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アスカはレイを自分の部屋に招待していた。
アスカにとって天敵といえども、お互いがお互いのことを理解している仲だった。
だからアスカにとってレイは天敵なのかもしれないが。

大学の生活にも慣れてきて、サークルも結局シンジと一緒のサークルに入り、
先輩たちからも一目置かれるような3人だった。

アスカがレイを招待していたのは高校時代のシンジのことを聞きたかったからだ。
ドイツに行ってどういう高校生活をしていたのか、
好きな人のことを1番知っておきたいということだった。
レイもアスカが自分を招待したことはそんなことだろうと思っていた。

ユイはアスカがレイを話をするからって言ってきた時点で
レイが泊まれる準備をしていた。
中学まではシンジを起こしにアスカが毎日来ていたが、
ドイツに行ってからはアスカの代わりにレイが来ていたのだった。
アスカほどのどたばたは繰り広げられなかったが、
それと変わらないような日々が3年間続いていた。
簡単にいってしまえば、シンジが成長していないということなのだが。

「で、何を聞きたいの、アスカ?やっぱり高校時代の碇君のことでしょ?」
「ばれていた?」
「ばれるも何も、アスカがワタシを呼び出したってことで
 だいたいピンときていたから、そんなことじゃないかなって」
「呼び出したなんて人聞きの悪い。
 ちゃんとこうやってレイの好きなケーキと紅茶を出してもてなしているじゃない」
「まぁそういうことにしておきましょう。で、本題ね」

レイがそうやってアスカの聞きたいことを切り出すと
高校時代のシンジの話を始めた。

高校時代のシンジは同級生から人気があったということだった。
中学からの一緒だった女の子は、アスカがいなくなって
“チャンス到来”とばかりに自分のものにしようと努力していたらしい。

中学の時も隠れて人気はあったらしいのだが、
何せ惣流アスカラングレーという女の子が護衛艦のように
ぴったりと横にいるという事でチャンスすらなかったからだ。

まして、アスカの親は家にいないことが多く、
シンジの家で食事をする機会が多かったからなおさらだという話だった。
まぁ端から見ていれば『付き合っています』『お互いの親公認』みたいな状態。
そんな状態で、シンジの事をスキと思っている女の子が手を出せるわけがない。

レイはアスカがドイツに行っても碇君のことを
どれだけスキかっていうのを知っていたから、ここはピエロを演じようと、
碇君とワタシは付き合っていますってことを公表したらしい。

レイも中学時代、アスカと人気を二分したほどの人気者だった。
レイもシンジのことがスキだったから、碇君と一緒になることは
ワタシの思いだったのかも知れないなぁとアスカに伝えた。

もし碇君を自分の彼氏にするならアスカがいないときは狙わないし、
そういうのはアスカと正々堂々とやりたかったから、ピエロだったのよと。
チャンスを伺っていた女の子はワタシのことを妬んでいたみたいとつけ加えた。

アスカは一通り話を聞くと、心の中でレイに感謝していた。
レイが他の女の子から守ってくれたようなものだったからだ。


シンジは何故いきなりレイがそういう行動をとったのか分からないでいた。
アスカの専売特許であった朝起こしに来るのをされても
妙な違和感みたいなものを感じてはいた。

ただ起こされないと遅刻するので最初の頃だけではあった。


結局アスカの為にやってきたことなんだから、
付き合ってもたまにはワタシには貸してねといってはアスカを困らせていた。
仲がいいからとう以上に信頼しきっているから言える言葉ではあった。

アスカは自分が聞きたかったことを一応聞き出すと、
サークルの話を話し始めていた。
レイもアスカも勢いでサークルに入った感じが否めないので
果たして何をやりたいのか?が見えていなかったのだ。

マサコにDJに向いているとは言われたものの、本当に向いているのか?
2人ともそれぞれで自問自答する機会は多かった。
シンジはディレクターになることが夢みたいなものだから、
信念がはっきりしている。

レイの為にいれた紅茶も飲み干してしまい、
『なるようにしかならない』という結論で括っていた。

そんな折り、レイの携帯がなった。

「レイ?ミサトだけど、今暇かしら?」
「葛城先生、どうしたんですか?いきなり電話なんかしてきて?」
「いやぁねぇ、レイとアスカを食事に誘おうかな?って思ってねっ」
「さては加持先生を誘ったけど振られたってところですか?」
「うっ...。まぁそんなところだけど、今何処にいるの?」
「今ですか、アスカの部屋にいるんですけどぉ」

レイが携帯でそういうと、アスカが奪い取るように

「もしもし、ミサト。
 加持さんに振られたからってワタシたちを誘うことないでしょ!」
「だって一緒にお酒飲んでくれる人探していたんだもん...」
「そんなことやっているからいつまでも加持さんをモノ出来ないんじゃない?」
「アスカだって人のこと言えるのかなぁ?
 愛しのシンジさまと一緒の家に暮らしているのに結ばれたって話聞かないわよ。
 あぁもうそういう仲なのかなぁ」
「ミサト...。今日はとことん飲み明かしましょう。
 1度、決着付けなくてはいけないとはおもってたのよ、ミサトとは」
「じゃぁ今から迎えに行くから待っていてね」

けんか腰の状態で、アスカは完全にミサトを一戦構えようとしている
まさに臨戦態勢に移行していた。
レイはアスカがそうなると何をいっても無駄なので、
この際だから、アスカVSミサトのバトルを見届けることを決めていた。

「ユイおばさま、ちょっとこれからレイと出かけ来ます」
「あらアスカちゃん、どこに出かけるの?」
「いやミサト...葛城先生から電話があって、話したいことがあるからって」
「ミサト先生が一緒なら心配ないわね。きっとお酒が入ると思うし。
 これ、持って行きなさい」
「なんですか、これ?」
「強力な2日酔い止めよ。ミサト先生のペースで飲んだら丸1日死んでしまうから。
 これを飲んでおけば2日酔いにはならないから。レイちゃんの分もね」

ユイはどこから出してきたが分からなかったが、
強力な2日酔い止めをアスカとレイに手渡した。



(アスカちゃんもレイちゃんもシンジの惚れているのよねぇ。
 まったく我が息子ならが女心には鈍感なんだから...。
 でもレイちゃんはそうでもないのかな?

 本命はアスカちゃんで、対抗がレイちゃんみたいな感じかな。
 しかも本命がちがちのレースみたいなものだしねぇ。
 でもこの2人って仲がいいわよねぇ。
 ワタシとキョウコみたいな関係になりそうね、きっと)

ユイはこの2人を見ながらしみじみと感じていた。


アルピーヌのエンジン音が聞こえ、ミサトは家の玄関に来ていた。
インターフォンを鳴らすと既にアスカとレイが待っていた。

「遅いわよ、ミサト!」
「何言っているのよ、これでも飛ばしてきたんだから」
「おばさま、じゃぁ行ってきます」
「アスカちゃん、レイちゃんもくれぐれも飲み過ぎないようにね」
「「はーい」」

(この調子なら朝2人で帰ってくるのかな?
 お茶づけぐらい食べられるように準備だけしてメモ残しておけばいいわね)

そう思ったユイはアスカとレイを見送ったあと玄関のドアに鍵をかけて
テーブルの上に1枚のメモを残して寝てしまった。


その頃、ミサトの運転するアルピーヌの中では

「だいたい加持さんが付き合ってくれないからって
 ワタシたちを誘うことないんじゃない、寂しいのは分かるけどぉ」
「あら加持なんかいなくたって寂しくなんかないわよ。
 それに今日はアスカとレイと話がしたかったから電話しただけだしぃー」
「葛城先生、そう言ってのろけ話を聞かせてくれるんですか?
 ウワサは聞いてますよ、ちゃんと」
「さすがウワサ話が大好きなレイだもんね、知っていたか」
「レイ、何よ、うわさ話って。教えなさいよ」

助手席に乗っていたアスカが体をひねって後ろに乗っているレイを見ると
レイは淡々とそのうわさ話をアスカに教えた。

「えぇぇぇぇ....。そうなの?ミサト?」
「まぁね。一応、そういうのもいいかなって思って。
 もう何年も経っているし、ワタシも年だしねぇ。
 まぁアスカはシンちゃんと許嫁みたいな仲だから、
 そんな心配しなくたっていいと思うけどさぁー」
「ミサト言わせておけばぁぁ...」
「アスカ、それ以上言ったって墓穴掘るだけよ。
 事実、碇君は誰を選ぶかという賭けが高校時代にあったくらいだし」
「何よそれ?」
「ノミネートされていたのは、ワタシとアスカ、ヒカリも入っていたかな?
 クラスで一緒だった女の子ぐらい」
「さっき言わなかったじゃなぁいぃ!」
「言ったってその賭けは終わっちゃったもの」
「どうしてよ?」
「碇君と一緒に住んでいる段階でその賭けは終わりよ」

まったく何を賭けられているんだか憤慨しているアスカだった。
まぁこの賭けの胴元は言わず知れたミサトなのだが、
ユイも1枚噛んでいるとかいないとか。

この賭けが高校時代にあったために、
その賭け率を変動させる行動が色々な方面で見られた。
ウワサがウワサを呼び、本人が知らないところで賭けはされていたが、
騒ぎがだんだんと大きくなるにつれて本人の耳にも入り、
レイが一役買ったというの真相だった。

このおかげでウワサは消えかけたが、大本命のアスカが帰国した、
さらに一緒に1つ屋根の下で住んでいるということが
新たな賭けを発生させたのだ。

それは『碇シンジと惣流アスカラングレーはいつ結ばれるか?』だ。
これも胴元はミサトである。進展を本人の口から聞くために呼んだのだった。


アスカはすごい剣幕でこの真相をミサトとレイの口から聞いて怒ってはいたが、
まぁ結ばれたいというのはアスカの気持ちでもあった。

そんなやりとりをしている間にミサトの行きつけの店に到着していた。



店内には行ってもアスカの怒りは収まらず、
そこは年の功、ミサトが女の先輩として教育をしていた。
賭けの話は別にして、自分のモノにするということは、
ものすごい体力を使い、神経を使い、それでこそお金では買えないモノになるのよと。
ほとんど実体験を元に話をしているだけに、話の内容にはリアリズムがあった。
その話を真剣に聞いているアスカとレイだった。

元々加持とミサトは大学時代からのつきあいだが、1度別れたそうだ。
別れた原因はミサトの我侭によるものなのだが、
結局お互いが忘れられずに、ヨリを戻したと言う感じなのだ。

いつまでも中途半端な関係をするのはもうやめようと
加持がミサトにプロポーズをして、それを受け入れたというのがウワサだったのだ。

アスカにとって加持は憧れのお兄さんみたいな存在だった。
アスカに限らず加持のファンというのは多かった。

憧れの人が目の前にいる女性と結婚することは
ある意味において喜ぶべきことだけど、ちょっとがっかりする出来事でもあった。

ミサトは自分は結果的には良かったかも知れないが、
自分の我侭で人を好きになることがどんだけの苦痛をもたらすかを
イヤになるぐらい実感してきた。

スキならスキといい、結ばれたいなら結ばれるのがいいに決まっている。
それは早いなら早い方がいいのよ、もうアスカもレイも子供じゃないだから、
特にアスカは目の前に自分が思い憧れてきた人がいるのだから
早い内にケリを付けなさい、でないと後悔するわよというのがアドバイスだった。

確かにそう望んでるアスカではあったが、
そういうことは男の人から言ってもらいたいというのがアスカの願望だった。

まぁシンジが奥手な部分もあるからいつになるか分からないわよと
散々ミサトに言われていた。レイにも言われていた。

ミサトの話のよれば、加持の所にシンジが行っていろいろとアドバイスをしたらしい。
加持は詳しいことを言わなかったが、きっとアスカの事だと思うよと言っていた。

そんなことなどを交えながら、大学での生活とか、サークルの話とか、
いろいろと自分たちのことや恋愛以外の悩みなどを酒の肴にしながら、
気がつけば日付もすでに変わっていて、日が昇っていた。



酔っぱらっているハズのミサトが、薬を飲んでも酔いつぶれしまった2人を
車に乗せてシンジの家まで来ていた。

アスカを起こしてみるが、完全に熟睡してしまって動くことも出来ないでいた。
レイもアスカと同様、完全に熟睡してしまっていた。

「世話のかかる子供達ね。
 まぁ今まで教えてきた中でも一番可愛い教え子だからねっ。
 じゃぁこの2人の保護者を呼ぶとするか」

ミサトは携帯を取り出すと、何度も電話したことのある番号に電話をかけた。

「もぉしぃもぉしぃ?」
「あら、シンちゃんお目覚めかしら?」
「みしゃとせんしぇい、どぉしたんですかぁ?」
「いやぁね、アスカとレイで飲んでいたんだけど2人とも寝ちゃって起きないのよ」
「今は何処にいるんですか?」
「シンちゃんの家の前にいるわよ。
 迎えに来てあげてね、王子様じゃないとお姫さまはお目覚めじゃないみたいだから」
「な、な、なにを言っているんですか!ミサト先生」

シンジはそういうと電話を切って、家の外に出てきた。
家の目の前には青色の車と、赤い服を来ている人が立っていた。

「ごめんね、シンちゃん。起きなかったのよ、アスカもレイも。
 これはシンちゃんに部屋まで連れていってもらわないとねって思って」
「分かりました。アスカ、アスカ起きてよ、帰るよ」
「ん?シンジ?部屋まで連れってぇぇ」
「うわっ」

車の中からどうにか2人をどうにか下ろしたが、
そこからはミサトではどうにもならなかったのだ。
で、シンジの登場と相成ったわけだ。

アスカは目をこすりシンジと確認すると、シンジに抱きついていた。
突然の出来事でびっくりするシンジと、あぁーというミサトがいた。
この声で目を覚ましたのがレイだった。

レイも寝ぼけていたのだろう。
シンジとアスカが抱きついている姿が視界に入った。
正しくはアスカがシンジに勝手に抱きついたのだが、
そんな思考能力があるわけでもなかったので、レイもその状況を見て
「ワタシも部屋まで連れていってぇぇぇー」
と叫びながら、空いている左腕に飛び込んでいた。

シンジもまさか2人も思いながら、苦笑いを浮かべながら家に入っていった。
ミサトはそんな光景を見ながら「シンちゃんも大変ね。アスカだけじゃなく、
レイも信頼しきってる部分あるからねぇ。でも3人でも上手く行きそうね、色々と」
そんな事を思い浮かべながら車に乗り、自分の家に帰っていった。


一方、突然2人の介抱をするハメになったシンジはというと、
「水!水が欲しい!!」と騒いでいるので、コップ2つ持ってきて飲ませていた。

お腹は空いていなかったみたいなので、そのままアスカの部屋に2人を連れていき、
上着などを脱がせて、ちょっと狭いけどアスカのベッドに寝かせた。
スースー寝息を立てながら寄り添うにしてすぐに寝てしまった。

やれやれという顔をしながら、アスカとレイの寝顔を見ながら部屋を後にした。
この瞬間、加持がミサトを介抱する苦労がちょっとだけ分かった。

シンジはアスカとレイの為に起きてきたらお腹が空いているだろうからといって、
おにぎりを握り、テーブルの上に作り置きをしていた。

そして寝ているときに起こされたので、眠くなって自分の部屋に入っていった。

目覚めたアスカはどうして自分が自分の部屋にいて、
横にレイが寝ているのか分からなかった。
レイの寝顔を見ていたら起こすことが悪いと思い、そぉーと部屋を出ていった。
お腹が空いていたアスカはキッチンまで行くとテーブルにおにぎりが作ったあった。


アスカちゃんへ
きっと帰ってきたらお腹が空いていると思うので、
お茶漬けを用意しておきます。
レイちゃんも一緒だと思うので一緒に食べてね。

アスカと綾波へ
お腹空いているだろうから、おにぎりを作っておきました。


アスカはそのメモを読むと迷惑をかけたという済まないという気持ちと、
ワタシやレイの為に気を配ってくれたユイやシンジに感謝していた。
これはレイと一緒に食べようと思ったアスカは自分の部屋に戻っていた。

部屋に入る前にシンジの部屋をちらっと見てもう一寝入りした。

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ver.-1.00 1997-08/17公開
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LAGERですぅ。

何かが違うぞ??

本来ならアスカとレイは飲みつぶれて、
シンジに介抱されるという話だったはずなのに。

どこでどう間違えたんだろう?3人で飲むと展開見えちゃうしなぁ...。


ちょっとしたシンジとアスカの優しさを表現できたと思うし。
今度はレイの優しさみたいなのをどこかで表現しなくてはいけないですね(笑)

 LAGERさんの『UN HOMME ET UNE FEMME』外伝第2話、公開です。
 

 アスカに対する、
 レイの優しさ。
 アスカとレイに対する、
 シンジの優しさ。
 

 一人の男とそれに思いを寄せる二人なんてドロドロしそうなものなのに、
 優しさに包まれたいい関係が続いていますね・・・(^^)
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 貴方もメールでLAGERさんに優しくしてあげましょう(^^)


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