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湖が夕日を反射してきらめいている。

そこは、かつて対使徒迎撃用要塞都市第三新東京市と呼ばれていた場所。

だが、汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン零号機の自爆により、かつて人々が生き、生命の息吹があふれていたその場所は、静かな湖と化していた。

だが、少年に言わせればそれはかえって良かったのかもしれない。

雑多な人々が消え、こんなにも静かで心潤せる場所が生まれたのだから。

少年――渚カヲルは、首のない天使の像に腰掛け、気の向くままに鼻歌を歌っていた。

『喜びの歌』――彼の最も好むメロディ。

「歌はいいね……リリンの生み出した文化の極みだよ」

誰にともなく呟くカヲル。

彼の視界に、一筋の光の帯が入る。

「おや……流れ星……いいねぇ、風流の極みだね」

その光の帯――流れ星は、だんだんとその大きさを増す。

いや、こちらに近づいてきているのだ。

「え?」

ぺちゃっ。

 

フィフスチルドレン、渚カヲル。大質量隕石の衝突により

死亡

 


フィフスチルドレン 碇ゲンドウ


 

 

ここはどことも知れぬ彼らの会議室。

虚空にモノリス状の物体が無数に浮かび、その壁面には『SEELE』の文字と、彼らに与えられた番号が刻まれている。

『SEELE01』と刻まれたモノリスが震える。

「――予想外の事態だ」

『SEELE03』と刻まれたモノリスが続ける。

「フィフスチルドレンが大質量隕石の衝突によって死亡――こんなシナリオは裏死海文書にも無いぞ」

「我々の手によって新しいシナリオを作らなくてはならない」

「だが、フィフスの役割は誰に?」

「適任が居るではないか」

「ふ……そうだったな。今日、この日のために彼は居たのだ」

「至急、彼の身柄の拘束、及び改造手術の手はずを整えろ」

「御意」

だんっ。

ブレーカーの落ちるような音を立てて、モノリス状の物体が消える。

『SEELE01』と刻まれたモノリスを残して。

「碇……君は良き友人であり、志を共にする仲間であり、理解ある協力者だった。これが最後の仕事だ。君による遂行を願うぞ」

『SEELE01』――キール・ローレンツはそう独白すると、彼の意思を表す媒体となりうるモノリスを消失させた。

後には、ただ何も無い虚空のみが残った……

 

 


 

 

少年は傷ついていた。

いつも彼の側で彼を罵倒していた少女は今や行方も知れず、彼の母の面影を残す少女は今や彼の知る彼女ではなくなっていた。心許しあえたはずの彼の保護者も、今の彼にとっては恐い他人だった。

少年は孤独だった。

その事実を再認識すると、よけいに孤独になった。

「どこに行ったんだろ……アスカ……」

その少女も今は居ない……

 

 

 

 

その頃、ネルフ本部は揺れていた。

「司令が行方不明!?」

緊急出動要請によって、睡眠を邪魔された葛城ミサトは、思いもがけない事実を告げた彼女の部下に聞き返していた。

「はい。今日未明より、司令の行方が完全に途絶えました。現在MAGIが総力をあげて行方を追っています」

「――にもかかわらず未だ不明のままよ」

彼女の部下――日向マコトの後を継ぐように、彼女の旧友である赤木リツコ博士が振り向きもせずに言う。

「リツコ!――どういうことなの?」

「……私にもわからない。突然独房から出されたと思ったら、司令が行方不明だって言われて……でも、私とMAGI、諜報課の力を総動員しても、未だ手がかりすら全くない状況よ」

「一体どういうことなのかしら……」

「……現在は、非常時という事で副司令が司令代理となっているわ」

その言葉にミサトが司令席を見やると、なるほど、確かに冬月が司令席に座っている。

(ふっふっふ。理由は知らんが碇が行方不明とはな。ようやく私にもツキが回ってきたという事か。ふっふっふっふっふ。くっくっくっくっく。ヒャーハッハッハッハッハッハ)

心の声でこれだけ高笑いしながら、表面上はあくまで心配そうな顔を作っている。。

超法規機関の副司令なんて心労のたまりそうな仕事を長くやっていると、自分の心を隠すのもうまくなるらしい。

だが、そんな冬月の幸せを粉々に打ち砕く一言が、オペレーターの一人、青葉シゲルによって放たれた。

「司令、見つかりました!」

(なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!!!!)

心の中でだけ絶叫する冬月。

(あのロンゲギター男めがぁぁ。余計なことをぉぉ。くぅっ、やはり早めに事故に見せかけて殺しておくべきだったか……)

そんな心の声を顔には全く出さず、安堵の表情を作って素早く指令を出す冬月。

「よしっ。碇を至急保護。現在位置は?」

「――第三新東京市跡です! サードチルドレンと接触したようです!」

「サードチルドレンと?――碇め、何をたくらんでいる……?」

自分の息子と会うのにたくらみも何も無いような気がしたが、それはあえて口には出さない大人のミサトだった。

 

 

 

 

ここで、話は少し時をさかのぼる。

シンジは第三新東京市跡の湖畔にたたずんでいた。

彼の知る彼女――綾波レイの消えたこの場所に来れば、何かが見つかるような気がしたから。

だが、静かに寄せては返す波は、そんな傷ついた少年の心を癒してはくれなかった。

(綾波には会えない……その勇気がない。どんな顔をすればいいのか、わからない。アスカ、ミサトさん……母さん。……僕は、どうしたらいい?)

静かに自問するシンジ。

だが、その自らの問いに答える術は今の彼にはなかった。

その時、シンジの耳にふと何かのメロディが聞こえてくる。

「?」

訝しげに思いながらも、耳をすましてみる……

 

「はちじちょぉーどのぉーあずさにごぉーでぇー……」

 

「あずさ二号―!?」

がびーん。

シンジが慌てて歌声の方に振り向くと、そこには首のない天使の像にこしかけて「あずさ二号」を熱唱するゲンドウの姿があった。

「と、父さん……?」

だが、ゲンドウはそんなシンジの呼びかけも気にせず、なお歌い続ける。

……2回目のサビに入った。

 

「私は私はあーなぁたぁくぁるぁぁぁぁ……たびだちぃーますぅぅぅぅぅ……」

 

しばし余韻に浸るゲンドウ。

シンジは、出来ることなら今すぐこの場から逃げ出したかった。

(逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目かな逃げたいな逃げちゃおうかな)

きびすを返して家に帰りかけたシンジの背中に、ゲンドウが声をかける。

「歌はいいな」

「……え?」

「歌は心を潤してくれる。狩人の生み出した文化の極みだ」

「か、狩人?」

セカンドインパクト前の歌手の名前など、シンジには知る由もない。

それなら何故あずさ二号は知っていたのかという疑問は些細なことである。

「そう感じないか? シンジ」

「え? あ、ああ。えと、その、う、うん、僕もそう思うよ」

「そうか(ニヤリ)」

しばし沈黙が流れる。

「……ねえ、父さん」

「なんだ?」

「……なんで僕の学校の制服来てるの?」

ゲンドウは、第一中学校の男子用の制服を着ていた。

サイズもちゃんとぴったり合っている。

「……ふっ。問題ない」

シンジはそれ以上何も聞けずにたたずむだけだった……

 


 

 

「司令!」

諜報二課によってネルフ本部に連れ戻されたゲンドウを見て、ミサトが声をかける。

「司令、一体どこに?」

「ふっ。問題ない」

ゲンドウはそれだけ答えると、司令席に腰掛けた。

ちなみに、制服は諜報二課に没収されてしまったので普段と同じ詰め襟の服を着ている。

その横には、再び副司令に逆戻りした、顔で笑って心で号泣している冬月が立っている。

「碇、一体どこへ行ってたんだ? あまり怪しげな行動をとると老人達が黙っていないぞ」

心の中で(帰ってこなければよかったのに)と付け加える。

「ふっ。それについても問題ない。少しゼーレの老人共と話してきたところだ」

「……なに? 碇、それは一体どういう……」

「赤木博士」

冬月の言葉を完全に無視して、言うゲンドウ。

「は、はい」

少しビクンと、肩を震わせ、リツコは振り返った。

「前回のことについては不問とする。これからも頑張って欲しい」

「え?」

思いも寄らぬ言葉を受けて、しばし呆然とするリツコ。

「ダミープラグの一件は不問だと言ったのだ」

「は……はい!」

少女のように顔を輝かせるリツコ。

ゲンドウの横では、無視された冬月が床に座り込んでへのへのもへじを書いている。

リツコは、急に復活したらしくてきぱきと仕事を進めている。

「それじゃあ、マヤ。30分後にシンクロテストを行うわ。至急シンジ君とレイを集めて」

「赤木博士、弐号機の用意もしてくれ」

「え? しかし、パイロットが……」

「問題ない。私が乗る

「なっ……」

急にざわめくネルフ本部。

「私が乗ると言ったのだ。早く用意をしろ」

「は、はい」

リツコは言われた通り、弐号機用のテストプラグも用意した。

 

 

 

 

30分後――

「このデータに間違いはないな」

淡々と問う冬月。

「全ての計測システムは正常に作動しています」

「MAGIによるデータ誤差、認められません」

マコトとマヤが答える。

「コアの変換も無しに弐号機とシンクロするとはな」

「しかし、信じられません! いえ、システム状あり得ません」

ヒステリックに叫ぶマヤに、ミサトが答える。

「でも事実なのよ……あり得ない話じゃないわ。シンジ君の父親だもの」

「……でも、チルドレンの条件の一つに「14歳の少年少女であること」ってありませんでしたか?」

納得いかないとでも言うようにシゲルが言う。

「それは、ただ単に今までの適格者がみんな14歳だったというだけの話よ。例外があってもおかしくないわ」

リツコがデータを見つめながら淡々と答える。

「……それにしても、これじゃあ『チルドレン』って呼称も考え直した方が良さそうね……」

いまのところ、彼女の心配事はそれだけだった……

 

 

 

 

その頃、303号室――

「いやぁ! やめてぇ! あたしの弐号機を犯さないでぇぇぇぇ! いやぁぁぁぁ! オヤジの乗ったプラグに乗るなんて絶対にいやぁぁぁぁぁ!!!」

アスカは暴れていた。

 

 


 

 

翌日――

ゲンドウは弐号機の前にたたずんでいた。

「本当ならユイが良かったのだが……贅沢も言ってられん。キョウコ君で我慢するか」

さすが外ん道。いつの間にかキョウコにまで手を出していた。

「さあ、行くぞ。こい、アダムの分身、そしての下僕」

そう言うと、ゲンドウは虚空に一歩足を踏み出した。

その体は重力を完全に無視して、弐号機の正面にまで浮かび上がる。

浮上しつつゲンドウは色眼鏡を外し、無造作に投げ捨てる。

その色眼鏡の下の双眸は、血の色に輝いていた……

 

 

セントラルドグマに警報が鳴り響く。

「エヴァ弐号機起動!」

「そんな馬鹿な!? アスカは!?」

「303病室です。確認済みです!」

ミサトの問いにシゲルが答える。

「じゃあ、一体誰が!?」

「無人です!」

「ついでに言えばこの警報は何なの!?」

セントラルドグマに鳴り響く警報は、セカンドインパクト前の名曲、「あずさ二号」だった。

「司令の趣味よ」

あっさりと言ってのけるリツコ。

ミサトはなんだか不条理な物を感じたらしくだんだんと床を踏んでいる。

「司令と言えば、この非常時に一体司令は何処いったのよ!」

そんなミサトのヒステリックな問いに答えるように、MAGIがディスプレイに一つの言葉を表示する。

「そんな……パターン青、使徒です!」

と、同時に、弐号機の姿がモニターに映し出された。

モニターに写るゲンドウは、弐号機に抱えられるようにして宙を浮いていた。

「そんな……使徒だというの! 司令が!?」

「……本日現時刻をもって、碇ゲンドウは破棄、第17使徒とする

いつの間にか司令席に座っている冬月がそう指示を飛ばす。

「そんな!」

振り返って全身で反対の意を示すリツコ。

「奴はもはや人間ではない……使徒なのだよ、赤木君」

淡々と説く冬月。その顔は、苦渋に染まっていた――表面だけ。

(ふっふっふ。前から妙な奴だとは思ってたが、まさか使徒だったとはな。これで心おきなく奴を始末できるというもの。これでやっとわしが司令だ!! ふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっ!!)

あくまで表面上はつらそうな表情を崩さない冬月。

ここまで来ると、これも一種の才能かも知れない。

「いかなる方法を持ってしても、目標を殲滅しろ! ネルフ中の兵器を使い切ってもかまわん!」

「シンジ君、聞こえる?」

わめく冬月を無視してシンジに指示を出すミサト。

冬月もゲンドウ並に人望が薄いらしい。

「ええ、聞こえます。……一体何が起こったんですか?」

「落ち着いて聞いてね、司令が――あなたのお父さんが使徒だったの」

「ええええええええっ!」

驚愕を隠しきれないシンジ。

「そんな……たしかに、ヒゲが変だなぁとは思ってたけど、まさか使徒だったなんて!」

(ヒゲ関係ないやん)

心の中でつっこむネルフ職員達。

シンジの天然ボケには既に十分すぎるほど馴れているミサトは、的確に次の指示を飛ばす。

「いい、シンジ君。リフトを使って下降しつつ使徒を撃破。相手は使徒よ。……確実に殲滅しなさい」

「……分かりました」

そう答えると、初号機を起動させるシンジ。

何故シンジは初号機の中にいたのか?

それはこんなこともあろうかと冬月が放りこんどいたのだ。

 

 

弐号機を従え、どんどん下降していくゲンドウ。

自身の物ではなく、弐号機のATフィールドを使ってシャッターを破壊していく。

その理由はただ一つ。

疲れるから。

ATフィールドを展開するというのは見た目以上に重労働なのである。

当然、普段から一人で椅子に座って面倒な雑用は全て冬月に押しつけているゲンドウとしては、そんな事をわざわざ自分ではしたくないのだ。

「遅いな……シンジ。まぁ、来なければ来ないでかまわんが」

上を見上げ、さして心配もしていない表情で呟く。

「全く……ゼーレの老人どもめ……面倒くさい仕事を……」

苦々しげにゲンドウは呟いた。

 

 

――そして、ここはそのゼーレの会議室。

静かな虚空に『SEELE08』の声が響く。

「最後の使徒がセントラルドグマに侵入した。現在、降下中だ」

「予定通りだな」

「ああ、既に改造手術マインドコントロールは完全に終了した。今の奴には、自分の行動が自らに何をもたらすかすら分かってはいないさ」

「左様。奴には第7使徒と第14使徒の遺伝子が組み込まれている。戦闘能力だけなら今までの全ての使徒を凌駕するぞ」

「だが、唯一の欠点としては――」

「人と同じサイズだからな。エヴァに踏みつぶされるなり握りつぶされるなりしたら終わりだ」

「そこはまだ改善の余地があるな」

「うむ。次の開発を急がせよう」

既に最初の目的を見失っているゼーレの面々だった。

 

 

そのころ、シンジはようやくゲンドウを視界にとらえていた。

「父さん!」

聞こえるはずのないシンジの叫び声に反応するかのように顔を上げるゲンドウ。

エヴァには外部スピーカーの類はついていないが、使徒としての能力を手に入れたゲンドウにはシンジがエントリープラグの中で叫んだ言葉すらも明瞭に聞こえるのだ。

「遅かったな……シンジ。別に来んでもよかったのだが」

ゲンドウを見つけ、さらに加速した初号機は、ゲンドウに向かって手を伸ばす。

だが、その手を弐号機がまるでゲンドウをかばうかのようにつかむ。

初号機と弐号機は、互いの両手をつかんで組み合うような体勢になっていた。

「ごめんよ、アスカ!」

肩からプログナイフをだすが、それはフェイントで弐号機の脇腹に素早く蹴りを入れる初号機。

そのまま踵落としを決め、さらに頭が下がったところを後頭部にエルボードロップを決めつつもそのまま腹をつかんで持ち上げ、パイルドライバーの体勢のままリフトから離れ、最下層まで落ちていく。

十分な加速と共に最下層の死の海に叩きつけられる弐号機。

その頭部は粉々に砕け、腐臭と血しぶきをまき散らした。

「アスカ! ごめんよ! ごめんよ! ごめんよ!」

そう言いながらさらにストンピングを既に完全に沈黙した弐号機に何度も喰らわせるシンジ。最後にジャイアントスイングで思いっきり投げ飛ばして塩の柱にぶつけると気が済んだらしく、上を見上げて降りてくるゲンドウを待つ。

ゲンドウは完黙した弐号機と、鬼神のごとくたたずむ初号機を見比べて呟いた。

「シンジ……立派になったな。やはり昔から睡眠学習でプロレス実況を毎晩聞かせた効果があったようだな。それに比べてキョウコめ……ふん、ナオコ以上に使えん女だ」

女性の敵、外ん道。

 

 

その頃、303病室――

「いやぁぁぁぁぁ! 私の弐号機にプロレス技をかけないでぇぇぇぇぇ!!」

「くぅっ、早く押さえつけろ!」

「駄目です! すごい力です!」

麻酔銃だ! 麻酔銃を持ってこい!!」

――戦場と化していた……

 

 

初号機の目の前にまで舞い降りるゲンドウ。

「シンジ……お前には失望した」

「なっ……!」

シンジはその言葉に一瞬ひるむ。

「最後の決め技がジャイアントスイングとはな……愚の骨頂だ。もう一度若松先生に鍛え直してもらってこい」

「だっ、誰だよっ! 若松先生って!」

「ふっ。今はまだ知らなくていい

「なんじゃそりゃぁぁぁぁ!」

一人で暴れるシンジを後目に、ヘブンズドアへと近寄るゲンドウ。

視線だけでヘブンズドアのロックを開ける。

禁断の扉が、今ゆっくりと開いていく……

 

 

セントラルドグマ――

「ヘブンズドアが開いていきます」

「日向君――」

「分かっています。……ここを自爆します。サードインパクトが起こされるよりマシですからね」

「……すまないわね」

「いいですよ。……あなたと一緒なら」

「私はやーよ」

「はうあっ」

燃え尽きるマコト。

あきらめろマコト。所詮君がミサトさんを手に入れようなどと無理な相談だったのだ。「ネルフのケンスケ」に明日はあるのか!?

「勝手に妙な名前つけるなぁぁぁぁ!!」

いいじゃん。二人ともメガネだし。

「なんじゃそりゃああああ!!」

あー、うるさいうるさい。

と、言うわけでこれ以上君のために貴重なページを割くわけにはいかんのだよ。

さようなら、いじめられキャラ2。(1はケンスケ)

 

 

ゲンドウは赤い十字架に磔になっている白き巨人の前にたたずんでいた。

「アダム……じゃなくてリリスだったな、これは」

その顔面についているゼーレの仮面を見つめながらゲンドウはふと思った。

「……ここからどうするんだったかな?」

彼は物覚えが悪かった。

とりあえず自爆とかされると困るので、マコトが騒いでる間にリリスの後ろに着けられている核自爆ユニットを解除する。

大音響と共に自爆ユニットが外れるのと同時、ヘブンズドアからゲンドウにはめられたことに気づいたシンジが初号機を駆って入ってきた。

初号機の右手がのび、ゲンドウをつかんだ。

「父さん……どうしてだよ!?」

「いや、どうしてと言われてもだな……」

「……分かったよ、父さん」

「なに?」

うつむいたまま言うシンジにゲンドウが問い返す。

「父さんにとっては死こそ唯一の絶対的な自由生と死は等価値でほんでもって父さんを消さなければ僕らが消えることになるんだね!」

「いや、私はまだ何も……」

「分かったよ、父さん。安心して。父さんの遺志は僕が継ぐ! と、いうわけでバイ!」

「バイ! って、ちょっとまてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」

ぷちっ。

 

――第十七使徒――

殲滅

 

 


 

 

翌日、冬月は喪章をつけ、沈痛な面持ちで司令室に向かっていた。

言うまでもないが、心の中では思いっきりスキップしている。

(はっはっは。碇亡き今、当然ネルフの司令はこのわしだ。くぅぅぅっ苦節12年。ずっっっっっと副司令の座に甘んじていたが、とうとうこのわしが司令になる日が来たのだ! ふわっはっはっはっはっはっはっは!)

そんな喜びの声は自分の胸にそっとしまい込み、司令室の扉を開けた冬月が見た物は――

「ぬぁにぃぃぃぃぃ!」

ゲンドウと同じポーズで司令席に座るシンジと、その横にたたずむミサトの姿だった。

「し、シンジ君……これは一体……?」

「あ、冬月さん。いえ、僕は父さんの遺志を継いでネルフの司令になることにしたんです。冬月さんも、今まで通り副司令として僕を補佐して下さい。――あ、ちゃんとネルフ職員の方過半数とゼーレと政府の許可は受けてますからご心配なく」

「……な、な、うう、裏切ったなぁ! わしの気持ちを裏切ったなぁ! 碇と同じに裏切ったんだぁぁぁぁ!!」

そう叫ぶと、泣きながら司令室を飛び出す冬月。

「あ! ――どうしたんでしょうか? 冬月さん」

「さあ? 更年期障害じゃないの?」

「うーん、ぼけた爺さんに副司令をやってもらうのは心配だなぁ。……ミサトさん、副司令やってくれません?」

「別にいいけど……今の副司令どうすんの?」

「そうですねぇ……初号機の整備でもやって貰いましょうか」

「あ、それはグッドアイディアね」

司令室には、就任したての司令と副司令の笑い声がいつまでも響き続けたのだった……

 

 

その晩、場末のゲームセンターで『ストリートファイターVスパイラルアトミックフランケン』を泣きながら黙々とプレイする冬月の目撃情報が多数ネルフに寄せられたのは、また別の話である。

 

 


終劇

NEXT ver.-1.00 1997-08/09 公開
ご意見・ご感想・誤字情報・苦情などは gyaburiel@anet.ne.jpまで。


作者「どうも、ぎゃぶりえるです。今日のゲストはレイちゃんをお迎えしました」

レイ「……こんにちは……」

作者「えーと、とりあえず言い訳をさせてもらいます。まず、この話はバザーですかちゃんさんの提案から頂いたものです。で、元ネタは言うまでもなく稲葉さんの「その男ゲンドウにつき」の「サードチルドレン・ゲンドウ」(タイトルちょっとうろ覚え)なんですが……まあ、笑ってすませてやって下さい(^^;

レイ「……向こうの方が面白いわ……」

作者「はうっ! ま、まあ、確かに「サード」はかなり笑えます。まだ読んでない方は一読の価値はあるでしょう」

レイ「……この話、私が出てない……」

作者「はうっ! え、えと、その……ほ、ほら、リツコさんのセリフに名前だけ出てるじゃないか」

レイ「……セリフがなくちゃ意味無いわ……」

作者「ご、ごもっとも……って何やってんの、レイちゃん?」

レイ「……包帯で縛ってるの……」

作者「そ、それで……それからどうするのかな?」

レイ「……全身ぐるぐる巻きにしてオホーツク海に沈めてあげるわ……」

作者「…………(ToT)」


 ぎゃぶりえるさんの『フィフスチルドレン 碇ゲンドウ』公開です。
 

 『EVA』パロと同時に、
 『サードチルドレンゲンドウ』パロ(^^;
 

 ゲンドウ亡きあとを狙う冬月・・・・
 なーんも考えて無いネルフの面々。
 妙な計画を立てるゼーレ。
 「ま、いいかぁ」のミサト司令官。

 ・・・振り回されるチルドレン(^^;
 

 上手いですね(^^)

 時折見えるシリアスがスパイスです。
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 順調に書き続けるぎゃぶりえるさんに感想メールを送りましょう!


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