鳶が鷹を生むの典型例ね・・・』と、リツコもやはり紅くなりながら思っていた。

ちなみに他の女性職員の大多数は、

『はあ・・・カワイイ子・・・』や

『綺麗な子ねえ・・・彼女いるのかしら?』などど考えていた。




もちろん、シンジ本人は、自分が笑顔一つで多数の女性を撃墜したことなど知る由もないが・・・・・・・・・・














所変わってここは指令公室。

中にはネルフのナンバーワンとナンバーツーがいる・・・・・・・・・・

「碇、どういうことだ?」初老の男   ネルフ副指令、冬月コウゾウはゲンドウに問い掛ける。

「なにがだ?」ゲンドウは手で口元を隠したまま聞き返す。

「サード、君の息子だ。彼は初号機を完璧に操っていたぞ」

「問題ない・・・予測範囲内だ・・・・あれには天賦の才があるのだろう・・・」

「それだけでエヴァンゲリオンがああも簡単に動くか?・・・・まあいい・・・・お前もやはり父親だな」

冬月は笑いながら言う。

ゲンドウはポーズを崩さずに

「からかうな、冬月」

「まあ、しかし彼は母親似だな。彼の笑顔を見るとユイ君を思い出す」

「ああ・・・問題ない」

「それに加えて、あの経歴だ。周りの女性が放っておかんぞ」

「ああ・・・問題ない」

「そういえば、レイはどうなんだ?」

「問題ない・・・あと二十日もすれば動けるようになる」

「そうか・・・シンジ君と顔合わせをさせてやらんといかんな」

「ああ・・・頼む」

「・・・・・・・・・・碇・・・・・・・委員会の方は?」

「まもなく召集がかかる・・・・かなり慌てているのだろう」

「今回のこと・・・つっこまれるぞ・・・・・・」

「ふっ・・・・問題ない・・・・所詮彼らは口だけだ。」

「まあ、今はいい・・・今やるべき事は委員会をあやす事と、零号機の早急な修復だな」

「委員会はどうでもいい・・・・・・・零号機は予算は既にとってある・・・・・・弐号機もな」

「弐号機!?こっちへ持ってくるのか?・・・・・・・・また委員会からクレームが来るぞ・・・EVAの一極集中、とかな」

「計画を前倒しするだけだ・・・・それに戦力の効率的な使用は戦術の初歩だろう」

「まあ、な・・・・・・・・・・・・・碇・・・・・・・・・・・・・・・補完計画・・・・・どうするのだ?」

「あんなモノは老人達の繰り言だ・・・・彼らがあくまでも計画を遂行しようとするなら、我々は最終的に彼らと対立せざるをえまい」

「・・・・・・・・・それを聞いて安心したよ・・・・・・・・・やはり父親だな、自分はともかく息子の未来までは奪えんか」

「冬月・・・・・・・・からかうなと言った筈だぞ・・・・・・・」常人には解るまいが、ちょっと焦っているゲンドウ。

「ふふっ・・・・・・・」おかしそうに笑う冬月。

その時、ゲンドウの机の一部が紅く光る。

「・・・・・・・・・委員会がおよびだ・・・・・・」

「ふむ、忙しいことだ」

そして二人は、彼らが内心で侮蔑しきっている人間達と会話する為に指令公室を出た・・・・・・・・・


















NEXT
ver.-1.00 1998+05/10 公開
ご意見・ご感想・ご質問・誤字情報などはこちらまで!

あ・と・が・き

みなさんこんにちは。

P−31です。

第2話Aパートをお届けします。

今回は戦闘シーン一色になってしまいました。

しかも、ヘボいし・・・・・・・

ま、いいや次回でまたお会いしま・・・・・・

《ヒュルルルルルル・・・・・・》

ん?なんだ?

《ドカン!》

どわぁ!!・・・・・・なんでこんなとこに砲丸が飛んでくるの?・・・・・・・・ん?メモがついてる・・・・えーと・・・

『アタシはいつになったら出るのよ!こんの大馬鹿ぁ!!   by  A』

・・・・・・・・・・・え、えーっと・・・・・ほら!作中でゲンドウも ”弐号機計画前倒し”って言ってるじゃないですか!!もうちょいですよ!

《ヒュン》

ん?

《ザクッ!!》

うおっ!!!・・・・・・・今度は矢か・・・・・・・矢文?古風だなあ・・・・・・・・どれどれ・・・・・

『その言葉、信じるわよ・・・・でも・・・・・裏切ったら・・・・・クスッ   by  A』

ぞくぞくぅ!!!

せ、背中に悪寒が・・・・・・ん?まだ下になんか書いてあるな・・・・

『出番・・・・無いのね・・・・・死にたい?  by  R』

ちょっとまったああ!!あなたは次回出ます!間違いないです!!(嘘はついてないな・・・ニヤリ)

と、いうわけでこれ以上ヘンな物が飛んでこない内に私は逃げます!!

それでは!(すたこらさっさー)





 P−31さんの『It's a Beautiful World』第2話Aパ−ト、公開です。




 ケーブルのことや、
 フィールドのことを

  伝え忘れるとは−−

 ミサトさーん、だめだよぉ(笑)



 ここのシンジは凄いからどうにかなったけど、
 TVのシンジじゃ死んじゃっていたかもしれない〜


 TVのシンジもそういうことを伝えてもらってなかった・・・かな?(^^;



 暴走に至らなかった辺りが
 itsのシンジとTVのシンジの違いかな。



 謎の声も気になるね。




 さあ、訪問者の皆さん。
 感想をメールでP−31さんへ!




TOP 】 / 【 めぞん 】 / [P−31]の部屋