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「ねぇ、シンジ君。起きてよ。ねえってばー。」

シンジはゆさゆさと揺さ振られていた。
しかし、全く起きる気配が無い。
シンジは夢うつつに誰かの声を聞いていた。
母さんか…
もう朝なのかな…

「あーん。もお。起きないよぉ。どーしよ。」

なんかいつもと違うよーな気が・・
うーん…
母さん、何困ってんだろ?

「シンジ。シンジってばぁ。」

またもや、ゆさゆさと揺さぶられる。
あれ?
でも、母さんにしては声が違うような気が?

「もう。遅刻しちゃうよー。起きてよー。」

この声は…
あーー!!
シンジはがばっと飛び起きた。

「きゃあ、シンジ君、どーしたの?いきなり飛び起きて。」

びっくりしたように手で胸を押さえるマナ。
制服を着てベッドサイドに立っている。
シンジはマナを見て尋ねる。

「マナじゃない。どうしたの?」

マナは不思議そうに首をかしげる。
かみがさらさらと揺れ、差し込んでくる太陽の光に輝く。

「どうしたの?って、ユイおばさまが起こしてきてって。」

シンジは意識をはっきりさせようとして首を振る。

「母さんが?」

「そうだよ。」

マナはにっこり微笑む。
そして、壁にかかっている時計を指差す。
時計の針はもう8時を指していた。

「もうそろそろ起きないと遅刻だよ?」

「ごめん。ありがと。」

シンジはぼさぼさの頭をかく。
そして、ベッドから出る。

「じゃ、アタシはリビングに行ってるから。」

そして、マナは部屋を出て行く。
シンジは大きく伸びをして服を着替え始めた。

Time Capsule
TIME/98

第3話
事情があるんです



「おはよう。」

シンジは制服のボタンをとめながら、リビングに現れた。
リビングにはユイとマナがいる。
ユイはエプロン姿でキッチンに立っている。
マナは座って、朝の連続ドラマを見ていた。

「おはよう、シンジ。どう、マナちゃんに起こされた感想は?」

ユイが微笑みながら、朝食をテーブルにならべている。

「びっくりしたよ。なんかいつもと違って困ってるんだもの。」

シンジは苦笑しながらテーブルにつく。
マナがシンジの方を向き、おかしそうに微笑む。

「だって、全然起きないんだもの。
それなのにいきなり飛び起きるから私もびっくりしちゃって。」

「母さんだと思ってたのに、声が違うから飛び起きたんだよ。」

ユイはマナにウィンクして、微笑みかける。

「そう、じゃ、これからアタシをマナちゃんで交代で起こしに行こうか?」

「いいですね。そうすれば、シンジ君も毎日ちゃんと起きれそうだし。」

「勘弁してよ。ゆっくり寝られないよ。」

シンジは苦笑して、首を振る。
そして、いつもいるはずの人がいない事に気がつく。

「あれ?父さんは?」

「聞いてなかったの?一週間ばかり出張よ。」

「ああ、昨日の夜言ってったね。」

朝食に取り掛かるシンジ。
マナはそんなシンジをにこにこ微笑みながら見ている。
シンジはふとマナを見て尋ねる。

「マナは食べないの?」

こっくりとマナはうなずく。

「ううん。もう食べたの。シンジ君と一緒に学校に行こうと思って。」

キッチンに立っていたユイがシンジの方を振り向く。

「そうよ、マナちゃんはシンジが準備するの待ってるんだから。」

「なるほど。こりゃ、明日から早起きしないとね。」

シンジは苦笑する。

「行ってきまーす。」

「行ってきます。」

「はい、いってらっしゃい。」

二人は歩道に出て、並んで歩き出す。
今日もいい天気で、太陽の日差しが眩しい。
吹き抜ける風にマナとシンジの髪が揺れる。

「遅くなったけど、歩いて間に合う時間だから。」

シンジは時計を見て時間を確認する。
隣でマナはてくてくと歩きながらうなづく。

「前の学校は始まるのが早かったから、いつもの調子で起きちゃって。」

マナがうーんと大きく伸びをする。

「いい天気だね。今日も。」

「うん。いい天気だ。」

二人は空を見上げる。
空は真っ青で雲一つなかった。
シンジはふと思い付きマナの方を見る。

「たぶん、今日学校に行った時に誘われると思うけど。」

マナはシンジの方を見る。
振り返る時のそのしぐさが、シンジの目を引く。

「何?」

「今度の休みにみんなでキャンプに行くんだ。
で、それをマナの歓迎会にしようって言ってて。」

マナは少し驚いたようだ。
その後、満面の笑みを浮かべて微笑む。

「えー?うれしい。行ってもいいの?」

シンジもつられて笑みをこぼす。

「そりゃ、本人が来てくれないとね。」

「行くよ、絶対に。」

絶対というところに力を入れて答えるマナ。

「そうか。多分、委員長か、トウジってやつから話があるだろうから。」

「うん。」

マナは学校に着くまでにこにこしていた。

「おはよー。」

シンジとマナは教室に入る。
ケンスケはやってきて声をかける

「おはよう…あれ?霧島さんと一緒なんだ?」

「あ…まぁ…ね。」

ちらりとマナと視線を合わせて、曖昧に答えるシンジ。
マナもにっこりと微笑んだ。

「ふうん…まあ、いいや。霧島さん、ちょっといいかな?」

マナはこっくりうなずく。
そして、シンジの方を見る。

「じゃ、シ…碇君。また後で。」

シンジは慌てて、ぎこちなく答える。

「あ、う、うん。」

ケンスケはマナに今度の休みのキャンプのことを話しているようだった。
シンジは自分の席について、かばんから教科書を出す。
そして、マナとケンスケの方をぼんやりと見つめる。
話し終わって、マナは自分の席につく。
と、あっという間にマナの周りに人だかりが出来る。

「彼女、大人気だな。」

ケンスケは席に座ってシンジに話し掛ける。

「そうみたいだね。」

「ほら、見てみろよ。他のクラスからも見に来てるぜ。」

廊下のドアにも人だかりだ出来ている。

「ほんとだ…まぁ、原因は何処にあるか分かってるけどね。」

視線をケンスケに戻し、シンジは苦笑して見せる。

「まあね、彼女、ひさびさのヒットだからな。」

と、おもむろにDVDカメラを持ち出すケンスケ。

「なるほど。」

シンジはマナに視線を戻す。
彼女は少し戸惑いながらも、みんなからの質問に答えていた。

昼食は仲のいいグループどこに固まって食べるのが普通である。
が、今日はマナという転入生が入ったことで大混乱となった。
みんながみんなマナと一緒にお昼を食べようと、マナの席に殺到したのだ。
しかし、マナは。

「碇君と食べるから。」

の一言ですべての誘いを断った。
シンジはいつもトウジとケンスケと一緒にお昼を食べているので、
都合四人でお昼を食べことになる。

「なんか、みんなの視線がきついな。」

ケンスケがちらりと振りかえり辺りを見回す。
周りの男子生徒達の視線が突き刺さるほど感じられる。

「そりゃそうやろ。せっかく転校生とお近づきなれるチャンスやのに、
もう、シンジが予約済みだったんやからな。」

一つ目の弁当を平らげ、二つ目の弁当に取り掛かるトウジ。
その隣では、シンジがやっとお弁当の蓋を開けたところだった。

「…なるほど。ところで、いつの間にそんな約束したんだ?」

尋ねられて二人とも顔を合わせる。

「え、い、いや、今日の朝に。ね?マ…霧島さん。」

「え?ええ。そう、そうなの。ひとりで食べるの寂しいから、
一緒に食べようって約束してたの。」

「ふうん…」

胡散臭そうに二人を見るケンスケ。
このままではまずいと、マナは話の方向を変えることにした。
トウジの弁当箱を指差す。

「ねぇ、ところで、どうして鈴原君は弁当を二つ持ってきてるの?」

マナは不思議そうにトウジに尋ねる。

「あぁ、これはやな…」

トウジは言葉に詰まってしまう。
どのように説明しようか思案しているうちにケンスケが脇から答える。

「トウジ、いつもお弁当一つじゃ足りんって騒いでたんだ。
そうしたら、委員長がもう一つ作ってくれる事になって。
委員長って、家族の分全部のお弁当を作ってるんだって。」

ケンスケがにやにやとトウジを見る。
トウジは知らん振りをして弁当を平らげているが、少し頬が赤くなっている。
マナはにっこり微笑む。

「そうなんだ。鈴原君と洞木さんってそおいう仲だったのね。」

「いや…それはやな…」

トウジが頭をかいて何か言おうとするが、
それを制するようにケンスケがトウジの耳元に囁く。

「真後ろに委員長が居るぞ。ヘタなこと言うと弁当抜きだぞ。」

そのとたん、トウジの背筋はしゃきっと伸びる。
その仕種を見てマナは笑みを大きくする。

「ふうん…何と無く分かったわ。二人の関係。」

そして、何事もなく終わるかと思ったその日の放課後、
災厄は急にやってきた。
それはマナが休憩時間に書いたあるものが原因だった。
シンジは自分の席で帰る準備をしていた。
と、ケンスケとトウジがシンジの席の前に立つ。

「あれ?二人ともどうしたの?」

シンジはケンスケとトウジの表情にただならぬものを感じた。
少し身構えてしまうシンジ。

「シンジ。お前ん家の住所と電話番号はこれだったよな?」

二人はシンジに一枚の紙切れを見せる。
シンジはそこに書いてある、住所と電話番号を確認する。

「うん。そう…」

シンジはそこまで言って、「しまった。」と思った。
もしかして、これって。

「なるほど、これは霧島さんの住所と電話番号だけどな。」

ケンスケは胡散臭そうにシンジの顔を見る。
トウジも眉をひくつかせている。

「つまり一緒の場所に住んでるんかい。
どういうことやねん。はっきりさせてもらおか。」

そのトウジのセリフにクラス中がどよめく。
トウジとしては周りに聞かせるつもりはなかっただろうが、
もともと大きな声なのでクラス中に響いてしまう。
それを聞いたクラス中の視線がシンジ達に集中する。

「い、いや、それは。」

シンジはどう説明したものか答えに窮した。
マナがシンジの側にやってくる。
顔を伏せ、小さな声で囁く。

「シンジ君、ごめんね。」

そのセリフにまたもクラスがどよめく。
シンジは首を振る。
しかし、救援は思わぬところからやってきた。

「理由はアタシから説明するわね。」

教室全体がその声に注目する。
そこには…

「ミサト先生…」

シンジとマナの方を向いて、両手を合わせてあやまるミサト。

「ごめんね。二人とも。今日の朝説明しておこうと思って
すっかり忘れちゃって。」

ミサトは教卓に立つと、
二人が一緒に暮らすことになったいきさつを話す。
マナの父とシンジの父が知り合いで、
マナの両親が国外に出張になったので、
シンジの家に一緒に住むことになったこと。

「…という訳なの。」

それを聞いて、クラスがざわめく。
理由は分かったが、しかし、一緒に住むというのはやはり衝撃が大きかった。
特に、マナを気に入っていた男子生徒達には。
シンジとマナは顔を見合わせる。
マナはシンジの耳元に小さく囁く。

「どうして、ミサト先生が知ってるのかな?」

「多分、うちの母さんが連絡したんじゃないのかな。」

「そうね。そうかも。」

「そういうこと。みんな分かったわね。」

ミサトはその言うとシンジ達の元に歩いてくる。

「ごめんなさい。シンジ君の御両親から連絡あったんだけど。」

シンジは首を振って答える。

「いいえ。助かりました。」

「でも、水臭いで、シンジ。それなら、そうと言ってくれればよかったんや。」

トウジがシンジの背中をバンバン叩く。
その隣でケンスケがウンウンうなずいている。

「そうだぞ、話を聞いてれば、こんなことにならなかったのに。」

「ごめん。どう説明しようか迷っちゃって。僕も昨日家に帰った時に聞いたから。」

トウジが首をかしげる。

「そらまた、急な話やな。オヤジさんに隠されてたんか?」

「いや、実はね…」

シンジは一部始終を話す。
トウジとケンスケは顔を見合わせる。
あきれたように感想を言うケンスケ。

「またいいかんげんな親だな。霧島さんには悪いけど。」

マナはふるふる首を振って、苦笑する。

「ううん。いいの。本当のことだし。」

トウジはシンジに話し掛ける。
その目尻が下がっている。

「しかし、シンジせんせ。こんな可愛い子と一つ屋根の下とはいやーんな感じやな。」

「な、何がだよ。」

シンジは慌てて言い返す。

「おや、真っ赤になったぞ、なんぞ、昨日の夜にあったんかのう。」

トウジはいやらしいめつきでシンジを見る。

「何、馬鹿なこと言ってんのよ。」

突然、背後からヒカリが現れ、トウジの耳を引っ張る。

「いててて、いいんちょ、勘弁してえな。」

「鈴原、今日は週番でしょ。はやく、ゴミを捨てに行って!」

トウジはしぶしぶゴミ箱を抱え、教室から出ていく。
後ろにはヒカリがついている。
そのまま、焼却場までついていくようだ。
その様子を見てみんなはおかしそうに笑った。




NEXT
ver.-1.00 1998+12/18公開
ご意見・ご感想は sugimori@muj.biglobe.ne.jp まで!!



あとがき

Time Capsule 第3話「事情があるんです」はいかがでしたか。

ぐう。ここまで来て、まだ二日しか経過していない。
しかも第4話はこの日の夜のお話しだし。
この調子だと、6話ぐらいまでは話が進みそうも無いな。(^^;;

で、今年の更新はこの3話で終わります。
年明けの早いうちの4話以降の更新行いますのでお楽しみに。
再開後の更新ペースもなるべく早くしたいと思っていますが、どうなることやら。
とりあえず、年末年始に書き溜めしときます。

年内はまだクリスマス記念が三本ありますので、そちらをお楽しみに。

では、年明けになりますが、第4話「二人の関係」でお会いしましょう。






 TIMEさんの『Time Capsule』第3話、公開です。






 ハイペースの更新っ

 久々に見る連続更新の第3話目−


 ”ついに”、というか
 ”やっぱり”ばれちゃいました〜


 親が一緒とはいえ、
 こりは大事件でしょう−−−−

 中学生くらいにとっては、とくに。


 大波乱必至?!


 キャンプでは何が起こるのかな。

 こちらもありそう♪




 さあ、訪問者のみなさん。
 加速するTIMEさんに感想メールを送りましょう!





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