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3LDKのマンション。

全ての部屋の電気が消され、静寂に包まれていた。

その一室で少年と少女は安らかな眠りについていた。

カーテンの僅かな隙間から、星明かりが差し込んできている。

デジタル時計の発する光が、時を示していた。

3:35

深夜。

















 Both Wings



第参話 Nightmare2





















ここはどこ


・・・暗い


いやな感じ


・・・誰かいるの


いやだ、いやだ


この闇は、

アタシを殺す


誰か助けて


一人にしないで


アタシを、

捨てないで




いや、

いや、

いや、

いや、

いや、

いや、

いや、

いや、

いや、

いや、

いや、













・・・・・・マ・・・マ・・・







それは絶叫だった。




知覚では捕らえられない、魂の叫びだった。




助けて




シンジは突然目を覚ました。

「・・・アスカ」




助けて




耳を澄まして聞こえるのは、自分の鼓動だけだった。

気のせいか、そう思い再び目を閉じた。




助けて




五感では捕らえられないその声が、三度シンジの頭の中に飛び込んできた。

気のせい、じゃない

「アスカ!」

かぶさってる布団を跳ね上げ、シンジははしごをたどって下に降り立った。

「アスカ!」

少女からは何の反応を伺うことも出来なかった。

寝ているのか、布団をはだけさせているアスカを見やりながら、シンジは思った。

夜中に自分だけ騒いでるという事実に赤面して、アスカの布団を直そうと手を伸ばした。

ゾクリ、

伸ばしかけた手が途中で止まり、背筋に悪寒が走った。

え、何この感じは

シンジは、下向き加減にこちらを向いているアスカの顔を覗きこんだ。

少女は眼を見開いたまま、苦悶の表情を浮かべていた。

歯をがっちりと噛み締めているのか、その細い顎は強烈に強ばっていた。




「・・・大丈夫?アスカ」

アスカの頬に一筋の細い線が流れ落ちていた。

「アスカ」

止まっていた手をもう一度伸ばそうとした時、アスカの口がそっと開き始めた。

突然アスカは身を起こし、身にまとわりつく物を払うかのように、腕を振り回し始めた。

シンジは暴れまわるアスカの腕を押さえようとしたが、普段の彼女から考えられない力で突き飛ばされた。

「アスカ!」

華奢な手が枕を掴んだかと思うと、シンジに向かって投げつけられた。

顔面に当たった枕を脇に投げ、向き直った瞬間、枕元にあった目覚まし時計が額に直撃した。

一瞬意識が飛びかけたが、頭を振って持ち直し、かぶさってくる掛け布団や小物を気にせず、アスカへと近づいた。

優しく彼女の名を呼ぶと、シンジは右手で彼女の頭を包み、左手で体を抱き寄せた。

アスカは腕の中で暴れていたが、しばらくすると動きを止めた。

長い時間が過ぎ、アスカの体の強張りがフッと、解けた。

「・・・シンジ」

頬をシンジの肩に乗せ、今まで終始無言だったアスカが呟いた。

「何?」

すすり泣く音が部屋の中に響く。

「恐い」

「大丈夫だよ」

「恐い」

「大丈夫」

打ち震えるアスカの体を、シンジは強く抱きしめた。

「・・・血、出てるよ」

先ほど目覚し時計を食らった個所から、赤い筋が流れ出ていた。




「痛い?」

「ちょっとね」

「ごめんね、・・・・・・お兄ちゃん」

「ん」

シンジは薄く笑いを口元に浮かべた。

「何笑ってんのよ」

アスカは頬を膨らませて、治療する手つきを止めた。

「だって、何年ぶりかなって。そう呼ばれるの」

「たまには良いでしょ、そう呼ばれるのも」

アスカは手を動かし始め、治療を続けた。

「はい、終わり」

救急箱の蓋を閉め、アスカは立ち上がった。

「まだ四時か、一眠り出来そうね」

箱を元の場所に戻し、アスカはシンジの手を引っ張って立ち上がらせた。

「ねえシンジ、お願いがあるんだけど」

「何かな?改まって」

掴んだ手を離さずにアスカは言った。

「あのさ、一緒に・・・寝てくれない」

人一倍プライドの高いアスカが、その様な事を言い始めたことに、シンジは驚きを覚えていた。

「了解。姫様が眠りにつくまで側にいてあげるよ」

シンジは大袈裟にお辞儀をして言った。

「違うの」

アスカは頭を振った。

「?」

シンジが首を傾げた。

「・・・朝まで・・・一緒にいて」




歯車が、回転を始めた。




つづく
ver.-1.00 1998+09/03 公開
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第参話です。

ヤバイくらいの更新ペース。

質もその分低下しそうなので、

ちょっとペースを押え気味にします。

誤解の無い様記しますが、

二人は一緒に寝てるだけです。

何にもいたしていません。

・・・今の所は。

これからどうなるのか。

考え中。

考え中。



このシリーズ初めてから、

ほとんど反響無いんで、

メール頂けると嬉しいです。

それでは第四話で。




めぞんEVA壱百萬HIT。

遅ればせながら、おめでとうございます。

どこまで伸びるんでしょうか。

凄すぎる・・・。





 ZEROさんの『Both Wings』第参話、公開です。





 アスカを苛む悪夢。


 何が原因なんでしょうね・・・


 かーなりきつい感じなんで、

  知りたいような、
  知りたくないような、、



 癒やしてくれる存在がすぐそばにいるのは
 大きな事ですよね。



 2人はどうなるのかな。




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