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・・・・・・・どこだろう、ここは?
ふと気がつくと、僕はよくわからない場所に立っていた。
周囲は霧がかかったようにぼやけ、はっきりしない。
両足が踏みしめているのも、そこが土の上であるのか
コンクリートの上であるのか区別がつかない。
なんだか空気がねっとりと絡み付くようだ。
妙な息苦しさと、浮遊感にも似た心地よさが同時に身体を包む。
そして僕は、ここがどこであるのか気がついた。
・・・・・そうか。
・・・・・・また、いつものあの夢か。
そう。
ここは夢の世界だった。
昔から・・・・・いや、正確に言えばあの日から。
月に一回は必ず見る、あの夢。
それは、何度見ても全く、以前と寸分の狂いもなく同じシーンを
繰り返すものだった。
そろそろ、かな・・・・・・・。
そろそろ、始まる。
僕は映画が始まるのを待つ観客のような気分で、それを待った。
やがて。
『・・・・・・・・・シンジ。』
僕の名を呼ぶ声。
声の主は分かっている。
忘れようにも忘れられない声。
父さんの声。
それを意識した瞬間。
僕の目の前に、人の姿が現れる。
父さんの姿が。
父さんは無骨な、何かの制服を思わせる服装に身を包み、
その厳しい目に赤いレンズの眼鏡をかけていた。
誰一人として許す事のないような、冷たい顔つき。
黒々とした髭に覆われた口が、次の言葉を紡ぐ。
『シンジ。これからお前は私の弟の所に行け。そこで面倒を見てもらえ。』
『どういう事?父さん。』
僕の口が勝手に言葉を吐く。
『言った通りだ。弟にはもう話をつけてある。もう二度と会う事もあるまい。』
『な・・・・・何で?父さん!どうして?』
激昂して叫ぶ僕。
それに対して相変わらず何の感情も露わさない調子で父さんは答えた。
『シンジ。お前は魔法使いではない。魔法使いでないお前などに用はない。』
そう言って父さんは背を向けた。
ふと気付くと父さんの傍らには、一人の、4、5才くらいの少女の姿があった。
少女は僕をじっと見つめている。
紅い瞳に見据えられ、僕は寒気を覚えた。
『行くぞ。』
父さんはその少女の肩に触れる。
すると少女は父さんと同じに僕に背を向けた。
そしてそのまま二人共歩き去っていく。
僕は動けない。
すでに声も出せない。
いつものように。
二人の姿が遠ざかり、見えなくなりかける、その時。


「はっ!」
僕は目を覚ました。
混乱する頭。
心臓が激しく動悸している。
それがおさまってくるとだんだん周囲の状況が見えて来た。
僕の部屋。
ベッドの上で僕は身を起こしていた。
タオルケットが足元にかかっている。
身体にぐっしょりと汗をかいているのは昨夜の暑さのせいではなさそうだった。
「また・・・・・あの夢・・・・・・・。」
僕は枕元の目覚し時計を見た。
4:25AM。
もう一眠りしようかとも思ったけど、とても眠れそうにないのでやめた。
シャワーでも浴びよう。
洗面所でタオルと下着の替えを準備しておくと、僕は風呂場へ入った。
湿気が身を包む。
水温を40度に設定すると、僕は蛇口をひねった。
シャアーーーーーー。
シャワーから熱い湯がほとばしる。
それを頭からうけながら、俯いて僕は呟いた。
「いつになったら僕は・・・・・・、」
湯煙が風呂場にこもる。
濡れてダラリと下がった前髪から、シャワーの湯がそのままたれていく。
「あの夢から解放されるんだろう・・・・・・・・・・・・。」




僕のために、泣いてくれますか (第四話)








僕とミサトさんのほとんど同居のような生活。
その生活の中に惣流さんも入ってくるようになっていた。
まず、朝。
これは今まで通り僕はミサトさんの部屋へ行って彼女を起こし、二人で朝食。
その後僕は登校する前に惣流さんのマンションまで出向き、
彼女をお迎えに参上する。
ちなみにミサトさん、惣流さん、自分の分の三人分のお弁当を
僕は毎日作っている。
そして夕方。
惣流さんは毎日のように僕か、ミサトさんの部屋へやって来る。
友達と町で遊んだ後だったり、学院の授業が終わった後、ミサトさんと
一緒に帰ってきたり、直接僕と一緒に帰る事もあった。
そして三人そろうと夕食が始まる。
何故自分の家で食べないのかと惣流さんに聞いた事もあったけど、
一人暮らしなのだと言われて納得した。
最初の内こそ彼女と一緒に居る事に緊張もしたけど、
最近ではもうすっかりリラックスする様になっていた。
そんなある日の、金曜日の事。
ホームルームが終わり、開放感と共に明日、明後日の休みを
どう過ごそうかとクラス中がざわついてる中。
「ちょっとシンジ。」
惣流さんが話し掛けて来た。
僕は鞄を整理する手を止め、彼女の呼びかけに答える。
「なに?惣流さん。」
「シンジ。あんた今日これからあたしに付き合いなさい。」
「ええ?」
「なによその顔は。買い物に行くから荷物持ちに連れてってやろうっていう
あたしの深あい優しさが分かんないの?」
「ちょ、ちょっと待ってよ。今日はケンスケ達と遊びに行く約束があるんだよ。
他の日なら付き合うけど・・・・・・・。」
「なんですってえ。このあたしに、あんたに合わせたスケジュールで
行動しろって言うの?」
「い、いや、でも・・・・・・・。」
「そもそもあんた、相田達との約束の方があたしとの
買い物より大事だってえの?」
「そ、そういう訳じゃないけど、で、でも前から約束してあったし・・・・・・・。」
しどろもどろに言い訳をする僕。
どう考えても分は僕にあるはずなのだけど、結局論議というものは
迫力で決まってしまうものだ。
徐々に僕は劣勢に立たされていった。
「だいたいねえ・・・・・・・・・・・・。」
「あんたは・・・・・・・・・・。」
すでに惣流さんの一方的な攻撃になっていた。
僕はそんな言葉を黙って聞いている内に、ムカムカしたものが
込み上げて来る事を感じた。
僕だって自由に遊んでいいはずだ。
なんでここまで彼女のわがままに付き合わなければならないんだ。
なにが下僕、だよ。
そこまで考えた時。
僕の中で何かが切れた。
「うるさいな。」
僕はボソリと呟いた。
その声を聞きつけた周囲の何人かがぴたりと動きを止める。
「なっ・・・・・・・・・・。」
当然惣流さんにも聞こえたらしい。
彼女は信じられない物を聞いた、という風に呆気にとられていたけど、
やがて怒りに震える声で言った。
「・・・・・・ちょっとシンジくうん?
今なんて言ったのかなあ?」
遠くの方に居て、僕らのやりとりを聞いていなかった
クラスメート達も、その声音に何かを感じたらしい。
皆がこちらを見ていた。
「な・ん・て・い・っ・た・の・か・な?」
再び聞いてくる彼女。
僕は平然とした顔で答えた。
「うるさいって言ったんだよ、惣流。」

僕の言葉は、今度こそクラス全員の身体を凍り付かせた。
今まで僕が惣流に正面切って反抗した事はなかったのだ。
「な・な・な・な・な・・・・・・・・・・・・・・。」
惣流の顔は真っ赤になっていた。
「まったくいつもいつも。
いい加減子供みたいなわがまま言うのはやめろよな。」
「なんですってえ!
バカシンジが随分言うようになったじゃないのよ!
家事しか取り柄のないくせに生意気よ!」
「なに言ってんのさ!
惣流なんて、女なのに家事はからっきし駄目じゃないか!」
「あたしは天才だから家事なんてする必要ないのよ!
それにいざとなれば魔法でちょちょいっとやっちゃうんだから!」
「勝手に魔法を使ったら違反だろ!」
彼女は、ぐっ、と言葉につまる。
クラスの皆は、ほとんど呆然と僕ら二人の喧嘩を見ていた。
声を聞きつけたのか、他のクラスの人まで外から覗き込んでくる。
「・・・・・・・んん、ん。お、覚えてらっしゃいよ!
バカシンジの分際でこのあたしに逆らった事を後悔させてやるから!」
「へえー。どう後悔させてくれるのか楽しみだね。
じゃあ僕はもう行くよ。行こう。トウジ。ケンスケ。」
「あ、ああ。」
僕が友達二人に声をかけると、彼らは思い出した様に返事をした。
そのまま僕ら三人は教室を出て行く。
後には烈火の如く怒りを秘めた惣流と、それを恐る恐る見守る皆が残された。



「いやあ、よう言ったシンジ!わしゃあ自分を見直したで!」
学校を出て、繁華街へ向かう途中、トウジが僕に話し掛ける。
「い、いや、そんな。ただなんかカーッときちゃって、
気が付いたらあんな事になってたんだ。」
「いやいや。ああいう女はいっぺんビシッと言ってやらなあかんのや!
甘やかすとどこまでもつけあがるからの!」
・・・・・このインチキっぽい関西弁を使っているのは鈴原トウジ。
学年の中でも一、二を争うスポーツマンで、
一年中、いついかなる時でもジャージを身に付けている所から、
女子からは(軽蔑を込めて)ジャージ男と呼ばれている。
「でもさ、相手はあの惣流だぜ。来週学校で会った時、どんな事になるか。」
とケンスケ。
「そないな事にビクビクしてどないすんじゃ。
男が女になめられるようになったらお終いや!
シンジかてそう思うやろ?」
「う、うん。」
「ま、二人共がんばってくれよ。俺は巻き添え食うのはごめんだよ。」
僕とトウジ、そしてケンスケは、いつのまにかこうして一緒に
つるむようになっていた。
特にトウジと仲良くなった時には、それなりの事件があったのだけど、
わざわざ今思い出す事もないだろう。
「どっかで腹ごしらえしてかんか?わし腹へって死にそうや。」
「昼あれだけ食っといてよく言うよ。」
「いくら食おうとへるもんはへるんや。ええやろ?シンジ。」
「うん。僕もいいよ。」
結局僕らはトウジのために、行き付けのラーメン屋へ足を運ぶ事になった。
「なあ、シンジ。」
「え?」
行く途中でケンスケが話し掛けて来た。
「惣流の事だけどな。」
「う、うん。」
「とっととお前から謝っちまった方がいいぜ。
いや、惣流が恐いとかそういう事じゃなくってさ。
惣流はああいう性格だから、たとえ自分が悪くても、
なかなか素直には謝れないと思うんだ。
変にお互いに意地張ってると、このままずっと仲直り出来なくなるぜ。」
「うん・・・・・そうかもしれない。」
そもそも僕は、なんであんな事を言ってしまったんだろう。
やっぱり今朝、”あの夢”を見たせいで、今日はちょっと
イライラしていたのかも知れない。
ケンスケの言う通り、今夜にでも電話で謝ろう。
きっと今日惣流は家には来ないだろうから。
そう考えてしまうと、妙に気持ちがすっきりした。
「ありがとう、ケンスケ。」
「別にいいって。」
彼は口元をほころばせて笑った。



「ふう・・・・・・・結構遅くなっちゃったな。」
時計を見ると既に八時をまわっていた。
トウジ、ケンスケと街をあちこちまわって、三人共遊び疲れて別れた頃には
もうこんな時間になってしまっていた。
ミサトさんには電話で連絡してあるから、食事は自分でなんとかしてもらおう。
周囲を見渡すと、夜の八時だけあって繁華街も表通りは
少し寂しくなって来ている。
きらめいているのはパチンコのネオンサインだろうか。
飲食店やゲームセンターなどはまだ開いているけど、デパートや
小さな商店などはほとんどが店を閉めている。
裏通りはむしろこれからという所だろうけど、もちろん行くつもりなどない。
僕はぶらぶらという感じでマンションへの道を歩いていく。
歩きながら、もし何だったら惣流のマンションへ直接出向いて謝ってもいいな、
と考えていた。
と、いつのまにか彼女の事を惣流、と呼び捨てにしている事に
今更気付いてちょっと驚く。
教室での喧嘩の時に初めて呼び捨てにして、それからずっと
そのままだったらしい。
これから彼女の事をどう呼ぶか、
惣流さん、か、惣流、か、
それともいっそのことアスカ、と呼んでしまうか迷ったけど、
結局惣流、と呼ぶ事にした。
その呼び方が何となく一番しっくりくる気がした。
そんな他愛のない物思いに耽っている時。
ふと、あるものが僕の目を引いた。
それは、路地だった。
すでに明かりの消えたデパートのビルと、
やはり店じまいした二階建ての洋服店。
その二軒の間にある幅二メートルにも満たない路地。
そこに僕は興味を持った。
路地の出口は暗くてよく判らない。
何の変哲もない普通の路地なのに、無性に中に入ってみたくなったのだ。
・・・・・・どうしよう。
どう考えても馬鹿げてる。
何が面白くてこんな所へわざわざ入っていかなければならないんだ。
どうせこんな所入ったって裏通りへーーーまっとうな中学生が
行ってはいけない店店の連なる通りへ出るだけだ。
行っても何にもならない。
そうだよな。
僕は一人納得してその路地を無視して行こうとした。
しかし。
別にいいじゃないか。何もなくたって。
ほんの2、3分だ。
試しに入ってみてもいいじゃないか。
そういう思いも浮かんだ。
そうだよ。
入ってみよう。
僕は決心して、その路地へと足を踏み入れた。
・・・・・・後から考えてみれば。
何故僕はあの時引き寄せられるようにあの路地へ入ってしまったのだろう。
いまだに分からない。
強いて理由をつけるとすれば・・・・・・。
運命。
ででもあったろうか。
僕がその日、その時、その路地へ入る事は運命によってあらかじめ
決まっていた事だったのかもしれない。
僕はその運命に導かれるままに。
ただ行動していたのかもしれない。
しかし。
すでにそんな事は考えても詮無い事だ。
ともかくその時僕は、その路地を通っていった。
・・・・・・その路地は、妙に長く感じられた。
実際はほんの数十秒だったろうけど、
十分も二十分も歩き続けた様な錯覚を覚え、やはり向こうの出口まで行かずに
ここで引き返そうかと思い始めた時。
唐突に目の前が開けた。
路地を抜けたのだ。
そして・・・・・・・・
僕は呆然とした。
僕の視界に入った景色。
それは僕が想像していたような怪しげな色町ではなかった。
そこは。
一言で表現するならば。
廃虚だった。



「なによ!なによ!なによ!バカシンジのやつ!」
惣流・アスカ・ラングレーは腹を立てていた。
その怒りの相手は当然彼女の”下僕”である碇シンジであった。
なんでバカシンジのくせにあたしに逆らうのよ!
アスカにとって、シンジが自分の”命令”に逆らうなどという事は
あってはならないことだった。
しかもその後の口喧嘩で、自分が負けた形になってしまった事も
怒りに拍車をかけていた。
親友の洞木ヒカリと一緒に、予定していた買い物には行ったものの、
どんな洋服を見ても、おいしいパフェを食べても、彼女のストレスは
発散されなかった。
おまけにヒカリにまで
「アスカが悪い。」
と言われる始末。
その場はヒカリの論法に負けてしぶしぶ納得はしたものの、
家に帰ってシンジの事を思い出すと、無性に腹が立った。
そして今、本来殴られるべきシンジの代役を、
全長1メートルのペンギンの人形が果たしている。
「ふー。」
怒り疲れたのか、アスカは人形を抱いてベッドの上にゴロン、と寝っ転がった。
「シンジ・・・・・・。」
ふっ、と呟く。
そりゃあ、あたしだってちょっとは悪かったかもしれないけど。
だからってあんな言い方する事ないじゃない。
うるさい、なんて言われたら誰だって怒るわよ。
それ以前に自分がシンジにもっとひどい言い方をしている事を忘れている。
アスカはちら、と電話を見た。
彼女は自宅に電話は入れていない。
全て携帯で済ませている。
掌に収まるサイズで、可愛らしいマスコットがついているそれには、
すでに百件近い電話番号が登録されている。
シンジの番号も当然登録されており、それは登録順の最初に位置していた。
もっともそれには別に深い意味はなく、ただ単に一番よくかけるから、
という理由に過ぎない。
「・・・・・。」
彼女は待った。
携帯がコールの音を響かせるのを。
しかし、いくら待っても、喧嘩中の相手からの謝罪の電話は
掛かっては来なかった。



「ど・・・・・どこだ・・・・・・?ここ・・・・・・・。」
僕は惚けた様に呟いた。
僕の目の前に広がっているもの。
それは廃虚だった。
無数のビル。
アスファルトの道路。
数え切れない看板や標識。
かつてはたくさんの人で賑わっただろう、そんな繁華街。
しかし、それは夢だった。
ビルは瓦礫と化し、辛うじて原形をとどめている物もガラスは割れ、
壁面は無数のひびが入っている。
電柱は倒れ、切れた電線からはすでに電気が通っていない事を知らせる。
ハンバーガーショップの電気看板が斜めに地面に突き刺さっている。
常識を超えた規模の大地震に見舞われたかのよう。
生命の影は少なくとも視界には入らなかった。
「どこなんだよ・・・・・・・。ここ・・・・・・・。」
答える者はないと知りつつも、呟かずにはいられなかった。
ぞくり、と寒気が身体を襲う。
ここに居てはいけない、と本能が警鐘を鳴らしていた。
戻ろう。
さっきの路地を抜けて。
僕は自分の出てきた路地に入ろうとし・・・・・・・。
愕然とした。
・・・・・路地がない!
僕がさっき、間違いなく出てきた路地のあるべき場所には、
瓦礫の山が積まれているだけだった。
「な・・・・・何だよ・・・・・・どうなってるんだよ・・・・・・・。」
僕の声は、図らずも震えていた。
常識外の状況が、僕の恐怖の許容量を呆気なく超えてしまっていた。
「どこなんだよお・・・・・ここは・・・・・・・。」
僕は三度同じ問いを呟いた。
答えは近くにあった。
すぐ近くに。
・・・・・・・・・ん?
足元の、カラン、という音。
何かを軽く蹴飛ばしたらしい。
僕は足元をみた。
そこにあるのは、大学ノートぐらいの大きさのスチール製の標識だった。
青地に白抜きで文字が書いてある。
それを読んでみた。
あちこちひん曲がり、錆び付き、読むのに苦労したけど、
何とか二文字の単語を読み取る事が出来た。
その単語は、こうだった。

”新宿”

新宿。
しんじゅく。
シンジュク。
そう読めた。
聞いた事の無い地名だ。
いや。
聞いた事がある。
どこかで。
どこだったろうか。
思い出せ!
思い出すんだ!
僕は頭を振り絞った。
・・・・・・・・・・・・。
やがて。
僕の思考が、何かを掴んだ。
そして、するすると幾つかの事象を絡み合わせ、
一つの結論が僕の目の前に表された。
「・・・・・・馬鹿な!」
僕は知らずに叫んでいた。
こんなはずはない。
こんな事があるはずがない。
しかし周囲の状況は、僕の導き出した結論が正しい事を裏付けていた。
「そんな・・・・・馬鹿な・・・・・・・。」
僕はうめいた。
「ここが・・・・・・。」
ヒュウ、と冷たい風が身を包む。
「こ・・・・・ここが・・・・・・・。」
ごくり、と唾を飲んだ。
これ以上、言葉を続けたくなかった。
この先を言ってしまったら、自らこの”現実”を認める事になる。
しかし。
その言葉は。
解き放たれた。
僕の口から。

「・・・・・・”旧東京”だなんて・・・・・・・!」





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ver.-1.00 1998+02/04公開
ver.-1.00 1997-09/04公開
ご意見・感想・誤字情報などは kawai@mtf.biglobe.ne.jpまで。

 河井さんの『僕のために、泣いてくれますか』第四話、公開です。
 

 シンジ、急展開! ですね(^^)

 アスカに逆らい、
 ”惣流さん”から”さん”が取れて、
 友達が出来ていて、

 そして、

 旧東京に現れて・・・
 

 生活、

 性格、
 世界。

 シンジ、急展開! です。
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 貴方の感じたことを河井さんに伝えましょう!


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