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濃い紺の神父服を着た男性が彼を見てたずねた。

「汝はこの者を妻とし、生涯変わらぬ愛を誓いますか?」

彼はちらり彼女のほうを見た。
純白のドレスを身に着けた彼女は彼を見てにっこり微笑んだ。
そして、彼も微笑み返す。

「誓います。」

神父は彼女の方を見て訪ねる。

「汝はこの者を夫とし、生涯変わらぬ愛を誓いますか?」

微笑んだままうなずく彼女。

「はい、誓います。」
 
 
 

めぞん150万ヒット記念
SIDE C MANA

誓いますか?

TIME/99
 
 
 

準備が終わったとの知らせを聞いて、
彼は座っていた椅子から立ちあがる。
薄いグレーのフロックコートを着た彼は一度鏡の前に立つ。
最近はこういったフロックコートやチャペルスーツがはやっているそうだ。
女性のドレスだけでなく、男性のスーツも今やいろいろ種類があるらしい。
特におかしくはないな。
彼女はこのスーツを見て、
どこかのバンドのボーカルみたいだってくすくす笑ったけ?
口元に笑みが浮かぶ。
さて、彼女はどんな感じかな?
ドアに向かって歩き出す。
なんか変な感じだ。
一度立ち止まる。
いろいろ見回してみるがどこもおかしくない。
慣れてないだけか?
そう思い、ドアのノブを回す。
部屋を出て、毛の長い絨毯が引かれたろうかを右手に向かう。
はぁ、しかし大変だよな。
これから車、(もちろんリムジンだ)に乗って教会まで15分
式自体は30分から1時間ぐらい。
それから教会で写真撮影。
そして、海までいってまた撮影か。
それでやっとここに戻ってくると。
まあ1、2時間はかかるよな。
そんなことを考えながら、彼女が待っているであろう部屋の前に来る。
なぜか咳払いをして、彼は軽くノックをする。
そして、ドアが薄く開く。
顔を出したのは付き添いの女性だ。
なんでも女性の支度は大変らしく、付き添いの女性が二人ついている。
すべてのオプションがついているせいもあるのか、かなり念入りに準備しているようだ。
昨日も、直前準備とか言ってエステとかやってたみたいだし。
まぁ、女の子にとっては一生に一度のはずだしね。
その女性は彼を見てにっこり微笑む。

「準備できてますよ。」

そして、ドアを大きく開けて彼を中に招き入れる。
彼は中に入る。
部屋の奥に彼女は座っていた。
純白のドレスをまといベールも手袋も身に着けている。
ゆっくりと彼のほうを振り返りはにかむ彼女。

「どう?」

彼はほうけたように彼女を見つめていた。
しばらく彼女を見つめた後ぽつりつぶやく。

「…うん…いいよ。」

その言葉に彼女はにっこりと微笑む。
ドレスのすそには大きな花模様をあしらってりう
両肩も腰にも同じ花がついている。
首には大粒の真珠のネックレス、イヤリングも真珠が飾られている。
頭にはブーケとおそろいのカチューシャを飾り髪は後ろにまとめられていた。
ブーケはピンクのバラが飾られ、ドレスの白にきれいに映えていた。

「なんか準備だけで疲れちゃった。」

彼女はそう言ってふうとため息を吐く。
彼女のもとへ歩きながら彼もうなずく。

「僕もだよ。どうしてこういろいろと準備しないといけないんだろうね。」

彼女の横に立ちじっと見詰める。
化粧と髪形を変えているせいで彼女と違うみたいだ。
彼女は彼を見てにっこりと微笑む。
でもその笑顔と彼を見上げる瞳は彼の知っている彼女のものだった。
彼はほっとしたように微笑み返す。
と、いきなりフラッシュがたかれる。
カメラマンの男性が二人に笑いかける。

「うん。似合ってるぞ。俺のイメージ通りだ。」

「もう、撮り始めるんですか?」

彼は不思議そうにその男性に話し掛ける。
その男性はうなづき答える。

「まぁ、式だけ撮ればいいってものじゃないしな。」

「それはわかる気はしますが…」

ドアがノックされ一人の男性が顔を出す。

「お車の準備が出来ましたが。」

その言葉にカメラマンの男性がうなづく。

「じゃ、行こうか?」

彼は彼女に向かって首をかしげてみせる。
彼女はゆっくりうなずいて立ち上がる。
そして彼の腕をとる。

「そう、男性がリードしてくださいね。」

付き添いの女性がにこやかな笑顔を受かべて二人を見送る。

「なかなか様になってるぞ。」

フラッシュをたき何枚か写真を撮りながらカメラマンは部屋から出ていく。

「なんか、大変だね。」

ちらりと彼女をみて彼はささやく。
その言葉にくすりと微笑み、彼女は彼の耳元にささやく。

「いいじゃない。今日だけは主役よ。」

「ま、それもそうですか。」

二人は腕を組み部屋の廊下を歩いていく。
 
 
 
 

「しかし、本当にリムジンなんだねぇ。」

変なことに関しながら、彼は窓から外の景色を眺めていた。

「まぁ、こんなところでお金はけちらないよ。」

カメラマンの男性はフィルムを交換しながら答える。

「でも、この格好でロビーを歩くのって恥ずかしいよね。」

彼女は自分のドレスを見下ろしながら答えた。
二人はホテルのロビーの前を歩いて通ったのだが、
当然のごとく目立ってしまい、観光客から写真を撮られる始末だった。

「まぁ、今日は主役なんだし。」

彼は先ほどの彼女の口調を真似る。
くすくす笑って彼女もうなずく。

「そうね、今日だけは。」

車は高速道路に乗り西に向かって走り出す。
窓からは雨雲がかかった山並みが見える。

「雨は大丈夫かな?」

その言葉にカメラマンは窓を見て首を振る。

「大丈夫だよ。あの雲はこちらにこないから。
それに今は雨季じゃないしね。」

「そんなもんなんですか。」

「そういうものだよ。」

彼はうなずき窓の景色を見つめる。
日本と違って車の斜線が右左逆になっている。
何か変な感じだよな。
そんなことを考えている彼の手に何かが触れる。
それは彼女の手だった。

「どうかした?」

彼のその質問に彼女は小さく首を振った。

「なんでもない。」

「おいおい、俺がいるのを忘れないでくれよ。」

おどけるようにカメラマンが二人に言う。
苦笑を浮かべ彼は答える。

「そんなことありませんよ。ちゃんと覚えていますから。」

「そう願うよ。」

彼は肩を竦めてカメラを構えた。

「さ、何枚かとっておこうか?」
 
 
 

「ここですか?」

彼はその教会の前で付添人の男性にたずねた。
その男性はうなずき、教会のドアを開ける。

「とりあえず1時間とっています。時間的にはそれで十分でしょう。」

「なるほど。」

良く分からなかったが彼はうなずいた。
と、彼女が車からおりて彼の隣に立つ。

「きれいね。」

彼女は教会の中のステンドグラスに視線を向けていた。
左右の壁と正面の壁にステンドグラスがあった。
太陽の光でまばゆく輝いている。

「うん。きれいだ。」

二人は教会の入り口で並んで立った。
通路に引かれている絨毯、つまりバージンロードは赤だった。
距離にして15メートルぐらいだろうか。

「赤だね。」

彼のその言葉に彼女はちいさくうなずいた。

「うん。よかった、赤だった。」

彼女は赤いバージンロードを歩きたいと彼に話していた。
その通りの真っ赤なバージンロードが二人の前に広がっている。

「この二人ですか?」

急に声をかけられ二人は顔を見合わせる。
付き添いの男性が答える。

「そうです。まだ二人は高校生ですがね。」

「それはそれは。」

紺の神父服をきた男性が二人のほうに歩いてきた。

「始めまして、私はこの教会の神父です。今日はよろしくお願いしますね。」

「日本語話せるのですか?」

彼女が驚いたようにたずねる。
神父はにっこりと微笑んで答える。

「私は日系三世なのです。ぺらぺらとまでは行きませんが。簡単な会話程度は。」

「いや、十分にうまいですよ。」

彼のその言葉に笑みを大きくする神父。

「そうですか?嬉しいです。」

そして、身振りを交えて、二人に手早く式の流れを説明する。

「忘れても大丈夫ですよ。私がお教えしますから。
心配しなくて大丈夫。」
 
 

パイプオルガンにあわせて教会の歌手の声が響く。
高く澄んだ声が教会中に染み込むように響く。
曲が終わると彼女は付き添いの男性に従い、教会の中央まで歩いていく。
そこには彼が彼女を待っていた。
なんか、不思議な感じ。
ずっとこうなったらいいなって思ってたのに、すごく冷静だよね。
やっぱり…
彼女は彼の前に立ち、彼をじっと見詰める。
彼は彼女の視線を受けてにっこりと微笑む。
いつもの笑み。
そう、これが…でも、こうやって一緒にいてくれるんだもの。
きっと…
きっと。
彼女も微笑み返し、彼の腕を取って神父のもとまで歩いていく。
二人は神父の前に立つ。
式が始まった。
神父の祝福の言葉を聞き、そして誓いの言葉を交わす。
濃い紺の神父服を着た男性が彼を見てたずねた。

「汝はこの者を妻とし、生涯変わらぬ愛を誓いますか?」

彼はちらり彼女のほうを見た。
純白のドレスを身に着けた彼女は彼を見てにっこり微笑んだ。
そして、彼も微笑み返す。

「誓います。」

誓います…か。
すごく不思議な気分だな。
これがもし…
彼はその考えに苦笑する。
今は…
やめよう…
神父は彼女の方を見て訪ねる。

「汝はこの者を夫とし、生涯変わらぬ愛を誓いますか?」

微笑んだままうなずく彼女。
そう、これが私の本心だから。
わかってるのかな?
うん。
わかってるはずだよね。

「はい、誓います。」

そして祝福を受けるために膝まづく二人。
頭上に手を翳して、なにかつぶやきながら神父は祝福を施す。
なんて言ってるんだろ?
これって日本語でもないし、英語でもないよな。
彼はそんなことを考えながら神父の祝福の言葉を聞いていた。
そして立ち上がり二人は向き合う。
神父は指輪にも祝福を施し、彼に指輪を渡す。
彼は渡された指輪を見てくすりと微笑む。
ほんとに作ったんだ。
そんなことを考えながら指輪をゆっくりと彼女の左手の薬指にはめる。
そして、彼女は指輪を受け取りそれを彼の左手の薬指にはめる。
二人は見詰め合ってにっこりと微笑み合う。
そして。
彼は彼女のベールをあげる。
フラッシュがたかれる中、神父が小さな声でささやく。

「ふりだけでいいですから。」

彼女はにっこりと微笑んだ。
そして彼をじっと見る。
その瞳を見て彼は考える。
そうだよね。
ふりだけなんて…
無理だよね…
彼は彼女の腰に手を回す。
彼女は彼の胸に手を当てる。
瞳を閉じて二人は唇を重ねる。
カメラのフラッシュの光を感じながら二人は体を離す。
神父は嬉しそうに微笑み手を胸の前で広げる。
二人に道を示すように。

「さぁ、行きなさい。」

二人は腕を組んでバージンロードを歩き始める。
教会のドアのところまできて振り返る。
式はそれで終わりだった。
拍手をしながら、付き添いの男性がやってくる。

「これ使ってください。」

ティッシュを受け取り口をぬぐうシンジ。
付き添いの男性はからかうように二人に話し掛ける。

「ふりだけで良かったんですけどね。
本番まで残しておいたほうがいいと思うんですが。」

「だって…せっかくここまでしてもらったんだし。」

マナが恥ずかしそうにうつむいて答える。

「まぁ、このバイトに参加してくれる方は、
みなさんそうおっしゃいますがね。
雰囲気に乗せられたって。」

カメラマンが二人のもとに歩いてくる。

「俺のお見立ては完璧だろ?」

「それは認めますがね。」

苦笑を浮かべる付き添いの男性。
カメラマンはにやりと笑って二人に話し掛ける。

「まぁ、バイト代は撮った写真になるけど、いい思い出になっただろ?
ついでに君たちが本当に結婚する時に、このコース使ってくれると俺も嬉しいがな。」

「はぁ、結婚ですか。」

「まさか、彼女とはしないって言わないだろうな。」

ジロリとシンジを見つめるカメラマン。
マナもじっとシンジを見つめている。

「え…」

そのまま固まってしまうシンジ。
笑みを浮かべてカメラマンは二人の背中を軽くたたく。

「さて、まだもう少しだけ付き合ってくれ。
見た人たちが式を挙げたくなるようなPR写真を作らないとな。」
 
 
 

二人は海岸の砂浜に並んで座り空を眺めていた。
打ち寄せる波の音、背後には高層ホテルが並んでいる。
背後からは車の音や、人のざわめきも聞こえる。

「楽しかったね。」

マナはそれを見上げてシンジに話し掛ける。

「そうだね、大変だったけどいい思い出になった…かな。」

シンジも空を見上げて答える。
見える星は日本とは微妙に違うような同じような、
二人には良く分からなかった。
ただ、北極星が見えるのでそんなに変わっていないはずだ。
湿度が低いためか風は湿っぽくない。
気温も高いはずなのだが、それほど不快感は感じない。
月が海面に映りゆらゆらと揺れている。
椰子の木の葉が揺れる音が聞こえてくる。
右手に続く海岸ではかがり火が焚かれているのだろうか、
オレンジの光が見える。

「ねぇ…」

マナはシンジの方に頭を預ける。
シンジはそのままで小さくささやく。

「何?」

マナは瞳を閉じ小さくつぶやく。

「私…ね。」

波の音が二人の会話を遮った。
その時マナは小さくささやいたのだが、シンジには聞こえなかった。

「何か言った?」

「…ううん。何も。」

マナはにっこり微笑みそう答えた。

「そうか。」

二人は寄り添って、波が打ち寄せ、水面の月が揺れるさまを眺めつづけた。
 
 





NEXT
ver.-1.00 1999_03/07公開
ご意見・ご感想は sugimori@muj.biglobe.ne.jp まで!!





あとがき
 

どもTIMEです。

めぞん150万ヒット記念SS SIDE C MANA 「誓いますか?」はいかがでしたか。

まぁ、読んでもらっての通りですが、オチを予想できた人は多いでしょうね。
結婚式の話ですが展開とかは実際の話を参考にしてます。
最近の海外ウェディングではホテルで準備、そのままリムジンに乗って
教会に移動、挙式後写真撮影して、ホテルに戻るという流れのようです。
まぁ海外(ハワイ、グァム)とかに旅行に行った人は、
よく見かけているのではないでしょうか?
しかし、この話っていつの話なんでしょうね。
本編に絡むのはいつのことやら、まだかなり先になりそうです。
あと指輪にもやはりサイドストーリがあるんですが、それはまた今度ですね。

さて、これで150万ヒット記念は終わりです。
あとはTimeCapsule登場人物設定集が残っていますが、
これもすぐに公開します。

その後本編に戻るんですが、
本編のストックは先月のFF8とインフルエンザで
尽きてしまっているんですねぇ。
なるべく週一更新で行きたいですが、どうなることやら。

ではTimeCapsule登場人物設定集、そしてその後の本編TimeCapsuleでお会いしましょう。
 




 TIMEさんの『誓いますか?』 、公開です。





 妙なカメラマンだなぁ

  と思ったけど、

 変なこと言う神父さんだなぁ

  とも思ったけど、


 最後の最後まで気がつかなかった〜


 そうか、
 そうっだのか。

 アルバイトだったのね。



 シンジくんもマナちゃんも
 上手く雰囲気に乗って、乗せられて、乗せて、
 役得だったかな!?


 良い記念写真も写せて・・



 雇い主は良いバイトを雇ったね(^^)




 さあ、訪問者の皆さん。
 3連発の記念作TIMEさんに感想メールを送りましょう!






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