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すれ違うこころ・・・そして、












[Prestory]

シンジとアスカは、あの晩ファーストキスをしてしまったが、その後、さしたる関係の進展もないまま時間が過ぎた。
アスカは相変わらず、シンジを口汚なく罵り、バカにしてばかりだ。
そんな折り、クラスに霧島マナという転校生がやって来た。
明るく物怖じしないマナは、シンジに気があるらしく積極的にアプローチしてくる。
そんなマナを見て、アスカのシンジに対する態度はますますかたくなになっていった。
シンジが、傍から見ても分かるほど、落ち込みはじめたのはその頃からだった。









「最近、霧島さんのことが気になるんだ・・どうしてだろう?アスカ・・」

上目遣いにアスカに問い掛ける、シンジ。

「アタシにそんなこと聞かないでよ。関係ないでしょ」

無神経な質問をぶつけるシンジにアスカは腹が立ってならなかった。

「でも気になるんだ・・霧島さんは、僕のこと好きだって言ってくれたんだ・・」

「知らないわ!そんなこと聞きなくない!」

拒絶するように、首を左右に振るアスカ。



「アスカが悪いんだよ。他の男の子とデートなんかするから・・」

「っっっっっっっ!」

「もういいんだ、だって彼女は僕のことだけ見ていてくれる・・アスカは僕のこと嫌いなんだろ?」

「アンタなんかに、アタシの気持ち・・」

「今度、霧島さんがね・・デートしようっていうんだ。行ってもいいかな?アスカ」

「そんなの、知らないわよ。アンタの好きにすればいいでしょ」

(どうせアタシなんか・・・)

「じゃ、行ってもいいの?アスカ」

シンジはすがるような眼でアスカに再度確認を取る。

「知らないっていってるでしょ!!」








「シンジく〜ん!遊びに来たよ!!」

インターホンが、マナの突然の来訪を告げる。

「!!!!!」

「あ、霧島さん・・」

だが、いち早く対応したのはアスカだった。

「シンジは留守よ!」

ドアは開けずに言い放つアスカ。

「ど、どうしてシンジくんのうちにアスカちゃんが・・」

思いがけない声に、驚きを隠せないマナ。

「うるさいわね。アンタに関係ないでしょ!!」

アスカは吐き捨てる。

「どうしてよ!!ドア開けてよー!!アスカちゃん!!」

どんどん、とマナはドアを連打した。

「いや」

アスカの頑なな態度にマナは諦めのため息をつくと、今度はそこに居るであろう少年に向かって口を開いた。

「シンジくん・・。そこにいるんでしょ?」

「留守っていってるでしょ!!」

しかし、アスカはそれを許そうとしない。

(アンタなんかに、アンタなんかに、シンジを・・・)

アスカは溢れてくる感情に震えていた。

「そのまま、そこで聞いて、シンジくん。アタシ、アスカちゃんとシンジくんがそんな関係だって知らなかった・・。」

かまわずに言葉を続けるマナ。

(え!?)

その言葉に、気を殺がれるアスカ。

「・・あたしバカみたいだね・・独りではしゃいじゃって・・」

ドアの向こうから、マナの沈んだ声が聞こえる。

(マナ!?)

アスカの直ぐ近くに立っていたシンジは、

「霧島さん」

「あ、シンジ、ダメ!!」

アスカの制止を振り切り、ドアを開けた。

「・・シンジくん」

そのマナの顔を見て、アスカは動けなくなった。

「僕は・・よくわからないんだ。アスカが僕のこと好きじゃないから・・僕は霧島さんに好きって言われて嬉しかった・・」

俯くアスカ。肩は震え、手は拳を握り・・・。

「でも、僕は・・ホントに霧島さんのことが好きなのか、分からないんだ」

(アタシは、アタシは、)

「アスカ・・アスカの気持ちが知りたい・・・もしそれが僕の思ってる通りなら、僕は霧島さんと・・」

顔を上げたアスカの瞳には、今までシンジのみたことのない物が光っていた。

「アタシは・・・アタシは・・・」

「待って・・アスカちゃん!」

言葉半ばに遮られたアスカは、マナを睨みつける。

しかし、マナはそれに動じる事無く言葉を続けた。

「シンジくんは、アスカちゃんのことが好きなんでしょ?」

マナの言葉にその顔をじっと見るアスカ。その目は戸惑いに変わっていた。

「あたし、アスカちゃんの代わりはごめんだわ!」

無理に厳しい表情を作るマナ。

その言葉に表情に、驚きを見せるアスカ。またシンジも同様に驚いていた。

人に厳しくすることに馴れていない優しいマナは、そのまま俯いてしまう。

「アタシの代わり?」

マナの言葉に驚きと戸惑いを隠せないアスカ。

マナの台詞に言葉を失うシンジ。

「あたし・・帰る。シンジくんとも二度と口を利かな・・」

最後は泣き声で言葉にならない。

そして、顔を再び上げることも無いまま、マナは駆け出していった。

呆然とするアスカ。

「・・・霧島さん・・・」

その呟きを聞いてアスカはシンジの顔を見る。

その顔には、驚き、悲しみ、後悔、幾つもの感情が溢れていた。






後に残された二人は、そのまま玄関に立ち尽くしていた。

「僕は霧島さんを傷つけちゃった・・嫌われちゃったんだ・・ねえアスカ、僕はどうすればいいのかな?」

沈みきった表情で、シンジはアスカに問い掛ける。

「あ、アタシに何を言えっていうのよ。アタシだって、あの娘を傷つけたわ・・・」

アスカだって沈んでいるのだ。そのアスカに、シンジの問いに答える言葉は無かった。

「僕がはっきりしないから・・僕はいつも、みんなを傷つけるんだ。・・僕なんて居ないほうがいいのかな?」

自嘲ぎみの涙声で呟くシンジ。

アスカはそれを、首を振って否定する。

「ち、違うわ、はっきりしないのあたしの方、

アタシが、アタシ・・・・」

そこまで言うと、言葉につまってしまう。

「シンジ・・・」


「アスカ・・・」

アスカの顔を窺うように見るシンジ。

「アタシは・・・傍に・・・

アンタに傍に・・・」

「僕がそばに?」

「シンジに傍に・・・」

歯切れ良く言葉の出ないアスカ。

「アスカの傍にいてもいいの・・僕?」

シンジは恐る恐る確認する。

「うん、・・・・アンタじゃなきゃ、

 シンジじゃなきゃ・・・」

「でも、加持さんは・・」

「ううん、違うの。加持さんは違うの、

 加持さんじゃダメなの

シンジじゃなきゃ、ダメなの」

殆ど涙声で首を振るアスカ。

「アスカ・・・僕、ニブいし・・頭も良くないし・・何の取り柄も無いけど」

「・・・」

「アスカが傍にいてほしいって言ってくれるなら、すっとそばに居るよ」

「シンジ・・・

アタシのこと

嫌いじゃないの?」

不安そうにシンジの顔を窺う。

「うん。・・・霧島さんのことはアスカの気を引きたかったからなんだ。僕って最低だよね・・」

自嘲から顔を歪めるシンジ。

「ううん、アタシだって・・・」

それに対し、アスカも自分のしたことが頭をよぎる。

「・・だから、気にしないで」

「ごめんね・・アスカ」

「ううん、いいの、アタシも、・・・・ごめん・・・・・ね」

お互いに俯き合い、それ以上の言葉がでなかった。







長い沈黙の後、口を開いたのはシンジだった。

「アスカ・・あ、あのさ・・買い物に行かない?二人で・・その・・一緒に」

「え?・・・・・・・・・・うん・・・・・・・」

「僕、アスカに買ってあげたいものがあるんだ」

「シンジ・・・」









シンジはアスカを連れて街へ出た。
アスカはただ黙ってシンジに付いていった。
今日も日差しは強かったが、初夏のような涼風がやさしく二人の側をそよいでいった。


第三新東京駅前の商店街の一隅に、洒落たアクセサリーショップがある。
そこが目的地だった。およそシンジが一人で入るには似つかわしくない雰囲気の店だ。


シンジは、その店の前で立ち止まると、アスカを伴って中に入っていった。




「なに買ってくれるの?シンジ」

甘えるように言うアスカ。

それに対して、いかにも安物の銀色の指輪を指差すシンジ。

「あれ・・なんだけど・・いやかな?」

(え?)

ちょっととまどったふうを見せるアスカ。だが、その顔はすぐにはち切れんばかりの笑顔に変わる。

「今はあんなのしか買えないけど、きっといつか・・ちゃんとしたのを・・」

「ううん、それで充分よ、シンジ」

(シンジが選んで、買ってくれるんだもの)

シンジは店員に話しかける。

店員は二人の雰囲気を察して、営業スマイルではなく本当の微笑みをもって対応したのだった。






「アスカ、僕に指輪はめさせてくれる?」

「え?・・・うん・・・いいよ・・・シンジ・・・」


シンジはアスカの左手を取ると、祈るようにその白い薬指に銀の指輪を通していく。
それを黙って、嬉しそうにみつめるアスカ。
指輪はピッタリと、その指にとまった。

「アスカ・・とっても似合ってるよ」

「シンジ・・・ありがとう・・・」

アスカは大事そうにその左手を抱き締めると、喜びに満ち満ちた表情で、

「こ、これが、・・これがお返しよ!」

「え?」

シンジに抱きつき、戸惑うシンジをよそに唇を合わせた。









だが、その数年後・・アスカがシンジに新しい指輪を買ってもらうことは、ついに、なかった。









新しい指輪を買ってあげるというシンジの申し出を、アスカがかたくなに拒んだからである。

アスカの薬指に今も鈍い光を放つ古ぼけた指輪。

しかしそれこそがアスカにとっては、生涯の宝物なのだった。
















おわり
ver.-1.00 1997-08/30公開
感想・ご意見・誤字情報などは たこはち および すのーろーどまで!



<解説&あとがき>

今回のこのSSは、8/27の深夜から8/28の未明に掛けて行われためぞんエヴァIRC、
その中で展開されたチャット小説から興された作品です。

IRC上では、すのーろーどがシンジとマナ、そして話の流れを、たこはちがアスカを担当しました。
SSに興すにあたっては、たこはちが主な肉付けを、すのーろーどがその補足・推敲をしました。

隣人同士の合作、いかがだったでしょうか。
楽しんで頂けたのであれば我々としても幸いです。(written by TakoHachi)



たこはち@803号室の談

「いや、面白かったっすね。いいですね、こういうの。あんまり人が多い時には出来ないけど。
その場にいたOhtukiさんとGUYさんkandaさんにはご迷惑お掛けしたんじゃないかなと、後になって気にしている次第です(^^:。と、優等生面しておいて。
やっぱり、どんな時もLASですね(^^。そして、アスカの一人称はやっぱり楽しい(^^;;;(爆)」


すのーろーど@802号室の弁

「シンジ・・・何かいやなヤツになってますね・・・アスカの嫉妬心をあおろうとしたり(;;
マナちゃんを傷つけた責任はいずれ償わせます(^^
それに比べてアスカちゃん健気でらぶりぃ!さすがLASの救世主たこはちさんです。
こちらが振り回してしまった感があり、申し訳ないです(;;
あ、でもアスカ人のみなさん(私もそうですが)にも、マナちゃんの健気さを分かってもらいたい・・と思います!
最後に、冷酷なシンジ=私の言動に一喜一憂して下さった純なLAS人Ohtukiさん(タイトル選定にもご協力いただきました)、
ところかまわずいちゃつくシンジ・アスカにツッコミを入れ、場を盛り上げて下さったGUYさん。
(ホントはミサトさんとして参加チャンスを狙っていたそうで・・出番がなくなって申し訳ないです)
最後まで温かく見守って下さり、かつ今回の合作の投稿に際して、両方の部屋への掲載という無理を快諾頂いた大家さん。
それからIRCによるチャット環境をご提供下さっている松光さん。これらの方々に感謝の辞を捧げたいと思います。」

長いな・・・
ああ・・(笑)


たこはちの独り言

「やられた。すのーろーどさんに美味しいところ持って行かれた(^^;。
襟を正すときには時には正す。正す人がいれば、おちゃらけた人もいるということで。
それでは、改めて多くの皆さんに感謝しつつ」


 たこはちさんと、すのーろーどさんの合作SS『すれ違うこころ・・・そして、』公開です。
 

 素晴らしい・・・素晴らしすぎるぅぅ(^^)
 

 作品もそうですが、

 チャット上で生まれたこと。
 合作であること。

 これですね!

 「合作」という古くからありながらめぞんでは初の物!!
 「IRC(チャット)」という新技術の上で紡がれた物!!!

 新鮮な風が吹いています(^^)/

 あぁ・・・技術って素晴らしい(ByHITACHI(^^;)
 未来に向かって(By IHI(^^;;;)
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 【めぞんEVA】20万カウント記念に可能性を見せてくれたお二方にメールを送りましょう!


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