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不思議な空間だった。

明るいのか暗いのか、広いのか狭いのかも分からない。

そこに、1人の少年が眠っていた。

歳は14,5歳、整った、少女と見まごうばかりの中性的な顔立ちで、
絶世の美少年といってよいだろう。

肌は抜けるように白い。

そしてなによりも目を引くのは、腰ほどまである髪の色だ。

紫色。だが、ただの紫ではない。

太陽の下へでれば7色に輝くであろう、プリズム・パープル。

染めて作れるような色ではない。

他には何も見あたらない。

当然だ。

ここは、次元的に周囲から隔絶されているのだから。

しかし突然、本来はあり得ない、強い振動があたりを襲った。

その少年が少し動く。

どうやら、今の振動で目覚めたらしい。

ゆっくりと起きあがると、何度か瞬きをする。

その瞳の色も、澄んだ紫だ。

そして周りを見渡すと、立ち上がった。

といっても、床も何もなく、ただ浮いているだけのような感じだ。

彼は何もない空間へ向かって話しかける。

中性的な、男なのか女なのか分からないが、よくとおる声だ。

「【漣】(さざなみ)、いったい何が起こったんだい?」

すると突然周囲が明るくなり、これも中性的な声−【漣】−が答える。

「どうやら、”外”の空間に、異常が発生したようです。
 この『独立次元泡』にまで影響を与えるということは、
 相当大きなものですね、紫漣様」

それを聞き、少年−紫漣−が言った。

「・・まったく、”外”はいったい何をやってるんだろう?
 それじゃあ、”外”へ出てみようかな。
 場所は・・・東京辺りでいいかな?
 ああ、それから【陵】(みささぎ)と【紅】(くれない)も起こしおいてね」

そして、紫漣の姿はかき消すように消え、あたりには静寂だけが残った。  

 

 

 


サードインパクトから3ヶ月。

世界の人口は、インパクト前の4分の3程度になっていた。

サードインパクトは、衛星軌道並みの高さで起こったため、
セカンドインパクトのような気候変動はほとんどなかった。

しかし、爆発の規模は、セカンドインパクトとは比べものにならないほど
大きかった。

地球のすぐ近くで解放された莫大なエネルギーは、周囲の空間にまで影響を与え、
まず、地球全土にわたる地震を引き起こした。

しかし、爆発の割に地震が小さかったことと、セカンドインパクトで
耐震技術が発達していたことにより、被害は意外と小さかった。

そして、爆発により、短期間ではあるが空間の歪みが発生したため、
異世界に紛れ込んでしまう、いわゆる”神隠し”が急増した。

”神隠し”に遭った人は、この3ヶ月で230人以上にのぼった。

もちろんこれは、帰ってきた分だけである。

帰ってこなかった者も含めれば、2000人は下らないだろう。

世界のあちこちで起こっていた”神隠し”であるが、
その原因を作った日本では1件も起こっていなかった。

もちろん、それが1人の少年が作り出した空間の影響であることを知る者は、
誰1人として居なかった。  

 

 

 


旧東京市。

セカンドインパクトによって崩壊し、水底に沈んだこの廃墟は
第1遷都計画以来そう呼ばれ、訪れる者も居ない。

この町に存在する生き物は、辺りを我が物顔で泳ぎ回る魚達のみ。

そんな光景を、紫色の瞳で眺める、1つの人影があった。

さっきの、『紫漣』と呼ばれていた紫の髪の少年なのだが・・・。

宙に浮いているのだ。

道具もなしに。

しかし、別に本人は気にしていないところを見ると、
彼にとっては当たり前のことらしい。

そして頭を振り、小さく呟く。

「まったく本当に、”外”の人たちは、一体何をやったんだろう?
 あの『東京都』をここまで破壊するとはねぇ・・よくやったもんだ。
 まあ、この有様じゃ、もう東京『都』とは呼ばれてないだろうけど。
 この私の〈力〉なら、簡単にできることだけど・・
 水没してるのは何故だろう?
 単なる津波とかじゃないね。これだけ海面が上昇するのは。」

しばらく考え込んでから、さっきと同じように、何もない空間へ呼びかける。

「【陵】!」

次の瞬間、紫漣の目の前に、立体映像が現れた。

そこには、1人の男性が映し出されている。

20歳くらいの、黄色い髪の男だ。

この男が、【陵】らしい。

念のために付け加えるが、
この辺りに、ホログラムプロジェクターの様な物はない。

もちろん、スクリーンの様な物もだ。

紫漣が言う。

「久しぶりだけど、ヴィジフォンの調子は良いみたいだね」

ヴィジフォンというのが、この立体映像の呼び名らしい。

「【紅】と協力して、空気中の二酸化炭素の濃度と、
 世界の地形の変化を調べて。特に、北極と南極の辺りを」

「了解しました」

【陵】の映像はそう言うと、消えた。

「・・・おや?」

残った紫漣は、しばらく目を瞑っていたが、やがて怪訝そうに呟いた。

「変だね。静岡と神奈川の県境辺りに、
 なんかよく知ってるような反応が幾つかある」

ちょっと考え込んだが、すぐに、楽しそうに笑って呟いた。

「行ってみよう。
 これは楽しくなりそうだ」  

 

 


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ver.-1.00 1997-10/26公開
ご意見・ご感想は corundum@geocities.co.jpまで!!

 ついに四号館建設に至りました(^^)

 はじめたころは零号館を見て、
 「これが埋まる日は来るのだろうか(^^;」
 なんて考えていたのですが・・・

 皆様のご愛顧に感謝します。
 

 その四号館始めての入居者、
 めぞん通算83人目の住人。

 群咲 紫蓮さん、ようこそ(^^)
 

 第1作・・タイトルが見あたりませんね(^^;

 公開です!
 

 オリジナルキャラ。

 そしてサードインパクト後の世界で独自の設定。

 

 始まったばかりの小説に
 謎と未知が満ちていますね。

 現時点
 まだそうではないようですが、
 次回辺りから”EVA”が見えてくるのでしょうか?

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 新館に一人きりの群咲 紫蓮さんに温かいメールを!


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