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そうなんだ…

レイが話し終えた瞬間。
受話器の向こうから息をつく声が聞こえる。
レイはベッドの端に腰掛けて、電話機をベッドの上に置いて話している。

うん。だから、しばらくシンジから離れてゆっくり考えてみようと思うの。

そうね…そのほうがいいかも。

で、お母さんに無理矢理お願いして、お墓参りに行くことにしたの。

それで1週間…ね。

そうなの…

数秒の沈黙の後、ヒカリが尋ねる。

でも…
忘れられるの?

その言葉にレイの胸が痛む。
忘れられるのか?
その問いに対する答えは今でもノーだった。

そんなに好きだったのに…忘れることができるの?

無理だと思う。

じゃあ、どうして?

好きなのは仕方ないの…
でもこのままの関係は嫌なの。
妹なら妹らしくしたいの…


そのための1週間?

そう…
そのための1週間なの…

多分、この気持ちは消せないと思う。
でも、逃げたくないの。
正面から向き合えるようにしないと。

強いのね…レイちゃんは…

そんなことない…

だって、こんなに胸が痛いのだから。
忘れたいのに忘れられないのだから。
ずっとこの思いを引きずっていかなければならないのなら。
コントロールするしかないから…
それがアタシの選んだ選択肢なのだから。
レイの手にはにぶく輝きを放す宝石を持つペンダントが握られていた。
 
 
 
 
 

Moon-Stone
TIME/99
 

第6話
二人のため?
 
 
 
 
 
 

シンジはふと目を覚ました。
起きあがって軽く頭を振る。
なんだろ?
今、夢見てた。

さよなら…って。

レイだった?

レイがさよならって僕に…囁いていた。

まさか…ね。
シンジは窓をふさいでいたカーテンを開ける。
太陽の日差しがシンジの顔を照らす。
良い天気だ。
そして、時計を見る。
時間を確認してうなずくと、シンジはベッドから降りて、
服を着替える。
そして、リビングに入ってキッチンを覗きこみ挨拶する。

「おはようございます。」

「おはよう。シンジくん。」

キッチンから顔をシンジの方に向けてユイは答える。

「レイはまだ起きてないんですか?」

その質問にユイは思い出したように告げる。
それは二人がお墓参りに行くという内容だった。
それを聞いてシンジは怪訝そうな顔をして答えた。

「お墓参り?」

そしてユイを見つめる。
ユイはにっこり微笑むとこっくりうなずく。

「シンジくんには急な話だけど…もともとの予定だったから…」

「そう…なんですか…」

シンジはそう答えてうつむく。
知らなかった。

でも、仕方ないか。
最近、レイと話できていなかったし。

でも、何か違う気がする。
どうしてだろ?

「それで、悪いんだけど今日から1週間いないから。」

「今日から…ですか?」

ユイは両手を合わせて謝る。

「ごめんなさいね…ついうっかりしていて、お父さんには話しておいたんだけど。」

「いえ、大丈夫ですよ。今までずっと二人だったわけですし。」

シンジはユイに微笑んで見せた。
 
 
 
 
 

一人で自転車を漕ぐシンジ。
さすがに7月になると日差しと共に気温も高くなってくる。
何か久しぶりだな、一人で学校行くなんて。
いつもレイを乗せて二人で通ってたものなぁ。

でも、お墓参りなんて急だよな。
ユイさんにしても僕に言うのを忘れてたって言っていたけど。

結局レイは起きてこなかった。
完璧に避けられてる…な。
そりゃ、そうか。
小さく息をつくシンジ。
当たり前だけど…
何とかしないとな。
このままじゃ、まずいよな。

不意にあたりが暗くなる。
太陽が雲に隠れたらしい。

これで良かったと思えれば…

いいんだけど…


でも、僕は…
全然、納得していない。
これで良かったと思っていない。
どうしてなんだろう。
どう考えても、二人はそういう関係になってはいけないんだ。
二人はあくまで兄妹であって、付き合うことは出来ないんだ。
だから…
僕はレイを…
なのに…

僕は納得していない。
心の何処かでは…
 
 
 
 
 
 
 
 

「碇さんは今日から1週間ほど休むことになりました。」

そのミサトの声に、クラス中がどよめく。
そして、クラスメートの視線がシンジに集中する。
シンジはその視線に気付かないふりをした。

「おい…もしかして碇が…」

「あぁ、アイツ遂に…」

クラスメートのひそひそ話を聞いて、シンジは苦笑を浮かべる。
なんだかな…
そんなことできたらとっくにやってるよ…
それができないから、こんなに…


って、何考えてるんだ?
レイは妹じゃないか…

「碇さんは亡くなったお父さんのお墓参りに行くそうです。
だから、シンジくんは関係無いわよ。」

その言葉にシンジはほっと息をつく。
これでみんなは誤解しないだろうし。

でも…
1週間か…
レイとこれだけ長い間離れるのって初めてだな…


でも、自分を見つめなおすいい機会かも。
僕はどうすればいいのか…
このままじゃいいはずはない。
せめて以前のように普通に話せるようにしないと。
レイのことちゃんと割り切らないと…
僕のこと思っていてくれる女の子じゃなく…
妹として見れるように…


はぁ…


でも、レイの瞳を見ると…
何も言えなくなるんだよな。
最近のレイの瞳を見ると…
どうしても…
あの時のこと思い出してしまう…


あの時、僕を見つめていた瞳。
レイはあの時、ほんとうにまっすぐな瞳で僕を見た。
僕は…
どうして…
この瞳から…
目をそらしたのだろう…
震えていた肩を抱けなかったのだろう…
そして涙をぬぐってあげなかったのだろう…


僕は…


結局逃げただけなのかもしれない…
 
 
 
 
 

電話が鳴った。
シンジは見ていたテレビから視線をはずし、
立ちあがって、電話のほうに歩いていく。
受話器を取って、返事をする。

シンジ…?

受話器の向こうから聞こえてくる声。
シンジは受話器に耳を押し当て、その声に答える。

レイ?

…うん。

レイの話している後ろで何かの音が聞こえる。

ごめんね。急にいなくなって…

…あ、うん。でもお墓参りなら仕方ないよ。

…そ、そうだね…

黙ってしまう二人。
波の…音かな…
シンジは聞こえてくる音に耳を澄ます。

波の音?

う、うん。今、窓辺にいるんだけど目の前が海なの。

そうなんだ…

うん。日本海の波ってすっごいんだよ。
本当に打ち寄せるって感じで…シンジは見たことある?

久しぶりに聞くレイの楽しそうな声。
こうやって、お互いの顔を見なければ話ができるんだね。
考えてみれば変な話だね。
シンジは頭を振って答える。

ううん。見たことないよ。

お父さんのお墓はそっちにあるんだ。

でも、良く考えたら、僕はレイのお父さんのこと何も知らない。
それに家に来るまでのレイの事も何も知らない。

本当に…
何も…
知らないんだな…
それなのに…
僕は…

ごめんね…

ふいに謝るレイ。

…どうしたの?

レイの声が小さくなり震える。

シンジのこと…好きだった…

シンジの胸が締め付けられる。
どうして、僕は…
こんなに苦しいのだろう?

…でも、もういいの…

シンジにとってアタシは妹でしかないよね…

シンジはその言葉を聞いて息を呑む。
そう。
僕はレイのこと妹と…
そうずっと思うおうとしていたんじゃないのか?
それなのに…
どうしてこんなに…

それはわかってるの…でも、もう少しだけ時間が欲しいの…

小さく息をつくレイ。
打ち寄せる波の音がそれに混じる。
そして、先ほどより少し大きな声でレイは言った。

帰ってきた時には、私はあなたの妹の碇レイです…

妹…
僕の望みはそうだったのじゃないのか…
歓迎すべきことじゃないのか?
それなのに…
どうして…
僕は…
泣いているんだ?
シンジの頬を一筋の涙がつたう。
その涙は顎から床に落ちて小さなしみを作る。

どうして…
こんなに苦しいんだろう…

シンジは答えることが出来なかった。
伝えるべき言葉は何なのか?
自分はどうすればいいのか、
シンジには分からなかった。

じゃあ、切るね…おやすみなさい…

レイはそう言うと、電話を切った。
シンジは受話器をゆっくりと受話器を置いた。
僕は…
 
 
 
 
 

放課後、授業が終わりシンジは帰り支度を始めていた。
いつもはレイが来て、二人で一緒に帰るんだけど…
シンジはふと視線をレイの席に移す。
もちろん、席にはレイはいなかった。
しばらく見つめた後、首を振って、視線を戻すシンジ。
まだ二日…か。
と、突然、背後から声をかけられる。

「シンジ…お前やっぱりレイと何かあっただろ?」

「え?」

急に核心を突いた質問にシンジは驚いて振りかえる。
そこにはかばんをもったケンスケが立っていた。

「ここのところお前達うまく行ってなかっただろ。」

「何が?」

しらないふりをしようとしたシンジだが、それは成功しなかった。

「何がじゃないだろ?最近お前達二人、全然話をしなかったじゃないか。」

「いや、それは…」

そう答えて、シンジはふと視線を感じてその方向を見る。
そちらにはヒカリがいて、じっとシンジの顔を見つめている。

「ほら、委員長も何か言いたそうだぞ。」

「…」

と、ヒカリが立ちあがり、シンジの元に歩いてくる。

「ねぇ…碇くん。ちょっといいかしら。」

「え、うん…いいけど。」

二人が教室から出ていくを見つめてケンスケはため息をつく。
後は委員長次第だな。
たぶん、当人達以外で一番二人の関係に詳しいはずだからな。
トウジもやってきて、視線でケンスケに尋ねる。
ケンスケは肩をすくめて答える。

「なるようにしかならないだろうな。」

「そやな。決めるんはシンジや。」

「しかし…またしてもシンジが良いところを持っていくんだよな。」

ケンスケはお手上げとばかりに肩をすくめた。

「まぁ、後で他の奴等にシバかれるやろうし、それで勘弁したれや。」

「なるほど…ね。怖い怖い。」

ケンスケは首をすくめて答える。
 
 
 
 
 

「レイちゃんがお墓参りに行った理由わかってるの?」

屋上でフェンスに手をかけヒカリはシンジに尋ねた。
理由…
理由か。
それは多分…
シンジには予想がついた。
しかし、シンジは肩をすくめて答える。

「理由って…」

「レイちゃんとは話をしなかったの?」

「昨日、電話で少しだけ話はしたけど…」

あの時の言葉。
それがたぶん理由なんだろうな。
つまり、今の二人の関係が…

「そう…なの…」

ヒカリは唇をかんで、シンジから視線をそらす。
どうしようか思案している様子だったが、
小さく何度かうなずいてヒカリはシンジを見る。

「あのね…お墓参りが本当の理由じゃないの。」

「それってどういうこと?」

ヒカリはじっとシンジの瞳を見つめる。
シンジは気おされたようにヒカリの顔を見る。

「碇くん…原因はアナタなのよ。」

「僕…が?」

ヒカリはこっくりうなずく。
その言葉と共に雲に隠れていた太陽が顔を出す。
強い日差しが屋上の床を焼き始める。

「そう…わかってるでしょ。どうして、レイがいなくなったのか。
急に1週間も出かけることになったのか?」

シンジの鼓動が早くなる。
やはり…
原因は僕か。
いきなり、旅行に出かけると聞いたときに少しおかしいと思った。
あのユイさんがそんな大切なこと僕に言い忘れることがあるとは思えなかったから。

「僕のせい…か…」

「そうよ。レイは碇くんを好きだったのよ…」

その言葉に驚いたようにヒカリをまじまじと見つめる。

「どうして知ってるのか?って表情ね。」

うなずくシンジ。
実際クラスの誰もそれには気がついてないと思っていた。
レイが話したのだろうか?
それなら納得がいく。

「アタシからレイに聞いたの。
シンジくんに告白したんでしょ?って、
だって、碇くんがレイのこと避けてるようだったし、
レイが碇くんを見る視線が…ね。」

「そうか…」

レイの態度か…
それに僕の態度も見てわかったのだろう。
ばれていないつもりだったが、その考えは甘かったようだ。
確かにヒカリやケンスケ達にしてみれば、バレバレだったのだろう。
この分だとトウジとケンスケも知ってるだろうな。
そうだよな…
急によそよそしくなっちゃったしな…

「碇くんは…それでいいの?」

「どうして?」

ヒカリはそれには答えずに視線を広がる町並みに向けた。
シンジはそのヒカリの横顔を見る。
いいの?って…
それしか僕には選べなかったんだ。
僕達は兄妹で…
付き合うことなんてできない。
レイの気持ちを受け入れるわけにはいかない。

「二人のためだと思ってた?」

その質問にシンジは青ざめる。
ヒカリは視線をシンジに移して言う。

「本当に、それが二人のためだと思った?」



二人のため…


そう思っていた…

でも、それは違う…

違うんだ…


僕は…
そう思おうとしただけ。
あの時、レイが僕のことが好きだと聞いて…
凄く嬉しかった…

そして同時に凄く怖くなったんだ…

今までは、僕が好きでも、レイがそう思ってはいないと自分に言い聞かせてきた。

それなのに…
レイも僕のことが好きだった。

どうやって自分の気持ちを押さえれば良い?
それまでの歯止めはかからなくなってしまった。
まるで際限無く落ちていきそうで、怖くなった。


だから…


僕は逃げたんだ…

レイから…
そしてレイの事が好きだった自分からも…


僕は…


最低だ…


レイだって、怖かったに違いない。
でも勇気を出して、僕に告白してくれたんだ。
なのに…
それなのに…

「やっとわかったようね…」

ヒカリはシンジの表情を見て、にっこりと微笑んだ。

「後は、碇くん自身で考えてね。」
 
 
 
 
 

沈んでいく夕陽をぼんやりと見つめるレイ。
水平線にゆっくりと太陽は沈んでいく。
丘の上からその様子を眺めているレイ。
小さく息をつき、うつむく。
アタシ…
どうすればいいのだろう?
シンジから離れてゆっくり考えれば少しは落ち着くと思ったのに…
いつもシンジのこと考えてる。
今何してるのかな?
何考えてるのかな?
アタシがいなくて平気なのかな?
それとも…

少しづつ暗闇があたりを覆っていく。
レイは少し寂しそうな表情を浮かべて首を振る。

そうだよね…
アタシは…
妹なんだから…
そんなこと考えちゃダメなのよね…


でも…


風がレイの髪をふわりと舞いあがらせる。
レイは顔を伏せる。


でもね…


やっぱり…


アタシ…


シンジのこと…



レイはぱっと顔を上げて立ちあがる。
やめた。
これ以上は…
考えても無駄ね…
レイはくるりと見ていた夕陽からきびすを返して歩き始める。

はぁ…
やっぱり無理なのかな…
両手を後ろで組んで歩きながら、レイは空を見上げる。


ううん。
まだ時間はあるんだから…
アタシは妹なんだから…

レイ。

背後から呼びとめられた。
レイはその声を聞いて驚いた。
この声は…
でもそんな…
ここには絶対いるはずがないのに…
レイは驚いた表情で振り向く。
しかし、レイの視線の先に立っていたのは…

シンジ…

どうして?
シンジがどうしてここにいるの?
レイの目の前にシンジが立っている。
そして、シンジはレイを抱きしめる。
いきなりのことでレイは逆らえなかった。
シンジの胸に抱かれ、レイは自問していた。
どうして?
シンジがアタシのこと抱きしめるの?
アタシのこと…
妹としてしか見ていないんじゃないの?

ごめん…ね。悲しい思いさせて…

シンジがレイの耳元で囁く。

え?

僕がちゃんとレイのこと考えてあげられなくて、凄く悲しませちゃったよね…

…そ、そんなことないよ。アタシが悪いんだから…

シンジはそのレイの言葉に胸が締め付けられる。
そうやって、僕のことを気遣ってくれなくて良いのに。
悪いのは全部僕なんだから。
僕がちゃんと僕自身の思いに向き合って、それをレイに伝えることが出来ていれば、
こんな回り道しなくても良かったのに…
そして、シンジはずっと胸の奥底に隠していたその言葉を告げる。

好きだよ…レイ。

え?

レイが戸惑ったようにシンジの顔を見つめる。

好きだった…初めてレイを見たときから…

シンジは少し照れたように微笑む。
レイの瞳から視線を放さずにシンジは続ける。

気付いていた…僕はレイのこと妹じゃなくて、一人の女の子として見ていたって…

レイの瞳が驚きに見開かれるが、すぐに憂いを秘めた瞳になる。
そしてシンジの瞳を見つめ返す。

でも…怖かったんだ。僕がレイの気持ちを受け入れると、
二人は踏み込んではいけない森に迷い込みそうで…
僕自身も歯止めが利かなくなってしまうんじゃないかって…

そういうと首を振って息をつくシンジ。

シンジ…

でもね…気付いたんだ。レイもそう感じて怖かっただろうに、
それでも僕に告白してくれたんだって。

太陽は沈んでしまって、あたりはかなり暗くなってきていた。
先ほどより、頭上に輝く星が増えてきていた。
シンジはにっこり微笑んだ。
ずっとレイに向けていたやさしい笑顔。

だから、僕もレイに言うよ。
世界の誰よりもレイが好きだよ。

好き。
やっと聞けた、シンジからのその言葉。
すごく嬉しいのに。
どうしてこんなに胸が痛いの?
そしてどうしてこんなに…
レイの瞳から涙があふれる。
頬を伝う涙をぬぐって、シンジはレイに微笑みかける。

ごめんね…
これが僕の本当の気持ち。

そして、シンジはレイにキスをした。
少しだけ長いキスの後で、レイはシンジの瞳を見つめる。
そして、すねた表情を浮かべる。

もう…
もっと早くに言って欲しかったな…

そう答えると、シンジの胸に顔を埋めるレイ。
シンジの背中に回した手に少しだけ力を入れる。
シンジだよね…
本当なんだよね。
夢じゃないんだよね。
シンジがやさしく抱き返してくれる。
シンジの鼓動が聞こえるよ。
私のこと好きでいてくれたんだよね。
嬉しい…
すっごく嬉しいよ…

風でさらさら揺れている髪に顔を寄せ、耳元に囁くシンジ。

レイはまだ僕のこと好きでいてくれる?

こっくりとうなずくレイ。
そう簡単に嫌いになんてなれないよ。
まだこんなに好きなんだよ。
忘れるなんてできないよ。
シンジはまた耳元に囁く。

ずっと、僕のそばにいてくれる?

レイは顔を上げて、シンジを見る。
その真紅の瞳は夕日の残光を映してきらきら輝いていた。
ずっと一緒にいたい。
シンジの傍にいたいよ。

離れない。ずっとシンジの傍にいたいから。

そう。
何があってもアタシはシンジの傍にいる。
ずっとシンジを見ていたい。
シンジもずっとアタシの傍にいてくれるよね。

お願い…
アタシから離れないで…
ずっと放さないで…

シンジも頷いてレイの頬に右手を当てる。
レイは瞳を閉じる。
その時に流れたひとしずくの涙が、シンジの手に触れる。

放さない…
ずっと一緒だよ…
 
 
 
 
 
 

二人は並んで堤防を歩いていた。
海から吹き寄せる風が二人の髪をそよがせる。
もう、日は暮れてしまって、空には星が輝いていた。

ねぇ、今日は学校どうしたの?

もちろん、休んだよ。

シンジは肩をすくめてヒカリとの会話の一部始終を話す。

だから…たぶん、トウジ達にはサボリってのはバレてると思うよ。

そう…

ヒカリちゃんそんなことシンジに話したんだ…
レイは少しうつむく。
心配させちゃったのかな…

でも、そのおかげで…
だから、ヒカリちゃんには感謝しないと。

でも、今日はこのまま帰るの?

そのつもりだったんだけど、ユイさんが部屋を取ってくれたから…

レイが驚いたように尋ねる。

そういえば、お母さんから聞いたの?この場所。

車が二人を追いぬいていく。
ヘッドライトがレイの髪を明るく輝かせた。

そうだよ。こっちについてから会って、レイが何処にいるか聞いたから。

お母さんは全部お見通しなんだよね。

レイは顔を伏せる。

そうだね。ユイさんに「レイをこれ以上泣かせたら許さないから。」とか言われたよ。

シンジの方をちらりと見るレイ。
少し恥ずかしそうにはにかむ。

お母さんたら…

シンジはにっこり微笑むと、レイの手を取った。
そして、レイの耳元に囁く。

これからは気をつけるね…

そして、くすくす微笑む。
レイは恥ずかしそうにまた顔を伏せる。

もう…イジワル言わないで…

そんなこと言われると恥ずかしいよ。
お母さんもそんな親バカ言わないで欲しいな。

ふう…
もう頬が熱くなっちゃったよ。

そんなこと無いよ。本心だから。

シンジはそう言うとレイの手を少し強く握った。
レイも握り返す。
顔を上げたレイと目が合う。
二人は笑みを交わして、ゆっくりと堤防を降りていった。
 
 
 
 

シンジは一人堤防に座っていた。
Tシャツにショートパンツ姿。
時刻はすでに12時を回って、深夜の時間帯だ。
もう一時間程こうして海を見つめていただろうか。
考えていたのはレイのことだった。
僕はレイの事が好きだ。
この思いは何にも代えがたい。
すごく大切な思いだ。
でも、大切なことだけではすまない部分もある。
ユイさんは僕達二人の事を認めてくれている。
でも父さんはどうだろう?
ユイさんの話では父さんもうすうす気付いているという。
それに学校のみんなはどうだろう?
いろいろな意味で良い状況にはならない気がする。
だから、しばらくみんなには黙っていたほうがいいかもしれない。
もちろん、トウジ達には隠すだけ無駄だろうけど。
それにあの3人なら大丈夫だろうし。

ずいぶん回り道してレイに迷惑かけたから。
これからは、僕が守ってあげないと。

シンジ…

その声で堤防に座って海を見つめていたシンジは振り返った。
そこにはワンピース姿のレイが立っていた。
月明かりのもとでレイの髪が風で揺れている。

どうしたの?こんな遅いのに…

レイはちいさく微笑むとシンジの隣にやってくる。

なんとなく寝つけなくて…シンジは?

そして、シンジの隣に腰を下ろす。

まぁ、僕も同じだよ…なんとなく…ね。

レイがシンジの右手を握ってくる。
その手を見て、少し不思議そうな表情をするシンジに
レイは視線を逸らしてはにかむ。

ごめんなさい。
少しだけこうしていたいの…

うん。いいけど…でも、こうした方が…

手を放すと、レイの肩を抱いて抱き寄せるシンジ。
すぐ近くにシンジの顔が来て思わず赤面してしまうレイ。

え?
でも…
こんなんじゃ…

シンジはレイの耳元に囁く。

レイは嫌?

ふるふると首を振って答えるレイ。


ううん。嫌じゃないよ。

じゃあ、このままでいいよね。

うん…

しばらく黙って海を見つめる二人。
ふとレイはシンジの肩に頭を乗せる。

どうしたの?

ううん。ただ、こうしたかっただけ。

そう…

波が打ち寄せる音が小さく響いている。
海から吹き寄せる風は二人の前髪をそよがせる。
雲に隠れていた月が現れ、あたりの景色を銀色の光で浮かび上がらせる。

どうしてこうなったんだろ?

何が?

どうしてアタシ、シンジを好きになっちゃったんだろ?

どうしてだと思う?

うーん…
シンジはどうしてアタシを好きになってくれたの?

どうしてだろ?
でも、始めてあった時のことはまだ良く覚えてるなぁ。

そうなの?

うん、すごく髪と瞳が印象的で。

そうだよね。こんな瞳してる人っていないよね。

アルビノなんだよね。

そう…でも小さいときよくいじめられちゃって。

でも、キレイだよ、すごく。
それで良いんじゃない?

…ほんとう?

ほんとうだよ。すごく好きだよ、その瞳。
少なくても僕はそう思ってるよ。

ありがと、すごく嬉しい…

レイはシンジの瞳をじっと見る。

アタシはね…
そのシンジの瞳に捕らわれてしまったのかな。って思うの。

僕の?

そう、その瞳。

レイは微笑んで、視線を海に向ける。

…海のように深くて、じっと見ていると吸い込まれそうで、すごく澄んでいて。

そう…かな?

シンジは気付いていないかもしれないけど、
シンジに見つめられると、すごくどきどきしちゃうの。
だから、これからはあまり他の女の子を見つめないでね。

シンジは苦笑して、レイの耳元に囁く。

わかった、これからはレイだけ見つめるようにするよ。

レイはその答えを聞いて、少し恥ずかしそうに微笑む。

それも困るけどね…アタシがどきどきしちゃうじゃない。

じゃあ、どうすればいい?

少しだけ考えて、レイはくすくす笑いながらシンジに答える。

やっぱりアタシだけを見ていて。他の女の子は見ちゃ駄目。

…わかった、レイだけを見つめているよ…

二人は肩を寄せ合い、打ち寄せる波の音に耳を澄ませた。
 
 
 
 
 


NEXT
ver.-1.00 1999_07/05公開
ご意見・ご感想は sugimori@muj.biglobe.ne.jpまで!!

あとがき

どもTIMEです。

Moon-Stone第6話「二人のため?」です。

やっとシンジが自分の本当の気持を伝えることができました。
これからいろいろあるでしょうが、
とりあえず二人なら何とか乗り越えていくでしょう。
ってことでハッピーエンドに向かって驀進ですね。

しかし、まるで最終回のようなあとがきですが、まだ1話残っています。
まぁ、おまけ的要素が強いので、本編はここまでと思っていただければと思います。
で、最終回は二人きりの夜が舞台です。
思いを伝え合った二人、そして、突然の二人きりの夜の到来。
二人はどうなってしまうのでしょうか?

ではMoon-Stone最終回「重なる想い」でお会いしましょう。
 
 






 TIMEさんの短期集中連載『Moon-Stone』第6話、公開です。







 無くなってわかる、
 髪は長〜い ・・・

  ・
  ・
  ・

 ではなくて(^^;



 いなくなってわかる、
 大事なヒト。


 そんなんですよね☆




 気持ちが通じて、
 オールオケってね。



 このまま一気かなかな。




 さあ、訪問者の皆さん。
 次で最終回TIMEさんに感想メールを送りましょう!











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