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めそアス外伝・頑張れEVAの仲間たち

14才




 この話は「めそめそアスカちゃん7」のサイドストーリーです。先に向こうを読んでね。







その1.一人












 あの子が入って来た。棚の方に行っているわ。青く見える白髪が本の隙間からちらほら見える。あの子も来た。青い髪と金色の髪が並んで本を探している。




 「この本かしら」
 「これだと思う」




 彼も入って来た。黒い髪が金色の髪と青い髪の間に入った。何の本を探しているのかな。聞いてくれればいいのに。




 なんでこんな事考えるのかしら。私彼に興味あるのかなぁ。変ね……。私本しか興味無いはずなのに。




 私転校ばっかりだったから友達なんて居なかった。ずっと本だけが友達……本は別れる事が無い……。この学校に越して来てから一年経つ……。一つの学校にこんなに長く居るの初めて。




 ちょっと前だけど彼氏も出来たわ。でも振られた。私陰気で暗いんだって。そうなのかなぁ。初めは静かでおしとやかって言ってくれたのに。




 結局友達は本だけ。本は裏切らないわ。




 なんで彼の事気になるのかなぁ。




 彼が転校して来た頃、彼S−DATばかり聞いていた。なんとなく判った。音も裏切らないもの。




 でも彼変わったわ。今は友達とよく話すし明るくなった。彼ロボットの操縦者って知られてから一躍人気者になったわ。それでもあまり変わらなかった。




 いつの頃かな。あの子と時々いるのを見かける様に成ってから少しずつ変わっていったわ。どう変わったかはよく判らないけど。




 彼女も変わったわ。何も話さない無口な子だったのに。今でもそうだけど。いつも一人で教室の隅に居た。彼女も本が好き。いつでも読んでる。




 彼女外見は少し変ってるけど美人。男の子に人気が合ったわ。今でもある。だけど全然男の子には興味無かったみたい。ううん、男の子じゃないわね。他人にね。




 そうだわ彼女が転校して来てから、二人は変ったわ。特に彼女が。よく泣くあの子。あの子が来てから。




 彼女もあのロボットの操縦者。よく泣くけど美人で優しくて頭が良くって。とっても男の子に人気があるわ。それに彼と同棲しているの。……同居ね。仕事の為だって。




 よく三人で一緒にいる。楽しそう。昔は笑顔を見せなかった彼と彼女も笑う所をよく見るわ。彼女笑うととても奇麗。




 なんでこんなに気になるんだろう。私他人に興味無いはずなのに。羨ましいのかしら。よく判らないわ。




 もしかして……彼の事……。




 ……違うわね。なんとなく気になるだけね。きっと昔は似てたと思うから。今は……。どうしたんだろう。私。




 「……山岸さん」
 「……山岸さん」
 「えっ……あっはい」
 「この本借りたいの」
 「はい。ええと(簡単!!ケーキの作り方)ですね。本のIDコードは XXXXXXXX 借り出し人 綾波レイ と」




 マユミは端末に打ち込む。




 「期限は一週間後のXX月○○日までです。貸し出し延長は2週間までです」




 マユミはレイに本を渡す。




 「ありがとう」




 レイは返事するとアスカとシンジと共に図書室を後にした。




 行っちゃった……。また一人。だれもいない。いいわ。私図書室の女王だもの。












その2.ヒカリ












 私は走ったわ。もう何が何だか判らなかった。後ろで誰かが何か言っている様な気がしたけど。




 酷いわ。何で私がこんな目にあわなければいけないの。私いつも一生懸命に何でもやって来たのに。家でも学校でも。何でどうして……。




 「あっ」




 転びそうになったわ。ここどこ。ここは町外れの公園の入り口だわ。いつも樹がおい茂って暗い。あそこにベンチがある。




 なんで……なんで涙が出ないの……何で…………ほんとはこんな公園で小鳥の声に囲まれて鈴原とキスしたかったのに……。




 私……真面目にしていたのに……頑張ってたのに……なんで……どうして。




 何で涙でないんだろ……私悲しいのに。




 酷いな……。




 酷い……。




 「いいんちょ」




 だれ……私の事……




 「いいんちょ……ここやったんか」




 その呼び方……鈴原……。顔見たくないな。顔上げたくないな。




 「いいんちょ……ワシ……」




 鈴原は悪くないわ……運が悪かっただけ。私とキスしちゃって……。




 「いいんちょ……すまん……ワシとなんかと……」




 あれ……なんで私立ち上がったんだろう。あれ……。




 「ばか、鈴原のバカ……」




 何言ってるんだろう。




 「なんでそんな事言うのよ」




 止まらない……誰か止めて……。




 「私がどんな気持ちでいるのか判って言っているの」




 どうしたんだろう。口が勝手に動いちゃう。




 「どうなの……はっきり言ってよ」
 「……ワシとなんかと……キスしてしもうて……」
 「ばかばかばか……」




 私何してるんだろう。




 「私が毎日どんな気持ちでお弁当作っているのか知っているの……」




 残飯整理よ……。




 「何でもないのにお弁当なんか作る訳無いでしょ」




 だから残飯整理……。




 「好きでもない子にお弁当作ってくる訳無いでしょ」




 何言ってるんだろ……私。




 「鈴原の事好きだからじゃないの……」




 私……言っている。




 「……それを何よ……」




 あれ頬を何か流れてる。




 「ワシとなんかとですって……鈍いのもいいかげんにしてよ」




 あれ……涙……。




 「鈴原のばか。大好きだからに決まってるじゃない……」




 私……泣いてる。




 「ばかばかばかばか」




 あっ鈴原を叩いてる。どうしちゃったんだろ。




 「何とか言ってよ。黙ってないでよ……」




 私……。




 「どない……せえっちゅんや」
 「そんなの自分で考えなさいよ。私にちゃんとしたファーストキス返してよ。出来ないんならちゃんとしたセカンドキス何とかしてよ」




 何言ってんだろ。




 「どうなのよ。いつも男だとか言ってるのは何なのよ。男だったら責任取りなさいよ」




 ……鈴原何するの……急に抱きしめて……。




















 キスってこんなに気持ちいいんだ……
 私悪い子になっちゃったのかなぁ
 体中の力が抜けちゃった……立ってられない……でも鈴原が抱いててくれる
 私顔中涙でぐちょぐちょね
 もっと奇麗な顔でしたかった……私のセカンドキス
 でもよかった












その3.サクラ












 「ザクレロリはどこ」




 第三制作課の作業場にずんずんと大股で神田アスヨ二尉自称紅の美人大家が入って来た。




 「課長ならあそこですけど……また何かやったんですか」




 手下の第一主任が指さす先にはレーザー溶接機を部下と共に点検しているザクレロリ・ウィスキー課長の姿があった。




 「そうよ」




 ずんずんと進んで行く。




 「あっアスヨさんこんにちわ」
















 「アスヨちゃん大風車三段キィッ〜〜ク」




 どーん




 レーザー溶接機が壁にあたって床に落ちる。ばらばらだ。鋼鉄の壁もへっこんでいる。さすがライダーの必殺技だ。




 「ひえ〜〜」




 辛うじて避けたザクレロリは悲鳴を上げる。




 ばきばきばきばき




 アスヨは手の指を鳴らす。ザクレロリは恐怖で壁に張り付いている。




 「あんたよくもうちの寮生に手出したわね」
 「〜〜ふぁ〜〜い?」
 「昨日ね……田下サクラちゃんが寮に戻って来てロビーでぼーっとしてたのよ」
 「ふぁい」












 「あらサクラちゃんおかえり。どうしたの。ぼーっとしちゃって」
 「ほえ?何でもないです〜〜」




 サクラは寮のロビーのソファーでぽけぇ〜〜っと座っていた。結構夜遅い時間である。




 「ん?…………あれ。酒臭い……こら。サクラちゃんまだ16でしょう。飛び級で大学出ててもこういう事は他の子供と同じなんだから駄目でしょう」
 「ごめんなさぁい」
 「ほんとにもう。で何のパーティーで呑んだの。ちゃんと言っておかなくっちゃ」
 「……職場の関さんの快気祝いですぅ」
 「ほんとまったく……」
 「ほえ。課長は何も悪くないですぅ〜〜ほええ〜〜」
 「こういう場合上司が悪いのよ」
 「課長悪くないですぅ〜〜課長変な事しなかったですぅ〜〜課長に何もされてないです〜〜」
 「何もって……サクラちゃん……」
 「ほえほえ〜〜」
 「なっ何かされたの……」
 「ほえ〜〜」
 「まさか……」
 「私……赤ちゃん出来ちゃいますぅ〜〜〜〜」
 「うぎゃっ」




 アスヨは変な声をあげる。




 「あ……相手は……ザクレロリ……あのやろぉ〜〜」
 「課長悪くないんですぅ〜〜私からですぅ」
 「あのね未成年なんだからサクラちゃんのせいじゃないのよ」
 「ほえ〜〜。でも帰り道近かったからホテル街の方通るの言ったの私ですぅ」
 「関係ないわ。たとえそうだとしても我慢するのが大人よ」
 「課長苛めないでくださいぃ〜〜う〜〜やっぱり恥ずかしいですぅ〜〜」




 サクラはそこらじゅうにぶつかりながら自分の部屋に向かってダッシュで消えて行った。












 「という訳よ」




 ぼきぼき




 アスヨはまた手の指を鳴らす。




 「どう始末してあげようかしら」
 「まっ待った。誤解だ」
 「何がよ」
 「俺の話も聞いてくれ」
 「いいわよ。地獄に送る前に聞いてあげるわ」
 「ひえ〜〜」












 「ほえ〜〜課長ぉ〜〜目がくるくる周りますぅ〜〜」
 「ビール勝手に呑むから……未成年でしょうが」
 「働いてるからいいんですぅ〜〜おいしそうだったんですぅ」




 サクラはふらふらと歩いて行く。




 「おっとこっちの道行こう」
 「嫌ですぅ。こっちの方が寮に近いですぅ」




 すたすたすたすた




 サクラは小走りに行く。




 「しょうがないか……」




 ザクレロリはついて行く。




 「うわぁ〜〜奇麗なお城がいっぱいあります」




 ホテル街であった。




 「奇麗ですぅ。課長入りたいですぅ」
 「……えっまっその……今度ね……夜遅いし」




 甲高いサクラの声に周りのカップルもちらりと見る。それらの目は言っていた。




 ロリコンと




 「……サっサクラちゃん静かにねっね」




 ザクレロリはあせりまくった。サクラがジーンズパンツなのをいい事に肩ぐるまをしてホテル街を駆けぬけた。




 「きゃはは。早いですぅ〜〜」




 アルコールが入っているせいもあるが16才とは思えないほどサクラはお子様である。これで飛び級で大学出の天才だから恐れ入る。




 ぜえぜえ




 ホテル街を通り抜けた所でザクレロリの肩ぐらいの高さの塀の上にサクラを腰掛けさせる。しばらくザクレロリは肩で息をしていた。ネルフの女子寮は目と鼻の先だ。やっと呼吸が正常に戻る。上体を起す。




 「課長面白かったですぅ」




 ぴょん




 サクラがザクレロリに飛びつく。




 ぶちゅ




 「……」




 ずりずり




 サクラがザクレロリの体の前をずり落ちて行く。着地成功。




 「ほえ〜〜ほえほえ〜〜ほえほえほえ〜〜〜〜」




 サクラは地面が削れそうなダッシュで女子寮の方へ消えた。












 「とっと言う訳です。だからしたのはキスだけです。それも事故です」
 「よくでたらめ並べたわね。それで赤ちゃん出来たら地球は妊婦だらけよ」
 「嘘ではありません。ひえ〜〜」




 アスヨはザクレロリの首元をむんずと掴む。




 「くらえ〜〜アスヨちゃん竜巻一本背負い〜〜ええええ」
 「ほえええ」




 ザクレロリを投げ飛ばそうとしているアスヨの目の前にサクラが走り込んで来た。




 「アスヨさん勘違いだったですぅ〜〜」
 「何がぁ」
 「キスだけだと赤ちゃん出来ないです」
 「……はぁ?」
 「知らなかったです」
 「はぁ?」
 「アスヨ……本当らしいわ」




 リツコが作業場にやって来た。




 「はぁ?」




 アスヨ既に目つきが怪しくなっている。




 「さっきこの子の相談に乗ったのだけど、キスしたら妊娠すると思ってたみたい」
 「はぁ?」
 「知らなかったです」
 「飛び級でばんばん進級した上に孤児でしょこの子。里親も随分代わったから学校でも家でもその手の教育受けてないらしいわ」
 「はぁ?」




 アスヨはさっきからはぁしか言わない。




 「アスヨさんごめんなさい。知らなかったんです。私課長の赤ちゃん出来ちゃうと思ったんですぅ」
 「そう……ふふふふ……そう」




 アスヨはぶつぶつと呟きながら視線が行ってしまったまま作業場を出て行った。




 「課長大丈夫?」
 「なわきゃないだろ。こ怖かった。あのアスヨさんは純粋に格闘技だけだったらネルフナンバー1なんだぞ」
 「……ううううごめんなさぁい……知らなかったんですぅ……ホントに課長のお嫁さんになるから許してですぅ……ううう」
 「へ?はぁ?」
 「あらよかったじゃないザクレロリ。可愛いお嫁さん貰えて」
 「わ私はそういう趣味はないですよ」
 「……うわぁぁぁぁぁん……課長に嫌われたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 「あああお落ち着いてサクラちゃん」
 「課長今度はサクラちゃんに何したんですか?」




 第一主任以下皆が集まってくる。




 「だいたい皆のアイドルサクラちゃんがなぜに課長と……」
 「ぶつぶつ」
 「お前ら何を誤解してる」
 「誤解ではないと思います」




 いざという時と違い普段はまったく結束力の無い第三制作課であった。












その4.ヒカリ……2












 私どんどん悪い子になって行く……




 今日も帰り道方向違うのに待ちあわせ




 この公園




 ベンチに二人で座るの




 別に何も話さないの




 学校の事は二人ともよく知っているもの




 でいつもどちらともなくキスするの




 初めは二人とも下手だったけど 今ではだいぶ上手になったわ




 明日の土曜日……家にトウジ遊びに来るの




 明日と明後日コダマ姉さんは旅行だしノゾミは友達の家にお泊り……












5.リツコ












 「先輩、何も先輩がやらなくても」
 「こういう事は最高責任者が最後に点検するものよ」
 「そうですけど。いつも暇そうにしている副室長にやらせたらどうですか」
 「それでもいいんだけど、あの人図体でっかいから狭い所での作業、時間かかるわ」




 リツコは青いハイレグ水着でLCLに浸かっていた。初号機に挿入されているエントリープラグの中で点検中である。




 「それにしても先輩の水着姿って奇麗ですね。三十路とは思えないわぁ」
 「あら失礼ね。まだ私29よ。まあ誉め言葉だと思っておくわ」
 「先輩ごめんなさぁい。でも不思議ですよね。ミサトさんと先輩って一ヶ月ぐらいしか誕生日違ってないのに先輩は三十路ミサトさんは二十台って皆思ってるんですよね。どっちにしてももう三十なのに」
 「あっあなたねぇ〜〜」




 マヤの無邪気というか怖いもの知らずの発言にこめかみの血管が浮き出るリツコである。周りの所員は笑いを押えている。




 「あなた達ボーナスの査定覚えてなさい……」




 リツコが捨てゼリフを言っている時だった。




 「あれ?変ね。なんでシンクログラフが動いているのかしら」




 マヤが計器をいじくり出す。




 「うっ。何か急に頭が痛くなって来たわ。うっうっうう。マヤ……あがるわよ……ううううううあぅうううううううう」
 「先輩どうしたんですかぁ……あシンクロしちゃってる。初号機が……」
 「マッマヤ……助け……」




 ぷつ




 頭を押えて悶えているリツコの映像と音声が突如切れた。




 「あっ回線を復旧して〜〜」




 西田博士が現場にいなくリツコがプラグで苦しんでいる状態ではマヤがこの場の最高ラングである。峯マサヤ達が慌てて回線を復旧しようとする。




 「だめです。復旧できません」
 「先輩の生命反応は」
 「あります……ただ乱れています」
 「……プラグ緊急排出します」




 プラスチックの覆いに覆われた緊急排出用のレバーをマヤは操作した。




 ダン




 打ち出されるようにプラグは排出された。作業員達が駆け寄る。マヤはいの一番に梯子を上った。プラグの蓋が開く。




 「えっえええええええええええええええええええええ」












 どぉぉぉぉぉぉん




 腹に響く轟音が何度もその場に轟いていた。ここはネルフの室外射撃場である。




 どおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん




 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」




 マヤは射撃場に入ると超大口径ライフルを立ち撃ちしている強化白衣姿の西田に声をかけた。




 全然聞こえない様だ。




 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」




 やはり聞こえない様だ。マヤがじたばたしていると西田は耳から耳栓をとりライフルを台に置いた。80口径ロングマグナム……銃身をEVAの装甲の材料で作った世界最強のライフルには弾倉は無く撃ち終わればそのまま台に置いても安全である。




 「あれマヤちゃん待たせたのかな。ごめんごめん。このライフル騒がしいから周りの音聞こえないんだよね。耳栓もしてるし。威力は凄いんだ。100分の80インチ口径……だいたい2.0cmかな……の薬莢がロングタイプのマグナムだから火薬の量が凄いんだ。バルカン砲並みだね。まあ世界でもこれ撃てるのは三人といないね。反動なんてもんじゃないから。弾頭も三種類あって通常弾でも装甲車ぐらい貫通するし、リツコ特製の超貫通弾だったらパチョム装甲だってぶち抜けるよ。特殊弾頭としては超帯電弾があって着弾と共に貯めていた電荷を放出するんだ。どんな絶縁処理した対象でも電撃で電装関係が止まってお釈迦だね。ただこのライフル反動きつすぎて立ち撃ちじゃないと撃てないし着弾が100メートルで直径50センチメートルにもなるんだ。まあ対機甲部隊用の中距離武器だし……」




 マシンガンの様に話し出す。自分の道具を説明したくなるのはマッドサイエンティストの常である。




 「すとぉぉぉぉぉっぷ。そんな事はほっといてください」




 マヤが切れた。




 「先輩が大変なんです」
 「うぇ?リツコが?」
 「そうです。なんと言うかとにかく大変なんです!!!!」
 「なっなにどこだ」
 「第七ゲージです」
 「ライフル頼む〜〜」




 むんず




 西田はガンスミスに声をかけるとマヤの手首を掴む。そのまま駆け出す。




 どがぁ〜〜ん




 特殊鋼の扉を蹴破って行く。




 「ひえ〜〜〜〜」




 マヤの足は床から浮いたままだった。












 「リツコぉ〜〜〜〜」




 どどどど




 重戦車の様な地響きを発てて西田が第七ゲージに入って来た。マヤは目を回している。西田は手近な作業員を捕まえると首ねっこをひっ掴む。おかげでマヤはやっと解放された。床にへたり込む。




 「リツコはどこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 「ひえ〜〜〜〜第三待ち合い室です〜〜」




 ネルフの四天王……サーティーズとも言うが……の一人西田シンイチに鬼の様な形相で至近距離で睨まれてはたまらない。作業員は気を失った。




 ぽい




 大の大人を放り投げ西田はまた突進する。第三待ち合い室の戸を開ける。




 「リツコぉぉぉぉ」
 「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 「うわぁごめん」




 中では中学生ぐらいの少女が着替えていた。慌てて戸を閉める。ゲージのまん中あたりに来る。




 「リツコはどこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」




 吠える西田である。




 が




 急におとなしくなる。




 「今の……ぺっちゃんこな胸……金髪……泣きボクロ……もしや……」




 恐る恐る振り向く西田。丁度その時待ち合い室から少女が顔だけ出してキョロキョロしていた。




 「リッリッリツコ……」




 少女はびくっとし顔を引っ込める。また恐る恐る顔を出す。




 「おじさん……だれ。何で私の名前知ってるの……」




 少女は戸の影から出て来た。そこにはレイの予備の制服を着た少女になったリツコが立っていた。












 「ほんとにほんと?」
 「ホントだよ。俺は西田シンイチだよ」




 赤木研究室の室長室には赤木リツコ、伊吹マヤ、西田シンイチの三人がいた。リツコはレイの学校の制服がぴったりだ。美しい金髪の下の少しきつ目だが整った美貌が不安気だ。
 今リツコは応接セットで西田と向かいあっている。リツコの横にはマヤがいる。リツコはマヤにすがるように引っ付いている。




 「伊吹君もう一度事態を説明してくれないか」
 「はい。先輩……赤木室長は初号機のエントリープラグで作業中何かの拍子でシンクロしてしまったのだと思われます。初号機は異物を排除しようとしたのだと思われます。ただ排除するのは難しかったので初号機として無理が無い対象……14才辺りの年齢に室長の体を再構成したのだと思われます。全て推論ですが」
 「……って言うとやっぱり全て14才の時のリツコか……」
 「はい聞き取り調査の結果、記憶のスキャン、登録DNAとの照合でもやはり先輩です。とりあえず箝口令を出しました。レイちゃんには先輩急な出張が入ったと伝えてあります」
 「ねえ……」




 不安そうにマヤにすがり付いていたリツコが口を開いた。




 「本当にシンちゃんなの?」
 「そうだよ」
 「説明してもらって今が2015年だという事はとりあえず受け入れるわ。私は大人になったけど事故でこの体になってしまったのも同じくね。マヤさんは判るの。小さい時と同じ顔だから」




 童顔のまま変らないのも役に立つものである。




 「ただ……ほんとシンちゃん?確かに似てるけど」
 「ホントだよ〜〜」




 情けない顔をする西田である。




 「じゃ今から質問をするから答えて」
 「おう」
 「ファーストキスの場所は」
 「旧東京の俺達の家」
 「初めてのプレゼントは」
 「俺の手づくりのブレスレット」
 「初めてのデートの場所と私の服装は」
 「デズネーランドでジーンズパンツにTシャツ、サングラスにイヤリング、柑橘系の香水」
 「私の筆箱の柄は」
 「赤地に猫シール」




 質問は20項目以上に及んだ。




 「……ホントにシンちゃんなのね」
 「そうだよ」




 西田ほっと一息である。




 「がっかり」
 「へ?」
 「シンちゃん、もっといい男になると思ってたのに」
 「リツコぉ〜〜そりゃないよぉ〜〜」




 思わぬ攻撃に涙ぐむ西田であった。












 「ふぅ〜〜んこんなとこに住んでいるんだ」




 リツコと西田は二人の家に来ていた。リツコが疲労を訴えた為である。精密検査の結果リツコは身体と記憶が14才の頃に戻っている以外は変わりが無いという事が判った。マヤは自分の寮の部屋にリツコを連れて行く事を提案したがその目つきが怪しかったのと、記憶が無いとは言え自分の家がいいだろうという事になった。ただ衣服だけは合うのが無いのでマヤが急遽手配した。その為今リツコはやたらフリフリのある服を着ている。




 「そうだよ」
 「質素と言うかそっけないと言うか、あ、あの写真まだ飾っているのね」
 「まあね」




 居間のTVの上には赤木家大集合の写真があった。ひぐまとナオコ、リツコとシンイチ、猫のプチとパチとビーが映っている。横には今より若い西田がリツコと腕を組みレイを肩車している写真もある。




 「この子が綾波さんね。私とシンちゃんの養子の……」
 「そうだよ」




 二人は居間のソファに座り話している。




 「シンちゃん何か私に隠してない……この子の事で」
 「……なんで」
 「シンちゃん隠し事している時の癖が変ってない」
 「……いやその……今夜はリツコとどうしようかなぁなんて……」
 「ごまかさないで。その方面の隠し事の時と癖が違うわ」
 「……」
 「言って」
 「……明日じゃ駄目か……今日はもう遅いし……」
 「そう……いいわ。私眠いしもう寝る」




 リツコもさすがに疲れているようだ。




 「で……あの……寝室使ってくれ。今片付けてくる」
 「シンちゃんは?」
 「俺ここのソファベッドで寝るから」




 西田が言う。リツコとは判っていても勝手が違うらしい。彼は居間を出て行った。




 「……相変わらず度胸無いんだ」












 「シンちゃん」




 パチ




 居間の明かりが付いた。ソファベッドで丸まっていた西田は目を覚ます。




 「なっなんだい」




 実は一睡もしてない西田が答える。リツコは大人になってからはベッドで何も着ない主義だが、今はピンクのパジャマを着ている。




 「ちょっと来て」




 リツコは寝室に戻って行く。西田はリツコの真面目な表情に黙ってついていく。二人の寝室は二階にある。リツコが先に入る。西田も続いて入った。この部屋は西田とリツコとレイの生体パターンを検出するようになっている。他の人間が入ると鍵が閉まりどのような動植物も逃がさぬ粒子砲が振りそそぐ。
 部屋の中には巨大なダブルベッドと箪笥、鏡台、机があった。家具は少ない。机の上にはEWSが二台あった。一つはMAGIとの接続用。一つは完全なスタンドアローンだ。




 「シンちゃん座って待ってて」




 リツコはベッドを指さす。シンイチは腰掛ける。リツコはスタンドアローンの方のEWSを操作する。




 「シンちゃん……」




 西田の方を見ぬままリツコは話し出す。




 「シンちゃんの暗号は私が10才の時母さんの名前で学会に発表したものを元にしているわね。昔とまったく方法が変ってない。変えないと駄目よ……」




 振返らず続ける。




 「普通の人だったら解けないわ。でも私なら、私と母さんが頑張れば解けるわ。MAGIの計算能力をほんのちょっと使っただけであっさり解けたわ……」




 振返らない。西田も黙っている。




 「さっき部屋を片付けるって言っていたのはこの事だったのね。不用心だわ。もっと強い暗号に変えないと……」




 ピッ




 リツコが操作をするとEWSの画面にファイルが表示される。




 「シンちゃん……」




 リツコは俯いたまま回転椅子を回して振返る。身長に40センチメートル程の差が有る為西田から表情は見えない。




 「なんで……なんで……」




 リツコは立ち上がる。西田に向かい歩いてくる。




 「なんで……なんでこんな事私達したの……」




 リツコは顔を上げた。泣いていた。




 「リツコ……」
 「なんでよ……綾波さんに何て事をしたのよ……」
 「……リツコ……」
 「ねえねえねえなんでよ」




 リツコは西田の肩口を乱打する。




 「なんでなんでよ言いなさいよ」




 殴り続ける。




 ぱし




 西田の大きな左手はリツコの両手首を掴む。リツコはじたばたする。




 「しかたなかった……」
 「……」
 「しかたなかったんだ。レイでないと……」
 「……しかたなかった……だからって自分の娘を……そんなのない……」




 リツコは体の力が抜ける。西田はだらんとしたリツコを引っ張り上げると隣に座らす。




 「……苦しんださ……二人して……」
 「……」
 「でもしかたなかったんだ」
 「……」




 リツコは俯いていた。




 「ねえ……」
 「なんだい」
 「私達が勉強したのって頑張ってきたのって……こんな事をして子供を苦しめる事だったの……。科学ってそんな物だったの……二人して映画に出てくるような正義の科学者になろうって言ってたのはどうしたの。ねえ……答えて」
 「なろうとしたさ……でも……正義って判らなかったんだよ……だから身近な人達だけでも助ける為にがんばろうって……そうしてたら……でも……そうなったんだよ……そのつもりだったんだよ…………」
 「……」
 「……だれだって自分の娘をあんな事に使いたくないよ……でもさ二人で決めた……悪魔になろうって……娘を生贄にさし出そうって……人類の為に……」
 「……人類……そんなもの……私……家族の方がいい……」
 「ああ……リツコはそう言ってたさ……ずっと……俺が無理に計画を進めた」
 「……なんで……」
 「娘より人類を取った……」
 「……そう……」
 「そうだ」




 話が途絶えた。




 「出て行って。一人にして」
 「……」




 西田は部屋を後にした。背後ですすり泣きが聞こえた。












 ふう




 もう何度ため息をついたのだろうか。西田は眠れなかった。




 もぞもぞ




 ソファベッドに何かが入って来た。




 「リツコ……」




 暗闇の中でもリツコの金髪は良く見えた。リツコは西田の横に顔を出す。




 「シンちゃん……怖い」
 「……何が……」
 「私達のやった事……やるだろう事……その結果……全て」
 「……気にしなくていいよ……多分これからは全て俺の責任になる。リツコはこのままの姿や能力だとさすがに解任だろう。少なくとも降格の可能性は高い。そうしたら技術開発の責任者は俺だ……全部背負うよ。お前は……レイの面倒を見たらいい。今度はお姉さんとして……一緒に住んで学校行って……今度こそは守ってあげる様に……」
 「……シンちゃんはどうするの……」
 「花の独身だな。お前達の父親も悪くないね。美人姉妹の父親ならえばれるな」
 「……私……振られたのね……」
 「へ?」
 「そうね。お子様だものね……」
 「……リツコ……人生やり直せるんだぞ。もっといい男、山といるぞ。やっぱり俺にはもったいなかったんだよ。神か悪魔か知らんがきっとそう思ってリツコを若返らせたんだよ」
 「……相変わらず自信無いのね……いいわ。だったらもう一度人生やり直す。……綾波さんを守って……今度はたとえシンちゃんにも手出しはさせない。……一緒に行こう。それでいい?」
 「……俺はいいよ。嬉しいよリツコ……」
 「私も……」




 リツコはそう言って抱きついた。
















 「えっえええええええええええええええ」
 「どうしたのマヤ」
 「せっ先輩……元に戻ってる」
 「ああこれ。大人になったら大人に戻ったのよ」




 翌日リツコと西田はそろって出勤した。




 「えっ?大人になったらって?……えっ先輩……体子供に成ってたのに西田博士と……そのあの……」
 「そうよ……何よ大声で恥ずかしいわね。別に夫婦だからいいじゃないの」
 「すいません。でっでも……」
 「まぁそう言う事」
 「じゃちょっと二人で話が有るから後でね」




 唖然としているマヤを筆頭とした研究室メンバーを残して二人は室長室に入った。リツコは室長の席に西田はソファに座る。




 「それにしても……なんだったんだろうな昨日のは。今日起きたら隣に大人のリツコが寝てるんだもんな」
 「残念だった?あなたロリコンの気が有るから実はたまらなかったんじゃない」
 「馬鹿言うなよ。それにしても何だったんだ」
 「そうね昨日あなたが言ってたけど、神か悪魔か知らないけどもう一度昔から今を振返るチャンスをくれたんじゃない」
 「そうかもしれないな」
 「……きっと悪魔ね」
 「なぜ?」
 「私達は神の使いと戦っているのよ。それに神は裁きを下すだけ。悪魔は人間を堕落させるけど人間の事が好きなんじゃない。人間いないと悪魔やってられないから」
 「そうかもな。じゃあ第二作業場行ってくるよ」
 「行ってらっしゃい。……そういえば昨日なんであなたが無理に計画を進めた何て言ったの……あれ母さんと私じゃない……あなたはそんな権限も度胸も無かったわ」
 「……はっきり言うね。責任を死人とお子様に押し付ける訳にはいかないだろ。それに男って格好を付けたいものなのさ」
 「あいかわらずね。……まあいいわ。気を付けて」
 「おう」




 西田は部屋を出て行った。












その6.ヒカリ……3












 とうとう……私本当に悪い子に成っちゃった
 トウジって寝顔可愛い
 私一生忘れないんだ……今日
 もし惣流さんや綾波さんに言ったら驚くだろうな












その7.ヒカリ……3+












 「洞木さんにやついてるね」
 「そうね」
 「楽しそうだわ」
 「そやな」
 「それにしても委員長が居眠りとはね」




 HRが終わり放課後になってもヒカリは机に顔をくっつけるように爆睡していた。幸せそうに口は半開きになりよだれを垂らしている。担任も呆れて行ってしまった。




 「それにしても幸せそうだね。どんな夢見てるのかなぁ」
 「トウジ……だめ……そんなとこ……」
 「「「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」」」




 トウジとレイを除いたいつものメンバーは奇声を上げた。レイは今一歩判ってないようだ。すぐさま視線がトウジに集まる。




 「ご誤解やぁぁぁぁ。イインチョなんか言わんかい」




 トウジの大声でヒカリは顔を起した。まだ寝ぼけているみたいだ。




 「トウジ……よかった」




 ばた




 また顔からつっぷし眠りに入る。




 「「「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」」」
 「誤解やぁぁぁぁぁぁぁ。ワシはあれ以上はしとらへん」
 「……あっあれって……」
 「うっ……」




 トウジはやはりボケが似合っていた。













つづくよ






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ver.-1.00 1999_02/16公開
ご意見・感想・誤字情報・らぶりぃりっちゃん情報などは akagi-labo@NERV.TOまでお送り下さい!









 後書き




 洞木姉妹は妄想が良く似合います。それではまた。




PS.主題歌を作りました




他部門その他(○ビル二世)




どんな短い納期でも〜〜 仕上げてみせますなんのその
兵器のプロだ 第三製作課ぁ〜〜

納期短縮恐くない 熱いハートで頑張るぞ おぅ

関は作業用サイボーグ サクラは天才エンジニア
課長は交渉 資材課とぉ〜〜




どんな材料資材でも〜〜 仕入れてみせますなんのその
世界を走る ネルフの資材課ぁ〜〜

今日は火星だ明日は月 我らの行かないとこは無い おぅ

南極死の海真っ赤っか 北極シロクマこんにちわ
赤道コーヒー お土産だぁ〜〜




たとえ一国潰しても〜〜 EVAの修理費ひねり出す
世界で最強 ネルフの経理課ぁ〜〜

神の似姿EVAだって経費が無ければ動かない おぅ

量産型は後回し〜〜 弐号機修理費先に出そ
えびちゅが千缶 なんだこりゃぁ〜〜




赤木・リツコ(○ビルマン)

あれはだれだだれだだれだ あれはリツコ 赤木の リツコだぁ〜〜

MADな年増の名を受けて 髪振り乱し闘う女

リツコへヤーは金髪で リツコイヤーは地獄耳
リツコ白衣は強化服  サイバーウィップ電磁鞭

MADな力身につけたぁ〜〜 年増なヒロイン〜〜

赤木のリツコ〜〜




ミサトさんZ(○ジンガーZ)




部屋にそびえる空き缶の城〜〜

スーパーボディの葛城ミサト〜〜

無敵の強運僕らの為にぃ〜〜

奇抜な作戦 立案してGO〜〜

そこよやっちゃえユニゾンキック

今よ撃つのよポジトロンライフル〜〜

えびちゅ GO BOA GO ミサトさぁ〜〜ん GO!!












 合言葉は「全てのキャラに幸せを」




 ではまた





 まっこうさんの『めそめそアスカちゃん』外伝3、公開です。




 ヒカリちゃんが〜

 「ふ、不潔よっ」のヒカリちゃんが〜

 一番だとはっ
 ビックリですう・


 ・・・「3」は「3+」の時に見ている夢なのかな?
 「3」の時のことを思い出してウフウフしているのが「3+」だよね


 夢でも現実でも
 そういうことになって−−

  オ・ト・ナじゃ〜ん(^^)


 みんな幸せになっていって嬉しいです(^^)(^^)





 いつの日か
 リツコさん達も、乗り越えられるよう・・・





 さあ、訪問者のみなさん。
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