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「だから、あの宇宙船は絶対に味方ですっ。」

オペレータ仲間の男性二人に向かって力説する伊吹マヤを尻目に

力説された側の二人は、対応に困っていた。

「なぁ、この接続の量は困るよなー。」

「ああ、画像データベースへのアクセス止めてくれないかな。」

 

第十六使徒戦からはや数時間。

ネルフでは資料の作成、管理と忙しいはずであった。

が、噂を止めることはできなかった。

発端は、伊吹マヤが同期の職員にその日みた事を話したのが原因だった。

日があけてから、噂は広まり今や噂の画像を見ようとひっきりなしのアクセスが

データサーバに行われるのだった。

 

「二人とも、聞いてるんですか!。」

口を尖らし文句を言うマヤ。

とても、20代の女性とは思えない。

「でもなー、マヤあの宇宙船が必ずしも味方で有り続けるとは

限らないじゃないか。」

「そんな事ありません!。

あの宇宙船は絶対味方です!、だってあの二人を助けたんですよ!!。

きっと、あの宇宙船の人達はシンジ君達の守護神的存在なんですよ!!!。」

夢見る乙女は無敵だった。

 

 



第3章 守護神協奏曲 PARTT

 

 

 

「つまり、我々が戦闘に介入した時に次元流による障壁が少し弱まったという事なのか。」

「それだけでは有りません、艦長。」

デイタがクロノ粒子の発生効率が上がった事を事細かく付け加えた。

「ありがとうデイタ少佐、他になにかあるかね。」

「艦長、この際あの兵器のパイロットに接触してみては。」

ライカーの発言は、ピカードも思うところであった。

「では、最適な場所と時間を決めるために追跡調査をしておいてくれ。」

これ以上、なにも意見がでそうに無い事を確認してピカードはミーティングを

終了した。

全員が退出したと思ったなか、ビバリーが残っていた。

「ジャン・ルーク、あの子達はどれだけ傷ついているのかしら。」

「わからないな、ビバリー。」

「そうね…。」

 

 

その日、シンジは学校が終わると早々に病院へと来た。

アスカの入院している303号病室に行くと

「おっそーいっ。」

というアスカの不満の声を聞く事となった。

アスカ本人は、たかが骨折なんで入院しなくていいと言い張ったのだが

頭を打っているから一晩は様子見で入院と言われては仕方がなかった。

「もう!、病院は嫌いだってゆうのに。」

とはいえ、左足の複雑骨折と左胸の肋骨を3本折るという怪我では無理は

したくてもできなかった。

「で、どうするの?、ミサトさんだったら4時には迎えにこれるって話し…」

「4時までここに寝転がってろってゆーの?。」

因みに今は、3時半になるかならないかというところである。

「だけど、どうやってかえるのさ?。」

「そうね、車椅子があるでしょっ。」

肋骨を折っているため松葉杖は使えない。

おそらく数日は車椅子での生活だろう。

「シンジに押してもらうのよ。」

あっさりと、そしてきっぱりと断言されてはしかたがない。

車椅子をおして道を歩くシンジと、その車椅子に乗ったアスカ。

そんな二人を見ているものはエンタープライズEだけでは無かった。

 

「今だ、行け。」

そう、指示をだした男は配下の者の返答が返ってこない事に危険を感じ、

すぐに撤退しようとした。

ネルフの情報部も保安部も撒いたのになぜ?。

だが隠れていた所から出る事もできなかった。。

「あの二人には手は出させない。」

「貴様、なぜ貴様が?。」

後頭部に金属の感触を感じ取りながら。

「死体は確認するものだよ。」

「そうか、次からそうしよう。」

「甘いな、次はない。」

それが、最後に聞いた言葉だった。

 

 

「碇、この始末どうつけるつもりだ。」

01とナンバリングされたモノリスのきつい口調にも表情を変えず

「どうもこうもないですよ、議長。

初号機パイロットの呼びかけに応えたかどうかも判ってないんです。」

「だが、使徒を倒すことの出来る兵器を携えたものが他の連中と接触すると

厄介だ、早々に対策を取るべきだ。」

「わかっていますとも。」

別のモノリスに答えると同時に元の暗黒の空間に戻った。

「老人達、焦っているどころではないな、碇。」

「冬月、パイロット達の監視を怠るな。」

「ああ、手は打ってあるよ。」

 

 

「カウンセラー、率直に君の意見が聞きたいのだがよいかな。」

珍しく、ピカードがトロイのオフィスに顔をだした。

「どうぞ、艦長、どのようなお話しですか。」

ピカードは、少し間をおいてから言った。

「あの組織の大人は信頼できるか?。」

 

 

二人は何事もなく自宅に帰り着いた。

車椅子は玄関におき、真っ赤になりながらシンジはアスカに肩をかして

部屋に連れて行った。

「ありがと。」

礼をいってアスカは部屋の中に入っていった。

 

 

「残念ね、もうあの子達は貴方のものにはならないわ。」

マンションの前で、黒井ミサは大きな赤犬に向かって話しかけていた。

「もう、あきらめなさい。」

犬が唸り声をあげ牙を剥く。

ミサは何事か呟くとナイフを投げた。

ナイフがあたると、犬は瞬時に飛び散って消えていった。

 

 

アタシ、あいつが憎いはずなのに。

いえ、憎かったかな。

病室に来た時も、嬉しかった。

顔も見たくない筈なのに。

…だったのに。

 

アスカ元気がなかったな。

まだ、足が痛むのかな?。

 

 

「まだ、よく分かりませんがミサトと言う女性は幾らか信用できるでしょう。

ただ、総指揮官と思われる男性は信用しないほうが懸命だとおもいます。」

「理由は?、カウンセラー。」

「ミサトは、なにか思い詰めてる物が感じられましたし、指揮官の男性は

全てにおいて欺いてる感じがしました。」

通信の声だけではあるが、トロイのエムパスとしての能力は信頼できる。

「そうか、やはり全ては子ども達にあわないとわからないか…。

ありがとうカウンセラー。」

そう言ってピカードは、トロイのオフィスを後にした。

 

 

「ねぇ、マヤ、実際どうだったのよぉ?。」

ネルフの食堂において、同期の職員にまたもあの時の話しを聞かせる

伊吹マヤは顔を紅潮させて、本日何度目かの話しをしている。

無論、機密に関わる事ははぐらかしてはいるが。

そのため、ネルフ内では一部に尾鰭がついて噂が広まっていた。

「シンジ君が、司令を怒鳴りつけたってホント?。」

「えぇ、そんな事はなかったわよ。」

「じゃー、どうなったの。」

「しずかに、アスカをたすけますって。」

「かっこいいじゃなぁい、普段ひ弱そうなのに。」

「やっぱ、普段情けなくてもいざって時にたよりになる男がいいわよねぇ。」

この会話の周囲から若い男性職員が消えていくのにも気づかない。

「初号機がなにか魔法みたいな力使って使徒を倒したんですって?。」

また、あらぬ噂が増えているようだ。

「ちがうのよ、宇宙戦艦がシンジ君の呼びかけに応えたのよ!。」

 

 

「艦長、よいところでお会いしました。」

デイタは、自室に戻る途中のピカードに出会い声をかけた。

「どうした、デイタ。

なにか私に、用事かね?。」

「はい、実は困った事があるのです。」

「どんなことだ?。」

「私の顔の皮膚と、右手の皮膚なのですが安定にまだ少し時間がかかりそうなのです。」

デイタは陽電子頭脳だけでなく、身体の随所に陽電子を組み込まれている。

そのため、ボーグに剥がされた皮膚の一部を再生して直そうにも時間がかるのである。

「どの位かかりそうなんだ?。」

「そうですね、後2日と12時間45分32秒です。」

上陸する時にデイタの情報量はどうしても必要だ。

「しかたないな、なにか隠す方法を考えておこう。」

「私も考えておきます。」

 

「ウォーフ、君からみてあの子ども達はどうだ。」

ライカーはラウンジでウォーフに質問した。

「そうですね、あってみても損はないでしょう。」

「しかし?。」

「異星人に対してどう対応するか考えものです。」

ウォーフの答えにライカーは思わず笑いを浮かべたがもっともな事だった。

「ヴァルカン人やベータゾイドなら対してかわらないが、君やアンドレア人なんかは

結構個性的だからな。」

せめて、このラウンジにガイナンがいれば子ども達も気が休まるだろうに。

そう思わずにはいられないライカーであった。

 

 

ミサトは、第三新東京市内でひときわ高くなっている公園の駐車場にいた。

珍しく、助手席にはノートタイプのパソコンがおいてある。

「いろいろあって遅くなったけど、加持くん、あなたの気持ちうけとるわ。」

そうして以前、加持リョウジから受け取ったカプセルの解析をはじめた。

 

 

綾波レイは、珍しく寝付けないでいた。

眠くならない事は珍しくなかった。

だが、今回はちがうのだ。

「寂しい。」

一言呟くと、ベッドからでて窓に近づいていった。

一糸まとわぬ姿を月の光にさらして、綾波は遠くを眺めていた。

青白い光のなか、自分一人しかいないような錯覚をかんじながら。

「碇くん…。」

いま、自分にとって最も必要な存在。

その存在には、手が届かないのか。

「弐号機パイロット…。」

その存在を考えると、心がくるしくなる。

別に嫌いな訳じゃない。

ただ、いまは、顔を見るのがつらい。

 

 

「どんな調子だ?、バークレイ。」

ラ・フォージュは、ボーグ化された一部の船内の修復を指示しているバークレイに

声をかけた。

「ええ、順調にいってます。」

「どうした?、気になる事でもあるのか?。」

「ええ。」

「なんだ?、いったい。」

おおよその見当はついている。

「…、我々はボーグの干渉した過去を戻すため過去に干渉しました。

それは、いいんです仕方が無い事でしたから。

ですが、今回のここは本当に干渉してもいいのでしょうか?。」

多分、船内の若い士官に同じ疑問を持ってこられたのだろう。

「バークレイ、干渉しなければ元の世界に帰れないんだよ。」

「しかし…。」

「それにな、バークレイ、俺達がここに来てしまった時点ですでに充分過ぎるほど

干渉しちまってるんだ。」

そう答えるラ・フォージュを見てバークレイはそれ以上なにも言わなかった。

 

 

月明かりの中、レイは眠る事もままならず外を歩いていた。

特に目的があるわけではない、じっとしていると気が滅入ってくるからだ。

ふと気づくと、目の前に人が立っていた。

「ごめんなさい、気づかなかったの。」

そう言って避けようとした時、その人物が声をかけてきた。

「あなたは、月よ。」

「え?。」

驚いて振り向いた時、そこに人はいなかった。

ただ、手に月の絵の描かれたカードをいつのまにかもっていた。

 

 

ピカードは、自室でアールグレイを飲みながら物思いにふけっていた。

実際、艦隊の規約に反しているとは言え現状ではやむを得ない事だろう。

だが、アカデミーを出たばかりの若い士官の中には気にする者もいるだろう。

彼らもいつか規約が全てではないと知る日がくるだろう。

無事に戻れれば。

 

 

デイタは機関部に向かっていた。

ラ・フォージュに会うためである。

「やあ、デイタいい所に来た。」

「そうかい、僕は君に聞きたい事があって来たんだが、君も僕に会いたかった

みたいで今日は運がいい。」

「そうか、で?、なんの用事だ?。」

「実は上陸する時までに、皮膚の合成がすまないんだ。

そこで、幾つか顔や手を隠す方法を考えてみたのだが、中々いい案がでなくてね。」

「それで、俺の所へきたのか。

そんなの包帯でも巻いておけばいいだろう。」

「ほうたい?、ああ、怪我をした部分等にまく清潔な布の事だね。

この時代なら、それで誤魔化せそうだ、ありがとうジョーディ。」

「それじゃ、今度はこっちの疑問に答えてくれ。」

「いいとも。」

「例の兵器のコクピット内の物質の特性をわりだそうと思うんだが。」

「今度は、転送出来るようにだね。」

「ああ、それでこれなんだが、コライー人の船内大気の組成に似ていないかな。」

コライー人の船に乗ったことのある士官はヤー大尉だけであるがデイタはコライー艦の

内部を再現する作業を行ったのだった。

「微妙に似ている様に思うが、組成の特定ができないのでは判らないな。」

「それを今から調べるんです。」

バークレイが変わりに応えた。

 

 

レイはしばし歩き回った後自室に戻ってきた。

カードをなぜか捨てる気にならなかった。

 

 

「結局、コライー艦の大気とも別物だったな。」

「役に立てなくてすまない、ジョーディ。」

感情チップを作動させているので、心の底からすまなそうな

顔をしている。

「いいよ、気にするなデイタ。」

 

 

「こ、こんなことシンジ君たちにどう言えばいいのよ。」

全てを語っているわけではないカプセルの内容ではあるが、それは驚異的な

内容であった。

あまりにその内容に気を盗られ、周囲への配慮が疎かになっている。

近づいてくる複数の人の気配。

 

「悪いな、個人的に彼女には手を出させない。」

別の気配が一言呟くと動き出した。

 

そして、何事も無かったかのようにあたりはまた静寂に包まれた。

 

「あのばか、最後にすごい物おいていって…。」

データを全て確認し記憶すると、全て消去した。

危険を呼ぶ物は極力なくしておかないといけない。

たとえ、それが最愛の者の残した物であっても。

あの子達を守らなくてはいけない。

 

 

 

月明かりの中、レイのすむマンションの屋上で二つの影が対峙していた。

一つは、少女の姿をしていたが、もう一つの影は異形の烏のような姿だった。

しばらくその影同士は動かずに睨みあっていたが、同時に動いた。

少女の影が膝をついた。

烏の影が振り返りとどめを刺そうと動いた時、烏は何かに射抜かれて消えていった。

少女は立ち上がると、何事も無かったかのように歩きだすと月夜に消えていった。

 

 

 

「リツコ、あんたが帰ってきたら本当の事を今度こそはなしてもらうわ。」

ミサトは自宅への帰り道、車のなかで自分を勇気づけるためにも決意を声に出して

言った。

 

 

2人の待つ我が家へは後わずか。

2人とも喧嘩してなきゃいいけどね。

2人の喧嘩は最もじゃれあいみたいなものだけど。

 

あの2人と、そしてレイのためにもせめて自分だけでもしっかりしなければ。

あの子達を守らなければ、復讐の道具に使おうとしていた自分の償いだから。

そう。心に誓う葛城ミサトだった。

 

 

 

そして、夜があける。

いつもと変わらない、そして以前とは違う一日が始まろうとしていた。


NEXT
ver.-1.00 1997-12/06公開
ご意見・ご感想・EVAじゃないじゃないかとかは sou-1701@qc4.so-net.ne.jpまで!!

なによ、これは!。

へ?、なんですかアスカさん。

アタシ、殆どでてないじゃないの

えぇ、今回は。

今回はじゃないでしょうに!。

アスカ許してあげなよ、SOUさんもがんばったんだし。

ふ、あまいわねシンジ。

この脳足りん中年は会社サボって映画のオールナイトにいってたのよ。

でもそれって先週の金曜日じゃないですかぁ、たまには僕もあそばしてよ。

そーゆー事は会社にいいなさい!、ばか。

大体それが原因で今週身体の左半分が痛かったんでしょうが!。

でも、それってアスカさんが黒魔術でもつかったんではないですか?。

あ、あたしじゃないわよ。

じゃ、だれがさ?。

ばかねーシンジ、全世界30億のアタシのファンにきまってるじゃない。

そんなにいるか!。

なんかいった?、脳足りん中年。

べ、別に…。(く、子どもくせに妙な迫力。)

でも、足の骨とか肋骨とか折ってて学校いけるんですか?。

行けるでしょう、ただ常夏でしょう?。

そうですけど?。

私が変わって説明しましょう。

おお、デイタ少佐、めっきり解説要員ですね。

得意ですからね。

で、問題点ですが、この時代つまり2015年頃はまだ骨折などの治療には

結局ギプス等をしようしています。

それは綾波レイさんの件でも証明されてますね。

その結果なにが問題かとゆうと、汗などで発生する体臭などです。

専門の設備があれば…

なにがいいたいのよっ!。

つまり、貴方のケースですと、足と肋骨の骨折では入浴は不可能とゆう事です。

そ、そんなのいやー!。

シャワーくらいならなんとかなりますよ。


 SOUさんの『FIRST CONTACT』第3章PartT、公開です。
 

 黒井ミサとは一体何者なんでしょうか。

 ちっと占いというか、道を示す程度のゲストキャラだと思っていたのですが、
 ずいぶん動いていますよね。

 犬を倒したり、
 鳥と戦ったり・・・

 隠れた主役(^^)?
 

 

 エンタープライズの面々、
 アスカシンジミサトを守る謎(?)の人物。
 

 沢山のネタ振りが次回を楽しみにしますね。
 

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 SOUさんに感想メールを送りましょうね!


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