TOP 】 / 【 めぞん 】 / [Y-MICK]の部屋に戻る/ NEXT


「意識が・・・・遠くなっていく感じだ・・・・・」

俺はどこか・・・・そう、どこか分からないが、虚空をさまよっているようだ。

「自分が・・・広がっていく・・・・・感覚が・・・どこまでも広がっていく・・・・・心地よい・・・」

意識がなくなり始めた。
そうか・・・・
俺は・・・・俺は・・・・












死んだのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・



Neon Genesis Evangelion
Angels Battle Story


第7話 弱き魂を得た少年




悲しみに満ち満ちている。
まるで碇家だけに暗い、暗黒の瘴気が発生したように、悲しい。

「・・・・・・・・・・」

アスカは声を押し殺し・・・いや、既に声は枯れてしまっていても、
泣いていた。

「うう・・・・・うあああ・・・・・うあ・・・・」

一方、シャルの方は声を枯らすことも無く、泣いていた。




「アスカちゃん・・・シャルちゃん・・・」

3人、シンジ、アスカ、シャルの母親代わりであるユイは、
決して悲しいわけではなかった。

息子となったシンジを失い、なおかつ二人の娘は心を閉ざしかけている。
心を閉ざしかけている二人に対し、ユイはなす術を見出せないでいた。

無理も無い。
本来自身の子でない彼女らの心を再び開かせることなど、到底出来ないと思っているからだ。


そう、泣きたいのは彼女らだけではなかった。









場所を変えてここは組織の中枢に当たる場所。
組織の幹部、12人が顔をそろえて会談していた。

中心に「17th」通称「カヲル」を立たせて。

「貴様、1stに何をした」
「1stを消してしまえば我らの願いは永遠にかなわなくなる」
「貴様は危うく我らの意思に反しようとした」
「この償い、どう責任を取るつもりかな?」

「僕は責任を取るつもりなどありませんよ」

「17th、我らを裏切るというのか」

「裏切るだなんて・・・・僕は僕の信念、いや僕の中のものにしたがっただけです」

「貴様はただ我らの命令を遂行すればいい」
「我らの願いのためにな」
「貴様の意志などこの際関係ないのだ」
「それは我らの願いがかなったら考えれば良い話」
「左様、お前は我らの駒に過ぎぬのだよ」
「駒は駒らしく、操者の意思に従えば良い」
「貴様は我らの意思に反した。しばらくは謹慎するがいい」

「僕の意志・・・・自由になりたいという僕の意志は・・・叶えられないのか・・・」


カヲルを残して12枚のモノリスは消える。


「自由意志・・・・・・・か」


そしてカヲルも消えていった。










新世紀エヴァンゲリオン
天使戦記

No.07 Boy gets warm soul










暗い部屋。

無機質なものが支配する部屋。

散乱する部屋。

そして・・・・・・・・・・・・




すべてのものを拒絶しそうになっている・・・・・・・・・・




生まれて一番愛していた人物を失った・・・・・・・




自分の目の前で命の火が消える瞬間を見てしまった・・・・・・




少女、シャルがいた。


「・・・・・・・・・・・・・・・」


碇シンジという人物が消えてしまって一週間。
彼の遺体は無かった。
エンジェルであるが故、死は消滅と同義である。
即ち、他のエンジェルと同様、LCLと化して消えてしまった。

葬儀を行ったが、形だけのものである。
墓を作ったが、型だけのものである。


「・・・・・・・・・・・お兄ちゃん・・・・」

シャルは時々、本当に時々つぶやく程度になってしまった。

元来あった艶やかな黒髪は色褪せていた。
奇麗な赤色の瞳は色を失っていた。
白い、陶磁器のような肌は汚れつつあった。

彼女は既に一週間、何も食べず、何も飲まず、何もしようとはしなかった。
ただ、部屋でうずくまっている状態が続いていた。

時々ユイが様子を見にきても、何も効果はなかった。
ゲンドウが様子を見に来たときもあった。
クラスメイトが様子を見に来たときは部屋にすら入れなかった。

彼女は自身のATフィールドですべてに拒絶していた。


残っているものは部屋の片隅で膝を抱えて泣いている少女だけだった。


「・・・・・お兄ちゃん・・・・・・・・」


昼夜を問わず、独り言が聞こえていた。








「・・・・・・・・シンジ・・・・・・・」


ここにも悲しみを背負った少女が一人。


「・・・・・いや・・・・・いや・・・・・・・・」


少女は町を徘徊する。

悲しみを忘れたいがため、悲しみを消し去りたいがため。

だが少女の悲しみは消えることはない。


きっかけが一目ぼれであっても、一度は好きに・・・・愛した人だった。
それが目の前で崩れ去った。
目の前で消えていくのを見てしまった。

彼女はそれから・・・・・・声を張り上げて泣いた。

しかし、いつしかその声も出なくなってしまった。
悲しみが癒えたのではなく、逆に悲しみに浸かってしまった。
悲しみが悲しみを呼び、更なる悲しみを呼んでしまった。

そして・・・・・・・

彼女は家を出た。

3日前のことだった。


「シンジぃ・・・・・シンジぃ・・・・・・・」


瞳の蒼を失った少女、アスカは街を・・・・・繁華街を徘徊する。
昼も、夜もさまよった。
さまよい続けた。




気がつくと、アスカは高台にきていた。


「アタシ・・・いっそのこと死んじゃおうかなぁ・・・」


シンジを失った今、アスカは心の拠り所を見出せないでいる。
14歳のアスカにとって、両親よりもシンジの方が大切であった。


「シンジのいないこの世界なんて・・・・」


既に14歳の言うべき言葉ではなくなってきてしまっている。
これは大人から聞いたこと、テレビから得たことに依存してしまった結果であるかもしれない。
心理状態は、最悪であった。




そして本能・・・いや、心の赴くままにアスカは危険回避のための柵を乗り越える。


ヒュ〜〜〜・・・・


一陣の風が舞う。
風になびき、艶を失っている栗色の髪が乱れる。

そしてアスカはこの風に乗って行こうと考えた。


だが、




『だめだ・・・そうしてしまっては俺のやってきた事の意味がない』




「!!!!」


アスカは一瞬、幻影を見た。
そう、現在の最愛の他人、シンジの幻影を。

だが、所詮幻。
アスカの幻想、心の奥にあるかもしれない枷がそうしたのかもしれない。

それでも今のアスカにとっては十分なものであった。
アスカが自身を取り戻すためには。

もっとも、それですべてが解決したわけではない。
最悪のことを回避したに過ぎないのだ。
最悪の、そして最終の選択である”シ”を。




「シンジ・・・・あんたはアタシに生きろって言うの・・・・」


アスカは高台の崖から、草原へと移動していた。
シンジの幻影を見て崖が恐くなったためである。
人間の高所に対する恐怖の本能が働いたからであった。


「あんたは生きろという・・・・でもアタシは・・・・」


アスカはまだシンジを失った悲しみが癒えないでいる。
やはりこの悲しみを癒せるのは・・・・・・









「所長、例のものですが・・・・・」
「どのくらい完成した?赤木博士」
「はい、60%と言った所です」
「完成予定日時は?」
「おそらく・・・いえ、後一ヶ月待っていただければ」
「そうか・・・・それから”適格者”はどうだ?」
「問題ありません・・・が、今は駄目です。心が空っぽになってしまっています」
「やはりな・・・・完成しても乗り手が・・・”適格者”がいなければ意味が無い」
「えぇ、彼女には立ち直ってもらわなければ・・・」
「時間が・・・・時間が解決してくれれば良いのだが・・・・」


暗い部屋。
しかし一個所にスポットライトが当たっている。
さらに無数のコンピュータ。
部屋はコンピュータの冷却ファンと、ハードディスクのカリカリという音がするだけである。

自動で何かプログラムを動かしているのか、ピック音も時々耳にする。

そのような部屋の中に、髭を生やした中年の男性と、
髪を金色に染めた若い女性がスポットライトの一点を見ている。

視線の先には2mほどの赤い物体が佇んでいた。

物体は無機質である。
有機質はかけらも感じられない。
だが、今にも動き出しそうな感覚を科学者−赤木リツコ−は感じられずにいた。


「私は・・・・何故これを作ってしまったのかな・・・・」
「人間はロジックじゃありませんから」
「?・・・どういう意味かね?」
「人間は機械と違って無駄なことをしますわ」
「そうか・・・・機械は無駄なことはしない・・・・か」
「えぇ・・・・でもそれが人間の魅力でもあるのでしょうけど・・・・」


リツコはそう語り、中年の男性の腕を取る。
すると、


「すまない、リツコ君。私には・・・・」
「分かってますわ。あなたにはユイさんがいること。でも・・・・今だけは・・・」
「・・・・・・・・」


十代の恋といってもいいだろう、その行為。
してはならないことであることは両人とも分かっていた。
だが、やってしまうこともまた、あるのだ。


その行為をスポットライトを浴びているものは見ていた。
無機質でも・・・・いや、無機質であるが故・・・・・









シンジの死んだ場所。


シンジがLCLと化した場所。


その空間は、一種、異様な雰囲気を出していた。


歪んでいるような、またはオーラが立ちこめているとでも言えばよいだろうか。
とにかく今までになかった空気にさらされていた。




『体が・・・・動かない・・・・』

「言っただろう・・・・”僕”にも日の目を見せて欲しいって・・・」

『だが・・・俺には待っている人が・・・・』

「心配しないで。”僕”の分身。君は少し休むと良いよ。疲れたんだろ?」

『あぁ、疲れた。だが・・・・心残りも・・・・』

「君の意志に沿わないことはしないよ」

『頼む。だが・・・・俺の力が・・・・』

「うん、必要なときは呼ぶね。お願いするよ」

『そうか・・・・これで安心して眠れる・・・・頼むぞ・・・・・・・・・”シンジ”』

「君の心は受け取ったよ。”僕”にね、だから安心して。みんな・・・守るから」




『俺の今残されし最後の力。力が癒えるまで使えない力。今、このときに』




全ての再生を司るエンジェル、リリス




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




LCLの中から・・・・・・・・・・・・・・




少年が現れた。






NEXT
ver.-1.00 1999_01/16
ご意見・ご感想・「なんですのん?」等は y-mick@navi.or.jpまで!!

次回予告

弱き心、暖かき心を纏い、現れた少年。
温もりが光を失ったものに生を与える。
今、復活、新生、再生が始まる・・・・・
争いと共に。

次回
Neon Genesis Evangelion Angels Battle Story
第8話 光を纏った少女、温もりを与える少年


あとがき

・・・・・・遅かったなぁ・・・・・・・・・・・(爆)
何せ仕事が忙しすぎて・・・・・・・
書く暇なんでありゃしない。
頭の中でプロットは出来ていても、いざ文字にすると出来ない・・・
なーんて日が続いていたのです(^^;;;
それもこれも・・・・ストックという考え方がいけないのか?(笑)
ぢつはこれを書いている時点で、前話は公開されてません(爆)
この連載に関しては一応ストックもっときたいんで(^^;;;

#その計算だと、これが公開されるときは次話が書けていると言うことか?(爆)

一週間で一話出来なければいけないと言う考え方があった頃が懐かしい・・・(爆)
さて・・・・次はもう一つの方を完成させようかな(木亥火暴)







 Y-MICKさんの『Neon Genesis Evangelion Angels Battle Story』第7話、公開です。





 シンジが死んじゃって、
 あちらでもこちらでも−−

 大変です。。



 組織それぞれも大騒ぎだけど、

 やっぱり、ね、こっちだよね、、
 女の子達。


 周りのフォローをっ て言っても無理かな−
 でもでも、
 シンジがなんかありそうだし−−

 どうにかなるよね?
 どうにかなってちょうだい。。




 さあ、訪問者のみなさん。
 ストック万全(爆)のY-MICKさんに感想メールを送りましょう!




TOP 】 / 【 めぞん 】 / [Y-MICK]の部屋に戻る