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その顔に、以前の美しさは感じられず土気色の死の色が覆っていた。

その青い瞳は何を思うでもなく、窓の外の樹をみている。

四季を失い、その存在を失いかけた大木。

「私と、同じね。」

彼女は色褪せた金髪の髪をその、力を失った大木の枝のような手で弄びながら呟いた。

かつて太陽のようだと賞された彼女はいま、少しづつ消えていこうとしていた。

落日の美しさを伴うことない、静かな消滅。

「全てをなくした私には、ぴったりの終わりかたなのね。」

すでに出ないと思っていた涙が一滴あふれる。

窓の外の大樹が、霞んでみえてきていた。

「もう、誰もここには来てくれない。

私は、一人で死ぬのはいや!。」

 

 

 

彼女が、悲しみと絶望にさいなまされてさらに死に落ちていしているとき、

同じように、彼女の病室の前の大樹もまた、死を迎えていた。

ゆっくりとした、緩慢な死。

それは、まるで彼女とともに忘れられた存在としての悲しさをたたえていた。

 

 

 

 

 

「いや!、こんなの私じゃない!!。」

アスカは、そう叫んで壁を叩いた。

 

 

 

First Contact番外編。

 

STAR TREK

真心を君に。

 

 

 

「ふぁーすとおぉ!!、じゃない、レイ!!、なによこれは!!。」

アスカは今にもぶん殴りそうな剣幕でレイに突っかかっていった。

「え、三人の男女の美しい友情物って聞いたわ。」

レイは、アスカの剣幕に驚きつつ、自らの選んだシナリオを簡潔に説明した。

「コンピューター、プログラム停止。」

二人の様子を見てデイタは、ホロデッキのプログラムを停止させた。

「レイ!、いったいなんでこんな話を選らんだのよ!!。」

アスカは、自分の役どころの悪さに腹を立てたようである。

「はやっている小説からなんだけど。」

努めて冷静を装うレイだが、さすがにアスカの様子になにかが違っていた事に気づく。

「それってなに?、まさか…。」

「ええ、愛と死の断章よ。」

なにかまずいの?、と言いたそうなニュアンスのレイの口調にアスカは怒る気力も

瞬時に失せてしまった。

「あんたねー、それって…。」

レイが言った小説の名を聞いてその脱力感は、さらに倍増したようである。

「なんですか?、その小説は。」

デイタが、その始めて聞く小説のタイトルに興味を示してアスカに聞いた。

「ただの、ごみくずよ!!!。」

説明するのも面倒くさいと言わんばかりに答える。

「もう、ただ単に昔のくさいメロドラマを適当に繋ぎ合わせただけのしょうもない

小説よ!!、大体何だってそんなもの読んでるのよあんたは!!。」

と、デイタに説明する勢いにまかせてレイに食って掛かる。

 

いったい何が原因で三人はホロデッキにいるのか?。

その発端は、シンジの不在からはじまった。

 

 

「ウォーフ少佐、僕に戦い方を教えてください。」

「なに!?。」

シンジは、ウォーフにクリンゴンの武術の指導を願った。

その結果、彼は数時間あまり船室に戻ることはなかった。

そして、取り残された二人。

「ああ、もう、ばかシンジはどこにいってるのよ!。」

アスカが、不機嫌そうに隣のレイに話し掛けた事から始まった。

「わからないわ、けど。」

レイの次の言葉を聞こうとレイの顔を覗き込む。

「けど?。」

先を促すアスカ。

「けど…。」

「…。」

次の言葉がでてこないレイに対しアスカは呆れ顔に言う。

「ファ、じゃない、レイ、そういう時はねー、なんかおごらせるとか、せめて

口きいてやんないとか、そう言うもんよ。」

「そうなの?。」

「そうよ!。」

アスカは、さっきまでの不機嫌はどこへやら、レイにこういう時の手順を伝授しはじめた。

が、レイは学校に通っているとはいえ人とのつながりをほとんどもつ事はなかった。

と、言うよりも人との接触を避けていたのかもしれなかった。

言葉で説明しても、中々理解できる事ではない。

「ああ、もうあんたってばどういう生活してたのよ!!。」

アスカは、その言葉を出した時しまったと思った。

「あ、ごめん…。」

昼間に、レイ自らが見せた事実のことがあるのに軽はずみだったと反省した時

「大丈夫よアスカ、あなたは私を受入てくれてるもの。」

と、言われたもののアスカにとっては気まずい事に相違無い事は確かである。

「そうよ!、練習しましょう!!。」

その気まずさを隠すために必要以上に大きな声で提案するアスカ。

「れ、練習?。」

その、突拍子もない提案に必要以上に感情的に答えるレイ。

「そうよ!、練習よ。

そして、二人であのばぁかシンジに目に物見せてやるのよ!!。」

「そ、そうなの?。」

「そうよ!!。」

場当たり的にシンジを仮想敵として二人はその場の雰囲気を盛り返した。

だが、いったい何をみせるというのだろうか?。

 

 

と、言う事で彼女達は行動を開始した。

練習といきまいてみたものの、アスカもまさか自室でそんなことやる気はなかった。

なにせ、シンジが帰ってきたときに恥ずかしいというのが二人の一致した意見であった。

もっともレイがそういう事をはっきり認識している訳ではなかったのでアスカが代弁した

というか、こじつけたと言う方が正しいだろう。

「やはり、デイタさんに相談しましょう。」

「そうね、それしかないわね。」

特にいい案もでなかったのでアスカもその意見に賛同する。

 

 

「では、デイタ、君の用件は?。」

ピカードは、その言葉を出してからデイタの質問の内容を聞き、笑いをかみ殺すために

必要以上に、厳しい顔をするはめになった。

「つまり、感情をもって一年経つか経たないかの自分が綾波君の行動に意見を出して

いいものかどうか迷っていると言うのだな?。」

「そうです、艦長。

正直に申しまして、私は綾波レイ個人の感情の持ち場までは答えられません。」

「それは、無理に答えなくてもよいだろう、デイタ。」

ピカードは、にやけてくる顔を隠すためにデイタに背をむける。

無論、窓にうつる事も考慮して壁の方をむく。

ピカードはデイタが質問攻めにあって困っていると言うことが実におかしかった。

だが、助言はあたえてやらなければならない。

「いいか、デイタ。

君が感情を持ってから、今に至るまでそれこそ無数の経験をした。

そのことが、彼女の助けになる。

また、彼女を助けることで君自身もまた新たな事を知ることになる。

もしかしたら、彼女が君のこれから先の経験についての助けになるかもしれない。

お互いに、経験をつみ合うことでさらに世界が広がるだろう。」

ピカードはそう言うとデイタの答えをまった。

「わかりました、艦長。」

そう答えたデイタは、艦長控え室を後にした。

ピカードはデイタが何か勘違いをしていなければいいが、と思わずにはいられなかった。

 

 

 

そして、三人はこの艦内一広いホロデッキで練習という名の劇を行うことになった。

デイタの名目は、アドバイザーなので劇に参加する予定はなかった。

が、レイの選んだ本。

往年のハーレクインロマンスや、昼メロやら何やらを適当にくっつけただけでは空足らず

SF的要素を加えて、もはや支離滅裂寸前の小説、だが主婦から高校生までに浸透して

しまった小説を選び、配役が内容を覚えるためにホログラムで再生された内容の半分も

いかない所で、アスカは怒ってしまったのだ。

「まったく、こんな内容も落ちもすかすか、過激な言動と耽美主義と超常現象でその場を

しのいでるような話をえらぶなんて何考えてるのよあんたは!。」

言葉の過激さのわりに情けない声を出している。

「ですが、惣流さん、貴方も存じているようですが?。」

デイタがなにげなく聞いた。

が、聞かれた方にしてみれば鋭い突っ込みであろう。

「わ、悪い?、ひ、ヒカリが見せてきたのよ。」

「読んだのね?。」

レイに図星を突かれるるアスカ。

「う、す、少し。」

「ですが、この内容ではたしかに練習というのは無理があるでしょう。」

二人が話してる間にデイタは持ち込まれていたその本を読み終えてそう結論をだした。

「なによ?,いつの間に読んだのよ!。」

とはいえ、アンドロイドのやることならこれくらいは朝飯前ということだが。

「今です。」

デイタは、それでも律義に答える。

「そうね、じゃあコンピューター、プログラムレイ02起動。」

そして、デッキ内に新たな世界が投影された。

 

 

 

「もういいわ、レイ。」

疲れきった顔でアスカがそう言う。

「そう、コンピューター、プログラムレイ45停止。」

そう言うと、次のプログラムを起動させようとした。

「まって、レイ。」

「なんで?。」

「次は、どんな話をベースにしたの?。」

アスカは、レイに対してなにか参考になるような本か映画でも持っていきなさい、

と言った事を少々、いやかなり後悔していた。

よく考えれば、レイはまともな環境で育っていない。

当然、普通に出版、あるいは上映、放送されているものを見る機会も少ない。

もしかしたら、全然無いかもしれなかった。

「放浪の剣士が愛した強い女剣士が死んでしまって、それを蘇らせるためにお姫様…。」

「あのばかが、放浪の剣士って感じぃ?。」

「それは、コナンシリーズですね。

何処でみたのですか?。」

デイタが、レイには似つかわしくない話をえらんだので珍しくレイに質問した。

「学校の図書室で相田君が面白いぞって言って碇君に進めていたから。」

「あの、馬鹿…。」

アスカの来る少し前の話らしく記憶にはなかった。

「コンピューター、私の顔に目の幅涙を流して。」

冗談でいったが、コンピューターはけなげにもアスカの顔に目の幅涙を投射した。

「う、ほんとうにやるとは。」

その、概念はレイのプログラムの28番めにあった。

かれこれもう2時間になろうとしていた。

その間、レイの選んだものは時代がかっていたり、妙にホラーだったりであった。

もともと、さまざまな本を読んでいたレイであるがここまで乱読しているとは

思わなかった。

「レイ、あんたなんでこんなに一貫性のない本の読み方してるの。」

レイの方をむいて聞いた。

「アスカ、まだ涙が投影されてる。」

「あ、コンピューターもういいわ!!。」

めちゃくちゃ格好わるい気分になっているアスカの顔には本当に縦線が入っていそうだ。

「さ、さっきの質問に答えて。」

「私には、エヴァしかなかったから。」

「でも…。」

「だから、いろいろな事をしりたかったのかもしれない。」

その答えを聞いていたデイタがおもむろに口を開いた。

「つまり貴方は、本を読むことによって自分の人間としての意義を見出そうとした。

そういことですね。」

「ええ、そうかもしれない。」

「でも、それでは本当に人の感情などを知る事はできない。」

「必要なかったから。」

「今は?。」

今度はアスカが聞いた。

「今は、人の心と感情をもっと知りたい。

もっと、判るようになりたい。」

「では、このような事をして人の心や感情の模倣をするよりも、貴方自身の今の気持ちや

感情を大事にして行動することがいいのではないでしょうか?。」

「でも、…」

「あなたの気持ちは私にはよくわかります。」

そこでデイタは一呼吸おいた。

「私も昔、人の行動の真似をすることで人間に近づこうとしました。

ですが、それは人の真似であって私自身の行動ではなかったのです。

私は、その後人のまねではなく自分の思考推論でその場にあった言動をとるように

してきました。

今は、感情チップがはいっています。

それによって、今迄判らなかった事も理解できるようになりました。」

「じゃあ、教えてください、デイタさん。」

「それは、不可能です。」

レイは、その答えを聞き落胆する。

「なぜなら、貴方と私では経験がまるっきりちがいます。

私の経験では貴方の役にはほとんど立たないでしょう。

ですが、貴方は最初から人間でした。

私のように、アンドロイドではありません。

一つおしえてあげられるとすれば、貴方の持っている真の心を素直に接する方がいいと

私は思います。

今は、まだ不完全な感情しかでないとしても、それが貴方自身の魅力なのですから。」

「わたしの、真の心。」

レイは、デイタの言葉をかみ締めるように呟いた。

「今は、まだよく分からないわ。」

「いつか、わかるようになるでしょう、君ならば。」

デイタはその金色の瞳でレイをしっかりと勇気づけるように見つめて答えた。

「ありがとう、デイタさん。」

「こちらこそありがとう、綾波さん。」

「なんで、お礼を言うの?。」

「貴方が私に質問をしてくれたおかげで私は改めて自分自身を別の角度で見つめ返す

機会がありました。

その機会を与えてくれた事に対してです。」

「そう、えっと、どういたしまして。」

少し照れくさそうに答えるレイ。

「さ、今日はもう終わりにしましょう。

碇シンジ君も戻っているかもしれないですからね。」

「はい。」

アスカとレイは二人して素直な返事をかえした。

「コンピューター、プログラムレイを全て消去。」

レイがコンピューターに指示を出す。

『プログラムレイを全て消去しました。』

少し間をおいてからコンピューターは指示を実行したことを告げた。

「なんか、シンジへの対応を練習するとかいってたけど大変なことになっちゃったわね。

わるかっったわね、レイ。」

アスカが、レイに申し訳なさそうに言う。

「いいの、おかげでわかったこともあるから。」

そして、三人は思い思いの答えの断片を胸にホロデッキのドアを力強く越えていった。

 

 

 


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ver.-1.00 1998+04/15公開

ご意見・ご感想は

第135宇宙基地まで!!


あれぇ?。

なによ、電波中年。

いやー、なんか最初の予定と違ってギャグになっていない。

まいったな。

ギャグにするつもりだったんですか?。

うん、ホロデッキどたばたものにするつもりだったんだけどなんで

こーなったんだろう?。

だぁから、電波中年だってゆうのよ。

そう言われても仕方ないかも。

でも、ギャグの予定がこうなったのにはなんか心境の変化とかあるんじゃないんですか?。

ないよ。

また、あっさり言うわねー、本編ほっといてサイドストーリー創ってなにやってんだか。

本編もすぐ復帰しますよ、でもエピソードが丸々没になったのがあるけど。

なによ、それ?。

いや、量子魚雷がブラックホール弾頭でなくなったんでブラックホールを応用されて

エンタープライズがディラックの海に引きずり込まれるって奴がね、丸々没。

じゃあ、アタシたちが危機に陥る事が一つへったって事ね。

いやー、そうなるのかなぁ。

そうしなさい!!。





 SOUさんの『STAR TREK』、公開です。



 ぐぁぁ・・

 焦る始まり方だった(^^;


 オフラインで暗い最近・・・・
 せめて明るい物を読みたい気持ちなんですよぉぉ


 「暗い世相の時には明るい曲が流行る」
  なんて今は言わないかな?(^^;


 今日は私の誕生日。
 色々いい事もあるので、グッと気持ちを引き締めて!

 −−−ホロデッキだったのね(爆)



 感情を持って1年のデータと
 感情を意識しはじめたレイ。



 二人の間で、アスカも含めてで

 少しずつ掴んでいくレイちゃんが可愛いですね。




 さあ、訪問者の皆さん。
 私をびびらしたSOUさんに感想メールを送りましょう!



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