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降りしきる雨の中、芦ノ湖の近くにあるバス停で雨宿りする一組の男女。

「どうしたの?」

「風邪引かないように暖めてるの…。」

「すぐ乾くよ。」

「黙ってて…」

黒髪の少年に寄り添う赤い髪の少女。

そして遠くから傘をさしながらその二人を見ているもう一組の男女がいた。

「本当にシンジ君に会っていかなくていいのかい、マナちゃん?シンジ君はマナちゃんが死んだと思い込んでかなりショックを受けているみたいだが…。」

傘をもった無精ひげを生やした長身の男性が隣にいる少女に声を掛ける。

少女は鳶色の瞳に悲しみを称えながら

「いいんです、加持さん。今私がシンジに会いに行けばシンジに迷惑がかかりますから…。それに………。」

少女はそこで口篭もった。

「…………………………………………。」

「な…なんでもありません。」

「そうか…。」

男は憂いを帯びた瞳で少女を見つめる。

「そろそろ時間です。」

後ろから、サングラスを掛けた黒服の男が二人に声を掛ける。

「では、いこうか、マナちゃん。」

男は軽く少女の肩を抱くと車に乗せる。

少女は車に乗り込む前にチラリとバス停に目を走らせる。

『それに……………………………』

少女の瞳が潤み始める。

『それにシンジにはアスカさんがついてるから…。だからきっとシンジは大丈夫だから…。』

少女は、黒髪の少年に潤んだ瞳で寄り添う赤毛の少女を見てそう心の中で呟いた。

 

さようなら、シンジ。

 

 

 

「二人の補完」

 

 

  外伝三 「予感」

 

 

「遠藤ヤヨイ…です。よろしくお願いします。」

第三中学の制服を着た鳶色の瞳をしたショートカットの少女は教壇の前でそう自己紹介する。

鳶っきりの美少女転校生の存在に男子生徒が色めき立つ。

 

 

「ねぇ、遠藤さん。」

「……………………………………。」

「遠藤さん。」

少女は机の上で頬杖をついたまま何かを思案しているのか何も答えない。

「遠藤さん!」

「あ…あたし!?」

少女の声に眼鏡を掛けた少女は呆れた顔をして

「他に遠藤という姓の生徒はここにはいないわよ。一体どうしたの?」

「ご…ごめんなさい、ちょっと考え事をしていて…。」

『いけない。まだ新しい名前に慣れていないみたいだわ。これからはもっと気を付けないと。』

 

 

「ただいま……。」

少女は自分のアパートに帰宅して、挨拶したが無論返事はない。

少女は軽くため息を吐いた後、タンスの上に立替えてあるフォットスタンドに目を走らせる。

そこには少女と仲睦ましく腕を組んだ黒髪の少年の写真が飾ってあった。

学校はもう慣れた…。

クラスメートは皆あたしに優しくしてくれる。

けど、何か物足りない…。

何が足りないんだろう。

今あたしが欲しいもの…。

家族…。

あたしの家族は確かに存在する。

けど、今はまだ会えない。

あたしは軍に追われた逃亡者だから。

 

少女は押し入れから無線機を取り出すと、ヘッドフォンを耳に当てて、周波数を軍の特別回線に合わせる。

そして、軍の秘密通信をジャックする。

10分後、少女はヘッドフォンを外して電源を切った後、再びため息を漏らす。

「駄目だわ。まだ、あたしの監視は解かれていない。あたしの家族も軍に見張られている。一体いつになったらあたしは自由になれるのかしら…。」

 

その時、扉の外から物音が聞こえた。

少女はビクッとする。

もしかして追ってがここを嗅ぎ付けてきたのだろうか?

ドン、ドンとドアを二回ノックされた後、

「すいません、遠藤さん。郵便書留めです。」

その声に少女は安堵した後、引出しから判子を取り出して扉を開けた。

 

 

 

封筒を破くと、数枚の札束と一枚の便箋。

加持さんからだ…。

加持さんの手紙の中でも軍は執拗にあたしを捜している…と書いてある。

軍の中にいた時はあたしは籠の中の小鳥だった。

そして今では……。

もう、これ以上考えるのはよそう。

考えたってどうにもならないから。

早いとこアルバイトを探さないと…。

いつまでも加持さんに迷惑をかけるわけにもいかないし。

あたしは加持さんが送ってくれた今月分の生活費を掴みながらそう考えた。

 

 

 

「ごめんなさい。」

そのあたしの言葉に目の前の少年は悲しそうな顔をする。

「どうして、俺じゃ駄目なのかな?遠藤さん好きな人いるの?」

あたしは目を背けながら黙ってコクリと肯いた。

「そうか。」

少年はそれだけ呟くととぼとぼとあたしの前から消えていった。

 

本当にごめんなさい。

告白してくれた時は嬉しかったの。

けど、あたしまだ過去を振り切れていない…。

ムサシ。

ケイタと一緒に軍の厳しい訓練を耐え抜いたあたしの親友。

今もあたしを縛り付けている楔。

あたしを命懸けで愛してくれた人。

あたしはあたしを救命カプセルに乗せてくれた時のムサシの寂しそうな笑顔をまだ忘れていない。

そしてムサシは死んだ。

確認したわけじゃないけど、生きているはずがない。

ムサシは死んだの。

あたしを助けるために…。

 

そしてシンジ…。

今も第三新東京都市で世界を守る為に戦っているあたしの心に巣食っているもう一つの楔。

はじめてシンジに会った時は只の任務だった。

パッと見、暗そうなそして臆病そうな影のある男の子…。

けど、どこか儚げなそして優しそうな瞳をしていた。

彼のどこがいい?

分からない。

けど、任務だと思って積極的にアプローチしているうちにいつしか本気になっていた。

彼とデートした時は本当に楽しかった。

一度良い雰囲気になった時があったんだけど、キスして欲しかったな。

でも、結局シンジとは別れた。

任務とはいえあたしは一度シンジを騙した。

そしてあの時、確かにあたしはムサシを選んだ。

今更シンジに会わせる顔はない。

それにシンジにはあたし以上にシンジを想っている蒼い瞳の少女がいつもシンジの隣にいるから。

 

ムサシ…、そしてシンジ。

この二人があたしにとってジレンマになるとは思わなかった。

あたしの心に巣食っている二つの楔。

この楔を振りほどかない限り、あたしは前に進むことができない気がする。

けど、それはいつの話。

わからない…。

 

 

 

なんだろう…。

何かが動きだそうとしている気がする。

けど、それは何?

分からない…。

けど、今までと何かが違う。

世界が変わろうとしている。

そんな予感がする。

 

 

予兆は確かに存在していた。

毎月必ず、送られてきた加持さんからの現金書留めが届かなくなった。

加持さんどうしたんだろう?

いい加減そうに見えてこういうことは意外に律義な人だったのに。

もしかして、もうあたしの面倒を見るのが嫌で見捨てられたのだろうか。

それとも何か他に事情があるのだろうか。

分からない。

あたしはバイトを見つけていたので、何とか家賃を遣り繰りすることができた。

この時すでに加持さんが亡くなっていたことをあたしは後で知ることになる。

そしてそれは世界が崩壊する予兆だった。

 

 

 

A801の発令?

なによ、それ?

何時ものように軍の無線をジャックしていたあたしの顔は青ざめていた。

特務機関ネルフの特例による、法的保護の破棄。そして指揮権の日本国政府への委託。

そして次のヘッドフォンから飛び込んだ言葉にあたしの心臓は止る想いだった。

戦略自衛隊一個師団出撃。

目的地は第三新東京都市ネルフ本部。

目的はネルフ本部の制圧。エヴァ二体・MAGIオリジナルの確保及び専属パイロットの消去。

無差別殺戮も許可する。

 

何?

一体何が起きているの?

かつてあたしが所属していた戦自がネルフと戦うの?

もし、そうなればどうなるかあたしにも容易に結果が想像できる。

戦自の兵器は使徒にはまるで役に立たなかったけど、相手が人間となれば話が違ってくる。

使徒相手に戦ってきたネルフもきっと戦自にはかなわない。

なぜなら一体の巨象を倒すより、一万匹のネズミを殺し尽くすほうがはるかに大変で困難なことなのだから。

けど、エヴァが起動できるのなら、また状況は逆転する。

でも、シンジに人が殺せるの?

どちらにしてもシンジもアスカさんも戦自の一番の標的になることは間違いない。

そして、今のあたしにはどうすることも出来ない。

シンジ!

お願い、無事でいて。

神様。

お願いですから、シンジを守ってください。

 

 

 

世界が悲しみに満ち満ちていく。

孤独がヒトの心を埋めていくのね。

空しさが、人々を包み込んでいく。

 

何?

何が起きているの?

崩壊の予感。

黒き月。

リリスの卵。

 

目の前に何かいる。

えっ、綾波さん?

次の瞬間綾波レイはムサシにそして、シンジに変化する。

「ムサシィ!、シンジィ!」

あたしの最も会いたい人達に出会ってあたしの心の壁が一瞬にして崩壊する。

次の瞬間、あたしは溶けていった。

 

 

 

感じる。

シンジの心を感じる。

そしてムサシの心を、ケイタの、父さんの、母さんのその他多くの親しい人達の心を感じる。

ここはどこ?

分からない。

けど、肉体を感じない。

まるで全てが一体になったような…。

そんな感じがする。

 

 

けど、しばらくしてLCLから多くの魂が零れ落ちていった。

どうして、皆離れるの?

こんなに気持ち良いのに…。

ここにいればもう傷つけられることはない気がする。

皆と永遠に一つになっていられる気がする。

なのに、何で離れるの?

そっか…。

もう一度会いたいからなんだ。

シンジ、またもう一度会えるよね。

次の瞬間あたしの魂もLCLの海から零れ落ちていった。

 

 

 

…………………………!?

ここはどこ?

あれは夢だったの?

シンジやムサシと一緒になった気がしたのは只の夢だったの?

けど、本当に気持ちの良い夢だった。

何時かもう一度今度は現実で会いたいな…。

あたしはもう一度周りを見回してみる。

そこは完全な廃虚だった。

一体何が起こったのだろう?

もしかしてこれがサードインパクトなの?

とにかく未曾有の災害がこの世界を覆ったことだけは確かみたいだ。

あたりに所々に脱ぎ捨てられた服が大量に散らばっている。

あたしは人の姿を求めて歩き出した。

 

 

 

今あたしはこの町に臨時に建てられた寄り合い所にいる。

老若男女を問わず、あの災害を生き延びた人がここに集結している。

そして政府から配給されるわずかな食糧で飢えを凌いだ。

どうやら、この町はおろか日本中いや世界中が大混乱に陥っているみたい。

しばらくして、日本政府からこの災害の公式発表が行われた。

やっぱりこれはサードインパクトみたいだ。

それも人為的に起こされたみたい。

サードインパクトを起こしたのはゼーレという狂信者集団で、政府とネルフはその阻止に全力を挙げたという話だ。

何か変だわ。

あのあたしが傍受したA801と戦自によるネルフ本部の侵攻は一体何だったのかしら。

誰かが情報操作を行っているような気がする。

他に分かったのはネルフはサードインパクトの時に、組織ごと壊滅してエヴァも永遠にその存在を失ったこと。

そして戦自も今では壊滅に近い状態に陥って各地の治安維持が精一杯で軍としての活動を行うことが不可能な状態であること。

その情報を聞いた時、あたしは一瞬心臓が止る想いだった。

シンジもその時死んでしまったのかと思ったから。

けど、今度新しく第三新東京都市に人類支援委員会という組織が出来上がり、その議長に就任した老人の顔を見た時、あたしは安堵のため息を漏らした。

冬月さん。

ネルフの副司令だった人。

よかった。

ネルフは生き残っていたんだ。

ただ、その名称を人類支援委員会と代えただけだったんだ。

それから戦死者名簿が公表された。

この世界を守るために勇敢に戦って命を落とした勇者達ということで、マスコミを騒がせていた。

元ネルフ総司令官碇ゲンドウ

MAGIの管理責任者である赤木リツコ博士

作戦司令部長である葛城ミサト三佐

元零号機パイロットファーストチルドレン綾波レイ

その他多くのネルフ職員が命を落としたみたいだ。

あたしは葛城さんや綾波さんやシンジのお父さんが亡くなったことに心を傷めながらも、戦死者名簿の中にシンジやアスカさんの名前が出ていないことに心から安堵した。

そしてもう一つ。戦略自衛隊の壊滅。

もう籠の中の鳥じゃない。

やっとあたしは自由になれたんだ。

世界がこんな有り様では6年後を想定したロボット兵器計画も御破産になってしまったはず。

いつまでもあたしのような生きているか死んでいるかも分からない小娘一人に拘わるいる余裕はないはずだもの。

そう考えたらあたしはいても発ってもいられなかった。

帰りたい。

あたしの本当の家族の元へ。

 

 

 

……長い旅だった。

途中色んなことがあった。

けど、あたしはもう一度この町へ帰ってくることが出来たんだ。

あたしはこの町の寄り合い所を尋ねると必死に両親の姿を探しまわった。

きっと、ここにいるはずだ。

生き残ってさえいれば。

 

「「マナ…。」」

あたしを呼ぶ懐かしい声。

目の前に居る夫婦を見てあたしの鳶色の瞳から涙が零れ落ちた。

「お父さん。お母さん。」

あたしは泣きながら二人に抱き着いた。

もう言葉はいらなかった。

ただ、お互いの温もりを感じていられるだけでよかった。

この時、あたしは失った大切なモノの一つを確かに取り戻すことが出来たんだ。

 

 

 

それからしばらくはあたし達3人は他の生き残った人々と一緒に寄り合い所で共同生活を送っていた。

けど、いつまで経っても政府はこの町の復興に力を入れる様子はない。

世界中が混乱しているのだから、まあそれは無理はないんだけど。

食事は配給制。

治安が物騒だから自由は少ない。

だから皆イライラしてくる。

何時までこんな生活を続ければいいんだろう?

それに……。

逢いたい…。

シンジに逢いたい…。

あたしはポケットに忍ばせておいた写真を眺めながら何度も心の中で念じた。

サードインパクトが起こった日にシンジの夢を見て以来、その欲求は深まるばかりだ。

ねぇ、ムサシ。

あたしもう一度シンジに会ってもいい?

シンジは黙って消えたあたしを許してくえると思う?

あたしはポケットからもう一枚の写真、軍の中でムサシとケイタと3人で腕を組んで撮影した写真を見ながらそう呟いた。

 

 

 

それからさらに時が経ったときあたしは両親に提案した。

第三新東京都市へ行こう。

復興が一番進んでいる第三新東京都市なら、仕事がもらえて今より生活が少しは楽になるかもしれないから。

両親は最初は渋った。

そう考えるのは皆同じことで、疎開した旧ネルフの関係者以外は第三新東京都市の移住は厳しくなっているという話だからだ。

抽選による第三新東京都市の受け入れ競争率はそれこそ天文学的な数字らしい。

  

あたしは渋る両親を三度説得してようやく、両親を決心させた。

第三新東京都市へ行けばきっと全てがうまくいくからって。

なぜ、うまくいくかという具体的な根拠は何もない。

ただ予感がするの。

そう全てがうまく噛み合う予感が…。

 

 

 

予想した通り、町の外に設けられた受付所はすごい人で賑わっていた。

皆この町への移住を希望する人達。

押しの弱い両親はこの人だかりを見てすでに諦め顔だった。

確かにこの人数の中から選ばれるのはちょっと無理かもしれない。

あたしの予感ははずれたのだろうか?

 

「ねぇ、もしかして、マナちゃんなの?」

その時誰かが声を掛けてきた。

「えっ!?」

あたしが後ろを振り向いた先にはあたしと同じショートカットの女性が佇んでいた。

「あ…、確か…」

名前が思い出せない。

「伊吹マヤよ。マナちゃん。あなた生きていたの?」

伊吹さんは本当に驚いた表情であたしを見る。

あたしは慌てて挨拶を返す。

そして自分の今日までの事情を伊吹さんに話すことになった。

「そう、本当に苦労していたのね、マナちゃん。」

伊吹さんはあたしの話にホロリときたらしく、ハンカチで目元を抑えながらそう呟いた。

「まったく、自分一人のことしか考えられないどこかの馬鹿娘に見習わせてやりたいくらいだわ。」

「えっ?、何かいいました、伊吹さん?」

「な…何でもないわよ、マナちゃん。」

伊吹さんは慌ててそう呟いた後、顎に手を当てて何かを思案しはじめた。

「ねぇ、マナちゃん。マナちゃんはもしかして第三新東京都市に移住しにきたの?」

「は…はい。そのつもりだったんですけど、この人じゃちょっと無理ですよね。」

あたしが軽くため息を吐きながらそう呟くと、

「ねぇ、マナちゃん。マナちゃんのお父さんの職種はなに?」

「父ですか。確か前の町では大手の人工知能の研究に携わっていたという話ですけど。」

「そうなの。それは委員会でも人手が足りない分野ね。ねぇ、マナちゃん。もしよかったら私がマナちゃんの家族がこの町へ住めるように手配してあげましょうか?」

「ほ…本当ですか?伊吹さん?」

伊吹さんはにっこりと微笑みながら

「えぇ、あなたのお父さんが委員会で私の仕事を手伝ってくれたらね。」

私たち家族に否応あるはずもなかった。

「ところでマナちゃん。」

「な…なんですか、伊吹さん。」

「マナちゃんは今でもシンジ君のことを好き?」

その言葉にあたしは顔を真っ赤にした。

伊吹さんはクスリと笑いながら

「分かりやすい答えね。マナちゃんが生きていると分かればきっとシンジ君も喜ぶわよ。」

「本当ですか?」

あたしはその言葉に瞳を輝かせる。

「本当よ、マナちゃん。それにマナちゃんが近くにいればシンジ君もあの娘のことも忘れられるかもしれないしね。」

伊吹さんはそれだけ言うと受付の人に何かを話し始めた。

 

 

 

一週間後、伊吹さんの口添えであたし達は第三新東京都市の住人になることが出来た。お父さんは委員会に努めて伊吹さんの仕事を手伝うことになった。

第三新東京都市は外の混乱が信じられない繁栄ぶりだった。

住居は委員会の奇麗な社宅が一棟割り当てられて、外へ顔を出せばスーパーやコンビニが立ち並んで欲しいものが何でも手に入った。

あたしは半年前までの、寄り合い所での共同生活や、配給制だった乏しい食生活を思い出して、この町とのギャップの差に困惑する。

同じ日本なのに何でこんなに違うのだろう。

この町が政府から発表されているMAGIを中心にした日本全土の復興計画の根拠地だからなのだろうか…。

 

 

 

そして、一月後の春。

四季が戻って桜の花が満開の花道をあたしはセーラ服を着て歩いていく。

今日は第3新東京市立第壱高等学校の入学式。

あたしが前住んでいた町はまだ学校が再開されていなかったから、この町の中学を卒業した子に比べたら学業が立ち後れているけど、この一ヶ月間の猛勉強のおかげで、何とか入学試験に合格することが出来た。

伊吹さんの話じゃシンジもこの学校に入学してくるらしい。

もうすぐシンジに逢えるんだ。

あたしの胸がドキドキし始める。

 

「…………………………というわけで、精一杯頑張りたいと思います。新入生代表、1年A組 碇シンジ。」

奨学生ということで、代表の挨拶をするシンジをあたしは遠目からじっと見ていた。

頬を真っ赤に染めちゃってシンジらしい。

けど、シンジの瞳には昔のような他者に脅えた色がない。

この大人数の注目の中でもむしろ堂々としていた感じがする。

 

入学式が終わって体育館を出たあたしはキョロキョロとシンジを探した。

校庭の真ん中で、3人の級友と話をしているみたい。

シンジの顔を見て再び胸がドキドキしはじめる。

なんだろう…。

予感がするの。

今ならシンジともう一度やり直せる恋の予感が…。

 

もう一度あたしはシンジの周りを見回してみる。

洞木さん。鈴原君。相田君。

よかった。アスカさんはシンジの隣にいないみたい。

あたしはそっとシンジに近づくと持てる勇気の全てを振り絞ってシンジに話し掛けた。

そのあたしの声にシンジは振り返り、黒い瞳に驚きをこめてあたしを見つめている。

 

今、この瞬間あたしの恋の予感は現実になった。

 

おわり…。

 

 

 

 

 

 


NEXT
ver.-1.00 1998+8/18公開
ご意見・ご感想・誤字情報などは itirokai@gol.com まで!!

 

けびんです(^^;

今回の外伝は霧島マナちゃんが鋼鉄のガールフレンドのLASエンディングから再びシンジに再会するまでをマナちゃんの一人称で書いてみました。

アスカのライバルとして設定したはずのマナちゃんですが、本編では羅刹の家マヤちゃんのインパクトに押されっぱなしで影が薄いです。(涙)

(それにしても外伝ではマヤちゃんはテレビ本編の本来の属性であったネルフの良心としてのイメージで描けるのに、本編へ戻ると(…っていうかアスカが絡むと)ああなってしまうのは不思議です。(笑))

さらにアスカ属性の作者には本編ではアスカとマナの気持ちを平行して描くことが難しかったので、マナちゃんの気持ちを確かめるためにこうしてマナちゃんサイドの外伝を書いてみた次第です。

(その為に設定を調べ直すためにサターンの鋼鉄のガールフレンドを再プレイしてみました。
ちなみに今回の外伝のサブタイトル「予感」は鋼鉄のガールフレンドのエンディングテーマ曲から戴きました。)

あと、もう一つの目的としてサードインパクトで混乱した世界をマナという第三者の視点から書いてみたいという思いもありました。(第三新東京都市は言ってみれば温室のようなものなので)

その為か今回は随分今までとは違うタッチになってしまったような気がします。

マナ属性の読者の方がいましたら、是非今回の外伝の感想を聞きたいです。

さて、何度か本編へ割り込んだ外伝もとりあえず後章執筆中は今回が最後になります。

これから先の本編の展開がちょっとシビアなものになりそうなので、外伝で話の腰を折ると、話のテンションを下げる結果になりかねないような気がしますので。

まあ、後章が終了したら、またサブキャラにスポットを当てた外伝を書いてみたいとは思っているのですけどね。(サキとマナブとか…。)

では、また本編で…。

 

ではであ(^^;

 




 けびんさんの『二人の補完』外伝3、公開です。




 鋼鉄のガールフレンドからの登場人物、霧島のマナちゃん物語でした(^^)



 GAME鋼鉄
 ・・・すっごく、メチャメチャ、なんで?と思うくらい、重かった奴ですよね(^^;


 画面が切り替わるたびに、
 BGMがチェンジするたんびに、

 長〜い長〜いディスクアクセスがあって、
 フリーズしたのかと思うほどのタイムラグ・・・


 移動とかも鬱陶しいし・・
 ようわからんストーリだし・・・

 イライラじりじりしながらも、
 どうにか一回クリアしたんですが、

 再プレイする気力は湧かなかったなぁ・・


 BP2ローダでCGだけは見たけどね(^^;




 あの後、マナちゃんにこんな物語があったのね。

 ”あの後”・・”あの”時に何があったのか覚えていない(^^;

 再プレイして確かめようか・・・うぐぐ・・・したくない(爆)
        どこにゲームを置いているのかも忘れちゃった(爆く)




 さあ、訪問者の皆さん。
 外伝一時打ち止めのけびんさんに感想メールを送りましょう!




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