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忘却という名の罪



不遜という名の罪



人は神に挑み、そして、言葉を失った





NEON GENESIS EVANGELION ORIGINAL STORY


Canon 〜血染めの十字架〜


第四幕 『氷の人形』





「レイ。調子はどうだ」

「・・・・問題ありません」

「そうか・・・」

黄昏の赤に染められた空間。

包帯を巻いた少女と、顎鬚を生やし、色眼鏡をかけた男の会話。

そこに、感情というものはなかった。






















「なんか、冴えない子ね」

これが、アスカがシンジに向けて言った、最初の言葉だった。









厚木にある軍専用空港。

広い空港ロビーに、どことなく目立つ三人の子供と、四人の大人がいた。

一見、彼らの回りには、誰もいない。

しかし、よくよく観察すると、この七人を警護するように、周囲には多数の黒ずくめの警備員がいた。

何故か?

それは、彼らが、『特務機関ネルフ』に所属する要人であるためであった。

とくに、三人の子供たちは、人の叡智を集めて造られた『汎用人型決戦兵器・人造人間エヴァンゲリオン』のパイロットであるため、ネルフに反意を持つ集団にとって、格好のターゲットだったのである。

そして今、15年、沈黙を守っていた使徒の再来の後である。

自然に、その警護は、厳重かつ強固なものとなっていた。

そんな裏の事情を知らず、そして、彼らに守られていることにも気づいていない、三人の子供たちの名は、ショートに切り揃えられた青銀の髪に夕日のように赤い瞳を持った 少女が、 零号機専属パイロットである、綾波レイ。

その隣に寄り添うように立つ、優しげな風貌をした少年が、 初号機専属パイロット、碇シンジ。

そして、二人の向かいに、仁王立ちで立っている金髪碧眼の少女が、弐号機専属パイロット、惣流・アスカ・ラングレー。

それぞれに、独特の雰囲気を持った14歳の少年少女だった。

今日、この三人が、一堂に集まったのは初めてである。

いや、新たにサードチルドレンとして登録された碇シンジと、二人の少女が会うのが初めてと言った方が正しいかもしれない。

本来ならば、もっと、別の場所で正式に紹介されるのが筋というものだが、諸事情により、急遽、弐号機の改装をドイツですることが決定していた。

つまり、時間的都合により、急遽、アスカの渡独にあわせた、チルドレンの顔合わせとなったのである。

ちなみに、今回アスカと同行することになったのは、

弐号機コアのデーター受け渡しと交換作業の技術援助として、技術局一課所属の伊吹マヤ二尉が、

オブザーバーとしては、特務機関ネルフ副司令の冬月コウゾウが、ドイツ行に同伴することになっていた。

ドイツに行ってしまえば、しばらくの間、日本には戻ってこれない。

そのため、アスカ達がドイツに行ってしまう前に、一度、顔合わせしておいた方が今後都合が良いだろう。

そう思案した、作戦部長の要職にある葛城ミサトは、今回、見送りを兼ねた顔合わせをセッティングしたのだったが・・・・・・・・・、アスカの発言で、この気遣いは、一瞬にして脆くも崩れ去っていた。

今、ミサトの目の前で、自分の上位を示すつもりなのか、腰に手を当て、ツンと顎をそびやかした姿勢でアスカはシンジを見下ろしている。

「ア、アスカ・・・・・・」

ホローの仕様のないアスカの言葉に、隣に立っていたマヤは言葉に詰まる。

『あっちゃぁーーーーーっ!』と言わんばかりに、ミサトは額に手を当てていた。

シンジの体調を気遣って同行した加持は、黙って肩を竦め、冬月は、渋い顔をしている。

言われたシンジの方は、当たり前だが、一瞬、気分を害したかのように少し眉を寄せた。それでも、すぐに無表情を取り繕う。

「それでは、副司令よろしくお願いします。マヤも弐号機の方、お願いね」

「ああ、葛城君。後のことは頼むよ」

初老にさしかかった身を、ネルフ士官の正装で包んだ冬月が、いつも通りの穏やかな微笑みを浮かべつつ答える。

「はい。まかせて下さい」

マヤは、苦笑気味の笑みを張り付かせながら、ミサトに合わせる。

不発となった怒りのまま、アスカはシンジの方を見たが、シンジは、アスカと視線が合った瞬間、浮かんでいた、はにかむような笑顔を打ち消した。

再び無表情に戻ったシンジを、アスカは睨み付ける。

二人の間にどこか険悪な空気が流れ始めた。

シンジの隣で、レイは、我関せずといった態度を保ち、ミサトとマヤは、もう対処なしと顔を見合わせ、冬月はあきれたように二人を見ている。

そんな三人を黙ってみていた加持だったが、気づかれないよう、小さくため息をついた後、シンジの肩を大きな手で抱き、アスカに、いつもの人当たりの良い笑みを向けた。

「アスカ、気をつけて行ってこい」

加持の言葉に、アスカは顔を嬉しそうに緩ませ、元気よく返答した。既に、シンジは眼中にないといった感じである。

シンジは、少し気分を害したようだ。

そこに、いかにもっといった黒服に身を包んだ男が近づいてきた。チラッと加持の方を見た後。

「副司令。そろそろ搭乗時間です」

低めの声で、移動を促す。

「ああ、分かった。それじゃあ、葛城君、加持君、後のことはよろしく頼むよ」

冬月は、足元に置いていたアタッシュケースを持ち上げる。

「了解しました」

ミサトは、少し緊張した面持ちで返答し、加持はいつもの笑みを浮かべて返答した。

それを見て、冬月は穏やかな笑みを返し、マヤとアスカを促し搭乗口の方へ歩き出した。

その姿を、敬礼したミサトと加持が見送る。

シンジとレイは、そのままの直立した姿勢で三人の後ろ姿を見ていた。





















真青な空に、白い飛行機雲が走る。

「はぁ・・・・・。行っちゃったわねぇ」

空港のガラス窓に寄りかかりながら、ミサトは疲れたような声を出した。

「すみません。ミサトさん」

レイと並んで窓の外の飛行機雲を見ていたシンジは、ミサトの声音に振り返り、すまなさそうな顔をした。

「シンジ君が謝ることはない」

加持が、慰めるようにシンジに言う。

「そーよ、シンちゃん。あれは、アスカが悪いわ」

ミサトも、慌てたように手首を振った。

「・・・シ、シンちゃん?」

「ん?シンジだから、シンちゃん。何か文句ある?」

茶っ目っけを含んだ顔で、ミサとはシンジにウインクする。

「・・・・・・・・・・いえ」

その様子を見て、シンジは思う。

言うだけ無駄だと・・・・・・・・・。

そして、小さくため息を吐いた。

そんなシンジを、レイは不思議そうに見つめていた。

「ごめんね。今回こんな事になっちゃったけど、アスカ、本当はいい子なのよ」

シンジのため息を、気づかない振りで無視し、ミサトはそのままの勢いで笑いかける。

「は、はぁ・・・・・・・・」

「まぁ、アスカはプライドが高いからな。シンジ君を見て、ライバル意識が刺激されたんだろう」

シンジの気を軽くさせようと、加持は言う。

「???」

加持の発言を理解できず、『脳みそは疑問符でいっぱい』といった表情を浮かべるシンジ。

「『自分が倒せなかった使徒を倒した。しかも、なんの訓練も無しに、いきなり』っといたところか?」

軽く肩をすくませる加持。

「そうね。多分そんなところでしょうね。しょうがないわね、アスカも・・・」

「アスカが素直じゃないのはいつもの事だろう」

「まあね。精一杯肩肘張って頑張ってる。そんなとこが、まだまだ子供で可愛いのよね」

優しい眼差しを、遥か遠い空の上のアスカに向ける。

「おいおい。今の言葉、アスカが聞いたら怒るぞ」

からかいを込めた苦笑をもらす加持。

「平ー気よ。あなたたちが黙っててくれさえすれば」

「おいおい」

「シンちゃんも、アスカには黙っててね」

ミサトは茶目っ気たっぷりに言う。

「は、はい」

よく分かっていないシンジ。

「レイもお願いね」

「・・・・・はい」

それは、確かに少女の声なのだが、感情が篭っていない、それだけで無機質なものに聞こえた。

「さてと、用事も済んだこと出し、そろそろ帰りましょうか」

「そうだな。シンジ君もまだ本調子じゃないはずだし、レイの怪我もまだ完治したわけじゃないからな」

ヘリポートに向かって歩き出す四人。

その歩みは、シンジとレイに気遣ってゆっくりとしたものだった。

子供たちの前をミサトが歩き、加持はいつでも二人を庇えるように後ろを歩く。

もちろん、彼らの回りにいた警備員達も行く道々を外部から隠していた。

自然、レイとシンジは並んで歩くこととなった。

二人の間に会話はない。

並んで歩く。

それは、当たり前のような光景で、そこに嵌められるべきジグソーパズルのピースのように、違和感がなかった。

「あ、そうそう。シンジ君の部屋のことなんだけど・・・・・・・・」

VTOLに乗り込み、それぞれが席に落ち着いた時、ミサトが突然思い出したように言った。

「はい?」

「決まったのか?」

「ええ、コンポート17の303号室になったわ」

「おまえの部屋の隣じゃないか」

「そーよ。なんか文句ある?」

「・・・・いや」

リっちゃんに手を回してもらったな・・・・・。

「子供に手出すほど飢えてないわよ」

「・・・・・・・当たり前だろ」

あきれた口調で言う。

「・・・・・・・・・・・・・」

「???????」

大人の会話が理解できない子供二人。

否、レイの方は気にしてすらいないのだろう。

「気にしなくてもいい」

加持は、疲れた顔をした。

どことなく、いつもの服が1割ほどヨレヨレぶりを増した気がする。

「は、はあ」

ミサトは、加持を無視してシンジの顔を覗き込んだ。

「そんなことより、シンジ君。お父さんと一緒でなくていいの?貴方が望めば、一緒に住むことも出来るのよ」

その瞬間、シンジの顔から無邪気な疑問符の山が消えた。

じっと自分の膝を見つめる。

視線先では、無意識の行動なのか、右手が開いたり握ったりされていた。

「・・・・・いいんです。きっと、今更一緒に住んでも、ギクシャクするだけですから・・・・・・・・・・」

少し暗い声音で答えるシンジ。

「シンジ君、ネルフが君に用意した家は、まあ、ネルフ専用の寮みたいなものさ。セキュリティーシステムは万全だから防犯上はなんの心配もない。俺の部屋も同じマンション内にあるから安心していていいよ。ただ、ここだけの話だが・・・・・・・・・」

ここで、加持は声を潜め、シンジに耳打ちするように屈んだ。

「・・・招待されても、葛城の料理だけは口にするなよ。あれは、人・・・・・」

「なに話ているのかなぁーーー?かぁーーーじぃーーーーー」

ミサトは、加持の耳を引っ張る。

それも、手加減なしに・・・・・・・・・。

「いっ!!や、止めーーーっ!!」

「機内で暴れないでくださいぃ〜〜〜〜〜!!」

パイロットの悲鳴が、VTOL内に木霊した。

「なに話ているのかなぁーーー?かぁーーーじぃーーーーー」




















「いいシンジ君。とりあえずマニュアル通りに動かしてみて」

「はい」

ネルフ本部 第二実験場

そこに、紫の巨人が立っていた。

ぎこちない動きで、エヴァの腕が動く。

エントリープラグ内のスクリーンには、第三新東京市の姿が再現されていた。

ホログラム・シュミレーションが映し出した第三新東京市。

使徒迎撃のために、計画的に区画整理された街。

そこに、第三使徒が立つ。

人に操られた巨人は、ぎこちない動きで腕を伸ばし、銃を構えた。

「ねえ、リツコ。弐号機の方、どのくらいで改装完了するの?」

実験場を隔てる窓際に立ったミサトが、背後でオペレーターを指揮するリツコに尋ねる。

「そうね。機体のパーツはもうあるんだから、急いで二週間ちょっとってとこかしら」

次々モニターに映し出される初号機のデーターを見ながら、リツコは答える。

その手は、止まることなく、軽快にコンソロールを叩きつづけていた。

「弐号機の改装が済むまで使徒がこないといいけど・・・・・・・」

ミサトは、何もない空間に模擬銃を撃つ初号機を見つめながら呟いた。

「あら、弱気ね」

「そう?よく分からない相手なんだから、準備は万端にしておきたいのよ。前回の使徒に壊された兵装ビルの修理だってぜんぜん進んでないし・・・・・」

「しょうがないわ。人手が足りないのよ。・・・・・・・・シンジ君。次、いくわよ」

ミサトの目の前で、初号機は新たに銃を構え直す。

リツコが見つめるモニターには、第四使徒が光の鞭を揺らしながら映っていた。

「今の迎撃システムの火力じゃ使徒に対して足止めにもならない事がはっきりしたんだから、火器増強の予算通るかしら・・・・・・・・・。そうすれば、もう少しマシになると思うんだけど」

「それは大丈夫だと思うわ。今回の事で上の人間も、必要な事が分かったみたいだから。所詮、自分達が生き残るためのお金は惜しまないわよ」

冷徹なまでに、上の人間を小馬鹿にした発言だった。

「・・・・・・」

よろめく初号機。

模擬銃が派手な音を立てて床の落ちる。

「落ち着いて、シンジ君」

「はい」

「じゃあ、もう一度いくわよ」

床に落ちた銃を、緩慢な動きで拾い上げる初号機。

「では、モード117。再スタート」

基本通りに構えられた銃から、再び発射音が響く。

ミサトは黙って、その動きを見詰めていた。

「・・・ミサト。一つ、いい知らせがあるわ」

仮想都市で、第四使徒と戦う初号機を見ながらリツコは言った。

その口調は、明日の天気を話すように軽いものだった。

「何?」

「アメリカ支部で行われていた、参号機の起動実験、成功したそうよ」

初めて、ミサトは後ろを振り返り、リツコを見た。

「それ、本当!!」

「ええ、近いうちに本部に配属される事になるわ」

「これで、彼がフォースチルドレンとして決定したのね・・・・・・・・・」





















シンジとレイは、二人、休憩所の自販機の前に佇んでいた。

二人が二人っきりになるのは、これが初めてだった。

交わされる会話はない。

沈黙だけが、この場を支配していた。


綾波レイ

マルドゥック機関が発見した最初の被験者。

いつも、表情を変えない、僕と同い年の子供。

シンジは、レイを人形のような表情を見つめながら、今日のテストのことを思い出していた。







ネルフ本部 第1実験場

黄と紫、二機のエヴァンゲリオンが拘束されている。

これから、チルドレンとエヴァのシンクロテストが始まろうとしていた。

白い照明がエヴァを照らし、その巨体に複雑な陰影をつける。

「レイ・・・・・・・。怪我の具合はどうだ」

零号機のエントリープラグに乗り込もうとしていたレイに、ゲンドウは話しかけた。

レイは、ゆっくりと立ち上がり、ゲンドウの方を向いた。

感情のない赤い目に、ゲンドウが映る。

「大丈夫です。心配ありません」

そう、すでにレイの身体に、包帯は巻かれていなかった。

華奢な体を真っ白なプラグスーツに包み、傷痕など何処にも見当たらない。

「・・・そうか」

ゆっくりと、確かめるように視線を動かすゲンドウ。

感情を隠す色眼鏡が、照明の光を受け反射した。

ふと、確かめるようにレイに尋ねる。

「恐いか?」

「・・・・・いいえ」

ゲンドウの赤い色眼鏡に映るレイの表情が動くことはない。

「そうか・・・・・・・・」


シンジはエントリープラグのモニター越しに、レイと会話を交わすゲンドウを見つめていた。






「・・・・・何?」

突然のレイの声で、思考が現在に戻されるシンジ。

どうやら、ずいぶん長いことレイを見つめていたらしい・・・・・・・・・・。

じっと赤い目で見つめられ、シンジは慌てる。

「・・・い、いや、なんでもない・・・・・・・」

しどろもどろに、どうにか答えた。

「そう・・・・・・」

シンジの答えに、レイは再び手もとの本に目を落とす。

その様子に、シンジは、ほっとしたと同時に、何か寂しさを感じた。

そもそも、何故、ここで二人が一緒にいるかというと、それは、45分前までさかのぼる事となる。







「あ、シンちゃん!!」

今日の訓練が終わり、シャワーを浴びて帰ろうとしていたシンジを、ミサトが呼び止めた。

「なんですか?ミサトさん」

「仕事、もうすぐ終わるから、一緒に帰りましょ」

「はい」

「じゃあ、30分後に休憩所の自販機の前ね」

「分かりました」







「レイ」

モニター越しにレイに呼びかけるリツコ。

「・・・・・・・・・・・・・」

「今日のシンクロテスト、良かったわよ」

「・・・・・・・・・・・・・」

「この後、やって欲しい事があるから、30分後に休憩所の自販機の前で待っていてちょうだい。ミサトが迎えに行くと思うから」

「分かりました」






すでに、約束の時間から15分が経過している。

人を呼び出しておいて、ミサトはまだ来ない。

何を考えているのだろう?

「…綾波は、誰か待っているの?」

沈黙に耐え兼ねたシンジは、自販機の前のベンチで本を読むレイに話しかけた。

「・・・・・葛城一尉をここで待っていろと・・・・・・」

「ミサトさんを?」

「・・・ええ」

「そうなんだ。僕もミサトさんに此処で待っているように言われたんだけど」

「・・・そう」

レイは、シンジの言葉に答えながらも、手もとの本から視線を上げない。

そして、交わす言葉も、まるで会話を知らないかのように、味気ない返事だけだった。

すぐに、シンジはレイに投げかけるべき言葉を無くす。

嫌われているのかな・・・・・・・・・・?

困ったように横を向いたシンジの目に、自動販売機が映った。

急に、喉が渇いていたことに気づく。

レイとの会話に無意識に緊張していたようだ。

自販機にカードを差し込みながら、シンジはレイにも聞いてみることにした。

「…綾波。綾波は何か飲む?」

シンジは、自販機のメニューを見つめながら、後ろのベンチに座るレイに尋ねた。

ようやく、レイは本から視線を上げ、シンジの顔を見つめた。

「・・・ええ」

小さく呟く。

「何がいい?」

耳に届いた小さな声に、シンジは少し嬉しくなった。

「・・・・・紅茶」

「分かった」

シンジは、ホットティーのボタンを押す。


カッシャ

紙コップが落ち、琥珀色の液体が注がれる。


ピィーーーー

ブザーが鳴る。

シンジは、少しかがんで、紅茶を取り出した。

白い湯気が、紙コップから上がる。

その間、レイはじっとシンジの細い背中を見ていた。

「はい。熱いから気をつけて」

「・・・・・・・・・ありがとう」

レイの無表情が変わることはなかった。だが、そう呟いた言葉には、微かな気恥ずかしさが潜んでいた。

感謝の言葉

初めての言葉

何故、くすぐったいと、私は思うのだろう。

シンジは、レイの呟きに、すこし驚いた顔をする。

そして、すぐに優しく微笑んだ。

柔らかな空気が満ちる。

交わされる言葉はない。

ただ、白い湯気だけが天井に上っていた。







「ごめ〜〜〜ん。待ったぁ〜?」

それから更に10分後。シンジとレイが、紅茶を飲み終わった頃、ようやくミサトが休憩所に現れた。

少し走ったらしく、髪が乱れている。

「ごめんねぇ。リツコが捕まんなくて」

両手を合わせ、ウインクするミサト。

「いいえ。かまいませんよ」

微笑むシンジ。

「・・・・・・・・・・・・・・」

相変わらず無表情なレイ。

「ありがと。じゃあ、行きましょうか」

そう言って、ミサトは二人を促し、歩き出した。


制作手記

「お待たせしました。第四幕 『氷の人形』公開です!」

「やあ、やっとでたねぇ。待っていてくれるリリンなどいるのかい?遅すぎて、見放されていたりして・・・・・・・・・・」

「そ、そんなことないやい…………たぶん」

「そうだといいねぇ〜。だいたい、予告と少し内容が違うような気がするけど?」

「………」

「何か言ったらどうだい?んん」

「次回予告 雷鳴とともにやって来たものは…………?
第五幕
『神雷』 お楽しみに!!」

「…逃げたな」



「おや?二個所も虫食いがあるじゃないか。
これを直して恩を着せれば・・・・・・・。ふふふふふ・・・・・・・・」


NEXT
ver.-1.00 1998+01/24公開
ご意見・ご感想は yumi-m@mud.biglobe.ne.jp まで!!









 弓さんの『Canon〜血染めの十字架〜』第四幕、公開です。
 

 

 アスカとレイ、
 レイとシンジ、
 アスカとシンジ、

 それぞれですね(^^)

 色々見えて、
 色々感じて・・
 

 強烈なものだったり、
 見えない物であったり。
 

 

 レイとシンジ、

 ミサトさんが遅れてきたのは
 二人の時間を作る計算があったのかな?(^^)

 うっ
 ミサトさんが計算・・・

 に、似合わない(爆)
 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 逃げちゃった(笑)弓さんを感想メールで呼び戻しましょう!


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