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Declination below adolescence!

第陸話 Team formation


「ということなんだが、どうだい?」

加持はカラオケ『ジオフロント』の待合室でアスカ達に話しかけていた。
ちょうど、アスカ達が合流した時と、加持達が集合した時が重なり、こういう場が出来上
がっていたのだ。少しはレースについて知っているアスカはまだしも、そういうことに無
関係であったシンジ達にはさっぱりわけが分からなかった。

「加持さん、すべての経緯を教えてくれないと、理解しようがないわ。」
「おっと、それはそうだな。リッちゃんはよく知っているだろう?」
「そりゃあね。説明するならカラオケはできない、と考えたほうがいいわよ。」

リツコがそう言うと、アスカとミサトは露骨に嫌そうな表情をする。それを見たシンジは、

「じゃあ、カラオケの後にしましょうよ。それくらい時間はありますよね?」
「そうだな。じゃあ、2時間後。」

ミサト達とアスカ達は別れるとそれぞれ指定されたボックスの中へと入っていった。
アスカはさっそく歌本を手にすると、パラパラとめくり、すぐに曲を入力する。曲の検索
が終わり、イントロメロディが流れだす。

「まずは練習よ、次の曲で勝負、だからね。」

アスカはそう言うと、マイクを握りしめ、歌詞が表示されているディスプレイを見ずに、
歌いはじめる。その歌を聞いて、聞いていたヒカリの表情は驚きのものとなる。

「アスカ、凄い!」

アスカが歌っているのは、先週発売されたばかりの曲であり、ヒカリも練習していた曲で
あった。その曲はテンポはそれほど速いものではないのだが、変調する、ということと、
英語詞が混じっていることから、かなりの難易度を持っていたのだ。歌っている歌手の名
前は霧島マナ。当代きってのアイドルであり、アスカ達も注目していた。現在は休養を兼
ねたオフに入っている、と情報誌では書かれていた。
アスカは原曲そのまま、といった感じで歌いきり、マイクを置いた。このカラオケシステ
ムでは自動的に採点がされることになっており、その点数はカウントアップしていき、9
3点を示した。

「フフン、どうかしら。次は、ヒカリね。」
「ええ、アスカほどじゃないけど。」

ヒカリはマイクを持つと、小さく肩でリズムを取りながら、歌いはじめた。アスカほどで
はないのだが、忠実に原曲に従った歌い方である。点数は86点を示した。

「おい、やばいで、センセ。勝てるんかいな。」
「自信、ない。でも、一応ね。」

シンジはそう答えるとマイクを取り、歌いはじめた。スローテンポのバラードである。

「あれ?碇君って歌うまいのね。チェロをやってたっていうから、音感もいいのかしら。」
「そうかもね。でも、私には及ばないわ。」

シンジの点数は88点。それを見て、トウジはガックリ項垂れた。

「嘘や、裏切りもんや。」

結局、アスカとシンジは接戦ながらもアスカが僅差で勝利し、ヒカリとトウジは圧倒的な
大差でヒカリの勝利となった。

「確かに、アスカと委員長の勝ちだな。うん。歌っているアスカの写真、といういい絵も
撮れたことだし。」

ケンスケはアスカとヒカリの勝利を宣言し、アスカとヒカリに促す。それにアスカは応じ
て、

「さぁて、勝ったものの言うことを、敗者がきくのよ。いいわね?シンジ、こっちに来な
さいよ。トウジはちゃんとヒカリのいうこと聞きなさいよ。」

アスカはシンジを側に呼び、ヒカリとトウジも側に寄る。それぞれ、いうことを考えてい
たようで、アスカはシンジの耳元で、ヒカリはトウジの目の前で小さく、

「これから、毎日私のためにご飯を作ること。いいわね?」
「お弁当作ってくるから、ちゃんと食べてね。」

と言った。シンジとトウジはその言葉に呆然としながらも、ひどいものではなかったので、
安心して頷いた。
2時間後、アスカ達はネルフのテストコース上に立っていた。連絡を受けたのか、カオル
とレイも合流している。コース上でリツコとマヤは4台の「エヴァンゲリオン」をコンテ
ナから登場させた。アスカの弐号機、カオルの参号機はメンテナンスのために、持ち込ま
れていたからである。そして、そこに登場した「エヴァンゲリオン」のは、青を基調とし
た零号機、紫を基調とした初号機、真紅を基調とした弐号機、漆黒を基調とした参号機で
ある。肆号機はテストベッドのためにこの場には現われていない。また、ユイの伍号機は、
ユイが乗り回っているのでこの場には無い。

「このうち、弐号機と参号機はアスカとカオルが乗ることになっているけれど、、零号機
と初号機はまだ、その搭乗者を教えていなかったわね。」

リツコはそう言うと、全機のエンジンを始動させた。

「さて、ユイ会長が言うには、この「エヴァ」のうち、初号機、弐号機、参号機をもって、
ネルフはレースに参戦するわ。搭乗者は、アスカちゃんとカオル君、そしてシンジ君。こ
こに集まった人たちには全員参加して欲しいそうよ。」
「そう、やってくれるわね?シンジ。」
「母さん!」

リツコの言葉の次に聞こえた声にシンジは振り返る。ユイはいつもの伍号機にもう一人、
少女を乗せていた。少女はヘッドギアを外すと、フウッと息を吐いた。

「これがネルフ・ワークスの面々というわけね。あれ?カオル君じゃない。」
「御久しぶり、マナさん。」

カオルはそっけなく答え、その返答に少女は不満の表情を示す。少女の名前は霧島マナと
言った。

「この娘が最後のメンバーの霧島マナちゃん。レースに参戦して、シリーズを制した時、
あの人は戻ってくるそうよ。」
「あの人って、誰?」

レイはユイに尋ねる。ユイは腕を組むと、

「うちのバカ亭主よ。今も放蕩中だけど、シリーズを制すれば戻ってくるって連絡があっ
たのよ。」

と答えた。
アスカとヒカリは霧島マナ当人が現われたことに驚いて固まってしまい、シンジも呆然と
していたが、ユイの言葉の最後を思い返すと、ユイに文句を言う。

「でも、僕に出来るわけないよ。バイクだって乗ったことないのに。」
「シンジ、約束変更よっ。アンタはレースに出て、シリーズを制すること。」

アスカは断ろうとするシンジにそう言い放つと、シンジを引っ張って、無理矢理初号機に
跨がせる。

「リツコ、インターフェースを頂戴。一回走らせてみるわ。」
「そうね。マヤ、ケースから出して。」
「はい、先輩。」

マヤはケースからヘッドセットインターフェースを取り出すと、アスカに手渡す。アスカ
はシンジの頭にインターフェースを取り付けると、自らも、インターフェースをつけて弐
号機に跨がり、

「シンジ、頭で念じればその通りに動くわ。機体の限界よりも上の性能だって引き出すこ
ともできるから。まあ、最初はゆっくり走ればいいわ。じゃ、一緒に走ってあげるから、
行くわよ。」
「そんな、無理だよ。」
「つべこべ言わずにさっさとスタートするっ。」

アスカの威勢と、その時の表情を見て、シンジは乗らざるを得ない、と思いはじめていた。
アスカの表情は威勢のよさとは丸っきり異なり、寂しげであったからである。

(そういえば、アスカは父さんに逢いに来たんだっけ。それに、言うこと聞くって約束し
たんだよな。アスカの我が侭みたいなものだけど。)

シンジは初号機にまたがるとグリップを握った。その様子に、アスカとユイは頷き、他の
面々はおや?という表情でそれを見ていた。
先にアスカが走り出し、シンジはゆっくりとアスカに続いて走り出す。グリップを握った
だけで、操作ができている、という点ではシンクロコントロールに助けられているのだが、
機体の振れもなく走るその姿にバックミラーで見ていたアスカは感心する。

「マヤ?シンクロレートはどうなってる?」
「弐号機68%、これはアスカちゃんの予測値内です。初号機は、40%!!初めてとは
思えません。」

マヤの言葉にユイはニヤリと笑みを浮かべる。

「初めてじゃないわよ。タンデムで乗っていたりするんだから、1年近く訓練してきたこ
とになるのよ。」
「あ、そうですね。」
「会長、ところで、高校のうちは全戦には出場できないんですが、どうするんですか?」

カオルはユイに問う。ユイは頭を傾げて考えると、

「ま、いいじゃない。3年間はウォームアップということで。「エヴァ」のポテンシャル
はそのくらい気にならないはずよ。」

と答えた。
アスカとシンジの走り方を見ていたミサトは、その走りに文句をつけてばかりいる。加持
はその批評を聞いて苦笑していた。
丁度、その時、ティーカップとお菓子を乗せたお盆を持った少女がピットに入ってきた。

「遅れてすみません。お茶菓子を準備していたもので。」

少女はそう言うと、ティーカップに紅茶を注ぎ、ピットに居並ぶ全員に渡す。いぶかしげ
に見る、ユイと加持、リツコ以外の人達。その様子を見て、少女は、少し怒ったような表
情でユイを睨む。それにユイはウインクして答えると、

「この子がここに集まった最後のメンバーになる、山岸マユミちゃん。明日付けで第一高
校に編入予定よ。」

と説明した。ヒカリはお茶菓子を見て、小さく驚きの声を上げる。

「これ、手作りなの?」
「ええ。」
「今度、作り方教えてくれないかしら?私、和菓子は作ったことないのよ。」

ヒカリとマユミはそのことだけで急速に仲が良くなっていくようである。トウジはお茶菓
子をパクつきながらも、ラップタイムの表示を眺めていた。ケンスケは霧島マナの写真を
撮ることに集中している。

「カオル君はレースやらないの?」
「僕は補欠さ。監督でもあることだし。」
「ふーん。で、あなたは何をするのかしら?」

急に聞かれたレイは自分自身、何をするのか分かっていなかったために、キョロキョロと
してしまい、ユイに救いを求める表情を向ける。ユイはレイの後ろに回り、両肩に手を置
くと、

「レイはあなたと一緒のマスコットガールよ。レイは零号機を使ってのプロモーションも
できるしね。マナちゃんだけでは人手が足りないでしょ?」
「そうなの。よろしくね、レイちゃん。」
「こちらこそ。」

マナとレイは握手を交わす。レイの表情をそれとなく読んだマナはクスッと笑うと、

「カオル君とは小学校の時に同じクラスだったのよ。別に好きでもないから安心していい
わよ。」

と言う。その言葉にレイは顔を真っ赤にしてしまう。

「ラップ、1分14秒っ!ハンドルコントロール時レコードと同タイムです。」
「シンジ君、才能あるんじゃない?」
「そうだな。」

ミサトと加持はそう話し、ピットの中に戻ってくる。リツコも一通りのデータは揃ったよ
うで、アスカに通信で戻ってくるように伝えると、マヤと戻ってきた。しばらくして、ア
スカがシンジを連れてピットの中に戻ってくる。

「十分乗れるのが分かったでしょ?」
「うん。」
「じゃ、レース参戦決定ね。」

アスカとシンジは話しながら皆の所に歩いてきた。その様子を見て、ユイは満足そうに、

「それでは、これでネルフ・ワークスの結成ね。」

と宣言する。それに全員が頷いた。

夕刻を過ぎて解散し、アスカ達は家の近くのスーパーに買い物をしに来ていた。今日はユ
イも一緒であり、ユイが運転する乗用車に乗って、の買い物である。
カオルは一緒に住んでいるリツコ、マヤと帰り、マナはとりあえず、キープしていたホテ
ルへ戻った。マユミは引っ越しの後片付けがあるとかで、家に帰ったようだ。
ミサトと加持は飲みに出かけたらしい。

「今日のメニューは何にしようかなぁ、母さんは何がいい?」

シンジが買い物かごをぶら下げながら、隣で歩くユイに聞く。
ちなみにレイは買いたかった雑誌を買う、とスーパーの店舗内にある本屋に行った。

「そうねぇ、シンジとアスカちゃんが作るんでしょ?お母さんは何でもいいわよ。」
「アスカは?」

ユイの答えにシンジは逆の隣を歩いているアスカに聞く。アスカはちょっと考えて答える。

「アタシも何でもいい。レイも好ききらいが減ったから結構凝ったもの作れるんじゃない
の?人にばっかし聞いてないで、自分で決めたら?」
「うん・・・。鍋はどうかな?寄せ鍋とか、しょっつる鍋とかきりたんぽ鍋とかもあるよ
ね?」

アスカはきりたんぽ、という言葉を初めて聞き、シンジに問う。

「きりたんぽって何?」
「ご飯を潰して、串の周りにくっつけて筒状にしたものを焼いたものだよ。それを鍋に入
れて食べるんだ。確か秋田の鍋料理だったはずだよ。」
「それ、食べてみたい。」
「いいんじゃない、材料はすぐに揃うし。」

ユイも賛成の意を得ると、シンジは材料を選び始める。ほぼ材料が揃ったところで、シン
ジは鶏肉を目の前にして悩みはじめる。

「どうしたのよ、鶏肉で悩んじゃって。」
「比内鶏、というのがいいんだけど、値段が全然違うんだ。予算から考えるとギリギリな
んだ。」
「シンジ、今日の分はチーム結成祝いで予算は気にしなくてもいいわよ。」
「母さん。じゃあ比内鶏にするよ。おいしいもの食べたいしね。」

シンジは比内鶏を手にし、かごの中に入れる。

「あとは、買うもの無いよね?」
「無いと思うわ。」

アスカの同意を得ると、シンジはレジに買い物かごを置く。今日はユイがお金を払うのだ
が、シンジは値段をしきりに気にしていた。

「4968円になります。」
「じゃあ、1万円でお願いできるかしら?」
「1万円よりお預かり致します。」

シンジは安堵の表情である。会計が終わったあとにユイはシンジに尋ねる。

「どうしたの、値段を気にして。」
「うん・・・。今日は5000円未満を目安に買い物したんだけど、その通りになったか
ら。」
「主夫根性丸出しね、お兄ちゃん。」

レイも買いたい本を買ったらしく、紙袋を抱えて合流する。

「さて、帰りましょ。」

ユイは全員が車に乗りこんだのを確認すると、アクセルを踏みこんだ。

霧島マナはホテルの部屋のダブルベッドに寝転がり、電話をしていた。

「うん、そういうことでお願い。テレビィ?出る気無いわよ、マスコットガールはやって
みたいからやるのよ。やりたくもないテレビ出演は嫌よ。ネルフ・ワークスの宣伝活動で
はテレビに出るかもしれないけどね。じゃ、頼んだわよ。」

マナは受話器を置くと、ベッドの上で大きく伸びる。

「さぁて、明日から楽しみよぉ。」

マナはそのまま眠りについてしまった。なんだかんだ言ってて、今日一日の動きは肉体的
には疲労が少なくても、精神的には随分と疲労していたようである。

翌日、

「おっはよーっ。」

第一高校の制服を着て、アスカ達の目の前に現われたマナの姿があった。

It continues to the next time







NEXT
ver.-1.00 1998+02/25 公開
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あとがき
BGM:バーチャルスター発生学
  (少女革命ウテナサウンドトラック・バーチャルスター発生学より)

これで、陣容は揃いました。
やっと規定の人員が登場したところです。
以降、ネルフ・ワークスについては話がほとんど
無くなることでしょう(^^;
誰か書いてくれる人がいれば、大歓迎です(笑)
そういうことで、やっと学園エヴァになるという(笑)

ファンタジーもの、書いてみたいなぁ。
ネタはあるのだが、構想がまとまらないという(^^;
なしくずしに始める、という手もあるのだが(おひ)
主役はやっぱり、シンジ&アスカのダブルキャストかな。
この場合、構想中のネタではレイは敵となります。
後は未定(^^;
さて、どうなるか。

じゃ、次回で。

P.S.いつの間にか5000hitにぃ。記念描こうにもカウント早すぎ。



 風奈さんの『Declination below adolescence!』第陸話、公開です。



 5000円。


 アスカ・シンジ・レイの食べ盛り3人組+ゆいさん。

 4人前で5000円。


 シンジくん、買い物上手ですね(^^)


 キリタンポ・・・食ったこと無い・・・食ってみたい・・・
 ・・・・・腹減った・・・・今、午前4時過ぎ・・・腹減った (;;)




 面子の揃ったネルフワークス!

 イニシアティブは、もう、当然、女性陣の物でしょう(^^;
 シンジくん頑張れ〜



 さあ、訪問者の皆さん。
 ペースよく連載を続ける風奈さんに感想メールを送りましょう!




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