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太陽の日差しは強く、空は真っ青だった。
シンジは寝転がって空を見ていた。
ふと、シンジは自分の名前を呼ばれ起き上がる。
あぜ道の向こうから誰かが手を振って走ってくる。
シンジは手を振り返す。
彼女はシンジの側に来て立ち止まる。
そして、はぁはぁ息をしながらシンジを見下ろす。
太陽の光に、その髪がきらきらと輝く。
「シンちゃん。叔父様がさがしてたよ。」
シンジはにっこり微笑みかえす。
「うん。ありがと。」
そして、立ち上がって、彼女をしげしげと見つめる。
「でも、そんなに急いでるの?」
彼女はふるふる首を振って答える。
「ううん。そんなに急いでないの。」
シンジは首をかしげる。
「だったら、どうしてそんなに急いでたの?」
彼女はじっとシンジを見つめる。
「わからない?」
シンジは素直に首を振る。
「うん。わかんない。」
彼女はにっこり微笑んで…
 
 
 

Time Capsule
TIME/99
 
 

第4話
二人の関係
 
 
 

 
シンジははっと目を覚ます。
なんだろ?
今なんか夢を見てたよな。
えーと…
何の夢だっけ?
首をかしげて考え込むシンジ。
誰か出て来てたよな…
とても、大事な人のような気が…
最近、良く見る夢と関係あるのだろうか?
うーん…
どうしてだろ?
夢の中でははっきり誰だか分かるのに。
起きると、その人の輪郭がぼやけてしまう。
シンジは振り返って時計を見る。
2時か…
シンジはベッドから降りて、部屋から出ていく。
 
 

シンジは冷蔵庫から牛乳を取り出し、コップにそそぐ。
ふと、ベランダから物音が聞こえたような気がした。
なんだろ?
シンジはそろそろとベランダの方に歩いていく。
ゆっくりとベランダが見える場所にやってきてベランダを覗き込む
そこには月明かりに照らし出される人影があった。
その人影が誰か分かったシンジはほっとため息をつき、
囁くように人影に声をかける。

「マナ?」

ぴくりと肩を震わせ、そろそろとシンジの方を振り向くマナ。
シンジの姿を認めて、囁くように尋ねかえす。

「シンジ…」

シンジはベランダに出てマナの隣に立ち、不思議そうに尋ねる。
マナはパジャマにカーディガン姿でベランダの手すりにもたれていた。
その瞳がいつもより潤んでいるようにシンジには見えた。

「どうしたの?こんな時間に…」

マナは首を振る。
そのしぐさに合わせて髪がふわりと揺れる。
それを見たシンジの脳裏に何か浮き上がる。
しかし、それは一瞬のことでシンジには何か理解できなかった。

「ちょっと…眠れなくて。」

マナが視線を夜空に向ける。
視線の先には半月が銀色の光を放っている。
シンジもその視線を追って、月を見る。
 
「そう…」

シンジは何を言っていいかわからず、そう答えた。
月はさえざえとした銀色の光を放っている。
風に乗って、どこかで木々がざわめく音が聞こえてくる。
こんな風に月を眺めるのって久しぶりだな。
ふとそんな思いがシンジの脳裏をよぎる。
そして、シンジはベランダからの景色をゆっくりと眺めた。
シンジ達が住んでいるマンションは少し高台になっているので、
結構遠くまで街並みを見渡すことができる。
遠くのビル街が輝いている。
右手には大きな自然公園があるため、そちらの方に明かりはほとんど無い。
と、マナが口を開く。

「星が瞬いてるよ。」

マナは手を伸ばす。
パジャマの腕の裾が肘ぐらいまでさがる。
その腕が月の光を反射して闇の中に浮かび上がる。
シンジはそのマナのしぐさから目を離せない。

「そうだね。」

「シンジって天の川、見たことある?」

マナはシンジの方を向き、首を少しだけかしげるようにたずねる。
シンジはこっくりとうなずく。
キャンプに行った時に見た天の川のことを思い出し、そうマナに告げる。

「うん。今度キャンプに行く所でも見えるよ。」

「そうなの。キャンプがすごく楽しみ。アタシ天の川って大好きなの。」

「へぇ、そうなんだ。確かにいつまでも見ていたいって思ったな。去年。」

マナはふとシンジの方を見つめて尋ねる。
その表情が少しだけ険しくなっている。

「それは誰と一緒に見たの?」

マナはその自分の口調にはっとする。
まるで嫉妬してるかのように聞こえたかもしれない。
でも、もし他の女の子と見たのだったら…
やっぱり嫉妬しちゃう…
しかし、シンジはそんなマナの気持ちには思い当たらず、軽く答える。

「クラスのみんなと見たよ。今年と同じでみんなで来てたから。
わいわい騒ぎながらだけど。」

シンジはなにげなくマナの顔を見る。
マナがじっと自分の顔を見ていたことに気づき、表情だけで尋ねる。
ふるふると首を振り、視線を夜空に向けるマナ。
よかった…
マナは安堵のため息を漏らす。
シンジもマナに習って視線を周りの景色に移す。
マナはシンジと今、二人でいることに感謝した。
ずっと、望んでいた時間。
でも、シンジは分かってないんだろうな。
アタシがどれほどシンジに会いたかったかを。
しかし、自分からそれを言い出す気はまったくなかった。
そう、シンジが思い出すまで。
アタシはずっと待っているだけ。
絶対シンジは思い出してくれるから。
そう約束したから。
月の銀の光が二人を幻像のように照らし出す。
吹き抜ける風が額にかかる前髪を揺らす。
シンジはその様子に見とれる。
マナはくすりと笑って首を振る。

「ね、洞木さんから聞いたんだけど。
去年のキャンプで、女の子のお風呂を覗いた人がいたって。」

シンジは苦笑する。
もちろん誰かは知っている。
でも、それを言っていいものかどうか?

「それって、鈴原君と、相田君で、2泊目は2人とも、
布団です巻きにされてたとか。」

おかしそうに笑うマナ。
シンジは苦笑し、その話の続きを聞かせる。

「それで、せっかく撮った写真のフィルムやディスクも
全部取り上げられて、ケンスケ、泣いてたんだよ。」

「そうなの?相田君らしい。」

マナはくすくすと笑う。
そう…
この笑いかた。
僕は何処かで…

黙って、じっとマナの顔を見詰めるシンジ。
マナは不思議そうにシンジを見詰めかえす。
何処でだろう?
僕は…
マナと…
それまで楽しそうに話していたマナがふいに表情を暗くする。

「…お父さんとお母さん、どうしてるかな?」

シンジはマナの顔を見る。
暗がりの中で見たせいかマナの瞳は曇っていた。
マナは瞳を伏せ話を続ける。

「…少し寂しくなっちゃって…それで、ここに来て考えてたの。
一緒に行った方が良かったのかなって。」

シンジはゆっくりと肯いて見せる。
こんな時間に一人でベランダにいた理由。
そうだよね。
親元を離れて一人での生活。
不安だよね。
シンジはマナから視線を街並みに戻して答える。

「マナはひとりになったの初めて?」

「うん。ずっと、一緒にいたから…」

「そうか…」

シンジは何を言おうか一瞬迷った。
しかし、マナににっこり微笑みかける。
安心させようとしたのだが、うまく笑えてるかな?
シンジは内心、どきどきしていた。

「でも、僕はマナと会えて良かったと思ってるよ。」

マナが驚いたように、シンジを見る。
シンジは照れくさそうな笑みを浮かべる。
ふっと風が二人の間を吹き抜ける。
月の光が少し弱くなって、あたりが暗くなるが、それは一瞬のことだった。

「…そうね。そうよね…」

見詰め合う二人。
しかし、吹き抜ける風にマナは身震いをする。

「ねぇ、そろそろ中に入ろっか?」

まだ、夜中の気温は低い。
シンジも少し肌寒さを覚えうなずく。

「そうだね。明日も学校あるし。」

二人はベランダから、部屋に入った。
そして、それぞれの部屋の前でおやすみの挨拶を交わす。

「じゃ、おやすみ。」

「おやすみなさい。」

自分の部屋に入ろうとしたシンジにマナが囁く。

「今日は…ごめんなさい…」

シンジはいつもの笑みを浮かべて答える。

「いいよ、気にしなくても。」

「…ありがと。」

マナもいつもの笑みを浮かべる。
そして、二人はそれぞれの部屋に入った。
 
 

シンジは自分のベッドに横になりながら、
先ほど自分が思いついたことを考えていた。
やっぱり…
僕とマナって…
どこかで…
会ってるよ。
でも、何処でだろ?
マナに聞いてみようかな?
しかし、やってきた睡魔に負け、シンジは眠りに落ちた。
 
 

翌朝。
碇家の玄関のドアが勢いよく開けられる。
そして、シンジが慌てて出てくる。
さらに慌てて靴をはきながら、マナが続く。

「行ってきまーす。」

ユイの返事を聞く前に駆け出す二人。
階段を飛ぶように降り、歩道に出る。

「間に合うかな?」

マナはシンジの一歩後ろを駆けながら、シンジに声をかける。
シンジは腕時計を見て首をかしげる。

「どうだろ?いつも通りにミサト先生が遅刻してくれればOKなんだけど。」

「え、ミサト先生って遅刻するの?」

「結構ね。でも、今日はどうかな?」

澄み渡った快晴の中、二人は走るスピードを上げた。
 
 


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ver.-1.00 1998_01/04公開
ご意見・ご感想は sugimori@muj.biglobe.ne.jp まで!!


あとがき

ども、あけましておめでとうございます。
TIMEです。

Time Capsule 第4話「二人の関係」はいかがでしたか。
タイトルの割に二人の関係はイマイチはっきりしませんでしたね。
当初の予定を変更しちゃったんで、中途半端になっちゃいました。反省。
でもこの変更のおかげで、15話完結予定がかなり多くなりそうです。(^^;;
#ちなみにクリスマス記念のマナ編は18話前後ぐらいですかね。現時点でですが。

今回、初めてマナがシンジをどう思っているかが出てきます。
今まで、マナのモノノーグをやってなかったんですよね。
#ま、バレバレだったんですが。
あと、シンジの夢の中で彼女は「シンちゃん」って呼んでますよね。
これもポイントです。

さて、12月は怒涛の更新をやったのですが、
今後の更新スピードとして、1ヶ月2〜4本ぐらいでいければいいかなと思っています。
でも、どうなるかは本人次第なので、何ともいえません。
ま、あくまで目標というところで。(かなり逃げてます。わらい。)

では、次回第5話「二人でお出かけ」でお会いしましょう。
 






 TIMEさんの『Time Capsule』第4話、公開です。






 あぅ、もどかしいぃぃ

 シンジも、
 マナも、

 こう、あと、ちっと、、


 でもでも、
 この位が、
 この位なのが、

 この二人に丁度いいリズムなのかな♪



 ほっとするような、
 ほっとけないような、

 不思議な感じですよね(^^)




 さあ、訪問者のみなさん。
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