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 『使徒襲来』。
 2年前に突如現れ、人類を滅亡の危機に瀕させた謎の生体兵器の襲来の事で
ある。
 そしてそれは今では『福音戦争』と呼ばれていた。
 人類は生き残り、そして今再び全世界にその版図を広げようとしている。
 世界を守ったのは、二人の少女。
 そして、一人の少年。


 爆発。
 そして数十人の人の足音が入り乱れる。
 破壊された照明。
 暗がりの中を、ガチャガチャと音を言わせて走る男達。
 その手には黒光りする鋼鉄の銃があった。
「何処へ行った!」
「防衛システムを破壊されています!」
「…機密データが破壊されました!!」
「Bブロック突破されました!!」
 入り乱れる声。
 そして一人の影が、その中を突っ切った。
「いたぞ!!」
「足を狙え!生け捕りにしろ!!」
「元老からの指示だ!殺せ!」
 錯綜する声。
「撃て!!」
 一人が大声で指示を出し、それに追随して銃声が響き渡った。
 全員が侵入者の崩折れる姿を夢想した。
 だが。
「何だと!?」
 もうもうと煙る硝煙の中、人影が立っているのが見える。
 その影は突如動いた。
 巨大な影が男達をなぎ払う。
 それは巨大な腕のような物だった。
「まさか…奴なのか!?」
 一人の男の絶叫。
 そして、沈黙。



DEATH or REBIRTH?

  第1話『日常』




「アスカ〜、朝だよ〜」
 少年の声がドアの向こうから聞こえる。
 少女はベッドの中でまどろみながら、うっすらとその目を開いた。
 美しいサファイアの瞳が、ぼんやりと天井を映し、そして横に視線を移動さ
せた。
 時計の針が7時30分を指している。
 いつも通りの時間だ。
「アスカ〜?」
「もう起きたわよ」
 ドアの向こうにいる少年にそう告げ、少女、アスカは着替え始めた。


「おはよう、シンジ」
「おはよう、アスカ」
 既に聞き慣れた挨拶。
 アスカの目の前には、少し伸びた黒髪の、ほっそりとした体型の少年が立っ
ていた。
 2年前より背も伸び、体つきも男になっている。
 だが、その顔に浮かぶ微笑みは変わらない。
 いや、2年前よりも自然に浮かぶようになった。
「ミサトは?」
「昨日も夜勤だったらしいよ。まだ寝てる」
「…って、今日はあたし達の入学式じゃないの!」
 保護者がそれでどうする。
 アスカの言葉に、シンジは苦笑する。
「仕様が無いよ。ミサトさん、忙しいんだから」
「あんたねぇ」
「それともアスカ。アスカは式に保護者が来なくちゃ嫌なの?」
 からかうようにシンジが尋ねる。
「んなっ!誰もそんな事言ってないでしょ!」
 顔を真っ赤にして、言い返すアスカ。
 それをシンジは面白そうに見ている。
「それよりも!早く朝ご飯食べましょ!入学式から、あたしは遅刻したくない
わよ!!」
 そう言うと、アスカは自分の朝食に箸を付け始める。
「はいはい」
 にっこり笑うと、シンジも朝食を食べ始めた。



 第三高校。
 碇シンジと惣流・アスカ・ラングレーは、揃ってこの学校に入学していた。
 春という季節が巡ってきたのは、16年ぶりだろうか。
 2年前の福音戦争以来、日本には季節が戻ってきたのだ。
「…どーやら遅刻はしないですんだようね」
「……アスカ。走らないでも間に合ったよ。絶対」
 校門の前で時計を見ているアスカと、その横で息を整えているシンジの姿が
あった。
「良いじゃないの。早く着く分には」
 悪びれないアスカの言葉に、シンジはため息をつく。
「もう良いけど…」
 すっと姿勢を正すと、シンジはアスカの横に並ぶ。
 隣に立つ少女を見下ろす高さ。
 2年の歳月は、こんな所で確認できた。
「…ところでアスカ。さっきから視線を感じるんだけど」
「バッカじゃないの?この美少女が隣にいるのよ。あんたも注視されんのは、
自明の理じゃないの!」
 さも当然のように、アスカはそう言いきる。だが彼女は心の中で付け加えた。

 ついでに言うと、格好良い男が一緒に立ってるからよ。

 シンジは母親似だったらしく、年々顔立ちは整っていった。時々見える男の
顔が、はっと思わせる程である。
 均整の取れた体型と、その顔があれば注目されるのも当然だろう。しかし、
アスカがそれを告げる事は無かった。
 理由は…推して知るべしである。
「…成る程」
 シンジはようやく合点がいったように、そう呟いた。

 ホンットに鈍感ね。こいつ。

 アスカはそう思って苛々するも、シンジが今もフリーな理由の半分が、その
鈍感である事を思い出し同時にほっとする。
「ほら、さっさと行くわよ!」
 アスカはそう言うと、シンジの右腕を掴む。
「分かったよ…」
 シンジは苦笑すると、アスカに引っ張られるように歩き出した。


「おはよーさん、シンジ!」
 背後から掛けられた声にシンジは振り返り、そして破顔した。
「おはよう、トウジ、ケンスケ。それに洞木さん」
 彼の目の前には三人の少年少女が立っていた。
「おはよー!アスカ」
「ヒカリ、おはよう」
 にっこりと笑うアスカ。
 中学からの級友である鈴原トウジ、相田ケンスケ。それに洞木ヒカリである。
「なんや、やっぱ自分らは一緒に居ったな」
 にやにやと笑うトウジを前に、アスカが憮然とした表情を浮かべる。
「何よ。一緒に住んでるんだから、仕様が無いでしょ!?」
 そんな風に言い返すが、真っ赤になった状態では無意味だろう。
「…そうだよ、トウジ。一緒に住んでるのに、わざわざ別に来る必要も無い
じゃないか」
 実に平然と、少しずれた発言をするシンジ。
「…シンジ。お前は変わらないな」
 ケンスケの嘆息と一緒に吐かれた言葉に、シンジは不思議そうな表情を浮か
べる。
「…何か間違った事言った?」
「いや、間違ってない。間違ってないが…」
 ケンスケはそれ以上、何かを言う気力を失ってしまった。
「ホラ!さっさと中に入らないと、入学式が始まっちゃうわよ!!」
 ヒカリの声にシンジ達は時計を見る。
「…やっば〜」
「ほれ!急ぐで!」
 トウジ、ケンスケが走り出す。
「あ、待ってよ二人とも」
 シンジ達もその後ろに続いた。







「…それではデータは完全に破壊された、と言うのか?」
「…は」
 老人を前に、男は大きな身体を縮ませる。
「愚か者!!相手を何故最深部まで侵入させてしまったのだ!!」
 老人の一喝に、男は必死に弁解を始めた。
「で、ですが相手は…」
「しかもたった一人だと!?貴様ら、何をやっていたのだ!!」
「ですが!相手はGなのですよ!!」
 男の怒声とその内容に、老人の顔が強張った。
「……な、なんだと…」
「『G』です!あの化け物に、我々がかなう訳が無いでしょう!!」
 男の絶叫。
 そして老人はその顔を青ざめた。
「……まさか……奴が……奴が来たと言うのか…」
 震える声。
「…Gからのメッセージが残されていました」
 男は最後にそう続けた。
「『次は無い』。だそうです」
 老人の顔は既に死者のそれであった。







「碇シンジ。第一中学から来ました。よろしくお願いします」
 シンジの挨拶が終わる。
 女子の視線が集中しているが、シンジはそれに気付かない様にさっさと自分
の席に座る。
 いや、実際には注視される理由が分からないのだ。
 アスカは幸いな事にシンジと同じクラスになれた。
 ヒカリやトウジ達も一緒である。
 そこまでは良い。
 だが今のアスカの表情は、これ以上無いくらい不機嫌であった。
 入学式を終えたアスカ達が、自分の教室に入ってすぐに、それは起こったの
だ。


「あ、あの!碇シンジ君ですよね!?」
 教室に入ったシンジにそう声をかけたのは、同じクラスの女子だった。
 長い黒髪にクリクリと良く動く瞳。
 全体的に活発な印象を与える少女。シンジよりも頭一つ分、小さいだろうか。
「え?ええ、そうだけど…えと、君は?」
「あ!私、月岡アマネって言います!その、同じ中学だったんだけど…」
 その言葉にシンジは、一瞬考え込む表情を見せる。
 だがすぐに、済まなそうな顔になる。
「ごめん…覚えてないや」
 その言葉にアマネは首を振る。
「ううん、私、碇君と話すのは、今日が初めてだから…」
 少し頬が赤らんでいる少女を前に、シンジは戸惑った表情を浮かべる。
「その…一緒のクラスになれたのが嬉しくって…つい」
 そんな言葉にシンジも一瞬顔を赤らめた。
「えと…その…」
「ちょっとシンジ!何そんな所で突っ立ってるのよ!!邪魔よ邪魔!!」
 突如起こった背後からの怒声に、シンジは振り返る。
「アスカ、そんな言い方無いじゃないか」
「教室の入り口で突っ立ってるなんて、邪魔以外の何者でも無いじゃない!」
 アスカの言葉にシンジは、自分が立っている場所にようやく気付いた。
「あ、ご、ゴメン!」
 そう言って退くシンジをキっと睨み付け、アスカは教室から出ていった。
「あ、あの、それじゃ私も。呼び止めてごめんなさい」
「あ、うん。それじゃ」
 アマネはそう言うと、飛び跳ねるように他の女子の所に駆け寄って行く。
「し〜ん〜じ〜」
 背後からかけられた声に、シンジは振り向く。
「トウジ?」
「もてるやないか、セ・ン・セ!」
 ぐいっと首に腕を回し、シンジの頭を小突く。
「何言ってるんだよ」
「またまた〜」
 それはいつもの風景だった。


 アスカはぼんやりと外を見ていた。
 あの後すぐにホームルームがあった為、アスカもすぐ教室に戻ってきたのだ。
 そして気付いた。
 シンジを遠巻きにして、女子がひそひそと何かを話している。
 その内容は大体予想がついた。

 ……馬鹿シンジのくせに…。

 そう思うも、自分の内面から沸き上がる別種の感情には抗いようも無い。
 2年の間、彼女はずっとシンジの同居人だった。
 そして今も、である。
 あの戦いを生き残った時、シンジは強くなっていた。
 傷ついていたアスカを包み込めるほどに。
 そして気付いた。
 自分がなぜ、シンジを拒絶していたのかを。
 恐かったのだ。
 誰かに依存しなければ生きられないと、自分が認識するのが。
 そしてその相手が『碇シンジ』だと言う事が。
 だが彼女は認めた。
 自分が依存では無く、共存していきたいのだと言う事を。
 ただ寄りかかるのでは無く、支えあっていきたいと言う事を。

「えと…それじゃ惣流さん?あなたの番です」
 女性の担任の言葉にアスカは立ち上がった。
 颯爽と立ち、そして笑みを浮かべた。
「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしく!」
 男子がひそひそと話しているのを満足げに見、そしてシンジの方を見る。
 と、シンジと目が合う。
 にこり、と微笑むシンジに、アスカの頬に朱がさす。
「どーしたの?アスカ」
 前に座るヒカリが小声で尋ねるが、アスカは何も言わずに首を横に振った。





 子供の泣き声が聞こえる。
 何処から?
 何処から聞こえる?
「…どうしたの?お嬢ちゃん」
「…お兄ちゃん、だれ?」
「お兄ちゃん?お兄ちゃんは、シンジって言うんだよ」
 にこりと微笑んだのは、碇シンジだった。
「どうしたの?」
「お母さん、いないの…」
「…はぐれちゃったの?」
 こくん、と肯く少女。
「そっか…よし!お兄ちゃんと一緒に探そう?」
 シンジはそう言うと、少女を抱き上げた。
「いっしょに?」
「そう。必ず見つけてあげるから」
 優しく微笑みかけ、シンジはそう約束する。
「ほんとうに?ぜったい?」
「絶対の本当に」
 シンジの言葉に少女は破顔した。
「うん!」
「良し!それじゃ行こうか!」
 シンジはそう言って歩き出した。





「あら、遅かったわね。シンジ君」
 振り返ったマヤの前に、シンジが立っている。
「すいません。お母さんとはぐれた子供がいたもので…」
「また?…フフッ、優しいのね」
 マヤがそう言って含み笑いをするのを、シンジは黙ってみていた。
「…性分ですから」
 シンジはそれだけを言うと、マヤの横に立つ。
「今週も、良いですか?」
「ええ。大丈夫よ……でも…」
 マヤは小さく答える。
「……目覚めてはいないわ」
「……死んでなければ、望みはあります」
 シンジはそれだけを言うと、部屋の奥のドアに消えた。





「ただいま〜」
「おっそーい!!」
 玄関からそう言って上がると、即座にそう返される。
「…アスカ」
「何処行ってたのよ!」
「何処って…買い物に」
 そう言ってシンジは、右手に持ったスーパーの袋を見せる。
「なんでこんなに時間がかかるのよ」
「…タイムサービスが始まるまで、待ったからね」
 シンジはそう言って、アスカの横を通りすぎる。
「…シンジ」
「ん?」
 背後からかけられる声に、シンジは立ち止まった。
「あたしに……何か隠してる事…無い?」
「……無いよ。そんなの」
「あたし達は…もうNervの関係者じゃ無いわ。2年前の戦争でEVAは消
失し、パイロットもお役御免になった…あたし達がこうしているのは、あくま
でも機密保持の為…」
 アスカの言葉にも、シンジは振り返らない。
「ファーストも死んじゃった…。あたしには…帰る所も無いわ」
 そう言ってシンジの背を抱きしめるアスカ。
 シンジは何も言わない。
「…だから…恐いのよ…。あんたまで、あたしをいらないって言うんじゃない
かって…」
 震える腕。
 アスカは最近、虚勢を張る事を止めたようだった。
「…隠し事は無いよ。本当に」
 シンジはそう言って、アスカの腕から脱け出す。
「本当に?」
「うん」
 そう言って微笑むシンジ。
 アスカは一瞬何かを言いかけ、そして俯いた。
「分かったわ……ね、シンジ」
「ん?」
「お腹減っちゃった!」
 その言葉にシンジは苦笑を浮かべる。
「分かったよ。すぐに夕飯作るから」
「早くね!」
 シンジがキッチンに消えた後、アスカはソファーに座り込んだ。
 そして自分の膝を抱える。
 その表情は、先程までの明るい表情とはまったく正反対だった。
「……ウソツキ」
 アスカはそう呟く。シンジに聞こえないように。



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ver.-1.00 1997-11/23公開
ご意見・ご感想、誤字脱字情報は tk-ken@pop17.odn.ne.jp まで!!

 ども、お久しぶりのKeiです。
 今回のお話は、使徒襲来後のお話です。が、『翼音』とは繋がってませんので
ご了承下さい。
 それでは、第2話にてお会い致しましょう。

1997年11月20日 脱稿 Kei

 Keiさんの『DEATH or REBIRTH?』第1話、公開です。

 

 ニブチンシンジと、
 彼に思いを寄せるアスカ(^^)

 この辺りはLASっぽいんですが・・・
 

 マヤとシンジのシーンや
 ”G”とかから察するに、

 このLASシチュエーションは−−−

 

 ”DEATH”のあとの”REBIRTH”、
 う〜・・・・リバースして欲しいぃぃ(^^;

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 Keiさんに貴方の感想とか予想を送りましょう!


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