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>SYSOP

 21世紀

 「シンジ.遅いなあ.....」

シンジがうやむやのうちに31世紀で宇宙戦争に巻き込まれようとしていた時.

まだアスカは校門前でシンジを待っていた。

 「やっぱり.さっきの物音.シンジに何かあったんじゃ.....」

ちなみに『さっきの物音』というのはシンジがゲンドウに拉致されたときのものだ。

いったん考え出すとどんどん不安が膨らんで行く。たまらなくなってアスカは歩きだ
す。

 「やっぱり見に行ってみよう」

アスカが校門から少し離れた所にあるオブジェに近付こうとすると.後ろで何かの気
配がした。

 「誰っ!?」



 31世紀

アイダ=ケイオス(20歳 SEELE艦隊所属)は不機嫌だった。

それと言うのも.SEELEの政界の中心的組織である元老院から.NERVの新造戦艦の性能
を 確認してくるように

言 われたからだ。

もともと彼は元老院による支配体制を毛嫌いしていたのだ。

その上こんな命令を下されたのでは怒るのは仕方 が無 いだろう。

 「俺にNERVの新型艦の性能を確認してこいだと....?全くふざけた任務を与えやが
って!」

 「そうは言っても.元老院からの命令じゃあ仕方ないじゃないですか」

彼がドックに向かうトラムの中で独り愚痴をこぼしていると.

彼の副官であるヤマギシ=マユミ(19歳 SEELE艦隊所属)が彼を宥めようと口を挟ん
でくる。

それに対してケイオスはトラムの壁を殴り付け.

 「俺だって判っている!しかし.最近のNERVの新規加入艦隊のレベルの低さは目に
余るものがある.

またあんな奴等と一戦交えなければ.と思うと無性に腹が立ってくるのだ」

 ケイオスは.31世紀にしては珍しく.軍人らしい気性の持ち主だった。(と本人は思
っている)

まあ.それだけなら別に構わないのだが.彼は20世紀末の.いわゆる「ミリタリー」な
世界に

足を踏み入れてしまったらしく.SEELE艦隊の全身に原色がちりばめられた制服を無視
して.

何故か迷彩服を着ていた。

 「まあまあ.そんなことを言わないで。今回は歯ごたえのある相手かもしれないじ
ゃないですか」

マユミはケイオスをなんとか宥めようとしている。

SEELE屈指のプレイヤーであるケイオスの補佐をつとめる彼女の仕事は.

もっぱら.この気難しい上官を宥めることであった。(ちなみに.彼女はこの仕事を気
に入っている)

 「うーん.そうだな。そういうことにして.早速出撃するか」

SEELE屈指のプレイヤーで.SEELE.NERV双方に多くのファンを持つスタープレイヤーで
もある彼は

以外と単純な男だった。




WAR GAME

第二話 シンジ.初出撃






シンジは感動していた。

 「凄い!周りが全部星だらけだ!」

 「当たり前だ。艦に乗っているんだからな」

 「・・・・・・・・」

シンジの感動をゲンドウが冷たく打ち砕く。

 「ミスタ・シンジ.あと300秒ほどで戦闘宙域です.」

たっぷり1分ほど沈黙した後.サポートAIの声でようやく気を取り直したシンジ。

 「敵艦隊の構成は?」

 「巡洋艦4隻.戦艦2隻.駆逐艦6隻です」

 「4+2+6.......13隻ぃ?」

驚きの余り.単純な足し算を間違うシンジ。

 「......12隻です.ミスタ・シンジ」



戦闘空域に出たアイダ=ケイオスはやっぱり不機嫌だった。

 「何で敵艦は1隻なんだ?間違いか?」

 「さあ...しかし.間違いでは無いようです」

一気に不機嫌になるケイオス。

 「何だ.やっぱりつまらんじゃないか。俺は帰るぞ!」
 
ケイオスが艦首を返してパドック艦に戻ろうとした時.パドック艦の通信管制官が慌
てた様子で報告をする。

 「ケイオス様!へリング級駆逐艦.2隻同時に撃沈されました!!」

 「何ぃ?」





>sinji

何で12隻もいるんだよー(涙).こっちは一隻だぞ

 「基本的に艦隊は4隻1チームで構成されます.従って.敵艦が13隻であることは.ま
ずありません」

サポートAIがさっきの発言に注釈を加えてくれた.少し(余計なお世話だ)とも思っ
たけど。

 「チームが4隻編成だなんて聞いてないよ」

 「当たり前だ。教えてないからな」

突然ホロビューに髭オヤジ(ゲンドウのことだよ.もちろん)の顔が映る。

偉そうに何言ってるんだ.この髭オヤジは。

まあ.ここはオヤジを詰問するより疑問を解明するほうが 先だろう。

僕はなんとか気持ちを落ち着け.髭オヤジに話し掛けた。

 「何で1チームが4隻なんですか?」

 「パドック艦が4隻までしか搭載出来ないからだ」

 「じゃあ何でパドック艦は4隻までしか搭載できないんですか?」

 「1チームが4隻編成だからだ」

.....止めた.この人と話すと凄く疲れる。今は戦闘に集中しなくちゃ。

僕がコックピット一杯に広がるホロビューに目を向けると同時にサポートAIが警告を
発してくる。

 「ミスタ・シンジ.戦闘宙域のアステロイドベルトにすでに到着しております。
 
へリング級駆逐艦が4隻.射程距離ぎりぎりにまで接近しています.直ちに回避行動に
入って下さい」

言われた通り.小魚みたいな艦が4隻.目前まで迫ってきている.でも.どうやって艦を
動かキんだ?

(どうやってここまで来たのかって?戦闘宙域に着くまではサポートAIに連れてきて
貰ってたんだよ)

どうやって避けるのかも判らないままあたふたしているうちに.敵艦はインパルス砲
を撃ってくる。

その瞬間.頭が真っ白になって.僕は思わず体を斜めに倒していた。

(家庭用ゲーム機でレーシングゲームとかやるときに体倒す奴がいるだろ?あんな感
じだと思ってね)

すると.気がついたときには僕はインパルス砲を避け.敵艦の裏側に回っていた。

とりあえず.手元のスティックにトリガーが有ったので引いてみると.さっきの小魚の
インパルス砲の

数倍の大きさのプラズマ弾が発射され.密集していた小魚は2隻が同時に爆発して消え
てしまった。

 「凄い.....」

僕がその威力に呆然としていると.サポートAIの声がまた僕を現実に引き戻す。

 「まだ敵艦は残っています。戦闘に集中して下さい」

周りを見渡すと一気に2艦不能にされて呆然としていた。

 「それじゃ....」

僕はスティックで狙いを付けてインパルス砲を連射.ぼーっとしている敵艦をさらに2
隻戦闘不能にした。

はっきり言って.シューティングのノリだね.これは

 「後方からドラーダ級標準戦艦が接近してきます」

サポートAIの声と同時に直接頭の中に「コッチの方!」というイメージが流れ込んで
くる。

 「じゃあ.この『時空転換魚雷』っていうの.いってみようかな」

僕は手元のホロビューに映っている装備一覧を見ながらサポートAIに命令する。

 「了解.時空転換魚雷.発射します」

ホロビューに映っている説明によると.これは超空間弾殻とかいう怪しい代物に対消
滅前の物質と反物質を詰

めて.次元の隙間に 滑り込ませるというもので発射する前にプログラムしてある程度
は自由に動かせる(あく

までプロ グラムの範囲内で) らしいんだけど.なんだか怪しい説明だなあ....

発射と同時にEVA-01からグリーンの光線が伸びていく......
あれ?巡洋艦が艦首を翻して後退していくのを光線が追跡していくけど.全然スピー
ドが違う.

振り切られてしまった。仕方ないなあ。

こっちに後ろを向けて逃げていた その戦艦には副砲を2.3発お見舞いして.僕は次の
目標に向かった。





>SYSOP

 「更に1隻戦闘不能!」

愛機のドラーダカスタム=パロットのコックピットでパドック艦からの報告を聞いて.

ケイオスの顔が新しい玩具を見つけた子供の様に変わり始めた。

 「面白くなりそうじゃないか。よし.駆逐艦は2隻アステロイドに隠れて待機しつつ
.敵艦に探知妨害を かけ

ろ。 残りの駆逐艦と巡洋艦は俺に続け!」

この瞬間.戦場にSEELE屈指のプレイヤー.ケイオス・アイダが舞い降りた。

実は.ホロビューに映る彼の顔をうっとりとした顔で見ていた彼の副官が居たりする
のだが.

それはまた別のお話。



そのころ.パドック艦に居る髭オヤジは...

 「ちっ!避けおったか.」

シンジがへリングの攻撃を躱したのを見て.悔しそうに舌打ちをしている。それを見
て.周囲の人間は全員

 <避けなかったらテストにならないんじゃないだろうか....?>

と思ったが.いつものことなので誰も口に出さなかった。

 「まあ.NERV屈指の天才エンジニアである私が設計した艦だから誰にでもあのくら
いは操縦できるがな」

 <自分で言うなよ....>

とその場にいた誰もが思ったが.(またかい)実際NERV.SEELE双方合わせてもゲンド
ウほどの腕のエンジニア

は5人も居ないだろう。つまり.ゲンドウはこの時代屈指のエンジニアと言っても過言
では無いのである。

(実際には『この時代屈指のマッドエンジニア』だが) 

と言うのも.ゲンドウは基本的に自分が面白ければ.後はどうでもいい人間なので.設
計した艦に不必要な改造を

施したり.無茶な装備を着ける事を至上の喜びとしているのだ。だから.どんなに性能
のいい艦でも.誰も乗りた

がらないのだ。

まさに悲劇の天才である(自業自得だが)。そのために.タイムマシンなどという酔
狂な代物を作って別の時

代からパイロットとしてシンジを連れてこなければいけなかったのだ。

 「思考制御を使ってるから.誰にでも操縦できるでしょ?」

 「いや.そうでもないんですよ」

ただ一人.果敢にも(?)ゲンドウに反論したユイだが.近くにいたオペレーターに反
論されてしまった。

 「何が違うと言うの?」

 「そうとう無茶なスペックにしたらしくて.凡人じゃろくにシンクロ率が出なくて
動かせないんですよ.

あの艦。あの子.シンジ君でしたっけ?彼は苦もなく動かしてましたけどね」

確かにEVA-01は今までのゲンドウ設計の艦と比べても.更に無茶なスペックのようだ。

何しろ.ただの宇宙戦艦に島宇宙間要塞砲やその他ヤバくて使えないような物まで装
備しているのだから。

 「よくWASCOがレギュレーション違反にしなかったわね。この艦」

 「そうですね。こんな艦が4隻も有ったら.NERVに反乱起こせますよ」

 「そうね」

ユイは苦笑しながら応えた。

 「でも.今回の戦闘の相手ヘあのケイオスよ。

シミュレーションもせずに初めて艦に乗ったシンジ君に勝てる かしら。」

 「問題無い。いざというときの手は打ってある」(ニヤリ)

ゲンドウ笑いを浮かべながら(ゲンドウだから当たり前か?)不安なことを言うゲン
ドウ。

ゲンドウより遥かに常識人 であるユイはそんな夫を見ながら.

 「そんなことにならないように祈るしかないわね」

と言うのであった。





>sinji

僕は巡洋艦を撃沈した後.アステロイドの中を進んでいたけど.あれから1隻も敵艦が
見つからない。

 「敵艦が居ないよ?レーダーか何かで調べられないの?」

 「ミスタ・シンジ.敵駆逐艦に探知妨害をかけられているようです。敵艦の反応は
有りません」

ふーん.そんなこともできるのか。でもそのせいでレーダーは使えないみたいだし.

アステロイドのせいで視界は悪いし.どうしようかなあ..... 

とか考えていると突然アステロイドの陰から敵艦が数隻出てきて.こっちにプラズマ
弾の雨を降らせる。

 「うわあぁぁっっ」

衝撃と共にホロビューがオレンジ色に染まる。

 「左舷に被弾。ダメージは軽微です。戦闘に差し支えありません」

なんとかインパルス砲を撃ちかえそうとするんだけど.敵艦は撃ったらまたすぐにア
ステロイドの陰に隠れて

移 動して.別の所から砲撃を繰り返してくる。一発一発の威力は弱くても.こう連続
して喰らっていると

そのダメージも馬鹿にならない。当然.まだ探知妨害はかけられているので.敵艦の位
置はもちろん.

アステロイドの向こうに敵艦が何隻隠れているのかさえ判らない。

ヤバイ状況だよね.これって。

 「主砲を最大出力で前方に発射。その後アステロイドを破壊した跡を通って全速で
離脱.....できるよね?」

 「はい。ですが主砲を最大出力で発射せずに高速連射モードに切り替えればアステ
ロイドを破壊しながら

離脱することが可能です」

 「じゃ.主砲を高速連射モードにセット」

 「主砲.高速連射モードにセット完了」

僕は前方に向かってインパルス砲を連射しながら離脱し始めた。

(インパルス砲を発射しながらの全速離脱は無理だったけど....)

 「ミスタ・シンジ.敵艦から通信が入っています。回線を開きますか?」

そう言うサポートAIに僕はふとした疑問をぶつける。

 「通信探知妨害がかかってるんじゃなかったの?」

 「至近距離なら妨害がかかっていても通信が可能なのです。回線を開きますか?」

 「うん。開いて」

 「了解。非暗号化標準波長.ホロビュー表示します」

そう言うと目の前のホロビューの隅に別の画面が開く。その画面に映った相手を見ると.

その相手はくせっ毛でやや茶色の髪.ふちなしの眼鏡.そばかすがある童顔と言っても
差し支えなさそうな顔.

そして着ているものは.....迷彩服ぅ?

どこかで見たような......

 「ケンスケじゃないか!こんな所でなにしてるんだよ?」

 「何を言っているんだ?俺はSEELE所属のパイロット.アイダ=ケイオスだが?」

あ.人違いか。よく考えるとケンスケが31世紀にいるわけ無いんだよなあ。でも.『ア
イダ』って言ってるし.

こんなに似てるんだから.あながち他人とは言えないんじゃないか?

 「ごめんなさい。で.僕に何の用ですか?」

 「『何の用ですか?』じゃない!貴様.軍人のくせに敵に背中を向けようというのか
!?」

よくわからないことを言ってくる。『軍人』だなんて.こいつ本当にケンスケじゃな
いのか?

 「僕.別に軍人じゃないんですけど.....」

 「黙れ!一度艦に乗って戦場に出たら.それは軍人なのだ!そもそも軍人というの
は......」

ぷちっ

あ.通信が切れた。

 「距離が離れたため.通信回線が切れました」

今のはなんだったんだろう......?ま.いいか。

 「どうしようかなあ......とりあえず.装備一覧もう1回見せてよ」

僕は今度は念入りに装備をチェックする。艦のスペックも教えずに戦場に出すなんて.

何考えてるんだ.あのオヤジ

これと.これを使うかな......ただインパルス砲を撃つだけじゃつまらないしね。ち
ょっと工夫してみよう。




>SYSOP

ケイオスは不機嫌だった。(またか)

敵が目の前で逃げ出したのだ。

彼にしてみればこれは許されるべき事ではない。 いや.あってはならない事だ。

 「敵前逃亡か.....俺の部下だったら.軍法会議ものだぞ」

ちなみに.この時代には軍法会議などというものは存在しないので.普通の人間はそん
な言葉は知らないのだが.

一体彼はどこでそんな知識を得たのだろうか。

 「必ず撃沈してやるからな.......」

ケイオスは独り言を言った後.ある事に思い当たった。 

 「しまった!はめられたか!時間切れを狙う気だな」

そう.通常は余り戦闘時間を決めたりはしないのだが.今回に限ってNERV側からその事
を申し出てきたのだ。

たいした影響は無いと判断したケイオスはその申し出に応じたのだが.相手が1隻だけ
なら話は別だ。

何しろ.こちらは既に4隻失っているのに対して相手は大した損害
から。

(因みにこの申し出を考えたのはユイではなくゲンドウである。こういう卑怯とも言
える裏ワザは艦長のユイ

よりも性格の悪い夫の方が得意なのだ。彼はある意味『ジオフロント』一の策士と言
えるだろう。ゲンドウも

ただのマッドエンジニアでは無いのである。)

 「くそっ.探知妨害をかけている艦以外は敵艦を探せ !駆逐艦2隻は通信索敵妨害
をかけ続けろ」

その奇妙な命令に.巡洋艦に乗っている部下が聞き返してくる。

 「は?索敵妨害をかけたまま敵艦を探すんですか?」

 「バカ野郎!索敵妨害を解いたら.狙い撃ちにされるかもしれないだろう!」

 「はあ......じゃあ光学探知だけで探すんですか?」

 「そうだ.至近距離になれば電波探知も使えるだろう。行け!」

回押すの部下は渋々動きだす。それもそうだろう。

さっきまでは待ち伏せをしていた側なのに.今は自分達待ち伏せに遭うかも し れな
いのだから。

 「最初から時間切れまで逃げるつもりだったのか.....卑怯な奴め」

ケイオスはもはや不機嫌を通り越して怒っている。

12隻がかりで戦艦1隻に負けたとなれば.SEELE艦隊上層部での彼の評価が下がるのも
ほぼ確実だろう。

そんな事でケイオスが気を悩ませていると遥か遠方のアステロイドの向こうに爆発が
見えた。

 「何っ!?」

驚きつつも.爆発が見えた所にケイオスが急行してみると.

そこには彼の部下が乗っていたソーレル級巡洋艦の残骸が散らばっていた。

 「奴が近くに居るのか?」

辺りを見回してもそれらしい艦影は見えない。

光学カメラでズームアップして念入りにアステロイドの陰を探してみると.EVA-01の
艦影が見えた。

 「そこかぁっ!!」

すかさずインパルス砲を打ち込むと.EVA-01の艦影が爆発も起こさずに消えた。

 「爆発が無い.....?どういうことだ?」

不審に思っていると.後ろ側のホロビューが真紅に染まる。

 「どうしたっ!?」

慌てた彼がサポートAIに被害を報告させると.感情の無い冷たい声が答えてくる。

 「左舷後方から時空転換魚雷の直撃を受けたものと推測されます。左舷の相転位炉
一基が使用不能.

左舷主砲も使用出来ません。」

不意打ち.というやつだ。

いかにケイオスが一線級のプレイヤーだと言っても.後方から不意打ちを喰らっては
無事では済まない。

 「仕方ない.自動修復装置起動」

 「了解.自動修復装置を起動します」

ケイオスが不意打ちで受けた傷を直していると.また遠くで爆発が起こった。

 「くそっ!あんな子供に好き勝手にされるとはな」

(そんな事を言っているケイオスは20歳。ケンスケそっくりな事を考えるとずいぶん
童顔だ)

 「時間切れを狙っていたと見せ掛けていたのは罠だったのか?」

ケイオスがよくわからない独り言を言っていると.サポートAIが報告をしてくる。

 「パドック艦から通信が入っております。回線を開きますか?」

 「通信?通信索敵妨害をしていたへリングはやられたのか?まあいい.回線を開け」

 「回線を開きます」

通信回線を開くと.画面一杯にマユミのバストショットが映し出される。

 「良かった。ケイオス様は御無事でしたか.」

 「無事?どういうことだ?」 

補佐官の奇妙な第一声にケイオスが聞き返すと

 「ケイオス様以外の艦は全艦撃沈されてしまったんです」

 「全艦だと?まだこっちには俺以外にも6隻いたはずだぞ!この短時間に6隻とも撃
沈されたと言うのか?」

 「はい.確かに6隻いましたが.どの艦も同時に多方向からのミサイル攻撃を受けて.
....」

 「多方向からの同時攻撃.....?敵艦は1隻ではないのか?」

 「WASCOの記録を見ますと.この戦闘にはパドック艦は『ジオフロント』しか参戦し
ていませんし.

『ジ オフロント』には1隻しか戦 艦は登録されていません」

そう.確かこの戦闘に参加しているのはシンジのEVA-01だけである。マユミの報告が
正しいとすると.

ケンスケの部下達は1隻しか居ない敵艦から同時に多方向からの攻撃を受けたことに
なる。

 「どういうことだ.......?」

先程と同じ台詞を言うと.ケイオスは

 「仕方ない。自動修復装置は電源カット.電波探知を開始しろ」

 「電波探知.開始します」

ところが.部下が謎のやられ方をしたためか.

今日のケイオスはいつもの彼と比べると.判断が少し甘かったようだ。

 「敵艦確認.艦種不明。方向.下方。相対位置差000」

 「真下か!!」

そう.ケイオスがパドック艦のマユミから報告を受けている間に

シンジは既に電波探知でケイオスをみつけていたの だ。





>shinji

僕は『ケイオス』さんからの通信が切れてから.

バルーンダミーと炸薬を最大にまで詰め込んだ時空転換魚雷をアステロイドの 陰に
ばらまきながら

敵艦隊から離れて行ったんだけど.その魚雷に敵艦の推進器の熱を追尾するようにプ
ログ ラムしてあったから.

敵艦が引っ掛かるまでサポートAIにこの艦の仕様を訊きながら待ってたんだ。

そしたら.案の定索敵妨害をかけていた敵の駆逐艦も撃沈されたから.

レーダーを頼りに残った敵艦の下から近付いて行ったってわけ。

(宇宙空間で『下』も何も無いだろうって言われそうだけどこの艦って鯛そっくりだ
から.

腹びれの方から見る と.どうしても『下』って言っちゃうんだよ)

随分長い間ぼーっとしてた所を見ると.パドック艦とでも通信してたのかな?

というのも.(サポートAIの受け売りだけど)僕が乗っているこのコックピットは『
バブルボード』っていう

次元的にこの宇宙から隔絶されいる小宇宙みたいなもので.『ジオフロント』や『EVA
-01』に搭載されている

プロジェクターを通して情報を伝達するだけで.その他のどんな影響も与えることが
できないらしい。

勿論どんな攻撃も与えられないから.髭オヤジが出撃前に「死にはしない」って言っ
たわけだ。

で.ここからが本題なんだけど.この『バブルボード』と外部との時間経過の差は.あ
る程度変更出来るそうで.

そのおかげでさっき僕は亜光速で飛んでくるプラズマ弾をアドリブで避けたりできた
わけだ。

でも.この経過時間の差は.パドック艦等の外部と通信するときは向こうに合わせない
といけないから.

その間に撃沈されることが結構あるって話だ。

で.この艦が今その状況なんだろう。

 「サブインパルス砲発射!」

僕は狙いを付けると副砲を2.3発撃ってやったけど.

突然敵艦が黒い霧のようなものに包まれて防がれてしまった。

 「何だぁ?」

思わず.僕が声をあげると.サポートAIが説明してくれた。

 「あれは『ハードバリアー』といって.ほぼ完璧にこちらの攻撃を防ぐことができ
るバリアーです」

声と同時に説明のホロビューが出てくる。

でも.そのホロビューを見る間も無く.その『ハードバリアー』は消えてしまった。

 「あれ?どうしたんだろ?」

 「通常.ハードバリアーはジェネレーターが加熱するまで数秒から十数秒保ちますが.

それよりもやや短いようですね」

十秒から十数秒って....それでもかなり短いんじゃないか?

でも.どうしたんだろ?

僕は少しだけ頭を悩ませると.数秒も経たないうちに(本当に少しだな)またサブイ
ンパルス砲を撃ち込む。

もともと左のヒレがもげていた敵艦の右ヒレの部分が吹っ飛ぶ。

鯛みたいだった敵艦が両わきを削られて妙にスマートな形になる(笑)。

 「敵パロット級戦艦から通信が入っていますが.回線を開きますか?」

 「うん。開いていいよ」

とは言ったものの.この艦.ケイオスさんが乗ってたやつだから.絶対に文句言ってく
るんだろうなあ。

多分.「卑怯だぞ!」とか・・・

 「卑怯だぞ!」

やっぱり(笑)。

 「何が『卑怯』なんでしょうか?」

 「自分はアステロイドの陰に隠れて.トラップで敵を倒すなんて.卑怯以外の何物で
もないだろう?」

さっき自分も待ち伏せしてたんじゃあ.....

 「そうですか.....すみません。何しろ今日初めて戦艦に乗ったもんで.

そういうのがよくわかんないんです。」

 「は.....初めてだったのか」

なんだか驚いてるみたいだなあ。なんだろう?

 「どうかしましたか?」

 「いや.何でもない。名前は何と言う?」

 「碇シンジですけど....」

 「イカリ=シンジか.....覚えておこう。」

 「はあ.....」

 「また会おう!」

あ.帰っちゃった。・・・・・勝負つけないまま帰っていいんだろうか?

とか考えているとサポートAIが報告してくる。

 「『ジオフロント』から通信が入っております。回線を開きますか?」

僕が返事をしようとすると.それよりも早く勝手に回線が開く。

すると.サングラスのひげ面が目の前のホロビューに大きく映し出される。

 「シンジ.何をしている?さっさととどめを刺さんか」

開口一番がそれか.....しかも呼び捨てだし

 「でも相手に戦意が無さそうだし......別にいいんじゃないんですか?」

 「だめだ。やれ!」

 「僕にはできませんよ。そんな事」

 「......そうか。お前には失望した」

何だろう?拉致されるときに全く同じ台詞を聞いたような気がする。

そのせいかもしれない。何故だか判らないけど凄くイヤな予感がする......

目の前のホロビューの中で髭オヤジは手元のコンソールを操作している。

何をする気だ?

 「了解。主砲発射準備」

 「はあ?」

サポートAIが主砲の発射準備をしている.....?僕は何もしてないのに.....

まさか.髭オヤジ?

 「主砲発射準備完了。発射します」

サポートAIの声がすると同時に前面のホロビューがオレンジ色に染まる。

プラズマ弾がまっすぐ飛んでいくと前方を後退していくケイオスさんの艦に直撃する。

もちろん.真後ろからの全くの不意打ちを喰らったケイオスさんの艦は爆発して四散
した。

 「何て事するんだよ!戦意の無い敵を後ろから撃つなんて」

 「何を言う。まだWASCOから戦闘終了の合図が来ていないのに勝手に後退する方が
悪い」

そ.そうなのか?正論に聞こえないことも無いけど.認めたくないな。

 「でも.そんな魔オて良心が痛まないかよ!」

 「そんな物は無い」

そんな物は無いって.....(汗)でも嘘じゃないような気もする.....

 「まあ.いいか.どうせ死なないんでしょう?」

 「ああ.死にはしない。死にはしないがな.....」(ニヤリ)

『死にはしないが』の続きは何だー?

まあ.多少は気になる事が残ったけど.発出撃で初勝利ってのは.いい成績だよね?

 「WASCOからこの戦闘は終了したとのい通信が入りました」

 「じゃ.帰ろうか」

 「了解.EVA-01帰艦します」





>SYSOP

 21世紀


その気配の正体はランニング中のトウジだった。

 「ワイや.惣流はこんな時間に学校で何しとるんや?」

 「なんだ.鈴原だったのか」

 「『なんだ』とは御挨拶やな。こんな時間に学校.....なるほど.そういうことかい」

 「な.何よ」

 「おおかたシンジを『肝試し』とか言って連れ出したんやろ?」

図星である。だがトウジの予想と違っていた事は.

いつもなら顔を真っ赤にして反論するはずのアスカが反論せずに俯いてしまった事だ。

これにはトウジも慌てた。

 「ど.どないしたんや.惣流?」

 「シンジが.シンジが居なくなっちゃったの」

 「はあ?」

 「・・・グスッ・・ア・・アタシが・・肝試し・・しようって・・・シンジを連れ
出したら・・ヒック」

アスカの言葉に泣き声が混じり始める。

いつもは気が強いアスカなだけに.その変わりようを見たトウジは焦ってしまう。

 「ま.まあ.泣いてちゃ判らへん。とりあえずワイが家まで送ってやるさかい.落ち
着いてから話せや」

 「・・グスッ・・でも.シンジが・・・」

 「惣流を送った後ワイが探したる!だから今は家に帰れ。なっ?」

 「うん.....」

いつになく素直なアスカ。

 <いつもはうるさいくらい騒ぎよるのに.シンジがおらんだけでこんなに変わるん
かいな>

今さらながら.シンジとアスカの仲(本人達は否定している)を再確認するトウジ。

 <しゃあない.ケンスケでも呼び出すかのぉ>

トウジとしても.数少ない親友と呼べる友人であるシンジが行方不明とあっては

心配しないわけにはいかないのだろう。かなり顔が焦っている。(素直なアスカを見
たせいもあるが)

 「シンジ.無事でいてね.....」

彼女の心配していることとはやや違った危険に巻き込まれているシンジは.

今まさに新たな運命の第一歩を踏み出 したところだった。


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ver.-1.00 1997-11/05公開
ご意見・感想・誤字情報などは guy02@geocities.co.jp まで。
============================================================================
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                 後書きっス(^^)

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========
どーも。GUYっす。
いやー.今回は説明を入れすぎて読みにくいったらありゃしない。(汗)
でも.第3話以降を読んで下さる方(居ないかも)は読んでおかれたほうがいいかと
思います。
実は.これを書いている現在(11/1 AM3:25)またテスト前だったりします。(爆)
どうも.私はテスト勉強しないといけないときに限って筆が進むようです。
我ながら困ったもんですね。
その結果は.........推して知るべし。(N2爆)←大家さんのパクリですけど
次回からシンジの艦隊に新キャラクターが登場します。
当てた方には先着一名様に.....何も出ません。多分。
でわであ.またテスト前に会いましょう。(こんなんでいいんだろうか.私)


 GUYさんの『WAR GAME』第二話、公開です。
 

 はじめての宇宙戦闘をのほほんと勝利したシンジ。

 ”死”が絡んでいないからこそ
 気が楽に行けるんでしょうか。

 シンジが居ないだけで
 パワーダウンしちゃったアスカのためにも
 無事に無事に・・

 がんばってね(^^)

 

 

 生き残ったシンジ以上に喜ばしいのは−−−

 ケンスケが結婚できたこと(^^)/

 ケイオスって彼の子孫ですよね?!

 あれほどの濃いキャラ、
 そうそういない!?

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 酬われないキャラに希望を与えたGUYさんに感想メールを送りましょう!

 

 

 やらなくてはいけない事があればあるほど、
 他のことのペースが上がる・・・

 私もそうです(^^;

 前回の投稿ラッシュ時には
 【掲示板】設置に精を出してしまったし、

 今回の投稿ラッシュ時は・・
 バナー作ったり
 いつもは後回しにしているコーナーの更新等々

 いかんですね(N2爆)  ←誰かの感想メールにあったものを無断使用中(^^;


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