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 僕はシンジだよ







 碇シンジだよ







 アスカちゃんのお兄ちゃんなんだって







 仲良くしようね













 昔々。

 まだサンタが本当にいると思っていた頃。

 クリスマスの朝にその娘はやってきた。




 父さんの大きな手に導かれて、その娘はやってきた。

 よく覚えている。

 忘れようもない朝。

 前の晩に降った雪が朝日を反射して、目に眩しかったのを覚えている。

 黄金色に輝くその娘の髪が朝日を反射して、目を細めたのを覚えている。

 俯きがちで、瞳は虚ろで、僅かに震えていた綺麗な女の子。

 お人形さんみたい、僕はそう思った。




 朝目が覚めたとき、サンタが来なかったことを知った。

 悲しかったけど、その日サンタは僕に妹をプレゼントしてくれた。




 びっくりした。

 サンタって何でもできるんだ。




 父さんがおまえの妹だ、と言った。

 母さんがあなたの妹よ、と言った。

 そして微かに震えるその娘の瞳を見つめて、僕は言った。




 僕は・・・







 その娘はちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、頭を前に傾けた。







 その日からその娘は家族になった。







 僕の大切な妹になった。

 





 名前をアスカといった。







 碇アスカ。







 僕のたった一人の、大事な妹。



















 いつも一緒だった。

 アスカは僕の行く所にどこへでも付いてきた。

 朝から晩まで寝るまで。

 幼稚園。

 公園。

 川。

 買い物。

 風呂。

 友達の家。

 探検。

 宝探し。

 秘密基地。




 いつも一緒だった。

 仲の良い兄妹そのものだった。

 ありきたりの。




 ただ一つ。







 アスカが喋らないことを除けば。







 アスカは夜を怖がっていた。

 正確には闇を恐れていた。

 普段無表情な彼女の顔も、夜が近づくにつれて徐々に強ばっていった。




 僕とアスカは同じ部屋で寝起きをしていた。

 アスカがやってきた最初の晩。

 母さんがおやすみ、と言って部屋の灯りを消した瞬間、アスカは泣き始めた。




 苦悶。

 悲哀。

 恐怖。

 様々な感情が入り交じった哀愁の泣き声だった。




 あわてて灯りを点けた母さんと、同じベッドで寝ていた僕はアスカを必死で慰めた。

 父さんもやってきて、慣れない口調で慰め始めた。




 僕の寝間着に小さな爪を突き立てて、必死の形相でしがみついていた。

 泣き疲れてようやく寝息をたて始めると、僕はアスカを抱きかかえながら横たわった。

 その時父さんが、静かな重みのある声で言った。







 シンジ、この娘を守ってやれ







 僕はその言葉を忘れたことはない。







 その日から、僕らの部屋の灯りが消されることはなかった。







 僕らはいつも手を握り合って眠った。

 朝起きて離してることは一度もなかった。

 堅く堅く、小さな手が結ばれていた。

 溶け合わさった一つの手のように。







 ある日父さんと母さんが、仕事で一晩中帰って来ないときがあった。

 そういう時世話してくれるお祖母さんが病気で来られず、二人きりだった。




 TVを二人で見ている最中にアスカが寝てしまったので、一人で風呂に入るという過ちを犯してしまった。




 湯に浸かっているとき、僕の中の何かが反応した。

 気のせいだと思った。

 でも、胸騒ぎがして風呂から急いで出た。

 TVのあるリビングに戻ると、眠っていたはずのアスカが膝を抱えて座っていた。

 気が楽になってアスカに声をかけた。

 その時、様子がおかしいのに気が付いた。

 アスカの前で屈み込むと、微かに聴覚を刺激された。

 アスカの口元からだった。




 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、

 独りはイヤ、







 ・・・独りはイヤ、







 集中して聞かなければ気が付かないほどの声で、アスカが唱える心の声だった。




 アスカ、




 僕が叫んでアスカの肩を掴んだ。

 するとアスカは涙に濡れた顔を上げて、苦悶から柔和な表情へと変えていった。




 そしてアスカが呟いた。




 おにいちゃん、




 独りにしないで、




 お願い







 初めて聞いたアスカの声はとても澄んでいて、安らぎを胸に浸み入らせるようだった。







 僕はその時からアスカを一人にすることはなかった。




 その時からアスカに声が戻ってきた。




 アスカは今までとは打って変わって、活発な普通の女の子になった。




 親を和ませ、僕を困らせ、気の強いところを見せ、年を経て行くにつれて頭脳明晰な天才少女ぶりを表し始めた。




 でも、どんなにアスカが強くなっていっても、僕の決心は揺るぎなかった。




 守ってあげなきゃ、という決心は。







 そしていつからか僕を名前で呼ぶようになった。




 澄んだ清らかな声で僕を呼びつけるのだ。




 シンジ、と。







 僕らはいつも一緒だった。




 初めて会った時から、一時も離ればなれになったことはなかった。

 本当の双子よりも意思を通わせることができた。

 相手のことは何から何まで知り尽くしていた。




 僕らはいつも一緒だった。




 僕らは二人で一人だった。




 何が起きようともそれだけは不変なはずだった。


































 Both Wings



第九話 Together & Forever.





















 アスカが僕の腕の中で一定のリズムで寝息を立てていた。

 明かりを消した僕らの部屋。

 僅かな外からの明かりが部屋を垂らしていた。

 天井を見上げながら僕はいろいろと考えていた。




 僕達が高校に入学して早半年。

 変わらないこと、変わったこと色々あった。

 まず僕とアスカ。

 兄妹であり、恋人であり、男と女になった。

 断わっておくが、まだ、シテない。

 ただでさえイケナイ関係(とアスカは思っている)なのに、そういうことを今の段階でしてしまったらどういうことになるか、考えると一線を超えることができなかった。




 両親には悪夢のこと、ベッドを共にしていることを話した。

 一応わかってくれた。

 可愛い娘をあまり医者にも診せたくなかったのだろうか、しかたがない、というように了解してくれた。

 アスカに本当のことを知られたくないというのが、本音であろうが。

 僕は、両親と三人でも話し合った。

 もしそういう関係になったら、僕は責任を持つ、と。




 僕は悩んでいた。

 アスカに本当のことを告げるべきかどうか。

 過去のトラウマを知られないためには、僕がこのまま傍にいるという役割を持つことはできない。

 だれか他の男にその役割を果たしてもらわなければならなくなるだろう。

 僕と結婚までいくとしたら、いずれはそのことを話さなくてはいけないだろう。

 しかし、話したときのアスカがどうなるか僕は心配だった。

 夢であれだけの騒ぎを起こす彼女が、はたして耐えられるだろうか。

 アスカの小さな心が弾け飛んでしまう、そういう気がしてならなかった。

 僕は最近そのような思いで頭を悩ませていた。

 アスカの幸せそうな笑顔で和みはするが、解決にはならなかった。

 そして僕の心のなかで一つの考えが、芽生えつつあった。




 友人達は相変わらずだ。

 綾波がトウジがケンスケが洞木さんが、変わらずそばにいた。




 綾波は僕に好きだと言ってくれた。

 嬉しかった。

 前の僕だったら、素直に彼女の気持ちを受け止めることができたかもしれない。

 でも今の僕には彼女を受け入れることはできなかった。

 ありがとう。

 そして、ゴメン。

 それが僕の返事だった。

 彼女は以前と同じ態度で僕に接してくる。

 そんな綾波のいじらしさ、強さに、僕の気持ちは罪悪感で一杯になった。

 


 アスカ。




 アスカも相変わらずだ。

 いつも元気で、活発で、可愛い。

 愛しい。

 その気持ちに偽りはない。

 血のつながりがないと、何度口に出しそうになったか。

 しかし、そのことによってアスカを失うという危険は犯せなかった。




 アスカは一週間で、高校のアイドルになった。

 下駄箱にはラブレターが連日のように舞い込み(一通も目を通したことがなかったが)、告白された数は何回になったのか(全部撃墜)。

 学校中で良くも悪くも彼女を知らないものはいないのではないだろうか。

 僕も何回紹介してくれと言われたことか。




 僕とアスカは一緒にブラスバンド部に入った。

 僕がチェロで、彼女はバイオリン。

 中学からお互い続けており、そこそこの巧さはあるつもりだ。

 僕たちは「シンジ」シンジ、え?




 「シンジ、さっきから何ぶつぶつ言ってるのよ」

 寝てたと思ったアスカが、暗闇の中で僕の目をまっすぐに見ていた。

 「ちょっと高校生活を振り返っていたんだ」

 アスカをそっと抱きしめながら答えた。

 「まだ入学して半年なのに、爺臭いわね」

 「・・・まだ寝ていなかったの?」

 「誰かさんがうるさくて眠れなかったのよ」

 「・・・ゴメン」

 僕が謝ると、アスカは頭に力を入れて腕に押しつけてきた。

 「許さん」

 そしてアスカが唇を合わせてきた。




 しばらくその体勢を保ち、お互いを感じ合った。

 舌が絡み合う。

 舌を吸い合い、愛撫する。

 唇をかむ。

 衣擦れと、二人の息づかいが部屋を支配する。




 理性を失おうとしていた。

 正確には理性を無視していた。

 良いのか?

 お前はアスカを失いたくないから、自分の物にしたいからこんなことをするんじゃないのか?

 理性がそう問いかけていた。

 良いんだよ

 血だってつながっていないし

 アスカが大事なんだから

 欲望に身を任せているだけじゃないのか?

 うるさいうるさいうるさい




 形の良い年の割に大きな胸が覗き見える。

 僕の手がアスカの胸を優しく包みこむ。

 アスカが軽い悲鳴を唇の間から漏らす。

 行為がだんだんと優しいものから、荒々しいものに変わっていく。

 片手を下の方に伸ばして、アスカの濡れている下着の中に手を入れる。

 ビクッ、とアスカの体が震えた。

 「だ、め」

 そう言いながらもアスカの抵抗はなかった。

 キスをやめて顔を上げると、唇と唇の間に銀の糸が架けられていた。

 アスカの泣きそうな顔を置き去りに、僕は胸の中に顔を埋め、夢中で桜色の乳首を吸い上げた。

 そして一旦体勢を整えるために体を起こした。

 後ろからアスカを抱きすくめ愛撫しながら、パジャマの上を、次いで下を脱がしていった。

 「・・・おにい・・ちゃん」

 アスカは震えながらも、時々口から快感の吐息を漏らしていた。

 アスカのそこが準備が整っているのを感じると、僕は自分の着ている物も全て捨て去った。

 「良い?」

 アスカの返事は小さくて聞き取りにくかった。

 アスカと体を重ねた。

 自分のモノをアスカの入り口に当てる。

 心臓が高ぶっていた。




 良いのか?

 本当にそれで

 お前は自分をごまかそうとしている

 アスカに事実を知らせず、既成事実を作ろうとしている

 近親相姦ということで、アスカが罪悪感の胸の高鳴りを恋と勘違いしているかもしれない

 それが怖いのか?

 だからスルのか?

 自分の欲望のままに

 それで良いのか?

 良いんだ

 良いんだ

 ・・・良いんだ




 アスカが訝しげにこっちを見る。

 「シンジ?」

 僕のモノは、当初の勢いを急速に失っていった。

 「・・・・・・・・・ゴメン」







 アスカは二人とも初めてだからしょうがないわよ、と言って僕を慰めてくれた。

 そしてゆっくりキスしてきたが、僕はそれを虚ろに返すだけだった。







 しばらくして僕たちは眠りについた。

 行為の未達成の代償を求めるように、お互いを強く抱きしめながら。

 「おやすみなさい」

 「うん」

 「ずっと、一緒だからね」

 僕の心を見透かしたかのようにアスカが言った。

 「ん」

 いつまでもこのままでいたい。

 それは僕の正直な気持ちだった。

 本当の気持ちだった。

 ・・・だけど。




 やがて二人とも眠りの女神に導かれていった。
















 「僕と付き合ってくれないか」

 アスカがまた告白された。

 下校しようとした校門のところで。

 今回はいつもと違った。

 相手の格という意味で。




 銀色の髪と、赤い目をした、綺麗な人だった。

 名前は僕も知っていた。

 知らないものはいない。

 その人の名は、

 渚カヲルという。

 


つづく
ver.-1.00 1998+12/04 公開
感想・質問・誤字情報などは こちらまで!

 第九話”Together & Forever.”をお送りいたしました。

 今回もまた飛ばして、ああ。

 話が変わっていく。

 止まらない。

 いいのかなあ。

 ま、取りあえず今回もシンちゃんお預け、ということで。

 でわ次回、”I love you.”でお会いしましょう。



 ZEROさんの『Both Wings』第九話、公開です。






 順々に、
 だんだんに、
 着々に、

 いってるいってる、いっちゃってるぅ


 葛藤で今回は未遂だったけど、
 このままこのまま、いきそう行きそう。


 と、
 あ、

 カヲルが−−−


   シンジでなくてアスカに声をかけて、
   あぁノーマルだ。とか(^^;


 一波乱二波乱ありそう〜



 燃え上がれぇ




 さあ、訪問者のみなさん。
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