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真創世記エヴァンゲリオン

第弐話

「白い少女」



ジオフロントの奥深くで、今強大な「力」が目覚めようとしている。
幾重にも架せられた拘束具から解き放たれたその姿は、いっそ禍々しいと言った方が良い代物だった。
鬼の様な顔。紫色の装甲に覆われた巨大な体。その全てが、凄まじいまでの「力」を内に秘めている様に
感じられた。

<汎用人型決戦兵器・人造人間エヴァンゲリオン初号機>

これが、その「力」の名前である。
人類の敵対者である正体不明の存在「使徒」を倒す事が出来る唯一の武器 「エヴァ」
言うなれば、人類の守護神とも言うべき「もの」である。しかしその姿ゆえに、

・・・・・・人が「使徒」、つまり神の御使いを滅ぼす為に創り出した「悪魔」・・・・・・

ケイジに居た整備員達は、常にそんな感想を抱かざる得ないでいる。
しかしそんな彼らの心の内とは裏腹に、使徒撃滅の為のエヴァ初号機出撃の準備は、順調に
進められていく。

・・・・・・自分達、人間が勝ち残るために。神に弓放てでも、生き残るために・・・・・・



「エヴァンゲリオン初号機、発進っ!!」

発令所に凛としたミサトの声が響き渡る。
その声を聞いた初号機のエントリープラグ内のシンジは、恐怖と緊張で青くなっている顔を更に引き締める。
次の瞬間、最終拘束具ごとリニアレールに固定された初号機は地上に向けて射出される。
L.C.L.である程度緩和されるとは言え、かなりのGがシンジに圧し掛かった。
そこいらのジェットコースターなどとは比べ物にならない重圧に耐えながら、シンジはそれが恐怖に打ち勝つ
唯一の方法だと言わんばかりに、一心不乱に念じ続ける。

・・・・・・逃げちゃ、ダメだ・・・逃げちゃ、ダメだ・・・逃げちゃ、ダメだ・・・・・・
・・・・・・僕は・・・逃げちゃ、ダメなんだ・・・・・・
・・・・・・じゃないと、また・・・・・・
・・・・・・そんなのは、もう嫌なんだっ!・・・・・・


エヴァ初号機発進より多少時系列を戻した地上では、エヴァ零号機のパイロットである少女、綾波レイが
自らの体勢を立て直すべく零号機を後退させていた。
碌な武装も持たない試作機である零号機ではやはり役不足だったのか、使徒との戦闘開始直後に
圧倒的な力の差を見せつけられる事になる。

ケイジから地上に射出されると同時に、使徒の側面にタックルを仕掛けシンジとミサトの乗った車を
助けた零号機は、敵よりも早く身を起すと使徒と距離を取って慎重に観察する。相手がどんな能力を持って
いるのか分からないからなのだが、使徒は単に起き上がるのに苦労していると言った様子でジタバタと
もがいていた。ビルとビルの間に挟まった所為か、なかなか立ち上がれ無い使徒。
暫くして、ようやく身を起こしかけた使徒を見たレイは、意を決して先手必勝とばかりに先制攻撃を
仕掛けた。
高振動粒子の刃を持つ、今唯一の武器であるプログレッシブナイフを構えると、まだ起き上がりきってない
使徒に向かって再度突っ込んだ。さほど素早い訳では無い使徒は全く避けられずにその仮面の様な
顔面にプログナイフを突き立てられ、またもや仰向けに倒れ込む。

その、生物ならば間違いなく致命傷になるであろう一撃に、結成されて以来初めての戦闘にかなりの
緊張を強いられていたネルフの職員、とりわけ発令所のメンバーは歓声を持って応えた。
だが、零号機の優勢はそこまでだった。プログナイフを抜き取ろうとした零号機の右腕に使徒は
いきなり下から掴み掛かった。そしていとも簡単に握り潰してしまったのである。

歓声が一転して悲鳴に入れ替わった発令所は、再び慌ただしく活動を開始した。そしてさらに彼らは
信じられない物を見る事になる。プログナイフが突き立てられたままの白い仮面のような顔を下から
押しのける様に新しい顔が浮き出て来るのを。

「んっ・・・・・・」

レイは、小さな呻き声を漏らしながら後退しつつ使徒の隙を突こうと様子を伺っていた。しかし、先ほどとは
打って変わった動きを見せる、使徒の連続して振り下ろされる腕による攻撃を避け続けながらでは、それも
中々上手く行かない。
それともう一つ、絶えること無く激痛を放ち続けている右腕が、着実に彼女から集中力を奪い去っていた。
パイロットの魂とエヴァを直接接続して操縦するアストラル・リンク・システムが仇となって、エヴァの
ダメージまでもをパイロットにフィードバックしているからである。
そのせいか、エヴァのコントロールに普段の訓練の時に見せるキレが無くなって来ている。

元来、試作機として造られた零号機は本来のエヴァとしての力を十全に発揮できるようには造られては
おらず、むしろ右腕以外は大きなダメージを負わずにいるレイは、善戦していると言って良かった。
しかし、重大な欠陥があるシステムや、本来ならエヴァに装備されるはずの武器がほとんど完成していない
こと、更にはエヴァをバックアップするために創られた要塞都市であるはずの第参新東京市も全体の
40%程しか稼動していないなど、余りにもレイの足を引っ張る要素が多すぎた。
流石に、いつもは鉄面皮と言ってもいいほど表情の変わらないレイも、少しだが焦りの色を滲ませ始めていた。


何一つ打つ手が無いまま町外れにまで追いつめられた零号機。エヴァを駆動させるために必要な電力を
供給するためのアンビリカルケーブルもそろそろ長さに余裕が無くなってきており、幾つもの面で
限界が見え始めていた。
レイが、無謀としか言いようの無い突撃を実行する覚悟を固めたその時、近くの山肌が割れ、リニアレールの
射出口が露になり、そして、紫色の巨人・・・エヴァ初号機がその姿を現した。

かなり唐突な出現だったせいか、使徒は初号機に視線を向けた。その隙を突いて初号機の側まで
一気に後退する零号機。しかしレイにも初号機の出現は予想外だったのか、彼女にしては珍しく困惑の
表情を浮かべたまま、身動きが取れなくなっていた。

『いい、シンジ君。あなたはまだ慣れてないんだから決して無茶をしちゃダメよ。いいわね』

初めて使徒を間近に見たシンジは、そのおぞましい外見と今も感じている妙な親近感の間のギャップに
戸惑いながら聞いた、ミサトのそれこそ無茶な科白に顔を顰めながらもとりあえず肯き返した。そして、
最終拘束具も外されて、真に自由となった初号機は大地に初めての一歩を踏み出した。
その、初めてエヴァに乗ったシンジがコントロールしているとは思えない滑らかな動きに、発令所の
面々は驚きを隠せないでいた。だから、その時ゲンドウが満足げに肯いたのを見ることが出来たのは、
彼の後ろに立っている、副司令の冬月コウゾウただ一人だった。

自分を見守っている大人達を驚かせている事も知らずにシンジは、そのまま零号機を守るように
使徒の前に初号機を進ませた。そして、背中側から伝わってくる「白い少女」の乗る零号機に意識を
向ける。

一点の曇りも無い純白のイメージを持った少女のヴィジョンが伝わってくる。先ほど「見た」時には
いっしょに感じ取った右腕の痛みでそれどころではなかったが、その圧倒的に奇麗なヴィジョンに
思わず心を奪われるシンジ。
その時、レイも初号機の中に一人の少年のヴィジョンを見ていた。その姿に、自分には有り得ない
はずの感情・・・「懐かしさ」・・・を感じ取った。そんな状況に困惑すると同時に、知らず知らずの内に
微笑みを浮かべるレイ。この時彼女は、生まれて初めて笑ったのだが、その事に気づくのはずっと
後のことになる・・・・・・

時間にすれば僅か数秒の事だったが、その隙を見逃すほど使徒は甘くは無かった。距離を詰めて
格闘戦を仕掛けようとする。

『シンジ君、危ないっ!!』

ミサトの声で正気に戻ったシンジは慌てて後ろに下がって避けようとする。だが、まだ慣れていない
所為か、けつまずいて更に後ろへと倒れ掛ける。そこへ零号機が左手を差し伸べて受け止める。まるで
零号機に抱き留められたような格好の初号機に妙な気恥ずかしさを感じたシンジはあたふたと起き上がり
使徒に向かって体を低く構える。
それを見届けたレイは、ヴィジョンの少年に心を残しながらも、ミサトの指示に従って初号機が出てきた
リニアレールでジオフロントのネルフ本部へと後退していった。

『シンジ君、エヴァの左肩にナイフが入っているわ。使って。』

ミサトの言葉に左肩へと意識を向けると、装甲が展開してプログナイフの柄がせり出してくる。それを
右手でしっかりと掴むと、先ほどより更に体を低く構え直した。

『シンジ君、顔が弱点では無いとするとおそらく使徒の弱点は腹部の青い球状の部分だと思うわ。
そこを狙って攻撃して。』

リツコの助言に肯いたシンジは初号機を一気に突っ込ませると青い球体にプログナイフを突き出す。
しかし、流石に動きが余り早くないと言っても真正面からの攻撃は簡単に避けて見せる使徒。だが、
シンジの攻撃はそれで終わりではなかった。素早く右側面に回り込んで再びプログナイフを突き出して
見せたのである。使徒はギリギリながらもその第二撃も避けきると、まるで慌てたように腰にある鰓の
ような部分を開くと、そこから圧搾空気らしきものを噴射して後方へと大きくジャンプして逃げて
距離を取った。
その一連の動きを見た発令所のメンバーは、呆気に取られて居た。先ほどから何かしら知っているような
素振りを見せているゲンドウですらも驚きを隠せない様子を見せていた。

「うそ・・・初めてのシンジ君にあんな事ができるなんて・・・・・・」

思わずミサトの口から洩れ出た科白にリツコが答えるように喋り出す。

「エヴァの操縦方法の利点は、明確なイメージさえ出来れば自分の体で出来る以上の動きをすることが
 出来る事・・・・・・だから理論上は可能だわ・・・・・・でもこんな事って・・・・・・」

リツコはそれだけ喋ると黙り込んでしまう。そして、幾許かの戦慄と共に声に為らない呟きを漏らす。

・・・・・・流石は、『ナチュラル』という事ね・・・・・・


使徒が逃げると同時に、シンジは更に追い討ちを掛けようと再度突っ込んで攻撃を仕掛けた。着地直後で
バランスを崩していた使徒に今度こそ命中すると誰しもが信じたその時、青く輝く六角形の光の壁が
使徒と初号機の間に出現して、初号機のプログナイフをいとも簡単に弾いてしまったのである。

「あれは・・・・・・A.T.フィールド・・・やはり、持っていたのね・・・・・・」

「リツコ、何とか為らないの?今のシンジ君では『あれ』をどうにかする事はまだ無理だわっ!」

「まず、無理ね。『あれ』を無効化するには同じA.T.フィールドを持つエヴァで位相空間に干渉して
 中和するしかないわ。わすれたのミサト、その為のエヴァなのよ。」

「くっ・・・何も出来ないって言うの・・・・・・」

初号機は、A.T.フィールドとの衝突のショックを殺しきれずに尻餅をついてしまう。そこに今度は
使徒が追い討ちを掛けて来る。使徒はおもむろに右腕を初号機に向けると、その三本指の中央から
青い光の槍とでも言うべき物を打ち出したのである。初号機の装甲を打ち据えた光の槍は、音も
立てずに腕の中に戻っていく。そして、また打ち出されて初号機を傷つける。
その後はもう、使徒の一方的なリンチと言った方が良い見るに絶えない光景が繰り広げられる事に
なった。

立て続けて自分の体にじかに叩き付けられるように感じられる光の槍の攻撃に、シンジは痛みと恐怖で
パニックを起こしかけていた。いつまで続くか分からないその恐怖に、彼の声にならない叫びが電源の
落ちてしまったエントリープラグの中に響きわたる・・・・・・


・・・・・・痛い・・・痛い・・・痛いよ・・・・・・



・・・・・・誰か、助けて・・・・・・



・・・・・・ミサトさん・・・リツコさん・・・・・・父さんっ・・・・・・



・・・・・・助けてっ!!・・・・・・





・・・・・・助けてよぉ・・・・・・













「・・・・・・守って、あげる・・・・・・」


不意にシンジは、自分を暖かく包み込んでくれる、守ってくれる「なにか」を感じた。今まで襲い掛かって
きていた痛みが嘘のように引いていく。
急に緊張が解けたからか、すぅっと意識が薄れていくシンジ。その途中、とても懐かしいものに再会した
ように感じながら・・・・・・

「初号機からの総ての信号、断絶しましたっ!初号機、完全停止したものと思われますっ!!」

発令所のオペレーターで、リツコ直属の部下でもある伊吹マヤが悲鳴のような報告をする。ミサトは
それを打ち消すかのように叫ぶ。

「エントリープラグの強制射出、急いでっ!!」

「駄目ですっ!こちらからの信号も全く受け付けませんっ!」

「そんな・・・・・・何も出来ないの、私たち・・・・・・」

使徒の光の槍に滅多うちにされる初号機。その眼から光が失われ、装甲の各所に亀裂が入り、プログナイフも
何処かに無くしてしまう。
発令所のメンバーのほとんどが絶望した、その時。

「奇跡」が、起こった。


今までのダメージを全く感じさせない動きで、右腕を自分を傷つけ続けている使徒の光の槍に叩き付ける
初号機。その腕が一瞬赤く光り輝くと、いとも簡単に光の槍を粉砕してしまう。
そのまま無造作に起き上がると、それまでのダメージを考えると、信じられないスピードで殴り掛かる。
しかし、それをやはり青い光の壁、A.T.フィールドで防ぐ使徒。だがそのままフィールドに取り付いた
初号機は、自らもその両手に赤いA.T.フィールドを展開し、無理矢理こじ開けていく。双方のフィールドが
干渉しあって紫色に変わった部分に開いた穴に、指を捻じ込むと一気に引き裂く。

「これは、彼女の仕業かな? 碇。」

自分の後ろに立つ、冬月の何処か嬉げでさえある声にゲンドウは、机に両肘を突き、口元で手を組み合わせる
彼がよくとるポーズのまま、答える。

「恐らく、間違いないだろう。しかし・・・・・・」

「しかし?・・・そうか。もっと早く出てきてくれれば、シンジ君が苦しまずに済んだ。とでも言いたいのかな?」

「冬月!」

「ははっ、分かっている。そう照れるな・・・・・・まだ、早すぎると言うのだろ。」

「ああ。」

「しかし、仕方が無かろう。こうでもしなければ、我々は勝てまい。今回も、そしてこれからも。」

「・・・・・・判っている、判ってはいるのだ。」

そして、二人はこれ以後、口を噤んだまま正面のメインスクリーンを見詰め続けた。まるで、
そうしなくては為らない義務があるかの様に。

使徒のA.T.フィールドを引き千切った初号機は、そのまま使徒に体当たりして押し倒した。その上に
馬乗りになると、使徒が両腕でガードしているのもお構いなしに腹部の光球目掛けて何度も、何度も、
殴り付ける。そのうち、使徒の両腕がひしゃげて使い物にならなくなると、一つめの顔に刺さったままの
零号機のプログナイフを引き抜き、逆手に持つと一気に振り下ろす。光球は呆気なく真っ二つに割れた。
使徒は、その全身から急速に力を失っていき、そして息絶えた。
初号機は、まるでそれを見届けて安心したかの様に、その場に座り込むと動きを止めた。

「使徒のエネルギー反応、完全に消滅しましたっ!!それから、初号機からの信号も回復・・・・・・パイロットの
 生存も確認されました!!」

マヤの報告に沸く発令所。しかしミサトは、周りの状況に流されずに厳しい顔のまま、指示を出す。

「パイロットの回収、急いでっ!・・・無傷のはず無いんだからっ!!」


「ここは・・・どこだろう?・・・・・・」

シンジは、まだ寝ぼけたままの目を瞬かせながら辺りを見渡す。しかし、判ったのは見た事のない白い
天井が見える事と、自分がベットに寝ていると言う事だけ。だんだんと覚めてきた頭が、それ以上の
情報を欲しがったので、取りあえず起き上がろうとする。

「・・・って、あれぇ・・・・・・」

だが、シンジの体は持ち主の意志に反して、まったく力が入らない。まるで、体が綿になったような
感じすらしてくる始末。途方に暮れたシンジは、ぼ〜っとしている内にまた眠くなってしまい、そのまま、
また熟睡状態まで転がり落ちてしまっていった・・・・・・

次にシンジが起きた時には、すぐ横に置かれた椅子にミサトが座っていた。

「ミサトさん・・・」

「シンジ君っ、体、だいじょぶっ・・・どこもおかしくない?」

安堵から来る満面の笑みを浮かべ、目尻に涙さえ溜めながらミサトは矢継ぎ早に質問して来た。

「え、えぇ・・・だいじょぶみたいです・・・・・・ここ、どこですか?」

「ここは、病院よ・・・やっぱり頭でも打ったのかしら?本当に大丈夫?」

「病院・・・・・・病院・・・・・・そうかっ!!」

ようやく前後の状況を思い出したシンジ。今度はシンジが矢継ぎ早な質問をする番である。

「僕は、どうなったんです?!・・・使徒は?!」

「・・・・・・覚えて、ないの?」

「はい。」

「大丈夫よ。使徒は、もう倒されたわ。」

「そうですかぁ・・・・・・よかったぁ・・・」

「ホントに覚えて無いのねぇ・・・いい、シンジ君。あなたが、使徒を、倒したのよ。」

「ええっ、そうなんですか!?・・・ぜんぜん覚えて無いや・・・使徒の光の槍にやられているとこまでは、
 覚えてるんですけど・・・・・・」

「そぉ・・・でも、大丈夫よ。アストラル・リンク・システムの副作用で、大きなショックを受けると一時的な
 記憶の混乱が起きるそうよ。だから、そのうち思い出すわよ。」

「そうなんですか・・・・・・だけど、よかった。僕、役に立てたんですね。」

「なぁに言ってるの!!あなたが居なければ私達みんな、やられてたわ。もっと胸を張ってシャンとして!
 それだけの事を、あなたはやったのよ。」

「・・・はいっ」

「うん、それでよろしい。・・・・・・あっ、お見舞い、もう一人来てるのよ。って言うかひっぱって来たんだけどね。
 今、呼んで来るからチョッチ待っててね。」

シンジは「もう一人」の心当たりがまったく無いので、首を傾げながら取りあえず待つ。すると、暫くして
ミサトに連れられて一人の少女が病室に入ってきた。
知らない学校の制服に包まれたき華奢な体つき、抜けるように透き通った白い肌、そしてなにより印象的
なのは、薄い空色の髪と、まさに「ピジョン・ブラッド」と呼ぶのが相応しい、澄んだ赤い瞳。
そんな飛びっきりの美少女が、である。シンジは半ば呆然と少女を見詰めてしまう。そのうちに、彼女が
あの「白い少女」であることに、気づく。

「顔を合わせるのは初めてよね。彼女が、綾波レイよ。」

ミサトに紹介されたレイは軽く会釈する。そんな彼女に思いっきり見入っていたシンジは顔を赤くしながら
アタフタと挨拶を返す。

「あっ、あの・・・碇シンジ、です・・・その、よろしく・・・」

「どうしたのかなぁ、シンジ君・・・ははぁん、さては、レイに一目ボレでもしたのかなぁ?」

「ち、違いますよぉ・・・・・・ただ、その・・・奇麗だなって・・・・・・」

「ふぅ〜〜ん、シンジ君もなかなか言うわねぇ。そ〜ゆ〜のを、「一目ボレ」って言うのよ。知らなかったの?」

「だ〜か〜らぁ、そうじゃなくってっ!!」

そのまま、ここが病室だという事など忘れさって、大声でじゃれ始める二人。シンジはともかく、ミサトは
かなり楽しそうである。まったくもって、大人げ無いと言うか何と言うか・・・・・・実に困った性格の持ち主で
ある事が判明し、シンジは内心、頭を抱えてしまう。

そんな周りの状況を、完全に無視してシンジをしばらく見詰めていたレイは、おもむろにシンジの寝ている
ベットのすぐ横までやって来る。その凄まじくマイペースな行動に、思わず呆気に取られる二人。

そして、レイは・・・そっと、言葉を紡ぎ出す。

「碇君・・・助けてくれて、ありがと。」

軽く頬を染めながらそれだけ言うと、レイは静かに病室を出ていった。後に残されたのは、初めてレイが
自分から話し掛けるのを見て、余りに珍しい出来事にびっくりしたまま固まってしまったミサトと、その
声と表情の可愛らしさに、完全にノックアウトされたシンジの二人だけだった・・・・・・


第弐話「白い少女」 完。


 

 


NEXT
ver.-1.00 1997-11/14 公開
ご意見・ご感想・誤字情報などは minato@cb.mbn.or.jpまで。

(後書き)
どうも、大変長らくお待たせ致しました。Minatoです。(って、待っててくれた人、居るのかなぁ?)
なんとか、第弐話が完成いたしました。ど〜ぞ、読んでやって下さいまし。
これで、最初のエピソードが終わり、やっとここから物語が始まります。この先、どうなるか私にも
判らないんですけど、もし宜しかったら、これからもよろしく。
ところで、感想でも、罵倒でもなんでもいいんですが、まだメールが来ないんですぅ!(涙)
おねがいっ!!どんなんでも良いですから、反応が知りたいんです。メール待ってます!!
では、第参話でまたお会いいたしましょう。

 P.S.
 ちなみに、この話はLRSです。LASな人、今の内に謝っておきます。ごめんなさ〜い。
 
P.S.の二乗
私事で恐縮なんですが、私の周りに綾波な人が一人も居ないんですよ。かなり、さびしい思いを
しております。(肩身が狭いんですよ。)ここまで読んで下さった綾波な人、よかったらメール
下さい。待ってま〜す!


 Minatoさんの『真創世記エヴァンゲリオン』第弐話、公開です。
 

 無事初戦クリアー(^^)
 

 アストラル・リンク・システム、
 ナチュラル、

 あえて原作と違う用語を用意して、
 使用していることにどんな謎が潜んでいるのでしょうね(^^)
 

 感情を出さなかったレイが
 早い段階でシンジと絡んだのもなにやらなにやら・・
 

 どう動くのかな?

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 綾波な人、Minatoさんに感想メールを送りましょう!


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