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「シンジ。どうしたの?」
ぼうっと立っている僕に気を使ってか、
僕の幼なじみ・・・いや今日からは妻だっけ・・・
惣流・アスカ・ラングレーは心配そうに僕の顔を見つめる。
赤い髪が白のウェディングドレスに良く似合っていた。
持っているブーケは彼女の親友の洞木ヒカリが作ってくれたものだった。
ただし、「ブーケは私に投げてちょうだいね。」 という依頼はあったが。
そのブーケはアスカの髪の色に合わせて赤い花を多くあしらっていた。
「いや、ちょっとね・・ここまで大変だったなぁって。」
僕はここまでの二ヶ月を振り返り、大きくため息をつく。
「そうね。この二ヶ月大変だったわね。」
まさか、こんなに結婚するのが大変だったなんて、
僕は思ってもいなかった。
すでに結婚している友人達の話から想像はしていたが、予想以上だった。
「でも、これで、シンジはアタシだけのものになるのね。」
アスカは満面の笑みを浮かべて僕を見る。
「あのさ、もうちょっと表現やわらげてくれない?
なんか身売りされた気がしてしょうがないんだけど。」
僕はアスカの顔を見てお願いする。
まぁ、聞きわけてくれないだろうというあきらめながら。
「そう?だったら、この絶世の美女、惣流・アスカ・ラングレー様の
下僕になるんだから。とか言えばいい?」
意地悪そうに笑うアスカ。
やはり聞いてはくれないな。
ベッドでだとあんなに可愛くて素直なのに、
どーして普段はこうなんだろ?
「でも結婚したら、名前は碇アスカだからね。」
しかえしとばかり、僕はそう言うと、
僕は父さんをまねて唇の端だけニヤリと笑って見せる。
「もう、わかってるわよ。」
アスカは少し頬を染めてうつむく。
そうなったいきさつを思い出しているのだろうか?
「用意はいいか?シンジ。」
黒のスーツを着た相田ケンスケ・・・中学からの親友の一人・・・が
僕達二人に声をかける。
「準備はいい?アスカ。」
僕はアスカに微笑む。
「いつでもいいわよ。」
アスカも僕に向かって微笑んでくれる。
「・・勝負の約束覚えてる?」
僕はそっとアスカにだけ聞こえるように彼女の耳元に囁く。
よく僕たちは二人の間のとり決めを
何か勝負をすることで決めていた。
今回の勝負はどちらが結婚式で先に泣くかだ。
ちなみに結婚後の姓を僕の姓の碇にする
というのもこの勝負で決めたんだ。
その時の勝負方法は・・・と
ちょっと人には教えられないかな。
・・・まぁ、それに僕が勝利してアスカは
碇アスカに名前を変えることになったんだ。
ただ、どうしても嫌だったらアスカの
好きにしていいよって聞いたんだけど
アスカは
「いい。」
って言ったから、まんざら碇アスカって名前が
嫌というわけでもなかったのかもしれない、
アスカは素直じゃないから。
「覚えてるわよ。アタシが先に泣いたら、
アタシがずっと夕飯を作るけど、
シンジが先に泣いたら、ずっとシンジが夕飯を作るのよね。」
にやりと僕は微笑む。
「そうだよ。じゃ、がんばって、アスカ。」
不満気に少し頬を膨らませアスカが答える。
「まるで他人事みたいね。」
「いや、多分、アスカが先に泣くから。」
「なにお。絶対泣いてやらないんだから。」
二人の前のドアが開きバージンロードが現れた。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

・・・・結局、アスカが先に泣いて、勝負は僕の勝ちだった。
 

「素直でいたい」
"Like or Love"
Written by " TIme is like a dream to ME" 98/1/20
This page dedicate to all visitor in TIME's ROOM.
 

「あぶない!!アスカ!!」
思わず僕はアスカをかばうように飛び出した。
まさか相手がナイフを出すとは思わなかったから、
僕は慌ててしまっていた。
だいたい向こうにしても最初は、夜に二人で歩いている高校生を
からかうだけのつもりだったのだろう。 (かなり大人げないが。)
しかし、今回は相手が悪かった。
僕の幼なじみの惣流・アスカ・ラングレーはからかわれて、
黙っているタイプの女の子ではなかった。
かくして、激しい罵り合いになった。
しかし、それでいきなりナイフを出すんだから、
相手もかなり頭に来ていたのか、タダの馬鹿なのかよくわからない。
今にして考えれば、アスカは僕がかばわなくても良かったのだと思う。
しかし、僕はそのナイフの前に飛び出してしまった。
そして、相手のナイフでざっくりと右腕を切られてしまった。
(しかも、アスカはそのナイフをよけようとしていたから、
僕のしたことはまるっきり無駄だったことになる。)
「っ!!」
僕は右腕に鋭い痛みを感じ、おもわず声を上げる。
「シンジ!!」
アスカが腕を押さえてかがみ込む僕に心配そうに駆け寄った。
「・・・おい、まずいぜ。」
「ずらかるか。」
僕たちをからかったその二人組は慌てて逃げ出した。
普段だったら、アスカが逃がすはずがないのだが、
僕の事が心配でそれどころじゃなかったらしい。
記憶にないのだが、この時アスカは僕に
「救急車を呼んでくるから待ってて。」
と言い残し助けを求めに行ったそうだ。
僕は右腕の出血をなんとか押さえようとしたが、
かなり広く切られたらしく血が止まらなかった。
さらに六月という季節のため、
包帯や、止血帯に使えそうなものがなかった
というのがさらなる不幸だったかもしれない。
次から次へとあふれる血はきれいな赤色で
(まさしく鮮血だった。)
僕は人間の血ってすごく赤いんだなと妙に冷静に考えてしまった。
何とかジャングルジムにもたれて座り込みアスカを探すが、
アスカはどこかに助けを呼びに行ったのか姿が見えなかった。
(彼女は助けを探しに行っていたのだが、
僕の血を浴びていたのでクリーム色のコートが
真っ赤に染まっていて怖がられたそうだ。)
右手からは相変わらず鮮血があふれてくる。
どれくらい血液失ったらまずいんだっけ?
なぜか冷静に僕はそう考えた。
意識が少し朦朧としてきた時にも、
僕はまだ出血死する血液喪失量を思いだそうとしていた。
 

僕は目を覚まし、起き上がろうとする。
とたんに右手に激痛が走る。
慌てて右手を見ると、
右腕には包帯がぐるぐる巻かれていた。
どうやら僕は切りつけられて救急車が来るまでに気を失ったらしい。
と、ドアが開き看護婦が入ってくる。
そして僕の様子を見ると顔をほころばせる。
「どうですか?気分は?」
「はい。これ以外は快調です。」
僕は右腕を指していった。
看護婦は思い出したように僕に言った。
「そうだ、アスカちゃんに教えてあげないと。待っててくださいね。」
彼女は慌てて、部屋の外に出て行く。
アスカに迷惑かけちゃったな。
怒ってるかな。
もうアンタはドジなんだから、アタシをかばわなくてもいいの。
とか怒られるのかな。
ビンタ一発ならいいけど、二発なら結構怒ってるんだろうな。
などと僕が考えていると。
「シンジ!!」
アスカが部屋にやってきた。
「アスカ、ごめんね。」
僕は素直に謝った。
こういう時は素直に謝った方が得策だ。
「・・・」
アスカは黙ったままつかつかとベッドの横にやってくる。
そして、アスカは右手を高く上げる。
僕は目を閉じた。
ぱーん。
僕の頬が高く鳴る。
やっぱりアスカ怒ってるよ。
僕は目を開け、自分の右手を見つめる。
・・・包帯に何かの染みがついている。
これは何だ?
僕はふとアスカの顔を見上げる。
そこには・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

・・・・・・・・ぽろぽろ涙を流して泣いているアスカがいた・・・・・・・・
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

「ねえ、どうしたのアスカ?」 「・・・・・・・・バカ。さんざん心配させて。」
「ごめん。またアスカに迷惑かけたね。」
「そうよ。アタシの事なんか放っておけばよかったのに。」
「つい飛び出しちゃって。」
「・・・・・・・」
「アスカ?」
「・・・それが余計なお節介だって言ってるの。」
「ごめん。」
「このアタシがあんなのよけられないと思ってるの?」
「そうだね。」
「もう少し自分の身の程を知りなさい。 アンタってぼけーっとしてるんだから。」
「ごめん。」
「・・・・・アンタ、本当に分かってるの?」
「わかってる。これからは気をつけるよ。」
「・・・・・・ほんとに心配したんだから・・・・・・」
「えっ?」
「シンジ・・・・・アタシすっごく心配したんだからね。」
「アスカ?」
「・・・・・ずっとシンジが目を覚まさなかったら、どうしようって心配してたんだよ。」
「ごめん。」
「ごめんばっかり言って。なんでも謝りゃすむってもんでもないでしょ。」
「じゃあ、どうすればいいの?」
「・・・そうね。じゃ、目をつぶって・・・・・」

僕は覚悟を決めて目をつぶった。
多分ビンタ一発で全部水に流してもらえるだろう。
今までもそうだったから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

・・・・・・・・・・・でも今回はそうじゃなかった・・・・・・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

・・・・・・唇に柔らかい感触を感じた僕は驚いた・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

唇の感触がなくなってから僕は目を開けた。
そこには少し頬を赤く染めたアスカがいた。
「これで許してあげる。」
アスカはくすりと微笑むと、くるりときびすを返し、
部屋から出ていってしまった。
僕はただ呆然とアスカが出ていったドアを見つめていた。

・・・それがアスカとのはじめてのキスだった・・・
 

数週間後、僕とアスカは遊園地に来た。
朝、いきなりアスカは今回の件のおわびに
遊園地に連れて行けと僕に言ったからだ。
あの時、僕にキスして、
「これで許してあげる。」
って言ったはずなのに・・・・
その事をアスカに話したが、
「そんなセリフ言った覚えもないわね。 夢でも見てたんじゃないの?」
と言われた。
まったくもってアスカの気まぐれは、
今に始まったことではないけど
付き合う方の身にもなって欲しい。
右腕の傷はだいぶ治ったが、まだ包帯を巻いて、三角巾で吊っている。
以前の様に右腕が使えるまでに一ヶ月ほどかかるらしい。
ちなみに僕を切り付けた連中は一週間前に捕まったそうだ。
今は警察で絞られているらしい。
「ねぇ、シンジ。 二人きりで遊園地に来るのは初めてだよね。」
アスカは遊園地ののゲートをくぐって、
少し照れたように僕に言った。 
「そーいや、そうだね。」 
小さいときにはよく来ていたがもちろん親が一緒だったし、
ここ何年間では遊園地に来た記憶がなかった。 
「・・・ね、アレに乗らない?」 
アスカが嬉しそうに指差した先には、
リニアコースターが鎮座していた。
げっ、絶叫系だよ。どうしよ。
「ちょ、ちょっと待ってよ。僕、 今は片手しか使えないんだよ?」
僕は慌てて、アスカに異議申立てをするが・・・・ 
「いいじゃない。 片手でしかつかまれないっていうのもスリルあるかも。」 
やはり却下されてしまう。 
スリルがあるって一言で片づけられる問題でもないだろうに。 
「でも、係員の人に止められるよ。」 
なんとかあきらめさせようと僕は説得するが・・・・
「じゃあ、聞いてみましょ。」 
やはりアスカはあっさり却下して僕の左手を取る。
「行こう。シンジ。」
そしてアスカは駆け出した。
僕はいきなり手を握られたことにどきりとした。
以前のアスカだったらこういう事をしただろうか?
キスをしたあの日以来、
アスカが少し積極的になったと思うのは気のせいだろうか。
僕はそんなことを考えながら、アスカに引っ張られながら
そのコースターのエントランスに向かった。
 

「ほら、大丈夫だったじゃない。」
なんと係員は右手を負傷している僕も乗ってもいいと言ってくれた。
アスカは大喜びしているが、僕の気持ちは重かった。
なんでもこのコースターは体を固定するように安全バーをセットするために、
バーを握らなくても乗れるという構造らしい。
席に座り、小さくため息をつく僕を見てアスカがにっこり微笑む。
僕はいつもより、その笑みがやさしく感じた。
「何?もしかしてシンジ恐いの?」
僕は慌てて言い返す。
「そ、そんなことないよ。ただ、怪我してるのに
乗せるなんていいかげんだなって思って。」
アスカはくすりと笑う。
何かすごく機嫌がよさそうに見える。
いいことでもあったのかな?
「はいはい、そんなに恐いんだったら、 手を握っててあげる。」
そっとアスカは僕の左手に自分の右手を重ねる。
「ね、これで恐くないでしょ。」
「だから、そんなんじゃないってば。」
僕は少し苦笑しながら答える。
しかし、また僕は不思議に思うことがあった。
こういう時アスカは僕のことを軟弱者とか言ってからかうはずなのに、
どうして今日はそう言わないんだ?
と、ブザーが鳴り、するするとコースターが発進する。
「へえ、スムーズに動き出すのね。」
変なところでアスカが感心する。
しかし、僕はそれどころではなかったのだ。
強がって見せていたが、
僕はこーいう絶叫系のアトラクションはニガ手だった。
しかもなぜか今回は最前列。
どーして僕はこんなに不運なんだろ。
そんなことを考えていくうちにコースターがだんだん高みに上がって行く。
どうしよ。
そうだ、なるべく声は出さないようにして、目をつぶっていよう。
そう考える僕にアスカがクギを差す。
「シンジ。目つぶったらダメだからね。」
げっ、しまった。
アスカには見破られてるよ。
どうしよう。
と考えてるうちにコースターは下りに入った。
ものすごい勢いでコースターは下っていく。
周りの景色が溶けてしまって何がなんだかわからなくなる。

「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

僕は思わず叫んでしまった。
ちなみにアスカは。

「すっごーーーいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいい。」

どうやら、コースターを満喫しているらしい。
これぐらいじゃさすがに怖がらないみたいだ。
僕には十分すぎるくらいなんだけど。
そして、コースターは急に右に曲がった。
すごい横Gが僕の体にかかる。

「うげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

うげぇなんて、はしたないと一瞬思ったが、今はそれどころではなかった。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、きゃははははははははははははははは。」

やはりアスカはコースターを満喫しているらしい。
さらにコースターは下りに差し掛かった。
また、これがすごい急な角度で、
腰が浮いてしまった。
(落下していくという表現がぴったりかも。)

「ぬぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!おたすけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

僕の魂の叫びはこだました。
 

「ふう・・・シンジ。おもしろかったね。」
コースターがホームに帰ってきて安全バーが解除されると
アスカは嬉しそうに笑いながら僕を見る。
「・・・カトオモッタ。」
僕は固まってしまっていた。
「え、何?」
アスカが僕の口元に耳を寄せる。
「・・・・なんでもない。」
そして、僕は立ち上がろうとしたが。
(一刻も早くここから離れたかったからだ。)
「シンジ。いつまで手つないでいるの?」
アスカがからかう調子で僕に言った。
僕は慌てて左手を見る。
左手はしっかりとアスカの右手を握っていた。
僕は真っ赤になって手を放す。
は、恥ずかしー。すっかり忘れてた。
「ご、ごめん。」
「いいよ。シンジだから。」
アスカはにっこり微笑んだ。
どういう風の吹き回しだ。
僕はおもわずまじまじとアスカを見つめてしまった。
いつものアスカなら、
「いつまで手握ってるのよ、このスケベ!!」
とか言うはずなのに。
それ以前に手なんか握らないだろうけど。
「何。どうかしたの?」
アスカはやはりいつもとは、
微妙に違う笑みを浮かべて僕を見つめる。
うーん。やっぱり違うよな。
いつものアスカとは違う気がする。
でも、変というよりは機嫌が良くて、
はしゃいでいるという表現が適切かも。
僕がそう考えていると、
「ね、そろそろお昼にしようか?」
アスカはにっこり微笑む。
まだアトラクション一つしか乗ってないけど、
来た時間が遅かったからもう12時前だった。
「うん。いいけど、でも急だったんで、
お弁当、作ってないんだ。」
僕はおそるおそるアスカに答えた。
いつものアスカならここで不機嫌になって怒るはずだ・・・・
「あ、それは心配しなくてもいいから。
アタシがお弁当作ってきたから。」
僕は自分の耳を疑った。

アスカが自分で作ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?

僕は今だかつてこんなに驚いたことはなかった。
だって、アスカだよ。いつも僕に弁当を作らせて、
(アスカは僕の家に下宿している。
それに、母さんは仕事の時間が不定期で弁当を作ってくれないんだ。)
自分で作ったことはなかったのに。
いったい何があったんだ?
天変地異の前触れじゃないといいんだけど・・・・・
よっぽど、僕はおかしな顔をしていたのだろう、
アスカはくすくす笑う。
「どうしたの?変な顔して。」
「あ、いや・・・じゃあ、どこで食べようか?」
「えーと、確かこの道を登って行くと、ちょうど芝生が植えられてて
お昼とか食べれる場所がなかったっけ?」
僕も記憶の糸を探る。
「確かあったような気が・・・じゃあ、そこに行こう。」
「そうね。ね、早く早く。」
アスカはまた僕の左手を取ると駆け出した。
アスカと一緒に駆け出しながら、
こういうのも結構楽しくていいかもしんない。
と考えていた。
 

「はい、シンジ。あーんして。」
アスカはお弁当のおかずのから揚げを取り、
僕の口元に持ってきてそう言った。
二人はちょっとした高台で芝生になっているところに
レジャーシートを敷いて座っていた。
しかし、お弁当といいレジャーシートといい
なんか用意いいよな。
僕にとっては突然だったんだけど、
アスカは以前から準備していたのかな?
「ちょ、ちょっとアスカ。そこまでしてくれなくてもいいよ。」
僕は恥ずかしさで頬が熱くなるのを感じていた。
「ダメよ。シンジは右手が使えないんだから、
アタシが食べさせてあげる。」
驚くべきことにアスカの作ってきた弁当は(見た目は)素晴らしかった。
どーやら、僕の知らない間に料理の特訓をしたらしい。
しかし、 「あーん。」はやめて欲しい。
僕たちの他にもたくさんの人達が、
ここで昼食を食べているんだから。
「で、でも、こんな所で恥ずかしいよ。」
僕は素直に答えることにした。
「こんな所だからするの。」
とアスカが意味不明なことを言う。
「はぁ?」
「いいから、あーんしなさい。」
僕はあきらめ口を開く。
そして、そのから揚げをほおばる。
これ以上言っても聞いてくれる
アスカでないのはよく分かっていたから。
しかし、こんなところだからするのってどーいう意味だ?
「ね、おいしい?シンジ。」
アスカは真剣な表情で僕に聞く。
うん。すごくおいしい。
母さんの味付けにそっくりだ。
かなり頑張ったんだろうな。
「うん。おいしいよ。」
僕はアスカに微笑んだ。
「よかった・・・おばさまについてて
もらったけど結構心配だったんだ。」
ほっとため息を漏らすアスカ。
でも、いつの間に料理教えてもらってたんだろ?
僕はアスカに聞いてみることにした。
「ねぇ、アスカ。いつの間に料理の勉強したの?」
アスカはにっこり微笑んで、
「全然できないわけじゃなかったのよ。ただ、
ここ二週間ぐらい毎日おばさんに教えてもらって。」
なるほど、やっぱり母さんに教えてもらってたんだ。
確かにここ数週間、僕は毎日病院に行ってたから、
帰ってくるのが少し遅かったけど、全然気づかなかったな。
「・・はい、じゃあ、次は何にする?」
「うーん。おにぎりにしようかな。」
「おにぎりね・・・はい。あーんして。」
アスカは少し小さ目のおにぎりを取る。
ちゃんと一口で食べれるようにしてくれたのかな?
「あーん。」
僕はそのおにぎりをほお張りもぐもぐと食べた。
アスカは僕を見てにこにこ微笑んでいた。
後にアスカが語ったところによると、
その時の僕の様子はまるで、
リス科の動物が頬袋にエサをため込んでいるようだったらしい。
「ね、お茶、飲む?」
「うん。飲むよ。」
アスカは水筒をだして、お茶を汲むと僕に渡してくれる。
それをごくごくと飲む僕を見て、アスカは僕の耳元で囁いた。
「ねぇ・・・・口移しで飲ませてあげようか?」
僕はおもわずむせ返った。
「ごほっ、げほ。あ、アスカ。とんでもない事言わないでよ。」
アスカは人差し指を唇に当てて考え込むふりをする。
「そう?アタシそんな変な事いったかしら。」
「アスカ!!」
「冗談よ、冗談。シンジってば相変わらずなんだから・・・・」
そうか?
僕はてっきり本気で行ってると思ったぞ。
長年の付き合いで冗談か本気か分かるつもりだったんだけどなぁ。
やっぱりまだ修行が足りないのだろうか?
思わず僕は考え込んでしまった。
 

それから僕達はいろんなアトラクションに乗った。
相変わらずアスカはご機嫌で僕をあっちこっちに引っ張りまわしていた。
そして最後に二人は・・・・
「ねぇ、最後にこれ乗らない?」
アスカが指したのは大きな観覧車だった。
「いいよ。行こうか。」
二人で観覧車に乗ることにした。
ゆっくりとゴンドラが上っていく。
一周二十分程度だそうだ。
二人はしばらく周りの景色をみつめていたが・・・・
「ね、シンジ。」
アスカが囁くような声で僕を呼ぶ。
「何?」
「今日はありがと。すごく楽しかった。」
少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうにアスカは僕に微笑んだ。
「僕も楽しかったよ。」
ふたりきりで遊園地に来たのが初めてなせいか、
アスカがいつもより素直で可愛く感じたせいなのか、
どちらのせいなのか僕にはよくわからなかったが、
楽しかったのは確かだった。
「アスカとこんな風に過ごせるんだったら、
いつだって僕はOKだよ。」
思わず僕はそう答えてしまった。
「ありがと。」
そして、アスカは意を決したように僕の顔を見た。
「あのね、シンジに聞きたいことがあるんだけど。」
「何かな?」
何だろう話したいことって?
僕にはさっぱり心当たりがなかった。
というか今日はアスカの行動がいつもと違うので
予想もつけようがないような気がする。
「・・・シンジはアタシのこと好き?」
アスカは少し首をかしげて、にっこり微笑んで聞く。
「・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」
僕がアスカの言ったことを理解するのに
少し時間がかかった。
好きっ?てどういう意味の好きなんだろう。
友達として?
それとも・・・・
「アタシはシンジのこと好きよ。」
少し恥ずかしそうにでも嬉しそうにアスカは言った。
「・・・」
僕は答えることができなかった。
やっぱり友達としてなんだろうか?
いままでアスカは僕に好きなんて言ったことなかったし・・・
「やっぱり、こんなアタシじゃイヤ?」
アスカの瞳が少し曇ったように見えたのは気のせいだろうか?
「そ、そんなことは・・・」
慌てて僕は答える。
やっぱり恋人としてなんだろうか?
僕はアスカをどう思っているんだろ?
アスカは小さい頃から僕の側にいてくれて
ずっと一緒だった。
好きじゃないと言えば嘘になる。
「あのね、シンジがアタシをかばって
切り付けられた時わかったの。」
アスカがちらりと僕の右腕を見る。
「アタシはシンジのことが大好きなんだって。」
ほっとため息をつくアスカ。
そして・・・
「シンジ。好きよ。だーい好き。」
にっこり微笑むアスカ。
「・・・」
僕の心のなかにいろいろなアスカが思い浮かぶ。
アスカはずっと僕の側にいてくれた。

怒ったり、

泣いたり、

励ましたり、

からかったり、

笑ったり、

慰めたり、

いつも僕を見ていてくれた。
アスカがいてなければ今の僕はいなかった。
アスカが側にいてくれない生活は考えられない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

僕は・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

アスカが・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

好きだ・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

誰よりも・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「僕も・・・アスカのこと好きだよ。」
僕はアスカににっこり笑いかけた。
この気持ちは嘘じゃない。
そう思える自分が嬉しかった。
「ほんとに?」
「ほんとだよ。アスカはずっといままで僕の側にいてくれて、
僕はアスカ以外の女の子は考えられないから。」
「・・うれしい。」
アスカは立ち上がり僕に抱きつく。
その反動でゴンドラがぎしぎし揺れる。
「こ、こらアスカ、だめだよ。危ないよ。」
僕はアスカを抱きしめた。
アスカからすごくいい香りがした。
女の子って柔らかいんだな。
ふとそんなことを考えた。
「いいよ。おもしろいじゃない。」
アスカは僕の耳元で小さく囁く。
少しくすぐったかったが、
その声が僕の心に響く。
「もう、アスカってばお子さんなんだから。」
僕はからかうように言う。
「えぇー?そんなことないよ。」
いきなり、アスカは僕の左手を取って、自分の胸に当てる。
アスカの胸のやわらかい感触が僕の左手に伝わる。
「ほら、やわらかいでしょ。」
アスカはにっこり微笑む。
「な、な、何を」
僕は頬を熱くなるのを感じた。
アスカがそんなことするとは思わなかったし、
今まで触ったこともなかったのだから、
すごく意識してしまった。
「あぁ、シンジ真っ赤になってるぅ。かわいいー。」
アスカは僕の顔を見て嬉しそうに笑った。
かわいいとかいう問題じゃないような気がするんだけど・・・
「あのねぇ・・・」
「いいの。シンジだから。」
アスカは上目使いで僕を見た。
うっ、またそんな事言われると、
僕はあまり怒れなくなってしまう。
長い付き合いだから、
僕がどう言えばおとなしくなるのか知っているのかな?
「・・・・」
「ほら、アタシの心臓どきどきしてるでしょ。」
僕の左手にアスカは自分の右手を重ねる。
確かにアスカの心臓がどきどき言ってるのがわかる。
でも、それ以前に胸の感触が・・・
「・・うん。」
「シンジが触ってくれてるからだよ。」
アスカが僕の目をじっと見る。
アスカの瞳がきらきら輝いている。
きれいだな、アスカの瞳。
「そうなんだ。」
「そうよ・・・・・ね、シンジ。今度はシンジからキスしてよ。」
アスカは目を閉じて少し顔を上げる。
僕がキスしやすいように気を使ってくれたみたいだ。
「わかった。」
僕も目を閉じアスカに軽くキスをする。
アスカとの二回目のキス。
うまくできたかな?
「ありがと・・・すっごく嬉しい。」
アスカはそう僕の耳元で囁くと、ぱっと離れる。
「さぁ、シンジ。そろそろ下に着くから、降りる準備をしましょ。」
「そうだね。」
僕たちは観覧車のゴンドラから降りた。
僕はアスカを見る。
アスカも僕を見ている。
「帰ろうか。」
僕は左手でアスカの手を握った。
「うん。帰ろう。」
アスカも僕の手をきゅっと握りかえしてくれた。
僕たちは二人で歩き出した。
 


NEXT
ver.-1.00 1998+01/25公開
ご意見・ご感想は sugimori@muj.biglobe.ne.jpまで!!

あとがき 
 
ども作者のTIMEです。 
 
部屋1万ヒット記念part2「素直でいたい」はいかがだったでしょうか。

今回は雰囲気を変えて書いてみました。
どーも最近、文章のスタイルといいますか、
雰囲気がワンパターンになったような気がして
悩んでまして、実験的に変えてみたのが本作品です。

展開は完璧にベタですね。
何も考えずに書いたらこうなってしまいました。(^^;;

さて次は連載を・・と思ってたのですが、
めぞんのアクセスカウンターがもう48万を
突破してるではありませんか!!
こりゃ、早く50万ヒット用のSS書かないと・・・
#どーも最近SSばっか書いてる気が。(爆)

では、もし書けなかったら連載で、書けたらSSでお会いしましょー。 


 TIMEさんの『素直でいたい』、公開です。
 

 

 シンジが傷付いたのをみて自分の思いに気付き、
 気付いた後は一直線(^^)
 

 素直なアスカちゃんにほわほわ〜
 大胆なアスカちゃんにドキドキ〜
 

 ノックアウトされちゃいました(

^^

)
 

 純白のドレスをまとったアスカちゃん・・・
 紅白で実にめでたい様子であったでしょう・・・

 シンジ、いいな〜(爆)
 

 ラブラブ感全開でしたね(^^)/
 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 記念作に忙殺されるTIMEさんに感想&応援メールを送りましょう!


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