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Declination below adolescence!

第弐話 Original form


AM07:30 碇家ダイニング

「なんですってぇっ!」

アスカの叫び声がダイニングに響き渡った。
目の前のシンジはビクッと一瞬脅えるしぐさをする。
昨夜のハートブレイクショット、6連コンボがアスカへのトラウマになっているのかもし
れない。だが、手に持った箸を落とすことなく、朝食を食べ続けている。
一方、レイは肉が食べられないらしく、おかずから肉を取り除きつつ食べていた。しかも、
シンジが一瞬脅えた隙をつき、シンジの皿から卵焼きを盗みとる、という器用さを見せて
いる。ちなみに、アスカは箸を使うのが苦手らしく、フォークとナイフ、スプーンで食べ
ていた。

冒頭の叫び声の原因は現在より3分ほど前に遡る。
シンジが一番早く起きて、朝食を準備する。
これはいつもの日課であり、問題はなかった。
アスカとレイが起き出して(レイは起きたのではなく、シンジに起こされた)、いざ朝食、
というところで、アスカが、

「ところで、おじさんは?」

と聞いたところ、レイが、

「知らない、逢ったこと無いもの。」

と言ったことが引き金になっていた。

「しょうがないじゃないか。僕だって逢ったこと無いんだ。」
「じゃあ、なんでここに住んでるのよ。って、レイッ、卵焼きを返して。」

レイは喋りつづけるアスカの卵焼きにも手を出していた。だが、見つかったことで、食べ
ずに卵焼きを返す。シンジは、それを見て、

「レイ、どうして僕のは返さないのにアスカのは返すの?」

と問う。レイはシンジを一瞥すると、

「ハートブレイクショットに、6連コンボ。お兄ちゃんが勝てる要素はないもの。弱者は
強者に従うのが常よ。」

と答え、笑みを浮かべる。それを聞いたシンジはガクッとうなだれる。

「アスカ、昨日の約束通り、6連コンボ教えてね。」
「いいわよ。あれにはちょっとしたコツがあるのよ。」

アスカとレイは意気投合したようだった。そして、それを見たシンジは溜め息をついた。

(アスカとレイ、手が付けられないよ。助けてよ、もう。)

AM08:00 碇家居間(リビングともいう)

アスカはレモンイエローのワンピースに着替えて、居間に戻ると自分で紅茶を淹れて飲ん
でいた。シンジとレイは学校へ通う準備をするために部屋に戻っていた。

「ねぇ、アスカ。聞きたいことあるんだけど。」

先に準備が終わったシンジが居間に来て、アスカに話しかける。アスカはシンジの方を見
て、何事かと居ずまいを正しながら、シンジの方に向き直り、

「何かしら?」

と答える。シンジは頭をポリポリかきながら、

「アスカの髪って脱色?それとも染めたの?そういうの止めたほうがいいと思うよ。」

と言う。その言葉を聞いたアスカのこめかみはピクピクしていた。

「ちょっと、シンジ。それ本気で言ってる?」
「え?違うの?」
「あんた、バカぁ?名前聞いてわかんないの、私は、日、独、米のクォーターよっ!この
髪は、地毛、目の色が青いのも生まれつき、分かった?」
「うん・・・。」

シンジはアスカの迫力にうなずくしかなかった。もっとも、言い返せば、どういう結果に
なるか想像できたためもある。登校前のこの時間、気絶をするわけにはいかなかった。

「残念、新技見れると思ったのに。」

レイが居間の入り口で呟く。心底残念そうな顔をしているので、シンジの顔がひきつる。
アスカもこの言葉に、すこし引いたようだ。

「あ、あんた達、学校に行くんでしょ?アタシはどうしよっか。」
「うーん、合鍵作ってないし、どうしようかな。」

アスカはその場の雰囲気を変えようとしてシンジに聞き、シンジはそのことで考え込み始
めた。その時、

ピンポーンッ

と呼び鈴が鳴る。それに続いて、

「碇ーっ、遅刻するぞー。」

と声がする。

「トウジだ。もうこんな時間、とりあえず家を出ようよ。」
「ええ。」

アスカ、シンジ、レイの3人はかばんを持つと(アスカはポシェット)、玄関に向かう。
靴をはき、ドアをあけると、3つの人影があった。一人は黒髪を短く切りそろえている少
年、一人はクセッ毛で眼鏡をかけている少年、そして最後の一人は、肩ほどまで伸ばした
黒髪を頭の左右でおさげにしたそばかすのある少女。

「おはよう、トウジ、ケンスケ、委員長。」
「おっはよー、ヒカリ、トウジ、ケンスケ。」

シンジとレイは3人に挨拶する。3人はアスカの姿を見て、怪訝そうな表情をする。

「センセ、この外人女は誰や?」

髪の短い少年はシンジに問いかける。

「えっと、僕たちの従姉の・・・」
「惣流=アスカ=ラングレーよっ。外人女とは失礼ね。」

トウジの問いに答えるシンジの言葉を中断し、アスカは言う。腰に手を当てて、ふんぞり
返るような姿勢はアスカの自意識の強さを感じさせる。その言葉に、おさげの少女が、

「はじめまして、私は洞木ヒカリ、碇君と同じクラスで学級委員長をしてるの。で、これ
が・・・」

と、トウジの腕をひっぱり、

「鈴原トウジって言うの。よろしくね。」
「ふーん、ヒカリって呼んでいいかしら?アタシのことはアスカでいいわ。」

アスカはヒカリに対しては好印象を抱いたようだが、トウジに対しては先程の言葉が尾を
引いているのか、あまりいい印象を持てないようだ。

「俺は相田ケンスケ。ところで昨日の昼間、横須賀で見かけたような気がするんだけど。」

クセッ毛の少年はそう言うと、眼鏡を怪しく光らせる。その様子に引いたのか、それとも、
ケンスケの言葉に対して、アスカの肩はビクッと震える。

「気のせいじゃないの。ところで、もう8時15分だけど、急がなくてもいいのかしら?」
「あぁっ、いっけなーい。遅刻しちゃうわ。私たちは自転車だけど、碇君達はどうするの?
歩いて行くともう間に合わないわよ。」

アスカが急に話を変えると、ヒカリが慌てた表情になる。

「えぇっ?これ以上遅刻すると生活指導の先生が・・・」

という、シンジの言葉にレイは、ボソッと呟く。

「巻き添えは嫌よ、お兄ちゃん。」
「遅刻する原因を作ってるのはレイじゃないか。」

アスカは少し考えると、

「いいわ。シンジ、レイ、送ってあげる。ちょうどいいことに、このバイクがあるしね。」

といい、真紅のバイクをポンポンと叩く。それを見て、ケンスケは大声で叫ぶ。

「あぁっっ!このバイクはネルフのグッ・・・」
「アンタは黙ってて。」

アスカはケンスケの鳩尾に肘打ちを放ち沈黙させる。そしてバイクのエンジンを始動させ
た。2ストロークでも、4ストロークでもない、独特のエンジン音。

「さて、行くわよ。早く乗って。」

アスカの声に、シンジとレイはバイクにまたがる。1番前は運転するアスカ、2番目はシ
ンジ、最後にレイ、という順番である。アスカはワンピースの裾を気にしつつ、

「アスカ、行くわよ。」

と呟き、急発進させた。一切の挙動の振れもなく、走り出すバイク。それを呆然と見送
ったトウジ達3人も、慌てて自転車を漕ぎはじめる。

「トウジ、あのバイク、ネルフの新型だ。テストモデルだよ。」
「何や、ネルフって」
「国際的な複合企業(Conglomerate)よ。この間、授業でやったじゃない。でも、テスト
モデルって・・・」
「昨日、横須賀に行ったのはネルフの輸送船が来たからなんだ。来週、モーターショーが
あるだろ?それの展示用の車両が届くからね。それで見かけたのが、今の惣流=アスカ=
ラングレーってことさ。」
「碇君の従姉、って本当なのかしら?」
「さぁ、どうだろうね。」
「そんなことより、急がなあかんで。」

トウジは勢いよく漕ぎ始め、二人を引き離しはじめる。やや遅れたがヒカリとケンスケも
急いで後を追う。このペースだと、遅刻を免れそうであった。

一方、アスカが駆るバイクでは・・・

「ちょっと、シンジ。ワンピースの裾押さえて。見えちゃうじゃない。」
「えぇっ!?」

シンジは戸惑ったが、その言葉に従い、ワンピースの裾に手を当てる。その時、露になっ
ていた太股に目が止まり、赤面する。

「何見てんのよっ。」

アスカの肘打ちにシンジ沈黙。

「あそこよ、アスカ。」

レイの言葉に、アスカはドリフトターンで一気に曲がり、学校の校門をくぐり抜ける。そ
して前庭を走りぬけ、玄関に横付けする。

「着いたわよ。まだ8時25分、余裕で到着ね。」

バイクの侵入に学校内から何人かの教師が走り出てくる。

「あ、ミサト先生、おはようございます。」
「おはよっ、ミサト先生。」

シンジとレイは駆け寄ってきた教師のうち、ひときわ目立つ女性教師に挨拶をする。紫が
かった黒髪で、体のラインを強調するタイトは服装。パッと見では、教師には見えない。
彼女の名前は葛城ミサト、シンジとレイの担任であった。

「おはよ、シンジ君、レイちゃん。そ、れ、よ、り、このバイク、ネルフのじゃない?」

ミサトの目は輝き、バイクのディテールを目で追っていた。だが、少し違和感を感じたよ
うだ。

「これって、カタログに載ってないわね。」
「当たり前ですよ、ミサト先生。なんてったって、モーターショー公開前ですからね。」

やっと追い付いたケンスケがミサトの疑問に答える。その後ろにトウジとヒカリが付いて
来ている。

「やっと思い出したよ、惣流=アスカ=ラングレー、ネルフの公式テストパイロット。1
4歳ながら学歴は大学卒、今回の来日はモーターショーでのエキシビジョンと聞いていた
けれど。」

ケンスケの言葉に、アスカは舌をペロッと出すと、

「バレたか。まぁ、いいわ。アタシがシンジの従姉であることは間違い無いもの。教えて
あげるわ。今回、ネルフが開発した新型バイク、コードネーム「エヴァンゲリオン」その
Mass production style、量産型試作機がこの、弐号機よ。」

と、ふんぞり返るようにして、言う。アスカはこの姿勢を取るのがクセのようだ。

「アスカ、探したよ。」

その声にアスカは顔を真っ青にし、ぎこちなく、その声のしたほうを振り返る。その声の
方向には、銀髪、紅い瞳の美少年が立っていた。その脇にはアスカの弐号機に良く似た形
状の漆黒のバイクがあった。

「カオル、どうしてここに?」
「弐号機にはビーコンがついてるからね。ところで、ゲンドウ氏には逢えたのかな?」
「ううん、シンジもレイも逢ったこと無いんだって。実の子なのに。」

アスカはシュンとして答える。シンジは今まで(と言っても、まだ1日も経っていないが)
のアスカと違う姿に戸惑っていた。それでなのか、並んで立っていたアスカの手を無意識
のうちに握る。

「そうそう、アスカ、僕は連れ戻しに来たのではないよ。本部から通達、碇家で当分暮ら
すように、とのことだよ。モーターショーでは僕が参号機を使うから大丈夫さ。そういう
ことで、シンジ君たちと仲良くね。」

カオルはそういうと、傍らのバイクに乗り、そのまま走り去った。

「さて、授業よ。さっさと教室に入って。」

ミサトの声にトウジ、ヒカリ、ケンスケは校舎に駆け込む。

「それじゃあ、アタシ家に戻ってるわ。鍵貸して。」

アスカがバイクにまたがろうとする。そこにミサトが、

「ねぇ、あなた14歳って言ってたわね。ちょうどいいわ、授業でも見学してきなさい。」

と言い、アスカの手を引っ張る。

「ちょっと、どーして大学出たアタシが授業見学しなきゃいけないのよ。」
「いいじゃないの、どうせ暇なんでしょ?」

ミサトに引きずられていくアスカ。だがその言葉と裏腹に嫌がっているそぶりはない。楽
しんでいるようであった。

It continues to the next time

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ver.-1.00 1998+02/05 公開
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あとがき

今回はいきおいだけで書いてしまいました(^^;
理由は深夜のバイト帰りでハイになってたことですね。
今回はベースから思いっきり離れてます。
合っているのはバイクで登校することくらいですから(^^;
導入がやりやすかったので用いたから、
後は違ってて構わないんですけどね。
今回登場したのは、トウジ、ヒカリ、ケンスケ、ミサト、カオルですね。
それぞれ学園エヴァと変わりないです、はい。
あ、カオルだけ違います。加持的役回りかな。
後で設定資料上げないと。当分先になると思いますが(^^;
その時の乗りで書いてるので、著しく設定と食い違うかもしれないし(^^;

タイトルとかの英文は、WXG3.0βの英訳機能でやったので
正確かどうか知らないです(^^;

それでは、また次回で。


 風奈さんの『Declination below adolescence!』第弐話、公開です。



 アスカちゃんが学校に〜♪

 みんなと同級生になれるのかな?
 みんなとクラスメートになれるのかな?

 そうだといいな♪


 バイクをっさそうとかるアスカ。

 そのアスカとレイに挟まれたシンジ・・・

 良い事ばかりが起きている・・・いいなぁ(爆)



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