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気になるあの子・第壱話

 
あの子の秘密



 「赤木リツコです。みんななかよくしてください」

 ざわざわ

 「しつもん。どうしてかみのけがきんいろなんですか」

 ケンちゃんが大声で聞くと

 「え〜と、お父さんのお母さんのお母さんがイギリス人で髪の毛が金色なん
です。私は隔世遺伝で金色なんです」


 大人のようにしっかりした口調で答えるリツコに、違う子が違う質問をする。

 「りっちゃんはどこにすんでいるんですか」
 「成田町の福音荘です」
 「なまえはどうかくのですか」
 「色の赤に草木の木、あとひらがなでりつこです」

 次々とだされる質問にてきぱきと答えているリツコである。





 「けんちゃん。りっちゃんがすんでいるふくいんそうってすぐちかくだね」
 「そうだねしんちゃん」

 シンイチとケンジの机は前後に並んでいる。ミキちゃんはケンちゃんの隣の席だ。
 教室では質問の嵐がひと段落ついていた。伊吹先生はリツコの肩に手を置く
と教室を見渡して言った。

 「じゃあ、質問はこれでお終いにしましょうね。赤木さんの席は西田シンイ
チくんの隣の席が空いているからそこにしましょうね。西田くん手を挙げて」
 「ハイ」

 シンイチがいきよいよく手を挙げる。

 「赤木さん、西田くんの隣の席に座ってね」
 「はい、先生」

 とことことことこ

 リツコは赤くて大きいランドセルを降ろし、机の横に引っ掛け、席へと座る。

 「あかぎさんはじめまして」
 「西田くんはじめまして」

 ケンちゃんとミキちゃんも顔を出して来た。

 「あかぎさん。ぼく福山ケンジ」
 「わたし、田中ミキ」
 「はじめまして、なかよくしてくださいね」
 「「「うん、なかよくしようね」」」

 リツコはニッコリ微笑んだ。大きくて度の強いまんまる眼鏡の下のほっぺに
可愛いエクボができる。

 (りっちゃんてかわいいなぁ)シンイチは心で呟いた。

 「りっちゃんってひだりめのしたにほくろがあるんだね」
 「うんシンちゃん。でもここにホクロが有ると一生泣いて暮らすんだって」
 「えっどうして」
 「昨日見たテレビアニメでそう言ってたの」
 「だいじょうぶだよ。りっちゃんをいじめるやつはぼくがやっつけてあげる」
 「ありがとうシンちゃん」

 にっこり

 とってもらぶりぃ〜〜な笑顔のりっちゃんであった。





 「さあみなさん。一時間目の授業を始めます。赤木さんは西田くんの教科書
を見せてもらってね」
 「ハイ。先生」

 リツコはシンイチの方を向くと、机をずるずると押しくっつけた。

 「シンちゃん、教科書見せてね」
 「うんいいよ」

 シンジは自分のランドセルから教科書とノートと筆箱を出し机に広げる。

 がさごそ

 りつこが自分のランドセルの中を探す。

 「あれ。筆箱がないわ。どうしたのかな。家において来ちゃったのかな」
 「りっちゃん、もしかしてこれ?」

 シンイチは朝ひろった筆箱を見せる。

 「あ私のだ。ありがとう。これどうしたの」
 「あさ、すごいいきおいのじでんしゃがとおったあとにおっこっていたんだ。
あれはりっちゃんとりっちゃんのおかあさんだったの?」
 「うん。あれはお母さんがとっても急いでいたからなの。その時おっこどし
ちゃったんだわ。これすごく大切な筆箱なの。ありがとうシンちゃん」
 「どういたしまして」
 「ねえねえ見て見て。この筆箱って中はこうなっているの」




 ぱか




 その赤い筆箱の内側は猫の写真のシールだらけだった。しかもそこには色と
りどりのにゃんこマークが付いた鉛筆が10本と猫の顔がプリントしてある消
しゴムが二つ入っていた。赤鉛筆も猫マーク入りである。

 「うわぁ〜〜、かわいいなぁ、ねこだらけだ」
 「うん。私猫だい好きなの」
 「ぼくもねこがすき」
 「私猫飼いたいけどアパートだからだめなの」

         ・
         ・
         ・
         ・

 「西田くんと赤木さん、仲良くするのはいいけどちゃんとお勉強しないとだ
めですよ」


 伊吹先生が言うとクラスのみんながはやし立てる。



 「わぁ〜〜い。シンイチとりっちゃんはこいびとだそぉ〜〜」
 「わぁ〜〜い」

 何となく二人共、もじもじと赤くなる。






 休み時間になると、みんながリツコとシンイチの周りに集まって来た。ホー
ムルームの質問でも聞き足らなかったらしく、口々に質問する。

 「ねえあかぎさん。かくせいいでんってなあに」
 「ぼくしってる」

 とシンイチ。

 「かくせいいでんってね、こうゆうことなんだ。にんげんやどうぶつってお
とうさんやおかあさんににてるよね」
 「うん」
 「だけどおとうさんやおかあさんににていなくって、おじいちゃんやおばあ
ちゃん、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんににていることをいうんだ」
 「へ〜〜そうなんだ。シンちゃんってものしりだね」

 リツコもうなずいてつづける。

 「シンちゃんの言った事でほとんど正しいわ。シンちゃんって理科得意
なんだ」
 「りっちゃん、シンちゃんっていちねんせいでりかとさんすうがいちば
んなんだよ」

 ケンジが教える。

 「私も得意なの。今度一緒にべんきょうしましょうね」
 「そうだね。りっちゃん」

 早々と仲のいい二人にやはりあちこちから声が上がった。

 「やっぱり。シンイチとりっちゃんはこいびとだそぉ〜〜」
 「わぁ〜〜い」
 「わぁ〜〜い」


 あまりにはやし立てるのでとうとうリツコは泣き出してしまった。



 しくしくしくしく



 「こら〜〜りっちゃんがないちゃったじゃないか」

 とシンイチが怒る。顔を真っ赤にして持っていた鉛筆を握り折り怒る
シンイチの前にみんなはやっと静かになる。




 きんこん




 二時間目の授業が始まった。

 「シンちゃんさっきはありがとう」
 「うん、どういたしまして」
 「じゃ今度も教科書見せてね」
 「いいよ」

 前よりちょっぴり近づいて教科書を見せるシンイチであった。






 さて給食の時間がやって来た。シンイチとケンジは給食委員である。今日は
ケンジが教室の準備をする日なのでシンイチが給食を配膳室まで取りに行った。
リツコも物珍しそうについて来た。

 「あれりっちゃん、いつもらんどせるしょってるの」

 シンイチは不思議そうにそう聞いた。リツコは大きなランドセルをしっかり
背負っていた。

 「うん。このランドセル大切だから、出来るだけ持っているの」
 「そうなんだ」

 (りっちゃんってかわいいけど、ちょっとかわってるなぁ)シンイチはラン
ドセルを見ながら思った。

 配膳室まで2人でおしゃべりしながら来ると、もう他のクラスは給食を持っ
て行った後だった。シンイチは給食の入った鍋や皿が乗っている台車を引いて
行った。

 とことことことこ


 「あ!!!」

 二人で喋りながら台車を引いていたシンイチは、ずっとリツコの方を向いて
歩いていたので、途中でつまづいて転んでしまった。そして台車に乗っていた、
小さな鍋が跳ね飛んで、中身のひじきの炒め物が、大きな鍋のカレーシチューに
混ざってしまった。

 「どうしよう。かれーしちゅーにひじきのいためものがまじっちゃった」

 もうはんべそのシンイチであった。

 「シンちゃん、私に任せて」

 リツコはそう言うと眼鏡をキラリンと光らせて、がさごそとランドセルを探す。

 「なにさがしてるの」
 「これよ」

 リツコの手には、20センチ四方の黒い箱にキーボードと四本のパイプが付
いた怪しげな物体が乗っていた。

 (あんなでっかいものどうやってらんどせるにはいっていたんだろう)

 シンイチの疑問も知らずにリツコは続けた。

 「これは汎用箱型分離装置のプロトタイプ[ワケルゲオン]って言うの」
 「わけるげおん?」

 シンイチは初めて聞くその名前に首をひねった。

 「そう。物質のエントロピーを一時的に移動せさて色々な物を分ける事がで
きるの」

 シンイチにはちんぷんかんぷんである。

 「やって見せるわ」

 リツコは二つの鍋に二本づつパイプを入れた。

 「カレーシチューとひじきの炒め物っと」

 片手ですごい勢いでキーボードを叩く。

 「それじゃスイッチオン」

 ぱち

 ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる

 変な音をたててカレーシチューとひじきの炒め物のまざった物体がパイプか
ら吸い込まれると、ちゃんと他のパイプから別れて鍋に戻って来た。

 「すごぉ〜〜い」

 瞬く間に給食は元どおりになった。

 リツコはパイプを鍋から引き出した。[ワケルゲオン]をランドセルから出
したタオルで包むと、ランドセルに再び戻した。

 「りっちゃんありがとう」
 「どういたしまして」
 「でもすごいものもっているね」
 「これ私とお母さんで作ったの」
 「へぇ〜〜りっちゃんてあたまいいんだ」
 「早く持っていきましょうよ。みんな待っているわ」

 シンイチは、また台車を引き始めた。

 「りっちゃん」
 「シンちゃんなあに」
 「わけるげおんってらんどせるよりおおきいのに、なんでらんどせるにはい
るの?」
 「それはひ・み・つ」

 にっこり

 りっちゃんのらぶりぃ〜〜な笑顔に疑問も吹っ飛んでしまったシンイチである。
 それはともかくりっちゃんの秘密の道具のおかげで無事給食は届けられたので
あった。









 きんこんかんこん、きんこんかんこん

 「はぁ〜〜い、皆さん今日の授業はこれでお終いです」

 6時間目の終わりのチャイムと同時に伊吹先生は、そう言いつつ椅子から立
ち上がった。


 「終わりのホームルームを開きます。今日は皆さん何かかわった事はありま
せんでしたか?」
 「はぁ〜〜い」
 「ハイ、田中さん」
 「きょうのきゅうしょくのカレーシチューなんだかひじきのあじがしました」
 「そういえば」
 「うん。そうだ」


 口々にみんなが騒ぐ。その中でシンイチとリツコだけが顔を引きつらせて
黙っていた。

 「西田くん」

 伊吹先生が給食委員のシンイチに向かって言った。


 「ハ、ハイせんせい」
 「何か知らない?」
 「いいえしりません」


 たら〜〜り


 「そう。じゃ配膳室で少し混ざったのかもしれないわね」


 ぎくぎく


 もうシンイチとリツコは真っ青であった。

 「じゃあ、今日のホームルームはこれでお終いにします。みんな気をつけて
帰りましょうね」


 学級委員のミキちゃんが立ち上がって言った。


 「きりっつ。レイ」
 「「「「「「せんせいさようならぁ〜〜〜〜」」」」」」
 「さようなら」


 わいわいがやがや


 「りっちゃんちってふくいんそうだよね」
 「うん」
 「ぼくのうちのちかくなんだ」
 「シンちゃんの家ってあの辺りなの」
 「うん、じゃ、いっしょにかえろうよ」
 「うん、帰りましょ」


 とことことことこ


 二人は教室を後にした。

 「ミキちゃんシンちゃんは?」
 「りっちゃんといっしょにかえっちゃったみたい」
 「あずるいな。ぼくもいっしょにかえりたかったのに」
 「しょうがないから、わたしといっしょにかえりましょ」
 「うんそうしよう」


 とことことことこ


 ケンジと一緒に帰れてなんとなく嬉しそうなミキちゃんであった。










 「りっちゃん」
 「なあにシンちゃん」

 二人は校庭を歩いていた。

 「さっきはばれそうだったね」
 「うん。まだ調整がうまくいかなかったみたい」
 「でもよかった」
 「そうね」

 てくてくてくてく

 どて



 「あ、りっちゃんだいじょうぶ」
 「うんだいじょうぶ」


 いきなりリツコはなんにも無い所で転んだ。運動神経は鈍い方らしい。


 「けがはない?」
 「でも眼鏡汚れちゃった」


 そう言ってリツコは眼鏡を外した。その下からはきりっと整った眉毛と巴旦
杏の様につぶらな瞳が現われた。しかも瞳の色は黒というより緑色だった。夢
に出てくるお姫様の様なリツコに見とれていたシンイチであった。少し経って
からリツコの顔を見つめながら聞いた。



 「りっちゃんのめってみどりいろなんだ」
 「う、うん」

 眼鏡を拭き終わり再び掛けるとリツコは話した。

 「私って少し体の色が薄いの。だから時々目の色が緑色に見える時があるの」
 「ふぅ〜〜ん」

 少し俯いたリツコはシンイチにたずねた。

 「シンちゃん」
 「なあにりっちゃん」
 「私の目って恐くない?」
 「え!!」
 「だってこんな色普通してないでしょ」
 「そんなことないよ。とってもきれいだもん」
 「ありがとう。よかった。でもみんなには内緒にしててくれる?」
 「うんいいよ」
 「じゃゆびきりね」

 二人は小指を絡ませる。

 「「ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんの〜〜ます」」

 「じゃ帰えろ」
 「うん」

 てくてくてくてく

 二人は家路に向かった。

 てくてくてくてく

















 う〜〜〜〜わんわんわんわん

 それは角を曲がった時だった。

 「「うわ〜〜〜〜」」

 急に大きな野良犬が現われると、二人に吠えかかって来た。慌てて逃げると
すぐ後ろをついてくる。泣きながら二人は逃げ回ったが、その二人を嬲るよう
に野良犬は追いかけてくる。とうとう路地に追い詰められてしまった。
 シンイチはリツコを背中に庇うとわーわー泣きながら自分のランドセルを振
りまわしていた。が、じりじりと近づいてくる野良犬。まさに絶体絶命だった。























 「たすけてぇ〜〜プチとパチ〜〜」

 リツコの甲高い声が響いた。するとどこからともなく……




















 フニャ〜〜〜〜〜〜〜〜

 ニャゴ〜〜〜〜〜〜〜〜









 路地の塀の上を白と黒の疾風が駆け抜けたかと思うと、それはシンイチの両
脇にすくっと立つ。体長が1メートルもある白い猫と黒い猫だった。彼等は体
毛を逆立てて、野良犬を金色に光る目で睨みつける。今度は野良犬が逃げる番
だった。じりじりと後退すると、きゃんと一言鳴いてどこかへ逃げて行った。



 シンイチはぺたんと道に座り込んだ。一方リツコは二匹の猫の前に行き、涙
でくしゃくしゃになった顔を猫達の顔にこすりつけた。



 「ありがとう。プチ。パチ」



 二匹はリツコの涙をぺろぺろと舐めていた。


 「シンちゃん。この子達は私の友達なの。黒い方がプチ。白い方がパチ。私
が危なくなった時呼ぶと助けに来てくれるの。プチ。パチ。この子はシンちゃん。
私のお友達なの。二人ともシンちゃんと仲良くしてね」


 プチとパチは、座り込んでいるシンイチに近づいてくると、頬を舐めはじめ
た。はじめは思わず小さな悲鳴を上げたシンイチであったが、ペロペロと頬を
舐めてゴロゴロと喉を鳴らす二匹にすぐに慣れ、頭を撫ぜてあげた。二匹は答
えるように、にゃ〜〜にゃ〜〜と鳴いた。


 「プチ、パチ、なかよくしようね」


 にゃ〜〜
 にゃ〜〜


 二匹は判った様だった。


 「しんちゃん、プチとパチと一緒に帰りましょう」
 「うんそうだね。プチとパチがいてくれればあんしんだね」


 二人と二匹は家へと歩いて行った。










つづく





ver.-1.00 1997-07/21 公開
ご意見・感想・誤字情報・りっちゃんラブラブメールなどは akagi-labo@NERV.TOまでお送り下さい!

 あとがき

 ほ〜〜らりっちゃんって可愛いでしょ。
 MADで気立てが良くって笑顔が可愛い、しかも眼鏡を取るとすごい美人
もう基本どおり(^^;

 おまけに動物にも愛されてます。妖しい魅力もたっぷりあります。

 いまさらAIRがどうなっていようともどうって事ありません。
 りっちゃんの微笑みは世界を救います。

 次回は

 「あの子と放課後」








 合言葉は「らぶりぃりっちゃん」









 ではまた









 まっこうさんの『気になるあの子』第壱話、公開です。
 

 ドラエもんりっちゃん・・・・ランドセルの中は虚数空間なのでしょうか(^^)
 要改良の[ワケルゲオン]の他にはどんな怪しく便利で危険なMADなアイテムが眠っているのでしょう・・・・

 知的で妖しい美貌。
 これは正に「らぶりぃ〜」ですね(^^)

 シンイチくんは良い出会いをしましたね。
 ・・・MADな事件に巻き込まれる不運の出会いかも(^^;
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 りっちゃんの魅力にハマったまっこうさんに感想のメールを!
 

 

 「ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんの〜〜ます」
 なんか本当に飲ませそうな気がする(^^;


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