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ネルフ領リリスの王城は、政治府としてその機能していくはずだった。

その日が来るまでは。

それはレイとアスカがネルフ王都へ戻っていった翌日のことであった。その日もデンテツ・ホラキを中心に通産省の会議が行われるはずで、円卓会議室には宰相を筆頭に各大臣が顔を連ねる。

もともとリリスにとって国王というのは象徴としての役割が大きく、直接的に政治を行っていたのではなかった。王が任命する大臣達の手によって行われていた。

国王が亡くなった今でも、全く国勢に影響はないのは、一重に彼らの有能さ故に他ならない。

今日の会議にはあのトウジ・スズハラの姿もあった。元々彼には親譲りの商才があったようで、商売の手ほどきをしたデンテツも吸収力の良さに驚くばかりだった。

だが、会議室に顔を揃えた一同は、面食らうことになる。

「だ・誰ですかな、貴殿は?」
最初に訊いたのは自分の席を奪われている宰相だった。

「お初にお目にかかる。私は枢機卿の元で修業していた、ギザ・ゾラウシャルドと申す。このたび、ネルフ王我らが枢機卿の命により、リリス自治総督として参った。以後よろしく頼むよ」
壮年の、働き盛りの男といっていいだろうか。どこか瞳に影を持ったあくどそうな人物であった。

「何やて?何勝手ぬかしとんねん、オッサン!!」
ずかずかとギザの前に出たのは、トウジだ。

「ほう。リリスはこんな子供にも政治をさせているのか。よほど人手不足と見える」
穏やかに笑った。

「ぼてくりこかしたろか、ホンマ」
ギザの胸ぐらを掴むと、彼は拳を振り上げようとした。

「やめなァ、小僧。総督を殴ったら貴様のクビが飛ぶぜェ?」
トウジの拳を押さえて放さず、しかも短刀を頸部に突きつける人物がいた。肌が浅黒く日焼けしており、頬に大きな傷がある。手足・体が細く、全体の印象がカマキリのようだ。

「なんや、おんどれ!」
トウジはその人物を正面から睨む。

「オォーオォ。怖ええ目ェしやがる小僧だなァ」

「ウィッテン殿。そこまでにしてやれ」
そう呼ばれたウィッテン・マトリエルは、トウジの手を放し、口の端をつり上げ笑った。そしてそのまま引く。

「さて・・・。私としては事を荒立てたくない。ここに国王陛下の正式辞令書もある。あなた方には今すぐ私の配下になってもらう。それだけだ」

「みせていただこう」
ギザは手を出した、デンテツをにらみつけた。

「あなたが、通商大臣のデンテツ・ホラキ殿」

「そうだ」
ギザは立ち上がり彼に右手を差し出す。

「ギザ・ゾラウシャウドだ。あなたには大いに期待を寄せている」
釈然としない顔で、握手したあと、渡された辞令書に目を通す。捺印は確かにネルフ王国、ナギサ王のものだ。何度かリリス王に見せて頂いた書状と寸分違わない。
「納得していただけたかな?」

「辞令は正式なもののようだ。してゾラウシャルド総督殿、あなたはどうなされるおつもりだ?」

「基本的には私が自治権のすべてを預かる。だがあなた方には今まで通りの職務を果たしてもらおう。・・・本日は挨拶までだ。失礼する」
宰相席から立ち上がると、全員の顔を一瞥し退室した。それに従ってウィッテンも退室しようと進んだが、立ち止まりトウジを指さす。

「小僧、名前を聴かせろやァ」

「トウジ・スズハラや。よぉ記憶せえや、オッサン!!」

「お、オッサン・・・!言ってくれるぜェ。忘れねェよ、テメェのことはな」
不気味な笑みを浮かべたまま、ウィッテンは退室した。

バキッ!

「くそいまいましいわ!なんやねん、突然!!」
壁に拳をめり込ませて歯ぎしりする、トウジ。壁に指の蹟がくっきりと残る。

「これがネルフのやり方なのですか?」
大臣の一人が誰にともなく尋ねる。

「国王が死ぬまで爪を隠していたということか」
とデンテツ。

「となると、レイ姫が危ないんちゃいますか、オヤジさん」
焦ったようにトウジは言った。

ネルフ王都で発生した暗雲の煽りを受けるようにして、旧リリス王国も混迷に包まれつつあった。
 
 
 
 
 
 
 
 

エヴァ三銃士
第十章 「追われる人々の足掻き」
 
 
 
 
 
 
 
 

サラサラと流れる、鼻を突く臭いのする流れが延々続いている。

目が慣れてきたとはいえ、時折天井の隙間から漏れてくる外の光だけが、アスカにとっての道標だった。彼女は夜が明けるであろう時間まで、下水道の奥まったところで身を潜めていた。

夜明けになり、彼女はとりあえず王城からしばらく離れたところから地上へ脱出しようと考え、とにかく走っていた。

同じ頃。

キールとシャノンは、レイを自室に呼んで、尋問のようなことをはじめていた。

「まさか・・・あなた様がこのようなことを起こすとは・・・正直、失望致しましたぞ」

「なんのことです?」

「とぼけなくてもいい。あなたの侍女であるアスカ・ソウリュウの姿が昨晩遅くより見あたらないではないか!」

「・・・知りません。あの子はあの子なりに考えて、私の側を離れたのでしょう。アスカは私に長く仕え過ぎています。時折、離れたくなることもあるのでしょう」
毅然とレイは答える。

「ふざけたことを抜かすな、小娘!!」

「やめんか、シャノン!!王妃様なるぞ。手荒な真似はよせ」
レイがキールに向き直る。

「枢機卿殿、あなたが私やソウリュウの何を疑っているのか存じませんが、私たちにやましいことは何もありません」
キールは不気味に微笑み、着席しているレイを見下ろした。

「これはとんだ失礼を致しました。だがそうならば尚更ソウリュウ君が危険ですな。最近は、陛下の遠大なる理想を理解できぬものが王都には多いようでして。そやつらに取り殺されてなければよいが・・・。お呼びだてして恐縮でした。どうぞお部屋でお休み下さい」
恭しく頭を下げ、彼女に退席を促す。

何の言葉もなく、レイが部屋をさったあと、扉付近に控えていたシャノンに耳打ちした。
「シャノン、ソウリュウをなんとしても探し出せ。その為の歩兵ならいくら使っても構わん。そして何が目的なのかを吐かせろ。・・・いいな、必ずだ。いけ」

「はい」

「まったく、どいつもこいつも無駄な足掻きをしたがるものだ。既に私の世に揺るぎはないというのに」
聖書の置かれたテーブルに両手を置き、彼は声を殺して笑い続けた。

さて、下水道で一夜を明かしたアスカは、城を背にしてさらに進み、頃合いのところを見つけて外に出た。

大きな羽根つき帽子をなるべく目深に被り、なるべく顔を隠す。変装に自信がなかった訳ではないが、彼女も不安は残っているのだ。

ネルフに戻った時に目の当たりにした、あの国民たちの殺気。それが彼女を臆病にさせていたのかもしれない。だが、下水道で適度に汚された衣服のお陰で民の中に巧く紛れ込むことができたようで、誰も彼女が歩いていくことに関心を持たなかった。

アスカはなるべく焦らないようにして、ネルフ王城下街の門を目指した。

が。

細い路地を抜け、大通りへ出ようとした彼女の目に、枢機卿の兵が何かを探しながら動いていく姿が見えた。

(まずい!?)
咄嗟に壁際へと体を移動させ、帽子の鍔を引っ張りながら、ちらちらと彼らの様子を観察した。わずかだが声も聞こえてくる。

「ソウリュウ・・・こへいっ・・・。向こ・・・がせ」
兵士たちはあたりを見回しつつ走って行く。とぎれとぎれの声が、往来を遠ざかって行く。

「まずいわ・・・。さすが枢機卿。もう捜索隊を出してるなんて・・・」
ゆっくりと、大通りの方へ路地を進みながら彼女は言葉を継ぐ。
「でも!伊達に小さい頃からレイに仕えてないんだからっ!」
大通りに枢機卿兵がいないことを確認して、アスカは走る。

だが。

「巧く化けたつもりだろうが、この俺は騙せんぞ、小娘!」
立ちはだかったのは、シャノンだった。

「なんのことですか?あなたが言っていることがよく分かりません」
声色を微妙に変えて、少年のような声で話すアスカ。

「茶番だな。そこまで言い張るなら何故目を合わそうとしない?私に貴様の碧眼を見られてはまずいのであろう!!」
アスカは小さく舌打ちする。

「貴様に逃げ道はないのだよ、お嬢さん」
醜悪に微笑むシャノン。既に4方から枢機卿の兵が迫っていた。

「捕まるワケにはいかないのよっ!アンタ達なんかにぃ!!」
アスカは咄嗟に一番細い路地に再び身を滑り込ませ走った。

「逃がすな!追え!!」
シャノンが叫ぶ。

振り切るように、とにかくアスカはその薄暗く狭まっていく路地を進む。帽子は埃にまみれ、羽織っていたマントは下水で濡れてまだ乾いていない。だが今のアスカにそれを構う余裕もない。とにかく王都をぐるりと囲む城壁の外へ抜けていかなければならない。そこさえ越えれば。

彼女はただ走った。

不意に、アスカの体が後ろから引っ張られ、細い路地のさらに奥へ引っ張られた。

(つかまった!?)
首がガクリとなり、そのまま奥へ引きずられる。逃げられなかった。襟首を信じられない力で引っ張られた。

ズルズル引きずられたまま、その奥まった路地の行き止まりで、彼女は両肩を捕まれ身体を反転させられて、引きずっている相手の方を向けさせられた。

「あ・・・人違い?」
その人物は、彼女の顔を確認してそう呟いた。そして掴んでいた肩を放す。
「ご、ごめんなさいね。私としたことが。こんな綺麗なお嬢さんを息子と勘違いするなんて」

顔を隠していたフードを取ると、そこにはなんとも言えない安心感を与える笑顔があった。

誰かに似ている。アスカは直感的にそう思い、そしてすぐにその答えを導き出す。

(・・・ママ)
その女性は母親に似ていた。

「どうしたの?大丈夫?」
声をかけられ、ビクリとなり我にかえる。

「い、いえ。何でもありません。あなたは枢機卿の追っ手じゃないんですか?」

「枢機卿?・・・いえ違うわ。私は銃士になるって家を飛び出した息子が心配になって、探しに来たの。そうしたらこの有様でしょう?何がなんだか分からなくて、彷徨っていたらあなたに出くわしたの」
流暢に放す母親に似た、その女性。

「息子さんですか。でも銃士隊はしばらく前に解散させられましたよ?」

「らしいわね。私もさっき知ったの。・・・ところであなた追われてるんでしょう?どうして?」

「え、あの・・・実は今ネルフ王国史上、最悪の事態が起こってるんです!アタシは国王陛下と王妃様の命で、そのことをある方たちに伝えなくてはいけないの!」
落ち着けば事態の逼迫の度合いも、冷静に直視されてしまう。アスカに焦りの色が出始める。

「そうなの。・・・いいわ。息子もいい加減ネルフには居ないようだし、あなたに協力させて貰うわね。・・・ええっと・・・」

「アスカです。アスカ・ソウリュウ」
そう答えると、彼女は軽く微笑んだ。

「アスカちゃん。イイ名前ね。私は・・・」

「いたぞ!こっちだ!!」
光指す大通りの方角から、枢機卿の歩兵が見える。

「あらあら。のんびり自己紹介もさしてくれないのかしら?無粋な人たちね。・・・叔父様!アスカちゃんと私が逃げる時間を稼いでちょうだい」
ぬっと、細身の初老の男が暗がりから現れる。後ろには眼鏡をかけた少年が立っている。

「全く、この老骨にそのような大役を押しつけようとは・・・。ユイ君も人が悪い」
銀色の防具に身を包んでいる。頭は完全に白髪だ。

「タダ飯食らいをおいておけるほどウチは裕福じゃありません。それでなくてもあの人がなくなってからと言うもの、ウチの台所事情は苦しくなる一方なんですから」

「しかし既に私は隠居の身。これ以上の重労働は・・・」

「文句がおありなの?叔父様」
反論を許さない勢いで、初老の男の言葉を遮る。

「・・・悪かった。行くぞ、ケンスケ!」
防具同士がぶつかる音を響かせつつ、老人が大通りに出ていく。

「あ旦那様!!待って下さい!!」
少年もその後に続く。

「さ、行くわよアスカちゃん」

「いいんですか?お二人・・・」

「大丈夫よ。あれでも村の元・英雄なんだから。それにここで倒れるならそれもいいことよ。英雄らしい死に場所じゃない?それに家計の負担が3分の1になるんだから」
笑顔で言う。アスカは引きつった笑みを返すしかなかった。

「あ、お名前聴いていいですか?」

「そうだったわね。私はユイ・イ・・・よ」
最後の方は、通りで響いてくる兵士の叫び声でかき消されてしまった。
 
 
 
 

行き場がない、仕事がない、打つ手がない。3拍子も揃うとさすがに笑うしかなくなる。ネルフを出るときに準備してきた旅の資金も、あと3日もここに留まれば完全に底をつくだろう。彼らもまた、彼らの母国同様逼迫していた。

違う意味で。

その夜、彼らは丸形の木製テーブルを囲むようにして座り、今後の方針を話し合う。中心に置かれたランプの明かりがわずかに彼らの顔を照らしていた。

「街で妙な話を聞きいたんですが」
そうシゲル・アオバが切り出したのは、3人が席についてすぐのことであった。

「妙な話?シゲル、何だそれは」

「ネルフの自治政府として機能するはずだったリリス政府の主導権を、どうやらネルフが握ったらしいんスよ」

「何だって?」
立ち上がって言ったのは、マコト・ヒュウガで、リョウジ・カジは眉を少し動かしただけだった。

「そんな馬鹿な話があるか!たとえ枢機卿の差し金だとしてもだ、陛下がそんな横暴をお許しになるはずがないだろ?」
マコトはシゲルに掴みかからん勢いで言葉を飛ばした。

「現実なんだ。認めるしかないだろ?それに酒場の情報じゃ、明日あたりからネルフの一部隊が投入されてくるらしい」
カジは腕組みして、体を椅子にあずけていたが急に起こして、テーブルに手をつく。

「それは察するにあれだな。俺達を捕まえる為の戦力か」

「おそらくは」
とシゲルがいい、マコトが頷く。

「よし。長居は無用だな。明日早く出発しよう」

「どこへですか?」

「何処か遠くに・・・と言いたいところだが、なるべく敵との接触を避けて、田舎道を行こう。最終目的地はネルフ王都だ」
口の端を微妙につり上げて、リョウジが笑った。

「わざわざ虎の穴に入る訳ですか」
とマコト。

「真実を知るためだ。妙に話が出来過ぎている」

翌朝、日も明け切らぬうちに、彼らは荷物をまとめて宿を出た。馬場に繋がれた馬に跨った直後。

「何処へ行くつもりだ?あんたらには逃げ場なんてねェぜ」
柱に寄りかかる一つの影。それが動いて、3人の前に立った。細身のシルエットを持つその男は、ウィッテン・マトリエルだ。

「逃げ場?どうやら貴殿は一人ようですが?」
一歩前に馬を進めて、マコトが尋ねた。

「一人?最強と称されたァ三銃士にしては、読みがあめぇんじゃねぇか?」
うつむいて、肩で笑う、ウィッテン。そして高々と右手を差し上げた瞬間、何十人に及ぶ歩兵が姿を現し、まさに人の壁を形成する。そして合わせたように剣を抜いた。
「さて、この人数、どぉするね?アンタらだったらさ・・・。・・・枢機卿、並びにリリス自治政府総督の命により、アンタらを逮捕するぜェ」

「舐められたもんだな。これだけの人数で俺達を逮捕できると思っているとは・・・」
馬上で剣を抜く、三銃士。一様に気負いも恐れも見られない。

「ま・・・どれだけヤれるか見せてもらうぜ」
軽く上げた右手が振られ、数十の歩兵が3任を取り囲むようにして襲ってくる。一旦3人は目配せしたあと、馬の手綱を思い切り引いて、立ち上げる!雄々しい雄叫びと共に、馬が前足を高々と上げた。そこに走り込んできた兵士が2・3人、まずは気絶する。

「う、うわぁあああ!」
その光景を目の当たりにした一人の兵士が膝をがたつかせ、歩みもままならないまま、後退しようとした。

「おいおい、何処行くつもりだァ?」
見下ろすような格好でウィッテンがその兵士の前に立つ。

「い。いえ・・・か、勝てませんよ・・・」
震える声で懇願するように言う。

「そうか。ご苦労。お前みたいな臆病者を必要ねぇよ」
一瞬だった。腰に下げていた短刀で、頸動脈を切り裂く。

「ぎっぎゃああああっ」

「逃げてぇヤツは逃げろ。俺の短刀から逃げられるならなァ」
狂ったようにウィッテンは笑った。

後方も前方も地獄。ならばいっそお国のために。全員一様にそう思ったのか、殺気のすべてが三銃士に向けられた。

「部下を人間として扱ってませんね」
マコトの剣を握る手が微かに震える。

「ああいう上司を持つと部下は苦労するな。だが俺達もここで捕まる訳にも死ぬ訳にも行かないからな」
リョウジが言いつつ、柄で向かってきた一人の首筋を叩く。

「そういうことです」
シゲルが優雅な動きで攻撃をかわした。立て続けに襲ってくる兵士をさらにかわして行く。

絶対数で優勢を誇っているはずのウィッテン部隊だったが、死への恐怖で背水の陣と化した彼らに、百戦錬磨の三銃士をねじ伏せるだけの『力』も『技』もなく、ただ倒されていくだけであった。

しかし。

三銃士の健闘もむなしく、数はなかなか減らなかった。

「なかなか減らないな」
額に汗が光るマコト。馬体が擦れ合うほどの距離に近づいたシゲルに声をかける。

「リョウジさんは?」

「あそこにいるよ」
顎を向けてマコトは言った。彼の示した先に、一瞬だけ視線を向けるシゲル。そこには馬を降り、敵の指揮官らしき痩せこけた男と対峙するリョウジの姿があった。

「アンタがリョウジ・カジ。銃士隊隊長だった男だな?」

「これはこれは。殺そうとしている相手に詳しいんだな」

「ああ。俺は殺した相手の経歴をしっかりと覚えておくタチなんだぁよ。リョウジさんよォ、アンタは今まで殺してきただんなヤツよりも価値がありそうだァ」

「これはどうも。・・・だが、その台詞、殺してからにするんだ・・・な!」
抜剣から振り抜きまでのスピードが風の如く早かった。だが、ウィッテンはそれを紙一重でかわす。

「噂通りだ。太刀筋も早さも申し分なしだなァ!」
踏み込んで、腰にいくつも下げた短刀を抜き取り、リョウジに向ける。リョウジもそれを受け流した。
「やるじゃねェか。俺の一番撃をかわしたヤツは片手分ぐらいしかいないぜ」
見下すような目線を向けて、うすら笑うウィッテン。
「だがな、俺は気がなげぇ方じゃねぇ。どちらかと言えば短い方だ。そろそろお縄についてもらうぜェ?」
どこにまだ隠していたのかは不明だが、さらに何十人もの兵士が取り囲むようにして現れる。

じりじりと距離を詰められ、三銃士は背中合わせに固まった。

「きりがない!」
マコトが叫んだ。距離は一歩一歩詰まっていた。

「こりゃ、戦略的撤退も余技なしッスね」
シゲルが苦し紛れに言う。

「おいおい、悪役の捨て台詞だな。まるで。しかしなりふり構ってられない・・・か。よし。二人とも。あの一角、弱腰のヤツが多い。あそこを抜けるぞ」

「「了解!」」

動きを合わせる、合図をする、などという無駄な動きは不要だった。自然と彼らの動きは合うのだ。

ぐるりと馬体を一回転させ、そして手綱を思い切り引く。狙った手薄な地点に向け、シゲルとマコトが突進した。その間、口笛を吹いて路地に隠れていた愛馬を呼びつけ乗るリョウジ。あたふたと状況を見守るしかなかった、兵士達は、走り去る3頭の馬を見、互いに顔を見合わせた。

「テメェら!ふざけてんのかァ!?追え!!草の根分けてでも探してこい!!!!」

「はっ!!」
慌てて散開する兵士達。その動きのまとまりのなさに、ウィッテンはさらに苛立ちを覚えた。

「ロクな兵もいないとはなァ・・・。ネルフ王国兵も地に落ちたモンだぜ。賞金稼ぎ家業に戻った方がラクかもな」
飛び上がり、民家の屋根に乗ると、ウィッテンは屋根づたいに旧リリス王城へ帰参して行った。

一方、うまく包囲網を突破した三銃士は、隊列を乱すことなくリリス国境に向け走っていた。

「これからどうします?リョウジさん」
マコトがちらちらとリョウジを見ながら訊ねた。

「どんどん追いつめられてますよね、俺らって」

「それを言うなよ、シゲル。ともかく、一旦別々のルートを取ろう。我々三人が固まっているのは目立ちすぎる」

「では、体勢を立て直す場所は?」

「ネルフの田舎町、ゲンドウズタウン」
そこは今は亡き英雄の生まれ育った場所。その名を冠したのはつい先頃のことだ。

「わかりました!」

「目指すはゲンドウズタウン」
三人は丁度目の前で三股に別れた道をそれぞれに進んだ。彼らの強行はまだまだ終わらない・・・。
 
 
 
 
 

つづく

NEXT
ver.-1.00 1999_05/14公開
感想・質問・誤字情報などは hiro-sen@big.or.jp まで! 





やはり僕に月刊ペースを維持することは不可能でした(爆)
約束破り作家の平岡誠一です。

遅れた割にいいものじゃないのは、一重に技量の無さとスランプにある・・・ハズ。

さて今回は新キャラが4人出てきましたが、いかがでしょう?また「魔装機神」を知らない方にはなんのことやらな
名前がありました。知らない方は、「ああ、そういう名前なんだ」って思って下さい。

ギザ・ゾラウシャルド。セカンドネームを「魔装機神」に登場したキャラクターから頂きました。
今後、あまり登場することはないでしょう(爆)ラスト前ぐらいにやられに出てくるキャラですし(無責任爆)
あんま関係ないけど、アニメ「魔装機神サイバスター」は認めたくないなぁ・・・。

ウィッテン・マトリエル。一応、使徒から生成したキャラの一人です。
できれば使徒は全員出す予定ですが、かき分けられるか心配なところ。苦しくなったら、女性キャラにするまでですけど。

謎のヲヤジ(笑)コウゾウ・フユツキ。ユイさんの言葉から想像していただけると思いますが、彼はユイの叔父であり、
村を救った元・英雄であります。ゲンドウズタウンと名の付く前は、当然、コウゾウズタウンと呼ばれてました。

ケンスケ・アイダ。ウチでもやっぱり不遇な扱いを受ける運命にあるようですね。
一応、フユツキの従者ということで出演です。今後の出番は未定。
二人は一応、元キャラがドン・キ・ホーテとサンチョ・パンダですが、まぁ本編設定に生かすような事項でもないですし。
裏設定として考えていただければ幸いかと(笑)
 

今後、絡んできそうなのはウィッテンぐらいでしょうか?
さて次回第十一章は、舞台が再びネルフに戻ります。何の因果か、アスカと三銃士が激烈肝っ玉母さん(笑)ユイさんの元に集結。
ようやくすべてが明らかになります。
そして発案される、カヲル・ナギサ十三世救出計画!
(*この予告はまだ未定のものです)

第十一章「題名未定」。

それではまた次回・・・と言いたいところですが、次の投稿は第八章での予告通り、修業中のシンジの話になると思います。
ということで、なるべく早くお送りできるよう、頑張りますので、気長にお待ち下さい。

とりあえず5月中に上がることだけは絶対ないです。公私ともにまた忙しくなるので。それでは。
 
 

追記:
ここでも宣伝(爆)

ただいま僕のHPでは、「エヴァファンの為のスーパーロボット大戦」を作るべく、超人気作家の彩羽さん達と共に
掲示板でいろいろ語り合っています。
詳しくは「SEIITI HIRAOKAhomepage」内、『SRCシナリオ会議室』まで!!
多数のご参加、お待ちしております。
 

大家さん、すみません。掲示板に続き、あとがきでも宣伝入れてしまってm(_)m




 平岡さんの『エヴァ三銃士』第十章、公開です。




 三銃士達、
 なかなかカムバックできないです・・・

 早くー早くぅ
 スワッピカッと活躍して
 キラッドマッと王都を救うんだ〜


 って今それをしたらシンジの出番が無くなっちゃうからダメか(^^;


 やっぱりね、いきなりでなく、徐々に盛り上がるのが良いんだよね(^^)


 街に行ったアスカの方でも
 新キャラらと出会いがあって・・・




 これから更に!





 さあ、訪問者の皆さん。
 隔月刊作家m(__)m(^^; 平岡さんに感想メールを送りましょう!




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