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『航星日誌補足

すでに、我々が初めてこの世界に現れてからかなりの日数がたっている。

現状を把握するためにも、人型機動兵器パイロットの子ども達に

接触をするために、このパラレルワールドの地球に上陸を行う事にした。

上陸班のメンバーは、ドクター、カウンセラー、デイタ、そして、艦長である

私自身の計4名である。』

「デイタ、なあぁに?、その格好は。」

トロイの驚いた声に振り返った全員に対してデイタは心外だとでも言う顔を

して応えた。

「機械の部分を隠す為には最良かと思ったのですが…。」

顔の左半分を殆ど包帯で隠し、右手をやはり包帯でぐるぐる巻きにしている。

そして、服装はこの時代の夏の服をきている。

「いや、そんなにおかしくはないぞデイタ。」

と、おかしそうに言う。

「そうね、なんか病院を抜け出してきたって感じね。」

ビバリーは、脱走兵と言いたかったがやめた。

デイタは、困った顔をして

「変えてきましょうか?。」

といったが結局時間がないと言う事でそのまま降下することになった。

全員が転送パッドに立ち、一瞬目の前が光に変わったかと思うと

高層ビルを見下ろす、ひときわ高い位置にある公園に立っていた。

この時間だと、通勤や通学の人たちに出くわす危険があるため街の中心部から

かなり離れたこの場所へ転送降下してきたのだ。

「さて、街にむかうか。」

ピカードは、日本の冬がこんなに暑いのなら故郷フランスはどうなっているのだろう

と、考えながら第三新東京市の中心部に向かって歩きはじめた。

 

「ピカードよりエンタープライズ。」

「こちら、エンタープライズです。」

「子ども達はどんな様子だ?、ライカー。」

「シンジとアスカは、二人一緒に家をでました。アスカは車椅子に乗っています。

レイは、一人で彼らよりおよそ15分早く家をでました。

それより艦長、急場しのぎとはいえそのコミュニケータはどうですか?。」

ピカード達は地上に降りる際、通信機とトリコーダーを一体化させたコミュニケータを

作った。

その形はこの時代に最もポピュラーな携帯電話に似せて。

「なかなかいいぞ、ナンバーワン。」

「そうですか、ジョーディも喜ぶでしょう。」

「では、また後で連絡する、以上だ。」

 

「艦長はご満悦だな。」

ライカーは新しいおもちゃを貰って喜ぶ子どもを見る心境でウォーフに

語り掛けた。

「しかし、保安部員の一人も付けずに行くとは、危険ではありませんか?。」

「まぁ、大丈夫だろう。

この時代なら、見知らぬ外人のグループなんて誰も気にしないさ。」

しかし、この街には見知らぬ外人のグループなど滅多に来なかった。

 

 



第3章 守護神協奏曲 PARTU

 

 

 

その、暗黒の部屋で赤木リツコはモノリス達に囲まれていた。

その裸身を彼らゼーレの前に晒しながらも、彼女は毅然とした態度を

崩さなかった。

「なぜ、そこまで碇に義理立てする。」

「左様、碇は君をパイロット達の身代わりとして差し出したのだぞ。」

「こんな時にパイロットが3名とも居なくてなっては緊急時に対応できませんし、

弐号機パイロットは負傷中、零号機パイロットは検査を要します。

そのため、初号機パイロットもはずせません。」

嘘、というか偽の情報ではあるがリツコはすでに何時間も同じ答えを口にしている。

まったく、裸で相手が見えないなんて、三流の覗き部屋かちゃちなSMショーね。

心の中で呟く。

「なぜだ?、碇に捨てられたというのにまだその様な事を。」

「もういい、下がっていい。」

モノリス達はあきらめて消えていった。

もし、誰か一人と引き換えだったら私はもっとあの人を恨んだでしょうね。

でも、3人との引き換えならまだ慰めにもなるわ。

そう考えながら、光の中へ戻っていった。

 

 

 

「アスカ、苦しくない?。」

「大丈夫、平気よ。」

アスカの車椅子を押すシンジの姿は、同じ学校の人間だけでなく多くの人に見られていた。

女性の目にはその姿はけなげに見え、彼の人気を上昇させる事になるが、一部の男性、

特に、同学年の目には嫉妬の混ざった、一種怒りにもにた感情が渦巻いていた。

シンジはその視線に気づきはしたが、まだ大して気にも留めていなかった。

「よ、シンジ。」

「おはよう、ケンスケ。」

「大丈夫なのか?、惣流。」

「相田に心配される程落ちぶれてないわよ。」

幾分普段より元気のない声ではあったがケンスケはこれなら平気だなと苦笑をもらした。

教室内でふと、レイがこちらを見ている事に気づいて目をやったが珍しくレイの方が自ら

目をそらした。

心残りをかんじさせながら。

アスカを席につかせようとした時、

「なんだ、碇!

こんどは、惣流を殺そうとしたのか。」

毒を含んだ言葉が教室の入り口から飛んできた。

「え?。」

全員がそちらの方をみた。

隣のクラスの人間だろうか、シンジの見慣れない人物が入って来るところだった。

その人物はシンジ達の目の前にくるとシンジを睨み付けるように立ちはだかった。

シンジより15cmは高いであろうその身長から見下ろす様に言葉を続ける。

「鈴原に続いて惣流にまで手を下すとはあきれた男だね。」

と、どう贔屓目にみてもそれは嫉妬であると言い切れた。

「そうじゃないよ。」

ゆっくりと、静かに、それでいて力強く答えるシンジ。

「へ、どうだかな、鈴原だっておまえの手で酷い目にあってるんだぜ?。」

「ワイがどうしたって?。」

振り向くと、そこに洞木ヒカリに付き添われて立つ鈴原トウジ本人が相手を睨みつけ

立っていた。

「ワシが怪我したんは、ワシのミスや。

シンジは関係あらへん、もし責任問うんやったら検査の甘かったネルフとちゃうんか?。」未だ、松葉杖であるが失われた片足の部分には形だけの義足が今はついている。

「そんなになっても庇うなんてな!、金でももらってるのかよ!。

碇はおまえらに取って疫病神どこじゃねぇ、死神なんじゃねえのか。」

パッシーン。

乾いた、よく響く音が教室内に響いた。

「な、なにすんだ。」

そこには、紅の瞳に憤りを燃やした綾波レイがいた。

「あなたなんかになにが分かるのよ。

なにも知らないくせにわめき散らして、何様のつもり?。

碇くんの事なにも知らないくせに、どうしてそんな事がいえるの!。」

殴ったのがレイであると言う事でも周囲の驚きは半端なものではなかった。

そして、そのレイが感情を露わにあいてに怒りをぶつけている。

教室内は水を打った様に静かになっていた。

「初めて碇くんがエヴァに乗った時だって、怪我をしていたわたしの変わりに

なんの訓練も受けていないのに、一生懸命戦って…。」

その中をレイは、相手に自分の感情をぶつけていた。

「なんの装備もなしに惣流さんを助けるために火口に飛び込んで…。」

レイは相手に対しさらに一歩つめる。

相手が、さらに腰をひく。

「もう、エヴァに乗らないってきめたのにみんなの為にまた乗って、私や惣流さんの

ために一生懸命に戦った、そんな碇くんにあなたは…。」

最後は言葉にならなかったがその瞳は、刺すように相手を射抜く。

レイは一呼吸おいてから、

「たとえ、あなたにとって碇くんが死神でも私達にとっては危ない時に守ってくれる

大事な仲間よ、たとえ碇くんが惣流さんといつもいっしょでも、私にとって、私たちに

とって碇くんは大事な人よ、これ以上二人を傷つけるのは私が許さない。」

感情が、抑えられない。

あなたは死なないわ、私が守るもの。

あの時自分が言った言葉がよぎる。

「私たちには守護神よ!。」

そう一気に言い切った。

「くそっ、い、碇どうやって手懐けたんだ!。」

形勢が不利なので攻撃の矛先を変えようとしたが少々声が上ずっていたのでは、

まるで効果がなかった。

が、その一言はさらにレイの怒りに火をつけた。

「私が決めた事よ!!。」

バシンという音とともにレイの一撃をまた受けたかれは無様に床にたおれていた。

そのまま、レイは外に駆け出していってしまった。

その場にいた全員がおそらく初めて感情を爆発させたレイを見ていた。

過去一度もそんな事の無かったレイが感情を露わにああまで言いきったのだ。

「綾波のやつ、最後のは拳でなぐったぞ。」

ケンスケが驚いてつぶやいた。

「ほんと、普段ならアスカのやりそうな事なのに…。」

ヒカリが思わず呟く。

「アタシだって腹がたったわよ…。」

アスカがヒカリの言葉に対してなのか小さい声で呟いた。

怪我をしてる身が歯がゆい。

 

「ええか、次に変ないいがかりつけてみい、今度は綾波やない、わしがオンドレ

いてこましたる。」

トウジが起き上がろうとした所を、首筋に松葉杖の先端を押し付け低い、ドスの効いた

声でだめをおした。

喉仏がごりごりといっている。

騒ぎの元はこの教室からほうほうのていで逃げ出していった。

 

「シンジ、ファーストを追うわよ!。」

「でも、アスカは…。」

「ばかね、私も連れていきなさい。」

アスカは、自分でもよく判らないが一緒に追いかける気になっていた。

多分、あんな酷い事をいったのに自分も仲間と見ていてくれた事に対してかもしれない。

そう思ったからこそ、シンジと一緒にレイを追おうとしているのだと半ば気づいてはいた。「ヒカリ!、アタシたちは早退よっ。」

声は大きくなかったが周囲いよく通る声で言うとシンジを急き立てて外に出ていった。

「アスカ、自分じゃあるけないでしょうに…。」

呆れながらもサボりを公然と認めるヒカリであった。

「シンジもたいへんやな。」

車椅子を押していかねばならないのだから。

そして、教室ではその影で、

「さっきの話しを裏付ける映像があるんだけど…。」

非合法に近い手段で手に入れた先の戦いの後の映像を端末で見せ商売にはしる

バイヤー相田ケンスケがいた。

 

 

 

「艦長、レイを筆頭にシンジ、アスカの3名とも学校から飛び出してきました。」

「なんだと、ウィル、非常自体か?。」

副長からの緊急通信に、またしても敵性生命体の襲撃かと思ったがそれにしてはやけに

静かである。

「いえ、そのような気配はありません。」

ウォーフの声が後に続いた。

「艦長、レイは湖の側の公園に向かいました。

シンジとアスカは、こちらは車椅子を押している事もあってかおよそ15分の遅れで

同位置に向かっています。

どうやら、学校内でなにかあったみたいですね。」

かなりの高倍率でみているため、ベータゾイドでなくとも様子からなにかあったと

分かる。

「そうか、わかった、一寸まっててくれ。」

「どうしたの?、ジャン・ルーク?。」

「予定変更だ、ビバリー。

デイタ、君とディアナとでレイと接触してくれ。

私と、ビバリーでシンジとアスカにあう。」

「なにが起きたのでしょう。」

デイタの疑問には答えようがない。

「会えばわかるだろう。」

そう答えて再度エンタープライズに通信を送る。

「エンタープライズ、デイタとディアナを先に目的地の公園に転送しておいてくれ。」

「わかりました。」

そして路地裏に隠れた二人の転送を確認すると、ピカードとビバリーはシンジ達を追って

あるきだした。

 

 

 

「第三新東京市内にエネルギー反応、あれ?消えました。」

日向は一瞬現れそしてすぐ消えた反応に危機感を感じたが、その反応がもう現れない

ので誤報とはんだんした。

「センサーの故障かもしれません。」

「やれやれ、すぐに調査班をだしておけ。」

冬月副司令の指示により調査班が出動したが、結局手ぶらでかえってきた。

 

 

 

 

わたし、どうしてしまったの?。

レイは、公園に向かいながら自問自答を繰り返していた。

その後ろを黒塗りの車が、密かにつけてきていたがなんの前触れも無しに前輪が二つとも

破裂してしまった。

 

 

「ファーストったら、どうすればこんなに速くはしれるのよ!。」

車椅子の上から悪態をつくアスカ。

「アスカ、自分で走ってないんだから文句いえないよ。」

つい口を滑らして一瞬身をこわばらせるシンジだったが

「幾らあたしでも、この怪我であんたを殴れるわけないでしょ。」

というもっともな意見を聞き、またひたすら目的地に向かって進んでいった。

「ファースト…。」

レイとの距離が中々縮まない事に苛立ちながら、アスカは呟いた。

 

 

「ジャン・ルーク、いたわ。」

ビバリーが二人を見つけて指差した。

だが、ピカードはその二人の後ろにいる数名の人間を見つけた。

彼らは、少しづつ包囲するように輪を広げて接近していた。

「ビバリー、フェイザーを麻痺にセット。」

「え?。」

「彼らの後ろにいる人物達はよからぬ事をするつもりだろう。

だが、あまり手慣れた者たちではないな。」

ピカード達は知らないが、ゼーレは有能な人材をみすみす殺されないようにプロの

犯罪者集団を使ってさらう事にしたのだ。

ゼーレはすでにかなりのミスが続き、焦っていた。

もはやすでに、数名が命を落としている。

だが、今回の彼らにも運が無かった。

あっさりとピカードに発見されてしまい、目的を果たす事なく路上に倒れ込むことに

なってしまった。

 

 

公園のベンチに座り、一人物思いに沈むレイに近づいてくる人影があった。

いつのまに現れたその二人は声をかけてきた。

「綾波レイさん?。」

「そうよ、何の用?。」

「私は、ディアナ・トロイ、こちらはデイタ。」

自己紹介する二人を交互に見てレイは、さすがに変な顔をした。

「なんか、馬鹿にされてるみたい。」

デイタの姿をみてレイは、ため息とともに口をついてでた言葉。

なにせその姿はレイの下手くそな模倣とも言うべき代物だった。

「なにか、気に障りましたか?。」

デイタの困った声にレイは表情を和らげて答える。

「別にそんな事はないわ。」

「それはよかった。

私たちはあなた達と話しがしたくてここへきたのです。」

その言葉を聞きレイは警戒の色を濃くする。

「そんなに警戒しないで、別に害を与えるつもりはないのよ。」

トロイの言葉にもなかなか警戒をといてくれそうになく、下手をすると彼女に

避けられることになる。

「ゼーレなの?、それとも…。」

 

「そのどちらでもないな。」

ほぼ同じ頃、ピカード達もシンジとアスカにあっていた。

異口同音に似たような会話をし、そして似たような答えを返していた。

「じゃ、どこからきたのよ?。」

アスカの質問にピカードは黙って空を指し示した。

 

「そら?、ああ、あの宇宙戦艦の人たちね。」

レイが素直に状況を受け入れてくれた事に安心した。

「いえ、正確には航宙探査戦艦です。」

デイタが訂正した。

「変わった人ね…。」

ディアナの方をみてレイは少し微笑みながら言う。

「人ではありません、アンドロイドです。」

「そう…。」

 

「その、貴方達はいったいなんの為にここへきたんですか?。」

シンジの質問にピカードは

「私たちもここにきたのは偶然なのだよ。」

と正直に話した。

「偶然ここにきて、偶然アタシたちを助けたの?。」

訝しげにアスカが聞く。

この子達は大人に心を許してないのね、ビバリーは確信をもった。

「いけなかったかね?。」

ピカードが、にこやかに言う。

「い、いえ、た、助かりました!、ほんとうにあの時はありがとうございます!。」

シンジのあわてぶりがみょうにおかしかった。

本当にあの時のパイロットと同一人物かと思えるほどであった。

「でも、なにか釈然としないわ…。」

このアスカという子は、相当大人に裏切られてきたのね。

ビバリーはアスカが、というかこの二人が気の毒だと心の底から同情した。

「助けるのに、なにか見返りを求めないと変かね?。」

「う、まあ、少し。」

ピカードのすこし意地の悪い質問にアスカはバツが悪そうに答えていた。

「では、今から私たちの船に招待しよう。

そこで、今ここで起きている事を私たちに教えていただけないかな?。」

ピカードの丁寧な物腰と、どこか厳しそうだが安堵感を与えてくれる雰囲気に

二人はエンタープライズへの招待を受けた。

 

「ピカードからエンタープライズ。」

「こちらエンタープライズ、ライカー副長です。」

携帯電話の様に見える通信機から陽気で快活な声が流れてきた。

二人は何処に着陸船がくるのかと、心配してあたりを見回した。

まさか、あんな大きな船がここにくるのだろうか?。

「4名転送。」

「了解、艦長もてなしの準備を進めておきましょうか?。」

「いや、あと一人のゲストが揃ってからだな。」

「判りました。」

「あの、転送って?。」

「そうだな…、そう一言で言えば瞬間移動かな。」

ピカードの言葉が終わらないうちに目の前の光景が溶けて固まるとそこは見慣れない

機器に囲まれた部屋の中にいた。

「当艦にようこそ!。」

ピカードが先に転送パッドから降りてシンジに手を貸してアスカをおろす。

シンジはピカードが見た目よりもかなり力がある事に驚いた。

「艦長、その前に怪我人の治療を行いたいのですが。」

転送室の外に出ようとした時、ビバリーがピカードに言った。

こういう断固とした態度で言ってきた時はてこでも動かない。

「そうだな、ではアスカくんは医務室へ行ってドクターに治療してもらうと

事にして、シンジくんと私はラウンジで治療が終わるのを待つとしよう。」

「え。」

アスカが不安そうに声を漏らしてシンジの方を見る。

さすがのアスカもこの状態で見知らぬ所で一人になるのは不安だった。

シンジもその視線に気づきあわてて

「あの、ピカードさん、よければアスカの側についていたいんですけど。」

ピカードに言う。

「そうか、大事な人だったな、気づかなくてわるかった。

ドクター、治療の間、側に付き添っていてもかまわないかな?。」

「もんだいありません。」

ピカードの思わぬ言葉に赤くなりながらも二人は礼を言った。

「じゃ、医務室に転送して。」

ビバリーの指示と同時に医務室へと再度転送されていった。

ピカードは転送室をでると自室にもどり、艦隊の制服へと着替える事にした。

 

 

一方、デイタとディアナは妙な連中に取り囲まれていた。

「みなさん、いったいなんの用でしょうか?。」

デイタの落ち着いた態度に調子を外されながらも彼等は与えられた仕事をまっとう

しようと、脅しをかけた。

「あんたらに用はねえんだ、そこの紅い目のガキをこっちによこせば怪我しなくて

すむぜ!。」

しかし、なにをいっても動じない3人相手にむなしく響く。

「デイタ、彼等はレイをさらおうとしてるのよ。」

ディアナの言葉をを待つこともなくデイタは行動を開始した。

「怪我というのは、この程度ですみますか?。」

そういうと、デイタは自らの包帯を全て外した。

「て、てめえ化け物か!?。」

「失礼な、アンドロイドです。」

デイタの返事を聞く余裕もなく一人が銃を撃った。

が、なにもおきない。

デイタが平然と立ち、胸の部分に弾が貼りついている。

いかな、犯罪グループとはいえこのような事態にはなれていない。

呆然としているところにデイタが憮然とした顔ですばやく近づき一人残らず

軽く眠らせてしまった。

「ご安心を、少しなぜただけですから。」

「そ、そう、よかったわね。」

レイも唖然とした顔で一言そういった。

「エンタープライズ、こちらカウンセラートロイ。」

「どうした、ディーナ、助けはいらないだろう。」

ライカーが冗談を言ってきた。

「3名転送。」

あえて、無視して転送の指示をだした。

 

 

バイオベッドに横になって医療用トリコーダーで検査を受けるアスカの隣で

邪魔にならないように、シンジは立ってアスカの手をとっていた。

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。」

ビバリーのアシスタントをする、オガワ・アリサが二人に声をかけた。

「そうよ、2時間もすれば、足も肋骨も新品同様になるわ。」

ビバリーが微笑みながら語り掛ける。

「えぇ!、2じかんん?。」

アスカが驚きのあまり大声を出してしまった。

「そうよ。」

いかにも当然と言った顔でビバリーが答える、いや事実エンタープライズの

面々にとって見れば当然なのだが二人にとっては驚異である。

使徒ですら回復するのに数日を要する時もあるし、エヴァの再生ですら時間が

かかる。

なのに、人間の骨折が2時間で全快というのはやはり驚異であった。

「ア、アスカ、なんかすごいとこきちゃったね。」

声が震えているが、嬉しさを隠せないシンジ。

「あ、あんた、バカァ?、使徒を倒す武器を持ってる連中よ、あったりまえじゃない!。」

一番驚いていた事の照れ隠しもあったが、ひさしぶりに嬉しい事が続きアスカも

以前の口癖がついてでた。

「そんなこといって、シンジくんに嫌われてもいいの?。」

ビバリーがからかって言う。

「そんなんじゃないです。」「そんなんじゃないわよ。」

赤くなりながらもユニゾン復活というところであろうか、医務室のクルーも久しぶりに

子ども達がいる事に雰囲気を和ませていた。

が、彼等に背を向けたビバリーはトリコーダーの表示値をみて眉根をよせた。

「じゃあ、あとは頼んだわよアリサ。」

「はい、ドクター。」

オガワ・アリサに後を引き継ぐとビバリーは医務室内の自分のオフィスに入っていった。

 

 

 

「艦長達は?。」

出迎えにきたライカーにディアナはそっけなく聞いた。

「ゲスト二人は医務室にいるよ、艦長は自室にもどって着替えて一息ついてるんだろう。」

「そう、じゃとりあえずラウンジに行きましょうか?、レイさん。」

「ディアナ、まだ怒ってるのか?。」

ライカーが情けない声で言う。

「やはり、しつこいネタだったんではないでしょうか?。」

「かもな。」

デイタに言われるようでは確かにしつこいネタだったかもしれないな。

ライカーはそう考えながらデイタと一緒にブリッジへと戻っていった。

 

 

 

 

「パイロットを見失っただと?。」

「すいません、いつのまにか見知らぬ外国人のグループがきたかと思ったら不意に

消えてしまって。」

恐々報告する、情報部の人間にいつものように一瞥をくれるとゲンドウは彼を下がらせた。「まずいな、ゼーレの手に落ちたか?。」

「いや、それはないだろう。

それなら、なにか動きがある筈だ。」

実際動きはあったのだが、珍しく彼等二人の把握し得ない事となっていた。

「他に、動きそうなのは日本政府だが、彼等にしては手際がよすぎる。」

「そうだな、日本政府にゼーレを出し抜ける筈が無いしな。」

未だかつて、ネルフ内において遅れを取った事のないゲンドウが今回は完全に先を

超されてしまている。

二人にしてみれば、ゆゆしき問題が始まろうとしている事になる。

自分達の有利性が揺らいでいるのだから。

 

 

 

「レイさん、なににする?。」

フードレプリケーターの前に立ちレイの注文を入力しようとしていたディアナは

すでに自分の分のホットファッジサンデーを入力していた。

「わたしも同じ物でいいわ。」

「そう、じゃコンピューター今のを二つ。」

転送ビームのような光のなかホットファッジサンデーが二つあらわれた。

「じゃあ、あの席で他の人の準備が整うのを待ちましょう。」

ディアナは、わざわざ選んだ、月のよく見える側のラウンジの特等席にレイを連れて行った。

「いい眺めでしょう?。」

「ええ、とっても。」

レイは寂しそうに応えた。

 

 

 

「どう、経過は?。」

およそ、1時間程してからビバリーはオフィスからでてきた。

「順調です。」

アリサの答えを聞き、微笑んでから無痛注射器でアスカの首に注射をした。

「今のはなによ?。」

怪訝に思ったアスカが聞くと

「以前受けた、精神への影響をなくすための薬よ。」

そう言うと、ビバリーは医務室からでて行った。

 

 

「入れ。」

艦長室に訪問者を告げるアラームがなり、ピカードは入室を許可した。

「どうした?、ドクター。」

その、かなり不機嫌なビバリーの顔を見てピカードは不思議い思った。

そんな不機嫌になる要素は今回は無いはずなんだがな、と思いながら聞いた。

「どうも、こうもないわ。」

「いったいどうしたのだ。」

「この地球の大人はなにを考えてるのかこれを見てちょうだい。」

ピカードの前に提示された情報パッドには、幾つかの薬の成分が表示されていた。

みると、暗示促進剤まで含まれている。

「いったい、どこからこんなものが?。」

「あのアスカって子の脳に残留していたものよ。」

「なんだと?。」

「聞いて、ジャン・ルーク。

あの子はどうゆう暗示をかけられていたかはまだよく判らないわ。

でも、あの子達にとってよくない事だけは確かよ。」

「それで、薬の影響は?。」

「もうないわ、中和剤を作って打っておいたから、少しづつ変化するわ。

でも、あんなこともでして子ども達を利用するなんてなんのためなの!。」

「それを、探るのはまだ先だよ、ビバリー。」

ピカードは内心に沸き上がるこの地球の大人達、無論一部だろうが、に対する

激しい怒りを感じはじめていた。

「でも、少しづつ薬の影響を減らそうとしていた痕跡があったわ。」

少しは、希望があるようだな。

そう、少しは信頼にたる大人がこの地球にもいるだろう。

ピカードはそう希望を持つ事にした。

 

 

「カウンセラー…。」

「なに?、レイさん。」

レイは、言うか言うまいか迷ったが結局話す事にした。

「私、感情なんていらない。」

「あら、どうしてなの?。」

「苦しいもの。」

ディアナは彼女が初めて感情を感じているのだと気づいた。

「そうね、感情は確かに苦しい時も有るわ。」

そうして、レイの目を見つめてさらに続けた。

「でも、それだけじゃないわ。」

レイは、ディアナの目を見つめかえしてさらに聞いた。

「それだけじゃないって、どういう事?。」

「それは、貴方が自分で感じていかなければだめよ。

今まで感情を意識した事なかったんでしょう?。」

「ええ、多分。」

「なら、これから色々な感情を知る事になるわ。

それが、貴方の心を豊かにしてくれるはずよ。」

「わからないわ。」

「すぐには無理よ。」

ディアナは一口、サンデーをすくって食べると続けた。

「そして、いままでにも感情を感じていた事に気づくはずよ。」

「でも…、」

「デイタ少佐は、1年前に感情をもったのよ。」

「なんで?、苦しいだけなのに。」

「さあ、デイタ少佐に直接聞いてみればいいんじゃないかしら?。」

「そうしてみるわ。」

 

 

 

医務室では、アスカの骨折の治療も終わり二人して出ようとしてある事に気づいた。

アスカの靴がないのである。

が、レプリケーターによってすぐに作られたので問題はなかった。

 

 

迎えに来たピカードと、ビバリーに連れられて展望ラウンジに向かう途中アスカは

いつもと違った気分を感じていた。

いままでの、妙な脅迫観念にも似た僅かな焦りがあまり感じられなかった。

あの、人を割けるような感情がないわけではないが少なくなった気がするのだった。

でも、落ち着いた気分になるとも感じていた。

シンジは、アスカが以前にもまして輝いて見えるような気がした。

 

 

「あぁ!?、ファーストぉ?。」

アスカは、レイが先に来ている事に大声を出したが別に驚いたわけではなかった。

嬉しかったのだ。

なぜ、こんなに自分が嬉しいのかわからなかったが。

 

 

こうして、3人揃ったところで今に至る経緯を知っている範囲内で話した。

シンジは、父親に捨てられたと感じた日から、アスカはエヴァのパイロットに

選ばれた日の事から、そしてレイは、レイはあまり話すような過去はなかった。

だが、この中で一番機密に近い人物でもありより詳しい現状を話したが幾つか

言わない事もあった。

別にピカード達に話したく無い訳ではなかった。

ただ、まだ二人には知られたくなかった。

そのことに気づいてか気づかずか、ピカードもディアナも深く追求する事は無かったし

追求する気も元から無かった。

 

 

 

 

その頃、ジオフロントへの入り口の近くの通りでは人だかりが出来ていた。

「で、私と彼の相性なんですけどぉ。」

「相性は最高ですが、彼があなたの望む行動をとるとはかぎりませんよ。」

黒井ミサはその日3人を待つつもりが、どういう訳か噂の占い師がいるという事で

あつまって来た、ネルフの若い女子職員達に延々占いをさせられる事となっていた。

 

 

 

「ふ、失敗したわ。」

ちゃんと来るかどうか占わなかった自分を呪いたい気分であった。



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ver.-1.00 1997-12/12公開
ご意見・ご感想はたまた出演希望は sou-1701@qc4.so-net.ne.jpまで!!

ふ、じゃあ全快の祝いに一思いにあの世に送ってあげるわ!。

って、治ったとたんにそれかい!!。

冗談よ、じょ、う、だ、ん。

目がマジだったよなー。

それよりも、なに?ミサがかなりへっぽこじゃない。

はぁ、テレビシリーズでも結構そういうとこあったし。

あんなんでなにができるのよ?

さぁ?。

まさか、SOUさん、また、ふ、腹中蟲とかなんか憑いてるんじゃ?

んなことないですよやだな。

ま、とにかくよかったじゃないですか。

ふ、そぉーね一時はお風呂にはいれなかったらどうしようとか思ったけど

これなら無事にきれい身体でいられるわ。

ふん、薬漬け寸前だったくせに。

な、なんですって!、本編のEVAじゃそんな設定ないわよ。

でも、あのこだわり方って傍目にけっこうきてますよね。

なんか、薬で暗示促進されてるような感じだったし。

う、そうかも…。

だからほんとはそうだったんじゃねーかなって思って。

ほ、ほおう、この電波脳細胞は行くとこまで行ったようね。

シンジも納得してんじゃないわよ!。

でも、僕たちどうなんのかな?。

まぁ、君たちの信頼する大人にでも紹介すれば。

アバウトなやつね相変わらず。


 SOUさんの『FIRST CONTACT』第3章PartU、公開です。
 

 素晴らしい(^^)
 エンタープライズは素晴らしい(^^)/
 エンタープライズの医療技術は素晴らしい(^^)/~~
 

 アスカちゃんの外科治療だけでなく、
 内科的・精神科的にも。
 

 

 転送といい、
 ここまで格差のある科学は
 ほとんど魔法のように感じますね。
 

 アスカは直って、
 シンジはそれを見て癒やされて。
 

 いいですね(^^)
 

 他の大人達が出てきてこの先はどうなるのかな。
 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 SOUさんに感想を送りましょう!


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