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    第参話 side-A









「逃げられちゃったね、やっぱり・・・」

 目の前でため息をつく彼女・・・綾波麗の外見を持ち、渚薫と名乗る謎の少女を

見ながら、冬児は混乱した頭を整理しようとしていた。

「渚、薫やて?」

 綾波そっくりの姿、なのに名字まで違う・・・どうなってるんだ?

 思わず口をついた呟きに薫が反応する。

「そう、面識がないはずよね、あなたともセカンドチルドレンとも。私がゼーレか

ら派遣されたのは第十六使徒が倒された・・・綾波麗が零号機もろとも自爆した後

の事だから」

「じ、自爆って?」

 ぎょっとした冬児達を見ても、薫はフォローしようとはしなかった。

「そう、自爆」

「あ、あいつ・・・」

「でも、綾波さんは・・・・?!??!???!!??」

「い、いいんちょ、落ち着け、な?」
         ___
「幽霊では無いわ、あの時あなたが会ったのはね。その時は彼女はいたのだもの」

「あ、そ、そうなの・・・」

「・・・・・・その時は、やて?」

「今はもういないわ、シンジ君の事を好きになっていた彼女も、シンジ君の事が好

きだった彼女もね」

 薫の独特の、故意に聞く者を混乱させようとしているかのように回りくどい科白

回しに、冬児は徐々に苛立って来た。

「どう言う事なんや!? もっとしゃきしゃき喋らんかい!」

「言ったままの意味よ。綾波麗はもういない、死んだと言うのとは違うけれどね」

「さっぱりわからんわ! わかりやすく言え、わかりやすく!」

「やっぱり似非関西人だったのね、あなたは」

 唐突に話題を変える薫。

 切れかかる冬児。

 それを察したのか、自分にわかる話題が出たからか、やや唐突に夏美が話し出し

た。

「そうなんです、何だか知らないけど・・・」

「夏美! だまっとれ!」

 冬児は茶々を入れた(と言うか茶々に答えた)妹を怒鳴りつけた。

 そして今度はひかりが、冬児を間接的に制止するために話をそらす。

「待って! ・・・・えっと・・・どうして私か綾波さんに会った事を知っている

の?」

「零号機か自爆した後の事、よね。それは・・・秘密です」

 人差し指を立て、ウインクなどしながら言う。

「おい、こら!」

「だってぇ、洞木さんもフィフスチルドレンの候補者として監視されてたなんてぇ、

機密事項だから言えないんだもん!」

「な、なんやて?」

「そんなに驚かないでくれない? ちょっと普通の女の子っぽく話してみただけな

のにぃ」

 それは確かにいきなりブリッコしてみせた薫にも驚いたが、その発言の内容にこ

そ驚いているのだ。

 いるのだが・・・

「機密事項だから言えないよ、本当に監視していたのならね。監視していたのは麗

の方さ」

「お、おんどれ、わしらをおちょくっとるんか?」

「す、鈴原、落ち着いて、ね?」

 さっきと立場が逆になっている二人。

「うらやましいな、あなたたちが・・・」

「なにがや! ポンポンポンポン話題を変えよってからに!」
     , , , , , , , , , , ,
「私も、使徒でさえなかったなら裏切ることもなかった。新司君の信頼をね・・・」

「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

「(同上)」

「(〃)」

「もう行くわ。・・・さよなら」

「お、おい・・・」

「早く元気になってね。新司君が悲しむからね」

 そう言うと薫は出ていった。

 後に、困惑を残して。




「何よ、あの人! バカにしてるわよ、「新司君が悲しむからね」なんて!」

 声色まで使って(あまり似ているとは言い難かったが)怒りを表現するひかり。

 同室の患者や見舞客が、珍しそうにそんなひかりを見ている。

 冬児を怒鳴りつけている様子は何度も見ているが、それでも「いい恋人じゃない

か」などとからかわれる、そんな二人なのであって・・・

 ひかりが人の悪口を言う所など、長期入院者の多いこの病室でも、誰も見た事が

無かったのだ。

 一体待合室で何があったのだろうか、妹さんも元気のない様子だったが。

 その夏美は既に自分の病室に戻っている。

 あまりかまってやれなかったな・・・と思いながらも二人が話題にしたのは、や

はり渚の事だった。

「それより、何であいつ、綾波そっくりなんや?」

「・・・そうよね・・・肝心な事は聞けなかったわよね・・・」

 すっかりかき回されてしまった・・・

 そんな事を考えながらも、冬児はちらちらと時計を気にしていた。

「なあいいん・・・やあらへん、ひかり、もうそろそろ帰らんとあかんのんちゃう

か?」

「ううん、大丈夫よ。夕御飯は、お姉ちゃんが作ってくれるから」

「え?」

 冬児は予想外、と言う顔をした。

 そもそも、姉がしないからひかりが家事一般をこなしていたのではなかったか?

「何だか急にそんな事言い始めちゃって、やっぱり恋は人を変えるのね」

「ふ、ふーん、驚いたなあ」

 うっとりと言うひかり。

 対照的に、冬児の顔には何故か動揺が色濃く浮いていた。

「せやけど、日が高くなって来たけど夜は夜や。この辺りの事は良く知らへんけど、

あんまり遅うなったら危ないで」

「鈴原?」

「な、なんや?」

 うつむいて話すひかり。

 非常に嫌な予感がした。

 気付かれてしまうのか?

 いっそ、本当の事を話しておいた方が良かったか?

 けれど、もう遅い。

 戦々兢々とする冬児だったが、その動揺ぶりが、ひかりの想像力を悪い方へ刺激

していた。

「あたし、邪魔かな?」

 そう来るか、いいんちょ!

 心の中で絶叫する冬児。

 彼の隠したい事情とはてんで見当違いな、けれど非常にたちの悪い誤解であった。

 慌てた冬児は実際に叫んでいた。

「ちゃうって! そんな事はあらへん!」

 ま、まずい。

 周囲の視線が・・・つ、冷たい・・・

 いや、本当にまずいのはいいんちょに誤解される事の方だ。

「あらへんけど、晩御飯時までつき合わせてしもたら、いくら何でも悪いよって

に」

 それは嘘ではないが、真実の全て、と言うわけでもない。

 だから、ひかりを納得させる事が出来なかった。

「それに、こだまさんかてまだ慣れてへんやろうし」

 冬児が言葉を重ねれば重ねるほど、ひかりの疑惑の視線は強くなってゆく。

「鈴原」

「な、なんや?」

 先程と同じ台詞だが、ニュアンスがまるで違う。

「この間の看護婦さん、美人だったわね」

 まったくの余談だが、看護婦というのは白衣の天使などという通俗的なイメージ

とは異なり、若くて綺麗な人ばかりではない。(当たり前だ)

 かなり過酷な重労働であるため、お年をお召しになった方々が少ないのは事実で

あるが。

 閑話休題。

(やめてくれー!)

「なんでそうなるねん! ワシはただ・・・」

「ただ?」

「ただ・・・いいんちょに・・・迷惑ばっかりかけてもうて・・・」

 言っていて冬児自身、最悪の解答だと思った。

(これは、何となくまずいような・・・)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





「あら・・・喧嘩?」

「そんなもんですわ」

 目をそらして言う冬児。

 その頬には綺麗な紅葉が色づいていた。

「お弁当を残したの?」

 食器を回収しつつ問う看護婦。

 あまり好意的な口調ではないのはいたしかたあるまい、と冬児も自己の非を自覚

していた。

 そもそも入院患者の食事は、病院がきちんと栄養と衛生を管理して作るものであ

り、食べ物のお見舞いはご遠慮願うのが普通である。

 冬児の場合は、リハビリも順調でじきに退院できる事、そして何より国連所属の

特務機関ネルフの紹介で入院している事などから、特別に「愛妻弁当」を大目に見

られていたのである。

「いや、そういう訳じゃ・・・」

 さすがの冬児も、朝食に続いて大幅に残してしまった夕食が目の前にあっては、

申し訳なさそうに、歯切れも悪くなってしまう。

「ふうん・・・どんなにお腹の調子が悪くても、美味しいものは別腹なのね」

 かなりストレートな皮肉である。

「・・・まあ、そうでんな」

 ひかりがわざわざ作ってくれたのだから、残すわけには行かないと思う。

 それに、そうすればひかりも喜んでくれる。

 冬児にとってもそれは嬉しい。

 それに何より、病院の食事よりずっと美味しいのだ。

 だからつい無理をしてしまう。

 その結果、夕食の前に帰そうとして、誤解されて、はたかれてしまっては元も子

もないが。

 看護婦が冬児の次の患者の食器を片づけ、出ていってしまうと冬児は考え事を始

めた。



「死んだ訳ではないが、もういない」

「使徒でなかったら裏切らずに済んだ」



「・・・けったいなやっちゃなあ・・・混乱させに来たんかい」

 冬児の想像を絶するだろうが薫本人に悪気はない、あれが地だ。

 したがって、混乱させるために「来た」ではなく「生まれた(?)」と言うべき

であろう。

「せゃけど、あいつ・・・新司の事が好きなんやろな」

 薫の態度を見ればわかる事だ。

 だが新司の方はどうなのかと言えば・・・これはわからない。



「裏切らずに済んだ」「新司君の信頼を」



「嫌うとるんかな・・・」

 それにしてはあの時、待合室から出ていく寸前・・・

「嬉しそうやった・・・かな?」

 別に冬児は周囲が思うほど鈍感ではない。

 ひかりの気持ちには気付いていながら、どう応えれば良いのかわからなかった不

器用者ではあるが。

 だが「新司の薫に対する現在の気持ち」など、推し量るにはあまりに不確定な物

で有り過ぎた。

 まして冬児は薫の正体も過去も知らない、新司との間に何が有ったのかも。

「そういえば・・・アスカはどないしてんかな」 







「S2機関の搭載か・・・・老人どもめ、こんな物を作っていたとはな」

「問題はあるまい? もうリリスも初号機も無いのだからな」

「本当に?」

「あんな物をどこに隠せと言うんだ?」

「さて・・・アダムみたいに還元するって手もあるでしょ」

「・・・君を信用していいものかな・・・この情報、どうやって手に入れたのだ?」

「お望みなら設計図もつけましょうか?」



To be continued!
ver.-1.00 1998+05/20公開
感想・質問・誤字情報などは t2phage@freemail.catnip.ne.jp まで!


<03:「我が勇敢なる同志諸君、私はここにジオン公国の設立を宣言する。 宇宙市民の独立を目指す運動は、今、大いなる前進をむかえたのである」 02:「だ、だめだこりゃ」 04:「ちょっとやり過ぎたかしらね」 01:「お主、一体何をしたのぢゃ?」 03:「ダイクン派と自称する者達はこれを嘆くだろう。 しかし! 彼らも、そう遠くない将来この日を、歓喜と誇りを胸に振り返るであろう!」 04:「まぶたの上に水を一滴ずつ垂らしたのよ」 01:「また古典的な・・・・」 02:「どっちみち、これじゃ挨拶は無理だぜ」 03:「我々は恐れぬ! 我々は躊躇わぬ! 人類は、我等優良種たるジオン国民に管理運営されて、初めて永遠に生き残ることが可能なのである! もはや地球連邦の無能なる者どもに人類の未来を委ねておくことは出来ん! 罪は全て我等が背負う!」 04:<狂乱よ 風切りをもて 彼の者を貫け> ざしっ! ビクッビクッ 02:「おいおい!」 01:「再起動か・・・ま、それしかあるまいのお」 04:「けど拷問の記憶も全部吹っ飛ぶわ。自分から「反省のために」なんて言っておいて。 まったく・・・こいつはいつでもこんな調子ね、ハンパ者が・・・」>
01:「なんぢゃ、これは」
03:「第参話 A-sideです」
01:「みぢかいのお」
03:「A-sideですから」
01:「中途半端ぢゃのお」
03:「A-sideですから」
04:「言いたいことはそれだけかい、ぼけなす」
02:「そもそも恋人イナイ歴21年の真性二次元コンプレックスの03なんか
に、少年少女の淡い恋が描けてたまるもんかっつーの!」

 だ、誰が真性二次元コンプレックスですか!
 僕は別に、生身の人間にときめいたりする事が無い訳じゃ・・・あるかも(涙)
 というより情熱自体が殆ど無い・・・(泣)
 21歳にしてすでに枯れ果てているなんて、悲しい・・・(号泣)

 どうも、お久しぶりです、ちょっと間が空いてしまいました。
 今回は大家さん(管理人さんではありませんね、今まで随分失礼いたしました)
の前々回の御質問に答えようと思います。(話の方が全然進んでないもので)

 01;弾劾翁、02:ニュークレオン、03;プリーチャー、04;鉄拳公主の
順に老若男女の疑似多重人格を形成しており、自分のホームページでも使用してい
ます。
 「プリーチャー」というのは説教屋ぐらいの意味ですね。あまり体をあらわして
いない名前ですが。
 さてここからが本題。
 「02;ニュークレオン」の語源が何かおわかりの方、もしいらしたらメール下
さい。
 実はひそかにアスカが主人公の話を計画中ですが、開始の時期が早まるかも知れ
ません。(01;「まだこの話も終わっておらぬとゆうに無謀なことを・・・」)
(03;「この話の感想のメールが一通もこないんですよ。人気が無い作品は良く
て休載、悪くすると打ち切りというのは基本でしょ?」)

                03;プリーチャー拝



 03;プリーチャーさんの『シ者 再来』第参話 side-A、公開です。





 やってきて、
 謎めいたことを言って、


 謎の存在ですね、

 薫。



 動きに注目〜

   かな。



 さあ、訪問者の皆さん。
 是非ぜひ感想メ−ルを03;プリーチャーさんへ!


 01;弾劾翁さんへも
 02:ニュークレオンさんにも、
 04;鉄拳公主さんも忘れずに♪






 [大家からの質問こーな〜]


 02:ニュークレオン


 どうして02だけ「:」なの?
 他のは「;」なのに・・・


 打ち間違えかな(^^;
  だったら失礼な質問ですよね・・・
  先に謝っておきますm(__)m


 

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