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EVANGELION Another Story "Separation"
EPISODE 01 Good bye...

第一話 さよならは、突然に


 

 

 

「碇シンジ君だね?」

 歩いていたところを呼び止められ、足を止めるシンジ。

 

「そうですけど、何か?」

 

「我々と一緒に来てもらおうか。」

 彼を呼び止めた男達、黒服の集団の中のひとりが話す。

 

「えっ?」

 戸惑いの声をあげるシンジ。

 

「我々も手荒なことはしたくない。さあ。」

 

 迫り寄る黒服の男達。

「!」

 ハッとするシンジ。

 ・・・・ネルフ諜報部の人じゃない・・・・

 

 それに気づいたシンジは、逃げようとして走り出す。

 

 だが・・・

 

 

 パンッ!!

 

 乾いた銃声があたりに響く。

 

 

「う・・・・、ア、アス・・・」

 そこで彼の意識は途絶える。

 

「捕獲完了。これより帰還する。」

 黒服の中のひとりが無線でそうどこかに伝えると、男達はどことなく消えていった。

 

 

 

 

 

 

ジオフロント内 ネルフ本部

 

 

「シンジ君が行方不明ですって!」

「ミサト! 一体どういうことなの?」

「シンジ君・・・・」

 

 リツコもアスカも他の面々もかなり慌てている。

 

「諜報部によると、所属不明のエージェント達に連れ去られたらしいの。」

 感情を抑えながら話を続けるミサト。

 

「所属不明のエージェント?」

 冬月が何か手がかりを知っているような口振りで話に入ってきた。

 

「知っておられるのですか?」

 ミサトがすぐに聞き返す。

 

「・・・・ ゼーレ、かもしれん。」

 

「「「ゼ、ゼーレ!」」」

 皆は驚愕した。

 シンジを連れ去ったのが、ネルフの上層機関ゼーレだとは。

 

「でも、なぜゼーレがシンジ君を?」

 今度はリツコが冬月に問う。

 

「・・・・どうも、最近の我々の動きを快く思っていなかったようなのだ。」

 

「じゃ、じゃあシンジ君は・・・・」

 

「ああ、何かに利用されるかもしれん。どうする、碇。」

 後ろを向いて、ゲンドウに話しかける冬月。

 

「・・・・ 葛城三佐、すぐに初号機パイロットを救出したまえ。

 今の初号機は、シンジ以外には動かせん。」

 

「・・・・ 分かりました。早急に対処します。」

 

 

「シンジ・・・・・」

 アスカがつぶやく。

 そして、一粒の涙が・・・・。

 

 

 

 

 

 

漆黒の闇の中。

 

 「う・・・、アスカ・・・?」

  シンジはアスカに呼ばれたような気がして、気が付いた。

 

「ここは・・・・。」

 

「気が付いたかね。」

 見知らぬ男が話しかけてくる。

 

「・・・・・・・」

 

「そう、強ばらなくともよい。君の命まで取るつもりはない。」

 

「僕をさらって、どうするつもりなんですか?」

 男の言葉に少し安心したのか、シンジが喋り出す。

 

「今、それを君に話すことはできぬが・・・・・・・

 それは別として、君は父親が憎くないか?」

 

「えっ?」

 男の意外な言葉に驚くシンジ。

 

「どうなのだ?」

 

「そ、それは・・・・・」

 

「・・・憎んでいる、と受け取っていいのかな?」

 

「ち、ちがう! 僕は父さんを憎んでなんかいない!」

 

「ほう、そうかね。

 では、あの男が君を利用して何をしようとしているか、

 それを知った上でもかね?」

 

「と、父さんが僕を利用している?」

 男のショッキングな言葉に、反応を隠せないシンジ。

 

「教えてやろう。あの男は、碇ゲンドウは・・・・・・・・・・・・・」

 

 

「そ、そんな・・・・

 そんなの、嘘だぁー!!」

 絶叫するシンジの声が闇の中に響く。

 

「どうかね、これでも君は父親を憎まずにいられるかね?」

 

「うう・・・、父さん・・・、信じていたのに、やっと信じられたのに・・・」

 

「泣いているのかね」

 

「ゆ、許さない。僕は父さんを絶対に許さない!」

 瞳に怒りの炎を灯し、シンジはゆっくりと立ち上がる。

 

 

「ククク。どうだね、碇シンジ君、我々と手を組まないか?」

 

「手を組む?」

 

「そうだ、我々も奴が憎い。君と同じだよ。」

 

「・・・・分かりました。手を組みましょう。」

 

「理解して頂けて光栄だよ。」

 

「ところで、あなたの名前は?」

 

「私の名前? そうか、まだ言っていなかったな。

 ・・・・・ 私の名前は、・・・キール・ローレンツ。

 『ゼーレ』と呼ばれる機関の長たる者だよ。」

 

 

 

・・・・ 駒はそろった。

 

・・・・ 碇、貴様の命も、もうあと僅かだ ・・・・

 

・・・・ クククククククククク ・・・・・・・

 

 

 

闇の中に不気味な笑い声が響きわたった。

 

 

 

 


続く
Version 1.0  97/07/22 公開

Homepage : http://www.incl.or.jp/~ago/write/
E-Mail : ago@asuka.nerv.to

 

 

 

<あとがき>

 

毎度どうも、AGOでございます。

「別離」第1話、いかがでいたでしょうか?

まぁ、冷房でクラクラしながら書いたんで、多少読みづらいかも しれませんが。

 

それはさておき、次回予告です。

  ゼーレと手を組んだシンジ。

  それを知らずに、必死にシンジを探す、アスカやミサト達。

 

  そして、ネルフ本部を急襲する謎の戦略部隊。

  果たして、ネルフの命運は?

 

 「別離」第2話、乞うご期待!!

 

 

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 AGOさんの新連載『別離』第一話、公開です。
 

 第1作の『シンジとアスカのお忍び温泉旅行』のラブラブコメコメとは大きく異なる色ですね。

 突然連れ去られたシンジ。
 キールの言葉に頷く・・・

 ここにシンジのゲンドウとの対立が決定的に。

 シンジの心を知るはずもないアスカやミサトは探し続ける・・・
 重いですね・・・
 

 シンジを決心させたゲンドウの行動とは何なのでしょう。
 

 さあ、訪問者の皆さん。
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