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NEW TYPE EVANGELION

第弐拾六話
決戦前夜


亜光速での航行は難なく行われた。
使徒の襲来も、艦自体の故障も発生しなかった。
現在の所、順調な旅と言えるだろう。

「でも艦自体が大分ガタが来ているのよねぇ・・・・」

NERVの作戦部長であるミサトは呟く。
現に今までの戦いにより、損傷もかなり酷くなってきていた。

「こればかりは仕方ないわ。丁寧に、早く行わなくちゃいけないから」

技術部長である赤木リツコは言う。
ミサトを宥めるように、そして納得させるように。

「それでもこの状態だと遅かれ早かれ、沈みますよ。NERVが」

そして赤木リツコの助手であるオペレータの伊吹マヤが現実を突きつける。

現在のNERVではこのような議論が続けられていた。
無論、不毛な議論だとしても、しなければやっていられないのであろう。

「でも今は戦力を整えるのが先。エヴァの修理が最優先よ」

確かに現在の戦力から言えば、整えるのに時間がかからないのがエヴァである。
しかしその分、NERV自体の修理に滞りが発生するのは致し方ない。

「なら今のうちに模擬体でのテスト、シミュレータでの模擬戦でシンジ君達自体の力を上げるのがベストね」
「えぇ。そうして頂戴。目的地も近いわ。戦力はあればあるほど生き残る確率も高くなるものね」
「では今日の1300からシンジ君達を召集しますね」
「そうね。シミュレータの前に集めて頂戴」
「了解しました」

そして結局シンジ達の戦力アップと言うことで落ち着いたNERVの首脳陣は、
一応に会議を終えた。
会話にはでてこなかったが、この中にはもちろん、ゲンドウ、冬月、ユイもいる。
信頼しているため、あえて口出しはしなかった。
と言うことである。









「総員、第一種戦闘配置。対宇宙戦闘用意」
「NERV、戦闘形態への移行を開始します」

宇宙戦艦NERVのあらゆる隔壁が閉じられる。

「青葉君、NERVの迎撃システムは?」
「現在稼働率24%。使用可能な陽電子砲は30門ほどです」

稼働可能なNERVの陽電子砲が照準のチェックにはいる。

「日向君、敵生体については?」
「はい。パターン青を検知、使徒と確認できます」
「過去の使徒とのパターン一致の結果は?」
「まだ確認できません。MAGIによる結果は240秒後に判明予定です」
「・・・使徒の到達予想時刻は?」
「100秒後です」
「何かは検出できないか・・・・マヤちゃん、現在稼働可能なエヴァは?」
「ニュー・エヴァ弐号機、ニュー・エヴァ参号機は即時射出可能です。エヴァ参号機は20秒後に射出可能です」
「エヴァ初号機改は?」
「損傷率が高く・・・・・戦闘は無理かと」
「そう・・・・・ならアスカとレイは即時射出。鈴原君は射出可能になったらすぐに出して」
「了解」

ミサトの判断は的確である。
これ以上ないほどの、的確な指示を与えていく。
彼女が作戦部長としてゲンドウ達から信頼を受けているのも、この点にある。

「さーて、今回はどうなる事やら・・・・」

一人、誰にも聞こえぬように呟くミサト。
彼女にも、絶対の自信というものはないのだ。




そしてミサトが指示を与えて200秒後。
使徒を肉眼で確認できるまでに至った。

「・・・まずいわ・・・・」

焦りの声を出すミサト。
それもそのはず、確認できた使徒の形状は、あるものに酷似していた。

「アラエルに・・・アルミサエル・・・・」

もちろん、彼女たちも確認している。

『えっ・・・・あれって・・・・・』
『アスカ・・・・あれ・・・・』

彼女たちに記憶がよみがえってしまう。
地球上で、苦戦した敵の記憶を。
しかも、それは肉体的に苦戦したのではなく、精神的に苦戦したため。

『でも・・・・シンジが出れないんじゃアタシ達で何とかするしか・・・・無いのよね・・・・』

その言葉を聞き、ブリッジで様子を見るように言われていたシンジがいきなり立ち上がる。

「ち、ちょっと!シンジ君!何処に行くつもり?!」
「決まっているでしょう?!アスカ達を助けに行くんですっ!」
「ダメよっ!」
「何でですかっ!ミサトさんっ!あいつらは僕が行かないとだめなんですよっ!」

ミサトはシンジの腕をかろうじて取り、それ以上の進みを阻もうとしている。
シンジはシンジで、何とか腕を放し、早くケイジに行きたいと願っている。

「シンジ君のエヴァは修理中よっ!」
「そんなの関係ありませんっ!」
「とにかくダメよっ!」
「行かせてくださいっ!ミサトさんっ!」

業を煮やしたリツコが、彼ら二人の間にふさがりたつ。
そしてかけていた眼鏡を外し、

「シンジ君、あなたのエヴァは今は修理中。今出撃しても足手まといにしかならないわ」
「でも・・・・リツコさん・・・」

何とかおとなしくさせることが出来たリツコ。
しかし、まだ自分で出撃しようと模索している。

『心配すんなや、シンジ。わいが何とかするさかいに・・・』

「と、トウジ?!」

今まで沈黙を保ち、黙々とエヴァ参号機の発進準備に取りかかっていたトウジが口を開いた。

『今回はわいがいる。せやからそこでおとなしゅう、見とれや』

「でもトウジでも・・・・」

『分からんやっちゃなぁ・・・・今のシンジは足手まといにしかならん、リツコさんもゆうとるやろ?』

「・・・・分かった。おとなしくここで見ていることにするよ」

『そう、それでええんや』

納得されてか、シンジはブリッジでミサトの横に立つ。
しかし、その表情に安堵は見られない。

「心配ないわよ・・・あの娘たちならね・・・」
「ミサトさん・・・」

その表情を心配してか、ミサトがシンジに言葉をかけた。
これにより、シンジは幾ばくかの安堵感を得ることは出来たが、
それでも彼女たちが心配であったことに変わりはなかった。









「来たわね・・・・今度はこの前みたいには行かないわよ・・・」
「アスカ、ヒモみたいな奴には気をつけて。直接浸食しようとするから」
「レイもね。鳥は可視光線に気をつけて」
「成る程な・・・可視光線に直接浸食やな・・・・・分かったで」

3機のエヴァは、使徒との交戦距離にはいる。
続いて銃火器を構え、今まさに放とうとした瞬間、使徒の側もそれに応じ、交戦状態にはいる。

「ちっ・・・・速いっ!」

一瞬のうちにアルミサエルの触手は伸び、アスカの駆るニュー・エヴァ弐号機に浸食を計ろうとした。

「速い・・・でもっ!」

ガガガガガガガガガガガガ

パレットライフルWを縦横無尽に放つアスカ。
だが、使徒の側も一つとしてその弾丸を受けようとはしない。

「くぅっ!」

エヴァのブースターをリミットまでつり上げ、何とか回避に成功するアスカ。
使徒の触手が再度ニュー・エヴァ弐号機に迫り来る。

「はぁ・・・はぁ・・・・はぁ・・・・」

焦りの形相。
そしてかなりの危機感。
二つが相乗して彼女はかなりの汗をかいているに違いない。
エントリープラグ内のLCLのため、それは分からないが。

そしてレイの駆るニュー・エヴァ参号機側はというと、

「くぅっ!!」

アラエルが次々と可視光線をレイに浴びせようとしている。
レイもまた、受けようとはせず、必死に機体を動かして光線をかわす。
だが、その可視光線が少しでも機体に触れればたちまちレイは苦悶の表情を浮かべた。

「なにしとんのやっ!」

トウジもアスカ達の援護をしているが、何分使徒の動きについていけないでいる。
当然、E−BITの動きもちぐはぐだ。




「アスカ・・・・レイ・・・・・」

ブリッジにいるシンジ。
その瞳はメインスクリーンに映っている心を交わした人に向けられている。
そしてその心の中では、苦戦している三人への祈りに変わっていた。

「何とか・・・・・何とか無事に・・・・」

使徒殲滅と言うことは念頭にないのか、シンジは三人の無事のみを祈っていた。
これは、NERVにいる人全員が願っていることでもある。









「・・・・・アタシ・・・・」

くらい闇の中。
深淵とも言える場所。

「・・・・また・・・・なの?・・・」

その言葉は、彼女自身にある出来事を再確認させる。

「そう・・・・またこの世界なのね・・・」

「御名答。よく分かったね、アスカ」

「シンジ?!・・・・いえ・・・・使徒ね・・・・」

「ふむ・・・・君にはそうと見えるんだね・・・・・」

「ちょっと!何勝手にシンジの姿を盗っているのよっ!」

「君と話をするためにね。この姿を拝借したというわけさ」

「ふ・・・ん・・・・」

「君の記憶から一番親しい人間を象ったのだが・・・・違うかい?」

「いえ、それは間違いないわ。アタシにとってはシンジが一番親しい存在。それは違っていない」

「ならば良かった。この姿なら君とじっくり話が出来そうだ」

「・・・良いわ、何を話したらいいの?」

「簡単なことだよ。ただ・・・・・救って欲しい」

「救う?」

「君たちが使徒と呼んでいる存在。その全ては魂から来ている。知っているかい?」

「・・・どういうこと?」

「ゼーレでこの兵器を作るためにはね・・・・必ず人間が一人、必要なんだよ」

「それって・・・・」

「そう。君たちが使徒と呼んでいる兵器のコア・・・・核だね。ここには魂が封じられている」

「つまり・・・・元を正せば惑星ゼーレの人間・・・」

「そう・・・・」

「でもそれって・・・・・何で・・・・・」

「動力源なんだよ。コアは。その動力源、S2機関は人間の魂があって初めて機能するんだ・・・」

「それじゃあエヴァ初号機のS2機関は・・・」

「あぁ、あの紫色の兵器だね。あれは違う。あのS2機関には魂が入っていない。デジタル化した魂・・・・いわゆるフェイクがある」

「誰かの魂をデジタル化してそれを使っているの?」

「そう。惑星ゼーレでもそれは可能だった・・・・しかし・・・・」

「しかし?」

「絶対的な出力は格段に落ちる。これが理由だよ・・・」

「そうなの・・・・それじゃああなたは・・・」

「僕も惑星ゼーレに住む人間だった・・・・・・」

「でもどうやって・・・・・・」

「殺して欲しい。この姿でいるのは耐えられない」

「そんな・・・アタシには・・・そんなことを聞かされたらアタシにはできないじゃない・・・・」

「お願いだ・・・・殺して欲しい・・・そしてこれ以上のコアを作り出させないようにして欲しい・・・・」

「でも・・・・」

「君たちに願うしかないんだ・・・そして同胞であるカヲルに全てを託して欲しい・・・・」

「・・・・・」

「お願いだよ・・・・・僕らを・・・・・君たちが使徒と呼んでいるもの全てを・・・・・消滅させて欲しい・・・・」

「分かった・・・・分かったわ・・・・そこまでいうのなら・・・・・・・・・あなた達の願いどおりに・・・・」

「ありがどう・・・・・良かったよ、君に会うことが出来て・・・・」




アスカの視界は暗転する。
気づいたときは、全てが膠着していた。

「そう・・・・アンタ達の願い・・・アタシがかなえるわ・・・・」

膠着が溶けたとき、ニュー・エヴァ弐号機のフェイスガードが開き、ガードの下の4つの目に光が入る。

「レイ、鈴原・・・・やるわよ・・・今なら・・・・やれる!」
「えぇ!」
「わかったで!」

3機のエヴァがブースターを急加速させる。
それに伴い、使徒が動き出すかに見えたが、それはなかった。

『何?・・・・アスカに何があったって言うの・・・・・?』

ブリッジでは分かるまい。
一番近くにいたレイですら気づかないだろう。
アスカが使徒と心を交わしたなどとは。

そう、シンジでさえ気づくことは叶わない。

「アンタ達!苦しいでしょう!こんな姿に変えられて!」

ニュー・エヴァ弐号機のエントリープラグから絶叫が木霊する。
ブリッジではマヤがその変貌に、精神汚染と勘違いしてしまうほどであった。

「アタシが楽にしてあげるわっ!」

ニュー・エヴァ弐号機はプログレッシブブレード2を手に立ち回る。
アラエル、アルミサエルと共に、切り刻まれていく。

『暴走?!』

ミサトが勘違いする。
それほどまでに今のニュー・エヴァ弐号機は変貌していた。
しかし、事実は違う。

「この呪縛からっ!」

次々と刻まれていく使徒。
だが、それでも殲滅にいたら無いのはオリジナルのアラエルとアルミサエルだからであろうか。

「アタシが逃してあげるっ!」

ズシャ・・・・・

最後の一太刀。
一閃すると、ニュー・エヴァ弐号機から光があふれ出した。

『あれは・・・・何?・・・・・・・・弐号機にはあんな・・・・』

初号機には確認されている発光現象。
赤木リツコにも原因が分からない現象。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・アンタ達・・・・・これで・・・・良いのよね・・・・・・・」




「ありが・・・・・・とう・・・・・・・・・・・・・・・」













「アスカ・・・・一体何があったのかしら・・・・」
「私に聞かれても分からないわ。ただ確認されたのは使徒との接触が僅かにあったということ」
「えっ?!それじゃあ精神汚染?!」
「違うわ。精神汚染の兆候は見られていないわ」
「それじゃあ一体・・・・」
「アスカにしか分からないでしょう」
「それもそうね・・・・」

一様の安堵感を漂わせるNERVブリッジ。
アスカの大立ち回りからか、ミサトとリツコはアスカに疑念を抱いていたが、それも仕方がない事象であろう。

「さて・・・アタシはあの娘達を迎えに行って来るわ」
「えぇ。私は至急の整備、やっておかなくちゃ」
「お願いね・・・もう近いわ。目的地に」

そして再びNERVに喧噪がよみがえる。









「・・・・・で?」
「二体は離反し、殲滅と至った模様」
「ふむ・・・・刷り込みが少なかったか・・・」
「いえ。刷り込みは完璧です。魂自体がいけなかったのでは・・・・」
「そうだな。魂の刷り込みまでは叶わなかったか・・・・」
「そこで・・・・あれを差し向けている間に例のプロジェクトを完成させたいのですが」
「例の・・・・あぁ、『カヲル』の量産か」
「はい。オリジナルは刷り込めませんでしたので・・・・今回は・・・・」
「良かろう。やりたまえ」
「は・・・・」

惑星ゼーレにも危機が迫ろうとしている。
諸悪の権現は一人であるが、周りの人間まで被害が及ぶことは必至。
これもやむ終えない事象なのだろうか。









「パターン青!使徒ですっ!」
「パターン検索・・・・ゼルエルですっ!」
「くっ・・・こんな時にっ!」




To Be Continued



NEXT
ver.-1.00 1999_10/20
ご意見・ご感想は y-mick@japan-net.ne.jpまで!!
次回予告

惑星ゼーレを目にするシンジ達。
そこに、想像を絶する戦いがあることを、
彼らはまだ知らない。

次回、
NEW TYPE EVANGELION 第弐拾七話 ゼーレ

使徒との戦いが終焉となる・・・・・


あとがき

この話以降は全て続きとなります。
そのため、今回はいつもより短いです。
その分早くアップしようとは思いますが・・・どうなりますやら。

次回はゼルエル戦の再戦+αです。
次回まで、少々のお待ちを。





 Y-MICKさんの『NEW TYPE EVANGELION』第弐拾六話、公開です。







 あの大変だった使徒を
 あの大被害を受けた使徒を

 倒し〜♪


 シンジが出れないで
 ピンチって感じでしたが

 アスカが強くなって−−−

 大勝利〜



 いよいよいよいよ敵の本拠地に近づいて・・・

 まだまだまだまだ山があるでしょうけど、
 みんな無事に生きて欲しいッス〜






 さあ、訪問者の皆さん、
 続く Y-MICK さんに感想メールを送りましょう!







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