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大ぼけエヴァ

第伍話 レイ、心のつっこみ
 

私がこの第3新東京市立第壱中学校に転校して来て一週間が過ぎた。
たった一週間の間にほんと、いろんなことあったねー。
友達もすぐにできちゃったしね。
碇君、アスカの夫婦漫才コンビ、関西弁ジャージの鈴原君にその耳を引っぱるヒカリ、残りの相田君。
特にアスカなんかぼけたら、ちゃんとつっこんでくれる。
痛みを伴うけど。
もっとも、私が誰かにつっこむケースは少ないの、なぜか。
まあ、これからもこの調子で面白いことが続いてくれたら言う事なしだよねー。
今日はどうなるんだろ?
楽しめる事がありますように・・・ふふっ

 



 

「そう言えば碇君、部活動はしてないの?」

休み時間中にふと、思いついた疑問・・・・・
一週間も経つのにそんな事も知らなかったんだよね、私。

「僕はどこにも入ってないんだ。」

「どーして?」

「小学校の頃から音楽教室でチェロを習ってるんだけど学校のほうには弦楽器の弾ける部がなくてね。だから今も部活動の代わりにそっちのほうでチェロを続けてるんだ」

「ふ〜ん、じゃ、アスカは?」

「アスカも小学校から水泳教室に通ってて、今もそっちのほうを続けてる」

「でもこの学校にも水泳部ってあるんでしょ?」

「う〜ん、あるんだけどアスカは学校の水泳部で泳ぐのが馬鹿らしいって言って・・・」

「ちょ〜っと待ちなさいよ!馬鹿らしいってなによ!」

あっちの方でヒカリと話してたアスカが目にも止まらぬ早さでとんで来て碇君につっこむ。
しかも絶妙のタイミングで。

「そんな言い方したら勘違いされるじゃないの!アタシは速さを競うだけの水泳をやるつもりがないって言ってるだけよ!」

どう言うことだろ?これは聞かずにはいられない。
 
 「じゃ、どんな水泳をやりたいの?」

「海よ海!アタシはスキューバーダイビングをやりたいの!潜りたいのよ!せまいプールで記録争ってるより広い海で魚と戯れてみたいのよ。海中の神秘の世界をこの目で見て、この体で感じたいの。今、水泳教室で練習してるんだから・・・・ああ、今から夏休みが待ち遠しい!」

窓ぎわに歩み寄り、遠い目をしてアスカは空を見上げる・・・って海の話して空眺めてどーするの
って突っ込もうとしたら、

「嘘言え、単にシンジといっしょに学校帰りたいだけやんけ」

「な、なんですってえ!

ポンッ

「こら、レイもなに手を打って納得してるか〜!」

一週間分しか知らないけど、アスカと碇君はいつもいっしょに下校してる。
部活動してないからこそ、可能なことよね。
アスカの説明よりジャージの一言のほうが説得力があるよ。
んで、アスカはどう切り返すのかな?

「仕方ないでしょ、帰る道が同じなんだから!」

「時間までいっしょやんけ」

「・・・・!!!」

くくくく、考えてる考えてる、顔真っ赤にしながら・・・言い返す言葉が見つからなかったらバクハツするしかないって感じ。
碇君もどう言っていいかわかんなくて、手出しできない様だし・・・

「鈴原、おやめなさいよ、もう!」

「いて、イインチョなにすんねん・・」

鈴原君の左耳をヒカリが慣れた手つきで引っぱり上げた。
これ見るのもう五回目、ワンパターン・・・他にレパートリーないのかな?

「これ以上アスカを刺激しちゃダメ!もうすぐ授業が始まるってのに」

「わかったわかった、離してえな・・・・イインチョがこっちの耳だけ引っぱるもんやから、左が右の倍になってしもたわ」

「・・・・・・ほんとに仕様がないんだから」

おいおい、ボケてるのにそのセリフはないでしょ、つっこんであげなさいよ!
アスカなんて体全体でつっこんでくるのに。
この二人の仲が進展しないのはこんなところが原因なのかな?
会話がはずまないもんね。
日常会話が漫才の関西人に対応する術がないのよ。
ヒカリって真面目でお笑いに縁がなさそうだから・・・・

「ところで綾波、」

おっと、真っ赤なままのアスカを気遣ってた碇君が、突然こっち向いて話し掛けてきた。

「綾波は部活動はやらないの?」

「へっ?わたし?」

「もう一週間たってるからそろそろ学校の事も判ってきたんじゃないの?入りたい部なんてあるのかな」

そんなの全然考えてなかったよ、今まで。
転校してから色々、おんもしろい事あったもん、二日に一度位のペースで。
どんな部があるかなんてまったく調べてない・・・

「うーん、そうだなぁー・・・」

みんなこっち見てる。
注目されてるからにはここは一発、決めねば!

「どうしたの、早く言いなさいよ!」

急かすのは自分の顔色戻してからにしてよアスカ、今考えてるから・・・
ええと、私のしたいこと、私のやりたいもの、興味のあること・・・・

あ!そうだ!!

私は受けねらい抜きで思ったままの事を口に出していた・・・・・
 
 
 

「ねえ、科学部ってないの?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あれ、みんなどうしたの?ダルマさんがころんだじゃないんだから。
これじゃ私がオニみたい・・・ あ、アスカが動き出した。
 

「アンタバカァ?そんな部あったら大変でしょが!誰が顧問になるのよ!!」

「当然、理科の先生・・」

アスカが風の様な速さで私の背後に回り、技を掛けようとする。
私、たぶん、天然ボケしたみたい。
だったらつっこみを受け止めるしかない。

「そんな事言うのはこの口か〜!」

アスカの両手が私の口どころか鼻までふさいだ。
こりゃ、技でもなんでもないよ。

「む、むぉめんまむぁい、めも、むぉんみめ言っまもみょ〜」

ピ〜ンポ〜ンパ〜ン

 四時間目のチャイムが鳴り響いた。
アスカが私の顔に巻き付いた両手を仕方なさそうにほどく。

「アンタ、ろくでもない事考えるのはやめときなさいよ!」

なんて言いながら肩いからせて自分の席に戻ってく。
他のみんなも右に習え・・・・
 あ〜あ、休み時間なんてすぐ終わっちゃうんだから・・・・・
 
 



 

四時間目の授業が終わったら、私はすぐ購買にパンを買いに走ってく。
人気のあるパンはすぐなくなるからねー。
でも何故か私の好きなのは、売れ残ってしまう事が多いんだよね。
ウッシッシコーヒー(もちろん、UCCコーヒーの事だよ)と、カレーコロッケパンと焼きそばパン
ウインナー抜き(私肉が・・・)を買って帰る途中、校庭から裏庭へ入っていく人影を見かけた。
私は迷わず追いかける。
裏庭に駆け込み、さっきの人影を求めてあたりを見回すと・・・いた!
彼女は畑に低い木が何本も生えてる所で枝をいじってる。

「リツコ先生〜〜」

駆け寄る私のほうを振り向いたリツコ先生は、冷静な眼差しを私に向けた。
実験の授業の時とはまるで別人なんだよね。

「あら、どうしたの、綾波さん?」

先生の口元が少しゆるんだ様に見えた。
私、もしかして気に入られているのかな?
私もリツコ先生は好きなの。
だってホントに楽しそうに授業やってるんだもん。
実験の時だけだけど。

「ちょっとお話があるんですよー」

「なにかしら?」

「先生は部活の顧問はやってないんですか?」

「やってないわ・・・」

「どうしてやらないんですか?」
 
「あなたこそどうしてそんな事聞くのかしら?」

「ええっと、それは・・・」

なんと言えばいいんだろ?
カイコが見たいとは言えないし・・・

「科学部とか理科部とかあっていいと思います。先生がいるんだから」

リツコ先生は額に手を当てて首を振った。

「面白いこと言う子ね、でもだめなのよ。わたしは自分の事で手一杯だから・・・そう、自分のやりたい事をやる為に今、ここで教師をしてるようなものだから・・・わがままかもしれないけど」

リツコ先生は空を見上げた。
焦点のはっきりしない瞳で・・・なにが見えるんだろ?
きっと心の中ではなんか見えてるんだろなー。
・・・無理だとは思ってたの、科学部なんてあったら理科準備室を私物化しにくくなりそうだし。
よし、だったら頭を切り替えて、と。

「リツコ先生、私、先生が何をしたいのかよくわかんないけど、その・・・最後までやり抜いて下さい!私、応援します!」

「お、応援って、・・・綾波さん、あなた本当に面白い子ね!」

リツコ先生、少し驚いた顔で私を見た。
私がリツコ先生を驚かせた・・・・なんだかちょっとうれしい。

「綾波さん、そろそろ戻りなさい。お昼まだでしょ、缶コーヒーがぬるくなっちゃうわよ」

そう言いながらリツコ先生はかがみこんで畑の土をいじくり始めた。
畑に生えてる木は高いので2、3mほどで、下の方の枝のところどころが畑に埋められてて、そこからまた木が生えてるみたい。

「最後に聞きたいんですけど、この木なんの木?」

「これはわたしが栽培しているの。これは・・・(ニヤリ)・・・桑よ

桑って確か・・・・・・カイコの餌!

瞬間、リツコ先生の眼つきが実験の時と同じになってギラッと光った。
負けてられないわ、私も両目を赤く光らせた。
赤いのは元々だけど、光らせるのに気合いがいるのよー。

・・・・・・・・・・・

数秒間アイコンタクトを取った後、お互いの眼光がもとに戻ったところで私はリツコ先生におじぎした。

「先生それじゃ、失礼しまーす。」

「ええ、また授業でね。」

「はーい!」

私は身をひるがえすと裏庭を駆け抜けていった。
ちょっとの間だったけどリツコ先生との会話はとっても楽しかった。
みんなどうしてリツコ先生を敬遠するんだろう?
面白い人だと思うけどなあ、何考えてるのかまだ良くは判んないけどね・・・・先生は私の事をどう考えてるんだろ?

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「得体の知れない子ね・・・・・・・・」
 



 

教室に入るとみんなはもう、昼食を食べていた。
まあ、これは当たり前か・・・鈴原ジャージなんかもう御馳走様してる。

「レイ、遅かったじゃない、アンタにしては」

「うん、寄り道してて。(プシュッ)実はふらひはへリフホへんへーほ(んぐっごくんっ)話ひをひへへ・・・」

「アンタバカァ?いい加減にしてよね、もう!」

「アスカ、綾波の言ってること判るの?」

「判るわけないでしょ!でも絶対ろくでもない事よ!」

ヒャフハ、はっへひひへふへひゃい へひょ、じゃない、アスカ、勝手に決めつけないでよ、もー!
でも、この二人いい呼吸してるなー、会話にもちゃんとオチがあるし。
年期が入ってるというやつかな?

「アスカ、憶測でものを言うもんじゃないわ。折角仲良く食事してるんじゃない」

「わかったわよヒカリ・・・で、なんていったの?」

またせかす、まだコロッケが口の中につまってるのに。

「ひゃはら、(んぐ、んぐごっくん、御馳走様)部活動の顧問をやるつもりないのか聞いたら、リツコ先生その気はないっててて〜」

「やっぱりか〜!」

アスカが飛びかかると同時に私を片羽絞めで極める。

「惣流も大変やの〜、突っ込む相手がセンセと綾波、二人もおって」

「なによそれ!アンタだってヒカリにつっこまれてるじゃないの!」

「なにゆーとんねん、あんなん突っ込みとは言わんわ!」

「ふーん、鈴原君、ヒカリの耳引っぱりは突っ込みと思ってないの」

「こらレイ、極められながら会話に参加するなー!」

「だって口はふさがってないよ」

そう言ったところで、ある疑問が私の頭に浮かんだ。
ヒカリがジャージに突っ込みと思われてないなら・・・・

「鈴原君、関西人はボケても突っ込まれないと寂しくなるっていうけど、ヒカリがちゃんと突っ込んでくれないと寂しい?」

「レ、レイなに言い出すの?」

ヒカリが簡単に真っ赤になっちゃった。
赤面するような事言ってないのに。
んで、鈴原君なんて答えるだろ。

「アホ言え、そんなもん気にするけぇ!第一、家帰ったらいくらでも突っ込む者んなんておるわい!ちょっとぼけただけで容赦なく、しかも寸評までしよるわ」
 
「ええ!ほんと?」

思わず叫んでしまった。
そーだそーだ、鈴原君の家族も当然関西人なんだ!
うう、見たい聞きたい、二人寄れば漫才になると言われる生の関西人の会話!
私はアスカを引きずりながら鈴原君に向かって突き進んだ。

「ずるずるって、レイ、アンタアタシに極められてるのよ!わかってる?」

うるさいなあ、いちいち細かいんだから・・無視、無視!

「すっずっはっらっくん!」

「な、なんや・・・・」

「ねー、今度お家に遊びに行ってもいい?」
            
 
 

     どっくんっ
 
 
 
 
 
 
 

あれ、なんか音が聞こえたような?心臓が飛び出るような音・・・
まさかねー、おや鈴原君、口ぱくぱくさせてどしたの?

な、な、な、な、な、なんでやねん!

出た!これぞ突っ込みのスタンダード。

「だから、とっても興味があるの!私、鈴原君ん家行ったら絶対楽しいと思うもん。お願いお願い
おねぐわおえいっぴぇ」

「くぉんのお〜」

アスカがチキンウイング(片羽締め)アームロックから同フェイスロックに移行した。
肝心な時に口ふさがないで〜 !

ずるずるずる・・・

あ〜ジャージが遠くなるう〜っ

「なんや知らんけどたいした用もなしに来てもろても困るねんや。親兄弟になぶられてまうがな」

「そう、じゃ、今の話はなしね。わぁかったわねレイ!」

「ふぉんうわぉうゃわ!」

「うん!と言ってるわ」

どこをどうすりゃそんなに短くなるの!正しくはそんなのやだ!よ!

「ほな、ワシはちょっとションベン行くわ」

ああああいっちゃった・・・・

ぶんっ どてっ

アスカが私を投げ捨てた。
尻餅ついた私を上から睨み下ろす・・・ひえ〜、鬼の形相!

「アンタどーいうつもり?!」

「どーいうって?」

「お家に行っていい?ですって?そんな簡単に鈴原の家に遊びに行かれちゃ立場がないでしょ!」

「アスカの?」

「アタシなわけないでしょが!だから、」

「ア、アスカぁ、それくらいにしてあげて。き、気にしないでね、レイ」

突然ヒカリが間に入って来た。
でも、どーしたの?汗びっしょりだよ。
アスカはヒカリを心配そーに見ながら、「大丈夫?」って気遣ってる。
何があったのかな・・・・
 

ここでレイの一人称形式一時中断>ヒカリの一人称へ<
 

「うん、もう平気よ。ほんとに」

あ〜、ほんとにびっくりした!
まだ心臓がドキドキしてる・・・・
突然、お家に遊びに行っていい?だもの、まさかレイって鈴原の事を・・・・そんなそんな、わたしは鈴原にまだ何も・・・・・
どうしよう、どうしよう、レイに先を越されたら・・・・・あああ、わたしなに考えてるの〜?

いつの間にかアスカがわたしの汗をハンカチで拭いていた。

「汗が止まってないわ。気にしちゃだめよ、アイツ何も考えてないんだから!」

「ありがとう・・・・・」

そうは言ってくれるけど・・・・・やっぱり気になる!
レイ、あなたは一体どういうつもりであんな事を言ったの・・・?
 

ヒカリの一人称終わり>レイの一人称復活<
 

そーか、アスカは私が鈴原君ん家に行くと、変な誤解をまねく恐れがあるって言いたいのね。
ならば話は簡単じゃない!

「ねーねー、鈴原君ん家行こうよ、み・ん・な・で・
 

 
                  びくっ
 
 

 
「アンタまだそんな事言う気?しまいに・・」

「待って、アスカ」

「へ?ヒ、ヒカリ!どうなってるの?」

アスカの驚くのも無理ない。
ヒカリの顔色が秒刻みでみるみる良くなってくのが判る!
まさに、どーなってんの?
 
「レイの提案、いいんじゃないかしら?やっぱりみんなで行ったほうが楽しいわよねえ、レイ、わたしどうも勘違いしてたみたい。ホント、いい友達を持ったわあ!」

な、何を口走ってるの、この人?よくわかんないけど味方ができたわ。

「そう・・・・・そういう事ならアタシも賛成するわ。いいわよね、それで!」

アスカがぐるりとみんなを見渡し碇君のとこで目線をとめた。

「僕は別にかまわないけど、まずトウジの了解をとらなきゃ。さっきも綾波が断わられちゃったし・・・・」

「大丈夫よ、そんなの。全員で押し掛けちゃえばいいのよ!」

「そんな無茶な・・・」

「一言、言わせてくれ」

わ、相田君がしゃべった!!
 
みんなの顔が一斉に相田君のほうを向いた、もちろん私も。
 
「実はな・・・・・」
 
なんだろ、なんだろ、妙に心がさわぐ。
 
 

 
 
 

「今週の土曜日トウジの誕生日だぞ」            
 
 

 
おぉ〜

みんな同時に感嘆のため息を漏らす。
なんて都合のいい情報を・・・これで大義名分ってのができたじゃないの!

「だが!」
 
え、まだ続きがあるの?

「お前ら本気で行く気か?あそこは言わば別世界だぞ!」

なんなのそれ、別世界って・・・・聞かねば!

「相田君行った事あるの?」

「ああ、小五の時、誕生会に俺一人だけ呼ばれてな。親友と認められたって事だろうが、行ってみて驚いた。トウジの家は・・・・」

いつの間にか私達は相田君に顔突き合わせて話に聞き入っている。
 
 

「中に入ると・・・・・・・・・関西なんだ・・・」

「なに、それ!?」

「とにかく、空気っていうかなんていうか・・・俺はその関西のフィールドに閉じ込められた様な気がして、相当息苦しかった。で、また家族が キャラクター強くて・・・・トウジも学校にいる時はそれ程でもないけど、家族と話しだすと機関銃のようで・・・」

あー、聞いてるだけで胸がわくわくする!

「とにかく行くんなら相当覚悟がいるぞ!」

もちろん、決まってるじゃない。

「絶対行く!」

私はアスカを見た。
それに合わせるようにアスカはヒカリを見る。
なんだか思いつめた表情してるなー、ヒカリ。

「わたしは・・・行くわ・・・鈴原の誕生日だもの、いかなくちゃ!・・・・たとえなにが待ちうけていようとも!!

な、なんなのヒカリ、この迫力!背中に炎でもしょってるつもり?
アスカもあんぐり口あけて驚いてる。
その口を手で無理矢理閉じてなんとかしゃべり始めた。

「よ、よくわかったわヒカリ(たははは・・・)じゃ、全員賛成ね!」

「あの、僕には聞かないの?」

「略!」

「はい・・・」

「口で言ってもわからないか・・知らんぞ、俺は」

 「相田、アンタも行くのよ!案内人としてね。わかったわね!」

「・・・戦争だなこれは。しかも俺の戦術知識が全く通用しない・・・・ふう」

「なに言ってんのよ、アンタから鈴原に話すのよ。わかった?」

「やれやれ、二度と行くまいと決めてたのに・・・」

ガラッ

「おう、皆、まだメシ食うとんのんか?」

来た!私は思わずジャージに走り寄る。

「すずはらく〜んうぉっ」

「アンタじゃないでしょ!!」

アスカが私の足を刈った。
目の前のジャージが高速で180度回転し、次に真っ暗になった。
漆黒の視界の中、音声だけが私の脳に情報を流し込む。

「トウジ、話がある」

「なんぞいな?」

「いや、実はな・・・・」
 



 

誕生日を祝いたいとの理由では鈴原君もNOとは言えず、みんなで彼の家に行く事になった。
やったね、ううううう、楽しみ〜!
ここらで、私の一人称形式を終わります。
 



 

「遅いな、あいつら・・・」

ケンスケは左手の軍用腕時計を見ながらつぶやく。
出発の時間は午後一時、集合場所は学校校門前である。
今は十二時五十五分。

「この時点で俺一人かよ」

かれこれもう二十分突っ立っている事になる。
集合時間は出発時間ではないはずだとケンスケは思う。
そんな自分の考え方が少数派なのが腹立たしい。
これから大変なのに・・・・救いは今日は曇り空で比較的涼しいことくらいか。

たったたたったたったったたったたったたたった・・・・

複数の足音がまざりあって不規則なリズムを奏でる。
足音のほうを見やると角を曲がって三人の人影が凄い速さで迫って来た。
 
 「はあっはあっ間に合った〜・・・」

息も絶え絶えのシンジ、アスカ、レイの三人を軽蔑の眼差しで眺めるケンスケ。

「やあ、お待たせケンスケ」

「お前らな・・・休日の午後になんで時間ぎりぎりに駆け込んで来るんだよ!これじゃ、平日の朝と変わらんじゃないか!」

場所までいっしょ。
ちがうのは私服で来たことだけだ。

「シンジが悪いのよ!昼御飯食べるの遅いから」

「しかたないだろ、母さんが作るの遅かったんだから」

「アンタが家を出る時間を言わなかったからでしょが!」

「ねー、私が遅くなった訳聞いてよ」

「やよ!いつの間にか後ろについて来てんだから」

「おかーさんのお昼御飯ですよーって声で目が覚めて・・」

「やめんか〜!」
 

シ〜ン・・・・
 

普段大声を出す機会がないケンスケゆえに、けっこう効いたようだ。

「で、だ。洞木が来たら即、出発するわけだが・・・」

「あれ、ヒカリまだなの?まさかヒカリが遅刻なんてらしくないわ、どうしたのかしら・・・」

アスカの表情が今の空模様のように曇る。
だいたい今回の自分の目的はヒカリの応援なのだ。
親友として、ヒカリとトウジの仲を進展させる力になれればと思っている。

(ヒカリ、あんなにやる気出してたのに・・・)

気をもむアスカにケンスケが声をかける。

「まだ三分ある。委員長の性格からして絶対それまでに来るさ。俺はお前達が間に合って洞木が遅刻なんて現象ありえるとは思えん」

ずいぶんな言われようだが、ケンスケの予想がはずれて欲しいと思う者はいない。
と、その時、校門に面した道路の向こう側から聞きなれた声が響いた。

「ごめんなさーい、待ったあ?」

皆が見ると道路を渡って小走りに近付いて来るヒカリの姿が・・・・・

「!」「!」
「!」「!」

彼女の出で立ちに四人は言葉を失った。
ピンクのワンピース、しかも襟元、胸元にこれでもかとばかりにヒラヒラが張り付いており、膝下十cm のスカートに至ってはヒラヒラとヒダヒダの二重唱状態である。
ヘアスタイルはいつもどおりのおさげ髪だが、結ばれているのは白のレースのリボンに変わっている。
右手には手さげの紙袋、これには昨日みんなでお金を出し合って買ったトウジへのプレゼントが入ってるはずだが、買った時店員が品物を入れた紙袋とは違う。
服とおそろいのピンクの花模様でビニールカバーで被われた、つまり金を出して買う種類の紙袋なのだ。
まさに少女趣味まるだしである。
もっともヒカリは少女だからそれでいいのだけど・・・

(ヒカリ・・・・気合い入ってるわねえ!身支度に相当時間かけてるはずよ、そりゃ遅くなるわ)

アスカは心の中で頭を抱えた。
他のみんなは普段着だというのに。
どんなにお洒落しても肝心の誕生会の主役がジャージではアンバランスこの上ない。
ヒカリを除く全員がトウジはジャージ姿で待っていると勝手に決めつけている。
そしてそれは正しい判断といえた・・・・・

「ふりひらふりひらって・・・・・やー、こんちわヒカリ。みんな待ってたんだよー」

まずレイが口を開いた。

「ホントにごめんなさい。準備してたらいつの間にか時間がたっちゃって」

やっぱり・・・と思いながらもアスカはまとめに入る。

「まあいいじゃない、全員そろったんだから。それじゃ、さっそく出発しよう!」

「やれやれ、気楽なもんだな。何度も言うようだが、覚悟だけはしとけよ!!行くぞ!」

そう告げるやケンスケは道路沿いに足早に歩き始めた。
残る四人も後をぞろぞろとついてゆく。

(後悔したって知らんぞ、俺は自分の身を守る事だけ考えるからな)

( とうとう入れるのね、むきだしの関西弁掛け合い漫才フィールドに!くくく、早く見たい〜!)
 
(今日こそは、今度こそは・・・神の与えたもうた千載一遇のチャンスだもの。鈴原の家族にもポイント稼がなくちゃ!まず親に気に入られればきっと道は開けるはずよ。そう、絶対に!)

(ヒカリ、アタシに出来る事はなんでもやったげるから・・・・頑張るのよ!)

(アスカ表情堅いな〜、どうしたんだろ。でもそんな事言うとまた、殴られるしなあ・・・)

皆、それぞれの思いを胸にトウジの家へと歩を進めて行く・・・・・・・
はたして鈴原家は彼等に対し、どのような実態をさらすのであろうか?
運命の時は間近にせまっている・・・・・そう、予想もしなかったアホらしい運命が!
 



 

「へ、へぇっしょん、あほんだらぼけかす」
 
 
 

                   第伍話完
 


次回予告
 

遂にトウジの家に足を踏み入れたシンジ達。
そこは全くの異世界・・・・カルチャーショックの連続、凄まじいボケ、ツッコミの応酬!
恐るべきKD(関西どアホ)フィールドに取り込まれた彼等は無事に外へ戻れるのか・・・?
次回、大ぼけエヴァ

「へぇっしょん!」「退散しときよし」

この次も、

「う〜ん、モスクワの味・・・・・」



 
色々ごたごたしてて随分遅れました。
本人の遅筆が最大の原因ですが・・・・
今回は次回への導入部でもあり簡単にすまそうという意志と、いやそれでもギャグだけは入れとかねばという意志のせめぎ合いでした。
結局大した山場もなしで終わってしまった・・・・
その分次はどこがエヴァやというくらいアホな内容になるはずです。
いつ完成するかわからんけど・・・・長くなりそうやな。



NEXT
ver.-1.00 1997-12/30公開

ご意見、ご感想、誤字情報などは、m-irie@mbox.kyoto-inet.or.jpまでお送り下さい!


 えいりさんの『大ボケEVA』第伍話、公開です。
 

 

 関西人度が非常に高いレイちゃんが、
 真・関西人の家に行く・・・

 これは、レイちゃんパワーにますます磨きがかかること、確実(^^)/
 

 

 「トウジは”真・関西人”ではない」とか、
 「これ以上レイちゃんにアレになって欲しくない」とか、
 「関西人の家に行ったからといって、関西人化するわけではない」とか、

 沢山のツッコミが聞こえてくる(^^;

   ツッコミを受けて、ちょっと嬉しい私は関西人(^^)
 

 

 慣れない人には非常にヘビーな関西パワー。
 EVAキャラの面々にどんな衝撃を与えるのか!?
 

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 ”濃い”えいりさんに感想メールを送りましょう!



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